人気のキーワード
★隙間時間にコラムを読むならアプリがオススメ★
アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南米と一人で好き勝手どこにでも旅をしてきました。特に困ったり怖い思いをした経験はありません。
でも、民族と宗教が入り混じるイスラエルは別でした。今回はイスラエル旅行で遭遇した災いのお話です。
前回の記事はこちら
Lucia Travel連載一覧はこちら
イスラエルにあるテルアビブはとても大きな都市。中東と聞くと、砂けむりやレンガの家、貧しい暮らしを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、イスラエルの特にテルアビブは別世界です。
高層ビルや広い道路、高級ホテルなど近代的な景観が広がっていて、日本の主要都市と同等かそれ以上に整備されています。美しい海にも近く、ヨーロッパではリゾート地として周知されるほど。
そんなテルアビブですから、安宿は少ないのが現状(イスラエルはそもそも物価が高いです)。バックパッカーとして少しでも安い宿に泊まりたかった私は、あちこち歩き回って情報収集をしていました。
テルアビブは湿気が少なく、カラっと乾いた気候だったため、どれだけ動いてもそれほど汗は出ません。町中には小売店やレストランなどお店もたくさん。女性の一人歩きも多かったので安宿探しの散策は気楽なものでした。
「あぁ、何て広い道路なんだろう」
キレイに整備された広い道路に感動していたときのことでした。突然、何か大きな衝撃を受け同時に視界が真っ暗になりました。
………………………………………
何が起きたのか分かりません。気付くと道路に倒れていました。隣りにいた人が必死に話しかけてきます。
「大丈夫?」「石を投げられたんだよ!?」「ねぇ分かる?」
でも、私はイマイチ現状を理解できません。足元にはこぶし大の石が転がっていました。
--------あれ?私は倒れているの?
--------なんで私は心配されているの?
--------石?石って何?これが当たったの?
しばらく座っていたのだと思います。何せ一瞬の出来事で、完全に失神したので前後の記憶もあいまいです。
ボーっと座りながらぐるりと周囲を見渡すと、子どもが遠巻きにこちらを見ているのに気付きます。5~7才位の年齢の子どもたちが数人、笑っていました。何だかすごく楽しそう。
さきほど言われた言葉を思い出しました。
「石を投げられたんだよ!?」
--------私、あの子どもたちに石を投げられたんだ。
怒らなきゃいけないんだろうけど体が動かない。頭の中も靄がかかったようで働かない。
そうこうしている間に、私に見られたことに気付いた子どもたちは、ばつが悪そうに走り去ってしまいました。いたずらがバレちゃった!そんな顔をしています。それを、ただ見てるだけの私。
人通りの多い場所で石を投げられ、人が一人倒れたというのに、その子たちを捕まえようとする人は誰もいませんでした。
これまで沢山の国を旅してきました。人の親切に泣くことはあっても、痛い目や辛い目にあったことは、ほぼありません。だから旅が大好きで、どんな国にだって飛んでいきました。でも、イスラエルは違っていたようです。
石を投げられたのは私がアジア人だからでしょうか?そこはユダヤ人の多い地区でした。ユダヤ人じゃない人間には、何をしてもいいと思っているのでしょうか?
走り去っていった子どもたちの中には笑顔さえありました。自分たちが悪いことをしている自覚など無い様子です。
石を投げる遊びをしていて、たまたま私にぶつかっただけ?残念ながら、それは限りなくありえない話。状況を考えると私を狙ったとしか思えません。
そして一連の行為を黙って見ているだけの大人たち。〝髪の毛一本で保たれている平和〟はこういうことなのかと実感しました。
「ねぇ大丈夫?死んじゃったかと思ったよ」
どこからか、また私を気遣う声がします。幸いなことに倒れた場所が良かったのか、どこにもケガはありませんでした。
もし顔面をぶつけていたら、倒れた先に突起物があったら、ガラスが落ちていたら…考えただけでゾッとします。軽い失神で済みましたが、もし石の当たり所が悪ければ、私は死んでいたことでしょう、罪悪感ゼロの子どもたちの手によって。
エルサレムの旧市街を散策していると、頼んでもいないのに「ガイドしてあげる」と近付いてくる少年が何人もいました。
若い10代前半の男の子の場合が多く、はじめは私も「みんな親切なんだな」程度に思っていました。でも丁寧にお断り。テルアビブで子どもに石を投げられてから、一層気を引きしめるようにしていました。
2時間ほど散策した後でしょうか。観光している私の近くに一人の少年がやってきました。
ちょうど道に迷っていたので場所を聞きます。彼はニコっと笑って「こっちだよ」と。妙に慣れ慣れしく私の手を握ってくるのが印象的でした。
