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突然ですが犬の怖さを知っていますか?もしあなたが海外旅行中に犬に噛まれてしまった場合は、どうしたら良いのでしょう。今回はマレーシアで野犬に襲われたお話。もちろん実話です。
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その夏は、マレーシアにある離島・ペナン島で過ごしていました。ペナン島は穏やかな海と豊かな自然に囲まれたザ・リゾートと言える場所。知人の「2カ月コンドミニアムを借りたからおいでよ」という誘いを受けて、私は夏の間ペナン島に身を寄せました。
コンドミニアムは繁華街からバスで20分ほどの距離。町からは少し離れますがその分広々としていて部屋にあるあらゆる窓から海が見渡せました。バス&トイレ付きのゲストルームを使わせてもらえた私は、優雅な暮らしを楽しんでいました。
コンドミニアムは小高い山の上に建っていました。バスを降りると10分ほど緩やかな坂道を歩くことになります。右手には寂しいビーチ。左手にはコンドミニアムへと続く坂道。外国人向けのキレイな建物が間隔をあけて建っている閑静な場所は、いつもひっそりとしていました。
ある日、坂道を登っていると遥か向こうに犬が3匹見えました。野犬でしょうか。飼い犬を散歩している男性に向かってノーリードの犬がけたたましく吠えています。背格好からして現地の人でしょう。ちょっと困ったような雰囲気が伝わってきます。3匹の野犬はとても興奮していました。
〝危ない〟
直感で思いました。
知識として野犬に出会ってしまった時の対処法〝いつまでもじっと見つめていないで早々に退避〟というのがあったので、私は歩みを進めました。走ってはいけない、でも追いつかれてはいけない。犬に見つかる前に足早に立ち去らなきゃ!すると瞬間、左足が熱く燃えました。
〝熱い‼〟
火あぶりにあったかのような物凄い熱さを感じて振り向くと、一匹の犬が私の左足を噛んでいました。
私はパニックになっていました。とにかく脚が熱くて「何この熱さ?」「何が起きたの?」と自分の身に起こった事が理解できませんでした。でも頭はどこか冷静で、周囲をちゃんと見渡しています。燃えているのかと錯覚するくらい熱くてたまらない脚を見ると、ジーンズに4つ穴があいていました。
周囲を見渡すと1メートルもない距離で茶色と白色の犬が後ずさりしながら私に向かって吠えていました。瞬間、頭の中で回線が繋がります。「あぁ、私この犬に噛まれたんだ」「分厚いジーンズなのに穴が空いてる」「足が熱いな。火が出そう」「あれ?この状況マズくない?」
私は3匹の犬に囲まれていました。犬たちは私に向かて吠え続けています。
「それにしてもなんで私は噛まれたの?」「犬って足早いんだ…」
グルグル同時に色々な事柄が頭の中に浮かびます。
少なく見積もって70メートルは離れていたのに、わずか数秒で私は野犬に噛まれていました。
頭の中は依然パニック状態ですが、これ以上襲われるわけにはいきません。視界の先には、先ほど犬に囲まれていた散歩中の男性の姿が見えます。「私が襲われているの見えているよね?」「あの人、私を助けてくれないの?」「そもそも、何故あの人は無事で私が噛まれているの?現地の人だから?」
色々考えましたが、ただ遠くからこちらを見ているだけの人に救いを求めても仕方ないので、私は怯えながらも肩にかけていた鞄で応戦しました。3匹の犬が狂ったように吠えています。噛まれた左足が熱くて火が吹きでそうで、膝をつきたくなりました。でも、それは絶対にダメ。さらなる攻撃を誘発する行為です。
そして私は見逃しませんでした。私を噛んだ犬はちょっとだけ腰が引けているのです。自分に言い聞かせるように呟きます「大丈夫。犬はちょっと怯えている」でも、3対1。どう考えても分が悪いのは私です。
その時、坂道の下からバイクがゆっくり走ってきました。どこかへ手紙を届けに行くのでしょうか。50㏄のバイクがの~んびりとした音を奏でながら坂道を登ってきます。
バイクを運転していた男性は私に気付くと、まるでヒーローのように犬を蹴散らし私を救ってくれました。犬はあっという間に走り去っていきます。
