海外で痴漢に遭遇|イスラエルとパリでの体験談

海外旅行をしていると稀に痴漢に遭います。私も例に漏れず…。
ちょっとマイナーなアフリカを巡ったり、外国人と結婚したり、色々と経験が増えていく中で気付いたのは〝日本人女性は大人しいから狙われやすい〟ということでした。
今回は海外における痴漢話です。

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イスラエルで白昼堂々襲われる

ガッチリとお尻を…

それは中東イスラエルの一番の観光地エルサレムの旧市街を旅していた時のこと。イスラム教の聖地「岩のドーム」を見に行く予定でした。

太陽が燦燦と輝く昼間の時間帯。私の前には、きちんと整備された石畳みの道路に、明るいベージュ色の石造りの壁が広がっていました。
「イスラエルって少し怖いイメージだったけど、普通に女性も一人で歩ける環境なんだ」そんなことを考えていたと思います。

緩やかな上り坂を、岩のドームを目指して進むこと数分。
突然、誰かが私のお尻を触りました。撫でるような優しい感じではなく、お尻のお肉を力いっぱい握られた感じ。「悪意を持って」と表現するのが似合うほど、ガッチリお尻を掴まれました。

逃げないの?不気味な犯人

ただ、ただ、ビックリ!驚きすぎて一瞬、痴漢に遭ったと思わなかったほどです。
私のお尻を触った若いその男は、私の右側をすり抜けて数メートル先の壁にもたれ掛かると、じーっとこちらを伺うように見てきました。
普通、痴漢をしたら走って逃げませんか?犯罪者は逃げるものなのに、その男は何故か私を見つめています。ジトっとしたその姿は不気味でさえありました。

「あっ、これはマズイ」
このまま真っ直ぐ進めば、私はその男の前を通り過ぎることになります。次は何をされるか…。

咄嗟に、後方にあった噴水へと進路を変えました。噴水に見とれているフリをしながら(事実、美しい噴水でした)男を観察。まだ私を見ています。諦める様子はありません。私の中の警報機は鳴りやみません。「アノ男ヤバい」
何分粘ったでしょうか。男は全く動こうとしません。10分、20分、30分…。男はやっと去っていきました。

イスラエルで白昼堂々襲われる

昼間でも人がいても危険!?

これは結構怖かった体験。
イスラエルでは他にも、真昼間に子どもに石を投げられて気を失うという痛い経験もしました。

その時の詳しい状況はこちらの記事で↓

【イスラエル女子旅で巻き起こった災難】

イスラエルの怖い点は周囲が一切助けてくれないこと。他宗教や他人種には無関心なのでしょう。

もしあの時、私が逃げていなければ白昼堂々さらなる被害に遭った可能性もあります。
昼間だから大丈夫、大通りだから大丈夫、周囲に人が行き交っているから大丈夫、が一切通じない時があることを学んだ国でした。

花の都パリでパリジェンヌが痴漢を撃退

穏やかな午後に事件発生!

フランスはパリ。パリジェンヌの友人と2人で散歩していた時のことです。
穏やかな午後の日差しは心地よく、右を見ても左を見てもザ・パリといった街並みに心はウキウキ踊っていました。しかも現地の友人と一緒で、私は完全に気を抜いていました。

パリの縦に3つ並んだ信号機が赤になり、横断歩道の前で立ち止まりました。「パリは信号機までエレガントだな~」と吞気なことを考えていた気がします。
突然、後ろから歩いてきた男性にお尻を触られました。昼間なのに、車も人も行き交っているのに、「絶対に触ってますよね!」と言い逃れできない触り方。
怖いというより呆気にとられて一瞬固まってしまいました。「だって昼間だよ?私は友人と歩いているんだよ?」

様子がおかしいと思ったのか、友人が話しかけてきました。
「どうしたの?」
固まったままの私はゆっくり口を開きます。
「いまお尻触られた」と言った瞬間、事態は急変しました。

鬼に変身したパリジェンヌ

瞬間、人形のように美しいパリジェンヌが鬼に変身したのです。
カッと表情を変えたかと思うと、フランス語のスラングでまくしたて、持っていた傘で男性を叩く!叩く!叩く!
それも思いっきり!私は痴漢された時以上に固まってしまいました。