私が歩みを進めると、少年はなぜか付いてきます。なんとなくイヤな雰囲気がしました。勝手にガイドをして後から高額なお金を請求してくるのは海外旅行アルアルなお話です。
念のため「ガイドは不要だよ。お金も払えないよ」と丁寧にでもきっぱりお断り。でも少年は「家がこっちだから」と口にして付いてきます。
人通りも多い場所だったので余り気にしないことにしました。
それから10分。ユダヤ教地区の観光スポットについた時「一緒に写真を撮ろう」と突然、少年が言い出しました。疑問でした。「写真?なんで?私と?」と。
無邪気なフリを装って少年が私の腰に腕を伸ばしてきた瞬間、気付きました。この人、痴漢目的だと。もちろん触らせません。「撮ってあげる」と少年の写真だけを撮影し、別れました。
安宿に帰宅してオーナーに教えてもらいました。彼らの目的は女性の体を触る事だそうです。
それは胸やお尻といった分かりやすい場所である場合もありますし、慣れ慣れしく手を握ってきたり(←まさに私はこれでした)肩を抱いたりといった遠まわしな場合もあります。でも、これだって痴漢です。
ユダヤ教もイスラム教も婚前交渉はご法度。これは絶対に破ってはいけない規律の一つです。
でも思春期を迎えた男の子たちは女性の体に触りたくて仕方ない。それで、どうするかというと外国人をターゲットにするんです。
同じ宗教の女性を相手にすると戒律違反になってしまうけど外国人ならOKという、私たちには理解しにくい理由によって外国人女性はターゲットにされるのです。
イスラエルには、世界最古の都市の一つエルサレムがあります。
このエルサレムの町の旧市街にはイスラム教、ユダヤ教、キリスト教のそれぞれの聖地があり、いつも沢山の巡礼者であふれています。
想像してみてください。イスラエルという国の中にエルサレムという小さな町があり、そしてさらに小さな旧市街(大きさなんと0.9km²)に3つの宗教の聖地が存在するその危うさを。
そのうえ東エルサレムは国際法上ではパレスチナ自治区の首都として存在しています。ですがイスラエル側は、「(東エルサレムも含めて)エルサレムはイスラエルの首都」と主張しています。
そんな状況なので〝平和〟というわけにはいきません。争いの火種はあちこちに潜んでいて、それが爆発しないよう旧市街には銃を持った軍人や警官が何人も巡回しています。
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。マイナーな国をメインに、世界中を旅する。旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。公式HP:Lucia Travel
アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南米と一人で好き勝手どこにでも旅をしてきました。特に困ったり怖い思いをした経験はありません。
でも、民族と宗教が入り混じるイスラエルは別でした。今回はイスラエル旅行で遭遇した災いのお話です。
前回の記事はこちら
Lucia Travel連載一覧はこちら
目次
近代的で美しい都市テルアビブ
イスラエルにあるテルアビブはとても大きな都市。中東と聞くと、砂けむりやレンガの家、貧しい暮らしを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、イスラエルの特にテルアビブは別世界です。
高層ビルや広い道路、高級ホテルなど近代的な景観が広がっていて、日本の主要都市と同等かそれ以上に整備されています。美しい海にも近く、ヨーロッパではリゾート地として周知されるほど。
そんなテルアビブですから、安宿は少ないのが現状(イスラエルはそもそも物価が高いです)。バックパッカーとして少しでも安い宿に泊まりたかった私は、あちこち歩き回って情報収集をしていました。
子どもに石を投げられ失神
テルアビブは湿気が少なく、カラっと乾いた気候だったため、どれだけ動いてもそれほど汗は出ません。町中には小売店やレストランなどお店もたくさん。女性の一人歩きも多かったので安宿探しの散策は気楽なものでした。
「あぁ、何て広い道路なんだろう」
キレイに整備された広い道路に感動していたときのことでした。突然、何か大きな衝撃を受け同時に視界が真っ暗になりました。
………………………………………
何が起きたのか分かりません。気付くと道路に倒れていました。隣りにいた人が必死に話しかけてきます。
「大丈夫?」「石を投げられたんだよ!?」「ねぇ分かる?」
でも、私はイマイチ現状を理解できません。足元にはこぶし大の石が転がっていました。
--------あれ?私は倒れているの?
--------なんで私は心配されているの?
--------石?石って何?これが当たったの?
