出雲大社に呼ばれる人とは?0泊3日一人旅での不思議な体験

日本全国の神様が不在となり島根県の出雲大社へ集う神無月(10月)に、東京から夜行バスを利用して0泊3日の日帰り出雲旅へ。
今回は、ちょっと不思議な出雲大社のお話です。

前編はこちらから▼

【神無月の出雲大社へ0泊3日旅!東京からのおすすめアクセス方法をご紹介】

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出雲大社に「呼ばれる人」とは

ずっと行きたくて、でも遠方故に見送っていた出雲大社。今回、一念発起して出雲へ向かったわけですが、出雲大社には〝呼ばれた人〟〝呼ばれる人〟しか行けないという考え方もあるようです。

私の場合、旅行に行くときはいつもそうですが、今回も急に思い立ちました。「あ、出雲大社に行こう!」と。
海外に行くときも思いつきで決めます。それで上手くチケットがとれたら旅の神様の思し召し、ダメだったら別の場所へという神様の采配。いつもそう思って準備をします。

この旅は東京からの足で悩みました。でも2日ほど悩んで直行の夜行バスの存在を知った後はパズルのピースが埋まるように全てがスムーズ。
驚くことに帰りは「サンライズ出雲」のチケットも直前で取れました。〝チケットは争奪戦〟と呼ばれる日本で唯一の寝台列車・サンライズ出雲のチケットが出発3日前で取れるのは奇跡に近い状況です。しかも一番早く売り切れると言われる2階席でした。
ワクワクしました。〝私は出雲大社に呼ばれている〟と思えたほどです。

行きの夜行バスは打ち付けるような酷い雨を体験。〝雨の中の参拝は辛いな〟と思っていたら翌朝、私の悩みを吹き飛ばすかのような眩しいほどの青空が広がっていました。
さらにワクワクしました。〝私は出雲大社に呼ばれた〟と確信が持てたからです。

出雲大社は独特の造りをしていました。雄々しい印象 不思議な写真もたくさん撮れました

午前中が絶対おすすめ!静謐な出雲大社

私が出雲大社の参道に降り立ったのは午前9時半。バスの遅延で予定より少し遅い到着にはなりましたが、人影はまばらです。
明け方までの大雨が嘘のように、空は青く、空気は清々しく、太陽は万物の生命を祝福するかのようにキラキラ輝いています。長く続く参道もタイミングによっては貸し切り状態でした。

朝の出雲大社は想像よりとても良いものです。一般的に神社の参拝は午前中、特に朝早い時間に訪れるのがおすすめと言われていますが、その理由は行けば分かりますよ!

午前中の出雲大社は、人もまばら。緑の多い場所にあります 午前中の出雲大社は、人もまばら。緑の多い場所にあります

その数66羽!可愛いウサギの石像

出雲大社の社殿は独特の造りをしています。広大な敷地にゆったりと構えた社殿は、一言で表すなら雄々しい美しさ。
かやぶき屋根や屋根の上でクロスしている千木(ちぎ)、全体の黒っぽい色合いが、そう思わせるのでしょうか。威厳のある風貌で、少し近寄りがたいような猛々しい神聖さといった印象を私に与えました。

ですが境内を歩いていると、あれ?可愛いウサギの石像を発見。よく見ると、あっちにもこっちにもウサギがいます。その数なんと66羽!
広大な敷地を歩き回りましたが66羽全部のウサギを見つけることは私にはできず…。もしウサギ好きの方がいたら、ぜひチャレンジして欲しいと思います。

ちなみに出雲大社でなぜウサギかというと、出雲大社の御祭神である縁結びの神・大国主大神は因幡の素兎(いなばのしろうさぎ)を助けたことがあるからだそうですよ。

御本殿を眺めるウサギたち 御本殿を眺めるウサギたち
ウサギたちはみんな違うポーズをしていました ウサギたちはみんな違うポーズをしていました

最強パワースポット?光を放つ岩

清々しい気持ちのまま参拝ルールに従って本殿周辺を半時計回りに進みます。
御本殿のちょうど裏側に足を踏み入れたとき、空気が変わったことに気付きました。より澄んだ空間に入ったと表現すればいいのでしょうか。
空気がヒヤッと冷たくなり素人の私でも明らかに神聖な場所に足を踏み入れたことを感じました。

「御本殿の裏側に?なぜ?」と不思議な気持ちのまま歩みを進めると、素鵞社(そがのやしろ)という社殿が見えてきました。それほど大きくない社ですが、その周辺だけ明らかに空気が違っています。
不思議に思って、グルリと社を一周してみました。社の裏側には八雲山と呼ばれる霊山がそびえ立っていてむき出しの山肌がせりだしています。

何か見落としている気がして一周した後もその場に留まっていたら、足元で小さなカエルが動きました。目を凝らすと赤ちゃんサイズのカエルが何匹もピョンピョンしています。
カエルたちは沢と呼ぶにはあまりに細く心もとない水の流れに沿って跳ねています。