「大丈夫かい?」
「犬に嚙まれました」
私の状況を理解すると、男性はバイクの後ろに私を乗せます。私がその先にあるコンドミニアムに住んでいることを知るや否や、バイクは凄い勢いで走り出しました。
「病院に行かなきゃ。でも今はとにかく噛まれた箇所を洗うんだ」
「絶対に洗わなきゃダメだよ」
「それから病院に電話しなさい」
男性は的確な指示を出すと、私をコンドミニアムの入口で降ろします。お礼を言おうとする私をさえぎって
「いいから、とにかくまず噛まれた場所を洗いなさい」
急かされるように別れ、私は部屋に入りました。
ジーンズを脱ぎ捨てる時は、躊躇しました。分厚いジーンズに4カ所穴が開いているのです。私の足はどうなっているのか…。直視するために勇気をふりしぼります。
左足には4カ所の穴が開いていました。皮膚も肉も犬の牙の形そのままに丸くえぐれています。上顎のほうが力が強いのでしょう。上二本の穴は下の穴より傷口が大きく開いています。でも思ったほどケガは酷くありませんでした。
「やっぱりあの犬、噛むの躊躇したのかな?」もし犬が本気で噛んでいたら、私の足なんてえぐり取られていたでしょう。
そして不思議と痛みはありませんでした。ショック状態なのでしょうか。痛みを感じないため、私はザブザブと水を使いひたすら傷口を洗います。お水は貴重ですが、そんなこと言っていられませんでした。足を洗いながら、英語が通じる病院に電話をかけ状況を説明します。幸い縫うほどのケガではありません。
「あなたどこにいるの?」
「〇〇地区だけど」
「そこからうちの病院までは結構距離があるのよ。本当はすぐ来て欲しいけれど…。噛まれた場所から菌が入るから、今はとにかく洗いなさい。石鹼も使って30分以上は洗いなさい。この後、熱が出たり腫れてきたらすぐに来て」
私を助けてくれたヒーローも、外国人対応の病院も〝とにかく傷口を洗いなさい〟と私にアドバイスします。
私を襲ったのは野犬。怖いのは狂犬病でした。狂犬病は発症してしまったら100%死亡してしまう恐ろしい病気です。現代の医学でもってしても治療することはできません。
怖くなった私はカードに付帯されていた海外旅行の保険会社に電話をしました。今度は日本語で細やかに状況を説明します。でも解答は同じでした。
「すぐに案内できる病院は近くにない。今は傷口を洗いなさい」と。
幸いなことに私を噛んだ犬は狂犬病には感染しておらず、私は何事もなく今も生きています。でも、犬に襲われた身だからこそ言いたい。海外では極力、犬(や動物)に接触しないでくださいと。
時々「子犬だから」「可愛いから」という理由で自ら犬に近づいていく人がいますが、それはNG行動。狂犬病に限らず犬はたくさんの病気をもっていますし、本気で噛まれたら人間の頬など千切れます。隣の人が大丈夫でもあなたは噛まれるかもしれません。
昔の話でしょ?いいえ、日本では2006年に2件、2020年にも1件の輸入狂犬病患者がでています。犬に襲われる経験をした私はこの件以来、「海外で一番怖いのは犬」だと思って旅をしています。
かつて狂犬病の予防接種率100%を誇った日本も(義務にも関わらず)2020年以降、接種率は7割にまで低下しています。2024年7月には未接種の犬が人を噛む事件も発生しました。
海外でも日本でも、もし犬に噛まれてしまったらとにかくまず患部を洗ってください。そして保健所に連絡&病院を受診してください。犬が予防接種を受けていなかった場合、最悪の事態になります。
人間が狂犬病を発症したらどうなるか知らない人は、ぜひ検索を。どんなホラーより怖いと思います。
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大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。マイナーな国をメインに、世界中を旅する。旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。公式HP:Lucia Travel
突然ですが犬の怖さを知っていますか?