無邪気に走り去る子どもたち
しばらく座っていたのだと思います。何せ一瞬の出来事で、完全に失神したので前後の記憶もあいまいです。
ボーっと座りながらぐるりと周囲を見渡すと、子どもが遠巻きにこちらを見ているのに気付きます。5~7才位の年齢の子どもたちが数人、笑っていました。何だかすごく楽しそう。
さきほど言われた言葉を思い出しました。
「石を投げられたんだよ!?」
--------私、あの子どもたちに石を投げられたんだ。
怒らなきゃいけないんだろうけど体が動かない。頭の中も靄がかかったようで働かない。
そうこうしている間に、私に見られたことに気付いた子どもたちは、ばつが悪そうに走り去ってしまいました。いたずらがバレちゃった!そんな顔をしています。それを、ただ見てるだけの私。
人通りの多い場所で石を投げられ、人が一人倒れたというのに、その子たちを捕まえようとする人は誰もいませんでした。
「死んじゃったのかと思った」
これまで沢山の国を旅してきました。人の親切に泣くことはあっても、痛い目や辛い目にあったことは、ほぼありません。だから旅が大好きで、どんな国にだって飛んでいきました。でも、イスラエルは違っていたようです。
石を投げられたのは私がアジア人だからでしょうか?そこはユダヤ人の多い地区でした。ユダヤ人じゃない人間には、何をしてもいいと思っているのでしょうか?
走り去っていった子どもたちの中には笑顔さえありました。自分たちが悪いことをしている自覚など無い様子です。
石を投げる遊びをしていて、たまたま私にぶつかっただけ?残念ながら、それは限りなくありえない話。状況を考えると私を狙ったとしか思えません。
そして一連の行為を黙って見ているだけの大人たち。〝髪の毛一本で保たれている平和〟はこういうことなのかと実感しました。
「ねぇ大丈夫?死んじゃったかと思ったよ」
どこからか、また私を気遣う声がします。幸いなことに倒れた場所が良かったのか、どこにもケガはありませんでした。
もし顔面をぶつけていたら、倒れた先に突起物があったら、ガラスが落ちていたら…考えただけでゾッとします。軽い失神で済みましたが、もし石の当たり所が悪ければ、私は死んでいたことでしょう、罪悪感ゼロの子どもたちの手によって。
外国人には痴漢してもOK!?
エルサレムの旧市街を散策していると、頼んでもいないのに「ガイドしてあげる」と近付いてくる少年が何人もいました。
若い10代前半の男の子の場合が多く、はじめは私も「みんな親切なんだな」程度に思っていました。でも丁寧にお断り。テルアビブで子どもに石を投げられてから、一層気を引きしめるようにしていました。
2時間ほど散策した後でしょうか。観光している私の近くに一人の少年がやってきました。
ちょうど道に迷っていたので場所を聞きます。彼はニコっと笑って「こっちだよ」と。妙に慣れ慣れしく私の手を握ってくるのが印象的でした。
私が歩みを進めると、少年はなぜか付いてきます。なんとなくイヤな雰囲気がしました。勝手にガイドをして後から高額なお金を請求してくるのは海外旅行アルアルなお話です。
念のため「ガイドは不要だよ。お金も払えないよ」と丁寧にでもきっぱりお断り。でも少年は「家がこっちだから」と口にして付いてきます。
人通りも多い場所だったので余り気にしないことにしました。
それから10分。ユダヤ教地区の観光スポットについた時「一緒に写真を撮ろう」と突然、少年が言い出しました。疑問でした。「写真?なんで?私と?」と。
無邪気なフリを装って少年が私の腰に腕を伸ばしてきた瞬間、気付きました。この人、痴漢目的だと。もちろん触らせません。「撮ってあげる」と少年の写真だけを撮影し、別れました。
安宿に帰宅してオーナーに教えてもらいました。彼らの目的は女性の体を触る事だそうです。
それは胸やお尻といった分かりやすい場所である場合もありますし、慣れ慣れしく手を握ってきたり(←まさに私はこれでした)肩を抱いたりといった遠まわしな場合もあります。でも、これだって痴漢です。
ユダヤ教もイスラム教も婚前交渉はご法度。これは絶対に破ってはいけない規律の一つです。
でも思春期を迎えた男の子たちは女性の体に触りたくて仕方ない。それで、どうするかというと外国人をターゲットにするんです。
同じ宗教の女性を相手にすると戒律違反になってしまうけど外国人ならOKという、私たちには理解しにくい理由によって外国人女性はターゲットにされるのです。
世界最古の都市エルサレム
イスラエルには、世界最古の都市の一つエルサレムがあります。
このエルサレムの町の旧市街にはイスラム教、ユダヤ教、キリスト教のそれぞれの聖地があり、いつも沢山の巡礼者であふれています。
想像してみてください。イスラエルという国の中にエルサレムという小さな町があり、そしてさらに小さな旧市街(大きさなんと0.9km²)に3つの宗教の聖地が存在するその危うさを。
そのうえ東エルサレムは国際法上ではパレスチナ自治区の首都として存在しています。ですがイスラエル側は、「(東エルサレムも含めて)エルサレムはイスラエルの首都」と主張しています。
そんな状況なので〝平和〟というわけにはいきません。争いの火種はあちこちに潜んでいて、それが爆発しないよう旧市街には銃を持った軍人や警官が何人も巡回しています。
前回の記事はこちら
Lucia Travel連載一覧はこちら
筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel