ペトラ遺跡に通じる幻の裏ルートを発見!~前編~

バックパッカーの間で密かに語り継がれる逸話「ペトラ遺跡には、裏口があるらしい」。
多くの人が探し求め、でも見つけられないこの裏口の存在はウワサ話でしょうか。

そんな裏口あるわけないと思っていたのに、あれ?気付けば私、ベドウィン族に連れられて裏口を通っていました。

前回までのペトラ遺跡の記事はこちらから↓

【ペトラ遺跡を代表する「エル・カズネ」を一望できる秘密の絶景スポット】

【ヨルダンの世界遺産「ペトラ遺跡」の入場料が高すぎる!?】

【ペトラ遺跡内で横行するロバのぼったくりに要注意!】

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ペトラ遺跡に通じる裏ルートの噂

ヨルダンにある世界遺産ペトラ遺跡の入場料は、とてつもなく高額です。貧乏旅行しているバックパッカーにはかなり痛い出費。
そのため中東の安宿では「交渉して安くならないかな?」「現地人のフリできないかな?」と冗談めかして話す旅行者たちで溢れていました。

ある日、旅人の一人が言いました「ペトラ遺跡には、現地の人しか知らない裏口があるらしいよ」と。

「ペトラ遺跡の奥には小さな村があって、そこからなら無料でペトラ遺跡に出入りできるんだって」

「でも、ベドウィン族の村だから、旅行者は立ち入れないよ。」

すでにペトラ遺跡観光を終えていた旅人たちは言います。

「それ色んなヤツが挑戦したけど、結局誰も見つけられなかったルートだろ?」

「でもさ、遺跡には凄い数のベドウィン族がいたよね。みんなが毎日入場料を払ってそこで商売しているとは思えない。裏口は絶対にあると思う」

安宿は、さまざまな国からやってきたバックパッカーたちの情報交換の場です。私は会話にこそ入りませんでしたが、聞くともなしに彼らの会話を聞いていました。

―秘密の裏ルート?そんなの本当にあるの?

―マチュピチュ遺跡で聞いた幻の人魚の話と同じファンタジー?

マチュピチュ遺跡の幻の人魚の話はこちらの記事で↓

【マチュピチュの怖い話3選】

のんびりとしたロバとおじいさんに出会う

その日は、広大なペトラ遺跡のかなり奥の方に足を延ばしていました。
有名な遺跡から外れたその場所には、観光客も観光客目当ての客引きの姿もありません。右を見ても左を見てもピンク色した岩が広がっています。

ふと顔を上げると、私の少し先にロバを連れたベドウィン族がゆっくり歩いていました。
一仕事終えた後でしょうか?後ろ姿からも見て取れるほど、ロバと人はのんびりしていました。

私が追い抜く形ですれ違った時、その人と目が合いました。
ペトラで見たどのベドウィン族より年配で「優しそうなおじいさん」と言い切ってしまっても良い年の顔をしています。だから歩みが遅かったんだ。

一目見て、おじいさんがこれまで見た他のベドウィン族とは違うタイプの人であることが分かりました。遺跡で出会ったベドウィン族たちは10代~20代の血気盛んな若者が圧倒的に多かったので、年齢の点でも異質でした。
数か国の言語を使い分け言葉巧みに観光客に自分を売り込む若いベドウィン族たちには、こちらを圧倒させるようなパワーがあります。
私が日本人だと分かるやいなや「ヤバいね!この坂はヤバいからお姉さんロバに乗ろうよ!」なんて軽いノリで勧誘をしてくる人もいました。

でも、そのおじいさんは静かでした。ニコっとあいさつ代わりに私に笑いかけて、それで終わり。
観光客になど興味がないようで、視線はずっとロバにだけ注がれていました。

のんびりとしたロバとおじいさんに出会う

「僕のロバを引いてみる?」

目当ての遺跡を見終えてその道に戻ってきたとき、再びおじいさんとロバに出会いました。

―あっ。あのおじいさんだ。

相変わらずロバのペースに合せ、のんびりと遺跡の中を歩いています。ロバの背中にはカラフルな布が何枚かくくりつけられていました。
洗濯をしていたの?荷物を届けていたの?物売り?それとも、ただの散歩?
せかせかと遺跡巡りに忙しい人の姿ばかりを見ていたので、おじいさんとロバの、のんびりした空気感には惹かれるものがありました。

後をついていくように歩いていると、

「ロバを引いてみるかい?」

おじいさんが私に声をかけてきました。

「はい!」

二つ返事でYESと答えていました。
一瞬、後から高額な料金を請求されるトラブルに発展する可能性も考えました。でも、このおじいさんは大丈夫だろうとも思いました。
旅をしているときは、この第六感が何より大切です。おじいさんのゆる~い感じはどこか人を安心させるような力がありました。

ロバを引くと言っても無理矢理引っ張ったり、鞭で打つようなことはしません。ロバが歩きたいペースで歩かせ、違う方向に行きそうになったら道を正してあげるのです。
小さなロバの歩みはとても遅く、ただのんびりした時間が過ぎていきました。

「僕のロバを引いてみる?」 バラ色の岩。色合いは太陽の光で刻一刻と変化します

遺跡の中で食事のお誘い

おじいさんとロバと私の3人で岩の砂漠を歩きます。
おじいさんは他のベドウィン族と違って多言語に精通しておらず、英語もちょこっとだけという感じでした。私も彼らの言葉を話せないので、お互い身振り手振りで意思を伝え合います。
小さな小幅で歩くロバは可愛らしく、毛並みの良さから大切に扱われていることが分かります。

私たちはペトラ遺跡のさらに奥へと進みます。
もうここまで来ると遺跡らしき遺跡はなくて、ただ岩の道が続くだけ。平坦な道も徐々に消えて、頑張ってよじ登らないと行けない岩が目立つようになってきました。

平らな小さなステージを思わせる岩の上に立った時、おじいさんが言いました。

「ここでご飯を食べよう。ご馳走してあげるから」

「え!?」

何もない砂の上でどうやって?それとも私の聞き間違い?と混乱している間に、おじいさんは「ちょっと待ってて」と私とロバを残して岩の中へ消えてしまいました。

耳を澄ませても砂と風の音しか聞こえません。
ここは本当にペトラ遺跡の内部?と不安になるほどでした。

頭上には少しだけ傾いた太陽。あと3時間もすれば日没でしょうか。
あまり長居しないようにしなきゃ。それにおじいさんは良い人だけど、心を許しすぎてはいけない。砂漠の夜は怖いのだから。

★次回へ続く★
~戻ってきたおじいさんが振舞ってくれたのは、砂漠の伝統料理でした~

前回の記事は こちら

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R.香月(かつき)プロフィール画像

筆者プロフィール:R.香月(かつき)

大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP: Lucia Travel

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