もしあなたが海外旅行中に犬に噛まれてしまった場合は、どうしたら良いのでしょう。
今回はマレーシアで野犬に襲われたお話。もちろん実話です。
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目次
マレーシアの離島ペナン島でバカンス
その夏は、マレーシアにある離島・ペナン島で過ごしていました。ペナン島は穏やかな海と豊かな自然に囲まれたザ・リゾートと言える場所。
知人の「2カ月コンドミニアムを借りたからおいでよ」という誘いを受けて、私は夏の間ペナン島に身を寄せました。
コンドミニアムは繁華街からバスで20分ほどの距離。町からは少し離れますがその分広々としていて部屋にあるあらゆる窓から海が見渡せました。
バス&トイレ付きのゲストルームを使わせてもらえた私は、優雅な暮らしを楽しんでいました。
遥か向こうで吠える野犬
コンドミニアムは小高い山の上に建っていました。
バスを降りると10分ほど緩やかな坂道を歩くことになります。右手には寂しいビーチ。左手にはコンドミニアムへと続く坂道。
外国人向けのキレイな建物が間隔をあけて建っている閑静な場所は、いつもひっそりとしていました。
ある日、坂道を登っていると遥か向こうに犬が3匹見えました。野犬でしょうか。
飼い犬を散歩している男性に向かってノーリードの犬がけたたましく吠えています。背格好からして現地の人でしょう。ちょっと困ったような雰囲気が伝わってきます。
3匹の野犬はとても興奮していました。
〝危ない〟
直感で思いました。
知識として野犬に出会ってしまった時の対処法〝いつまでもじっと見つめていないで早々に退避〟というのがあったので、私は歩みを進めました。
走ってはいけない、でも追いつかれてはいけない。犬に見つかる前に足早に立ち去らなきゃ!
すると瞬間、左足が熱く燃えました。
〝熱い‼〟
火あぶりにあったかのような物凄い熱さを感じて振り向くと、一匹の犬が私の左足を噛んでいました。
焼けるように熱い脚
私はパニックになっていました。
とにかく脚が熱くて「何この熱さ?」「何が起きたの?」と自分の身に起こった事が理解できませんでした。でも頭はどこか冷静で、周囲をちゃんと見渡しています。
燃えているのかと錯覚するくらい熱くてたまらない脚を見ると、ジーンズに4つ穴があいていました。
周囲を見渡すと1メートルもない距離で茶色と白色の犬が後ずさりしながら私に向かって吠えていました。
瞬間、頭の中で回線が繋がります。「あぁ、私この犬に噛まれたんだ」「分厚いジーンズなのに穴が空いてる」「足が熱いな。火が出そう」「あれ?この状況マズくない?」
私は3匹の犬に囲まれていました。犬たちは私に向かて吠え続けています。
「それにしてもなんで私は噛まれたの?」「犬って足早いんだ…」
グルグル同時に色々な事柄が頭の中に浮かびます。
少なく見積もって70メートルは離れていたのに、わずか数秒で私は野犬に噛まれていました。
鞄を武器に野犬へ立ち向かう
頭の中は依然パニック状態ですが、これ以上襲われるわけにはいきません。
視界の先には、先ほど犬に囲まれていた散歩中の男性の姿が見えます。
「私が襲われているの見えているよね?」「あの人、私を助けてくれないの?」「そもそも、何故あの人は無事で私が噛まれているの?現地の人だから?」
色々考えましたが、ただ遠くからこちらを見ているだけの人に救いを求めても仕方ないので、私は怯えながらも肩にかけていた鞄で応戦しました。3匹の犬が狂ったように吠えています。
噛まれた左足が熱くて火が吹きでそうで、膝をつきたくなりました。でも、それは絶対にダメ。さらなる攻撃を誘発する行為です。
そして私は見逃しませんでした。私を噛んだ犬はちょっとだけ腰が引けているのです。
自分に言い聞かせるように呟きます「大丈夫。犬はちょっと怯えている」
でも、3対1。どう考えても分が悪いのは私です。
通りすがりのヒーロー登場
その時、坂道の下からバイクがゆっくり走ってきました。
どこかへ手紙を届けに行くのでしょうか。50㏄のバイクがの~んびりとした音を奏でながら坂道を登ってきます。