「え!ここまでしていいの?」「逆に訴えられるんじゃないの?」
正直、目の前の光景にひるみました。やがて鬼の剣幕と傘の攻撃を受けた男性は、文字通り尻尾を巻いて逃げていきました。

花の都パリでパリジェンヌが痴漢を撃退

痴漢した奴はボコボコにされて当然

見事、男性を撃退したパリジェンヌ。いつもの穏やかな顔に戻ると「大丈夫?」と私を気にかけてきます。その豹変ぶりに戸惑いました。
「大丈夫だけど、あそこまでしていいの…?」
友人がした一連の行為は過剰防衛で訴えられるレベルに思えました。

「私、ちょっと触られただけなんだけど~」と日本人的な発想でゴニョニョ話していると、「何言ってるの!大事な体を無断で触られたんだよ!そういう卑劣な行為を許すことはない」と逆に一喝される始末。

〝フランス人女性は怖い・強い〟と聞きますが、こういう事なんだと理解した日でした。
それにしても、強い!「自分にも落ち度はあったかも…」という発想は一切無いようで、そのマインドを見ていると日本人の私が狙われた理由が少しだけ分かった気がしました。

イスラム教徒の夫の言い分

かつて私は外国人の夫と結婚していました。彼はイスラム教徒。イスラム教徒にとって体のラインを強調する服はNG中のNGなので、私が肌を露出した服を着るのも凄く嫌がりました。
いつだったか話をしたことがあります。「どうしてダメなの?」「ひざ丈のスカートでもダメなの?」と。

彼の理想は〝首も足首も手首も全部隠しなさい〟というもの。
私は寒がりなので、冬場はむしろ喜んでそうした服装を選んでいました。でも夏場は?日本の夏は暑くムシムシです。

彼は言います。「男はみんな隙を伺っているんだ。肌を見せる=隙なんだよ。君は僕の妻なんだよ。脚なんて見せたら終わりだ!それを他の男が見る=暴力の一種だ!!僕は君を守らなきゃいけないんだ!」

実にイスラム的な考えで、ふ~んと思ったのを覚えています。
これはちょっと過激ですが、日本にもありますよね。「露出した服装=誘ってる。性被害に遭ったのは自業自得な部分もあるよね」という考え方。それによって被害者が更に追いつめられる風習。
この考え方、パリジェンヌが言った「私の体を無断で触ったヤツを糾弾して何が悪い!」とは真逆な気がしています。

イスラム教徒の夫の言い分

日本人女性には何をしても良い?

世界をあっちこっち旅する中で何度か言われたことがあります。
「日本人女性は口答えしないから」と。それは従順という意味ではなく、「はっきりNOを言わないから何をしてもいい」という悲しい意味。

フィリピンでは「日本人?だったらボッタくりしてやろう」というシーンに遭遇し、中東では「日本人は無宗教。宗教的な縛りがないから触ってもOKだ!」という会話を聞きました。
個人的に悪質だなと感じたのは、未婚のユダヤ教徒とイスラム教徒。彼らは婚前交渉ができません。でも女性に興味はある。で、どうするかというとイスラムとユダヤ以外の宗教の女性に狙いを定めるのです。だから外国人は格好のターゲット。

でも結構みんな気が弱いので、先に出たパリジェンヌのように反撃されるのは怖いんです。ひっそり痴漢をしているのに親にバレるのも困るし…
それを解決するのがコミュニティ。外国人の夫を観察して気付きましたが、外国人たちの宗教や商売のコミュニティは私たち日本人が思っている以上に強固なもので、そこではあけすけに様々な情報が交換されています。
「〇〇だった」「〇〇だよ」という会話が交換される中、自然と日本人なら騙せる、大人しい日本人女性なら多少触ってもOKとなっていったのでしょう。

卑怯な手段で痴漢に及ぶ人間は憎い。でも「大切な体を守って何が悪い!」と毅然とした態度で戦うパリジェンヌを見ていると、そこまで胸を張って自分を大切にできない日本人女性(私のことですよ)も、何だか悲しいなと思う次第です。

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R.香月(かつき)プロフィール画像

筆者プロフィール:R.香月(かつき)

大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP: Lucia Travel

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