立ち止まって観察しなければ見過ごしてしまうほど、小さな水の流れ、小さな生き物。
万物の生命の輝きを見せつけられたような不思議な気持ちになって顔をあげると、目線の先に大きな岩がありました。

ご利益が溢れるような凄いパワーを感じた素鵞社と霊山・八雲山 ご利益が溢れるような凄いパワーを感じた素鵞社と霊山・八雲山

それは初めて見る光景。岩が青白く光って見えたのです。
太陽の光の加減かと思い様々な角度・位置から眺めましたが、どうやらそれは無関係。その岩だけが輝いています。それはまるで内側から発光しているようで、拝まずにはいられない神秘的な雰囲気を醸し出しています。
しめ縄があるわけでも、祀られているわけでもない、岩。それなのに目を奪われて動けませんでした。

八雲山は強烈なパワーを持つ霊山だと言いますが、岩はその山の神様の化身でしょうか?
私と同じようにその岩に魅了された参拝者はポツリポツリといて、岩に向かって手を合わせるその姿に勝手に仲間意識を抱いてしまいました。
ですが9割位の方々は、岩を素通り。素鵞社だけ参拝される方、御本殿以外は興味のない方、様々でした。

案内によると素鵞社の御祭神は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治したことで知られる素戔嗚尊(スサノオノミコト)でした。
今朝降りたばかりの夜行バスを思い出します。私を東京からここまで連れてきてくれた夜行バスの名は「スサノオ号」。〝ご縁〟を感じる瞬間でした。

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神様が私を足止め?大雨で列車が運休

全てが順調!と思えた0泊3日の出雲大社の旅。
でもこの話には続きがあって、なんと全ての工程を終え帰宅する時になってサンライズ出雲が悪天候で運休となってしまったのです。

その時私は出雲から少し離れた松江という駅でサンライズ出雲の到着を待っていました。電車の到着まであと30分。丁度良い時間だとニンマリ微笑んでいた気がします。
ですが駅の改札で見つけてしまったのです。「サンライズ出雲 運休」の文字を。
その日は静岡周辺に大きな雨雲がありました。そのため私は2時間ほど前からJRのサイトをチェック。
直前まで「列車は速度を落として運転します」だったのに、ここにきて「運休」になるなんて…。お金は全額返金されますが、大人気のサンライズ出雲。次はいつ乗れるのか予定も立ちません。

駅は大混雑でした。新大阪まで行くことはできても、その先には行けない様子。
東京に行かなきゃいけない人々が「迂回路は?」と駅員さんに詰め寄ったり、うなだれたりしていました。

私はどうしようかな。一瞬、神様が〝もっとここにいて〟と話しかけてきているのかとも思いました。私を帰さないようにしているのかな、と。
例えば海外で長旅をしている時も「もういいかな、次の場所へいこう」と思うと何かが起こって、意図せずその場に留まるよう導かれる時があります。同じ気分でした。

出雲⇔岡山を結ぶ特急「やくも」。やくもの名は出雲大社の奥に鎮座する霊山・八雲山から? 出雲⇔岡山を結ぶ特急「やくも」。やくもの名は出雲大社の奥に鎮座する霊山・八雲山から?

〝ホテル取っちゃおうかな。それで早朝に出雲大社にお参りして帰宅しよう〟〝新大阪まで行って一泊して、軽く観光してから翌日の昼に帰宅するのも良さそう〟と色々と楽しい妄想をしました。でも明日は在来線さえ運休する可能性があります。雨雲はそれほどのものでした。
そして再びパズルのピースが埋まります。私が行きに利用した東京→出雲の直行バスは、出雲→東京間も夜行バスを運行していました。
確かそろそろ松江を経由するはず…。時刻を調べるとビンゴでした。後20分ほどで松江にバスがやってきます。

ただただラッキーでした。私はその時間、本来なら出雲駅にいるはずでしたから。
親切なタクシーの運転手さんが「松江からもサンライズ出雲に乗れるよ。松江の方が近いよ」と教えてくれたので急遽、松江にいるのです。出雲だったらアウトでした。
予約が集中しているのかサイトは時々サーバーダウン。それでも何とか席は予約できました。安心。と同時に〝神様に悪いかな〟と後ろ髪をひかれる思いもありました。

バス停には想像以上に多くの人が集まっていて、バスは満席に近い状態でした。昨夜の東京→出雲のガラガラのバスを知っている身としては驚きの乗車率。
でも運転手さんは行きも帰りもフレンドリーで「列車が止まっちゃったから急にお客さんが増えて大変だよ~」なんて言っています。

乗り慣れたバスのシートに身を沈めます。〝これで一安心〟あとはバスがこの身を東京まで運んでくれます。旅の最後にトラブルに見舞われてしまいましたが、予定通り無事に家に帰れるのはやはり良き事なのでしょう。
さようなら出雲大社の神々。また必ず参ります。

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R.香月(かつき)プロフィール画像

筆者プロフィール:R.香月(かつき)

大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel


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