バイクを運転していた男性は私に気付くと、まるでヒーローのように犬を蹴散らし私を救ってくれました。犬はあっという間に走り去っていきます。
「大丈夫かい?」
「犬に嚙まれました」
私の状況を理解すると、男性はバイクの後ろに私を乗せます。
私がその先にあるコンドミニアムに住んでいることを知るや否や、バイクは凄い勢いで走り出しました。
「病院に行かなきゃ。でも今はとにかく噛まれた箇所を洗うんだ」
「絶対に洗わなきゃダメだよ」
「それから病院に電話しなさい」
男性は的確な指示を出すと、私をコンドミニアムの入口で降ろします。お礼を言おうとする私をさえぎって
「いいから、とにかくまず噛まれた場所を洗いなさい」
急かされるように別れ、私は部屋に入りました。
4本の犬の歯の後がクッキリ
ジーンズを脱ぎ捨てる時は、躊躇しました。分厚いジーンズに4カ所穴が開いているのです。
私の足はどうなっているのか…。直視するために勇気をふりしぼります。
左足には4カ所の穴が開いていました。皮膚も肉も犬の牙の形そのままに丸くえぐれています。
上顎のほうが力が強いのでしょう。上二本の穴は下の穴より傷口が大きく開いています。でも思ったほどケガは酷くありませんでした。
「やっぱりあの犬、噛むの躊躇したのかな?」もし犬が本気で噛んでいたら、私の足なんてえぐり取られていたでしょう。
そして不思議と痛みはありませんでした。ショック状態なのでしょうか。
痛みを感じないため、私はザブザブと水を使いひたすら傷口を洗います。お水は貴重ですが、そんなこと言っていられませんでした。
足を洗いながら、英語が通じる病院に電話をかけ状況を説明します。幸い縫うほどのケガではありません。
「あなたどこにいるの?」
「〇〇地区だけど」
「そこからうちの病院までは結構距離があるのよ。本当はすぐ来て欲しいけれど…。噛まれた場所から菌が入るから、今はとにかく洗いなさい。石鹼も使って30分以上は洗いなさい。この後、熱が出たり腫れてきたらすぐに来て」
私を助けてくれたヒーローも、外国人対応の病院も〝とにかく傷口を洗いなさい〟と私にアドバイスします。
死亡率100%!狂犬病の恐ろしさ
私を襲ったのは野犬。怖いのは狂犬病でした。
狂犬病は発症してしまったら100%死亡してしまう恐ろしい病気です。現代の医学でもってしても治療することはできません。
怖くなった私はカードに付帯されていた海外旅行の保険会社に電話をしました。今度は日本語で細やかに状況を説明します。でも解答は同じでした。
「すぐに案内できる病院は近くにない。今は傷口を洗いなさい」と。
幸いなことに私を噛んだ犬は狂犬病には感染しておらず、私は何事もなく今も生きています。
でも、犬に襲われた身だからこそ言いたい。海外では極力、犬(や動物)に接触しないでくださいと。
時々「子犬だから」「可愛いから」という理由で自ら犬に近づいていく人がいますが、それはNG行動。
狂犬病に限らず犬はたくさんの病気をもっていますし、本気で噛まれたら人間の頬など千切れます。隣の人が大丈夫でもあなたは噛まれるかもしれません。
昔の話でしょ?いいえ、日本では2006年に2件、2020年にも1件の輸入狂犬病患者がでています。
犬に襲われる経験をした私はこの件以来、「海外で一番怖いのは犬」だと思って旅をしています。
かつて狂犬病の予防接種率100%を誇った日本も(義務にも関わらず)2020年以降、接種率は7割にまで低下しています。2024年7月には未接種の犬が人を噛む事件も発生しました。
海外でも日本でも、もし犬に噛まれてしまったらとにかくまず患部を洗ってください。そして保健所に連絡&病院を受診してください。
犬が予防接種を受けていなかった場合、最悪の事態になります。
人間が狂犬病を発症したらどうなるか知らない人は、ぜひ検索を。どんなホラーより怖いと思います。
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筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel