ペトラ遺跡内で横行するロバのぼったくりに要注意!

世界遺産ペトラ遺跡。とても美しく壮大なこの遺跡の中では、観光客を相手に商売をするベドウィン族がたくさん待ち構えています。
今回はペトラ遺跡内で横行しているロバを使ったぼったくり話です。

気になるチケット事情は前回の記事で↓

【ヨルダンの世界遺産「ペトラ遺跡」の入場料が高すぎる!?】

Lucia Travel連載一覧はこちら

トラブル多発?ペトラ遺跡内でのロバの勧誘

「頂上まで乗せていくよ~」

「遺跡は遠いよ~」

「ロバなら楽だよ~」

ペトラ遺跡に入った途端、あちこちで勧誘が行われていました。
たくさんのベドウィン族。たくさんのロバ。たくさんの観光客。
でも、欧米人の観光客は年配の方でも元気な人が多く、その健脚でずんずんと歩みを進めていきます。
ベドウィン族も素通りされることに慣れているらしく、ワイワイ仲間同士で喋ることに夢中で合間に観光客の呼び込みを行っている感じでした。

遺跡に向かう道はまだまだ続きます。
私も最初こそ〝ロバに乗る人なんているのかな〟と思っていましたが、歩いても歩いても辿り着けない遺跡に、だんだん不安になってきます。

〝こんなに歩いているのに、まだ遺跡を一つも見れていない〟〝どれだけ歩くの?遺跡を見る前に疲れ果てる〟〝えっ、待って一番近い遺跡がこの岩山の上?〟

歩いて歩いて何分歩いたでしょうか。想像以上に険しく長い道は、まだまだ続きます。
見渡せば素通りしていた観光客たちが、あちこちで値段交渉を始めていました。優雅にロバに乗って私を追い抜いていく人もいます。

〝ペトラ遺跡でロバに乗って思い出作り?〟なんて呑気に考えていた私でさえ、ロバに乗ってもいいかもと思える辛さです。

でもこのロバ、ぼったくりが多くトラブルが多発していると聞きます。
ロバを連れたベドウィン族は至る所で待ち構えていますが、もし利用するならどの人が親切でどの人が騙すのか、見極めが肝心です。

トラブル多発?ペトラ遺跡内でのロバの勧誘

響き渡るアメリカ人の怒号

「頂上までの約束だっただろ!」

遺跡まで半分ほど山を登ったかな?というところで怒号が響きました。
振り返ると白人の老夫婦たちがベドウィン族と言い合いをしています。奥さんはロバに乗ったままの姿。
ロバの手綱を引いているベドウィン族と旦那さんが言い合いをしています。

「頂上まで行くと言っただろう。話が違う」

「でもロバは疲れたみたいだよ。もっと上まで行きたいなら追加料金をちょーだい」

「いいや、頂上まで行くという約束で10ドル支払った」

「そうだったかなぁ~。でもほら、ロバはもう歩きたくないみたいだよ」

「君が手綱を止めているんだろう!」

「そんな~。ロバが動かないんだよ。僕のせいじゃない!」

日本人だったら、まぁまぁで収めたかも知れません。英語のイントネーションから思うにアメリカ人でしょうか?
老夫婦はかなり激高していて、一歩も引きません。奥さんも〝降りたら負け〟と思っているのか、ロバから降りる素振りを一切みせません。
少しも悪びれることのないベドウィン族は、のらりくらりとしています。

一番可哀そうなのはロバ

そこは険しい岩山を登ってきた観光客が休憩をする場所でもありました。たくさんの人が彼らを見ています。でもアメリカ人もベドウィン族も全く気にしていません。

そんな彼らを眺めながら外野の私は〝こんな中腹でロバから降ろされても困るだろうな〟と思っていました。
とても真っ当なことを言ってはいるけれど、部が悪いのはアメリカの老夫婦のようにも思えました。麓ならロバがたくさん待機していたので、例え交渉が決裂しても、こっちがダメならあっちと他をあたることができます。
でも、ここは岩山の中腹。他にロバはいません。今目の前にいるロバを手放したら歩く以外の手段がなくなってしまいます。
元気な人なら頑張れますが、老夫婦の場合は…。お金を払うしか道はありません。
その事実を知っているからか、ベドウィン族は強気でした。飄々として譲らない姿勢は、余計にアメリカ人を怒らせます。

言い合いは続きます。そのうち私は、体の大きな人を背中に乗せたまま立ち尽くしているロバが可哀そうになってきました。
ヨルダンのロバは大人しく小柄です。ものも言わず、つぶらな瞳でどこか一点を見つめているロバのその姿は涙を誘うものがありました。
言い争いの結末は見ていませんが、私が山を登り降りてきた時に彼らの姿はありませんでした。あの可哀そうなロバはどうなったのかな、ロバの行く末だけが気になりました。

一番可哀そうなのはロバ

ロバ使いにどこまでも付き纏われて

気を取り直して再びペトラ遺跡を散策します。すると、何でもない道で勧誘を受けました。
「ロバに乗らない?」「乗らないよ」

ヒラヒラと手を振ってNOの意思表示をします。たったこれだけの会話。他の勧誘の時はこれで終わりでした。
なのに、10代前半の若い男の子2人はロバを引き連れてその後も私のあとを付いてきます。

「ロバに乗らない?まだまだ遠いよ」

「乗らないよ。私は歩く、必要ない」

「必要だよ。遺跡はまだまだ遠いよ。しかも高い山の上だよ」

「でも乗らない。お金ないし」

「安くするよ~。ロバ乗ったら楽だよ~」

不要だとはっきり断ったにも関わらず、付きまとってくる男の子たち。
最初こそ都度NOと答えていましたが、だんだん面倒になった私は会話するのさえ止めてしまいました。
押し黙っていれば、諦めるだろう。でも残念ながら、そうはなりません。しつこく付いてくる2人。気が付けば40分ほどの時間が経っていました。

あれだけ何度もはっきりNOと意思表示を示していたのに、彼らは何を期待していたのか…。
岩山の頂上付近で〝この人は本当にロバに乗らないんだ〟と悟った後は、何と私に悪態をついてきたのです。

「日本人め!」

「騙しやがって!」

「ここまで一緒だったのに!」

「僕たち待ってたのに!」

いやいや最初から乗らないって言っているよ。唖然として自問自答します。
私、期待させるようなことした?していないよね。なぜ私が悪者扱いなの? 理不尽に責められながらも、相手が若い10代の男の子だったからか、若い子をもて遊んで捨てるみたいな謎の罪悪感が生まれます。

悪者にされた私

思い返せばペトラ遺跡を巡っている途中、揉めている観光客とベドウィン族を何組も見かけました。
一部始終を見ていた訳ではありませんが、その様子から「観光客が最後になってお金を出し渋ってる?」と感じさせるシチュエーションがほとんどでした。

申し訳なさそうに所在なさげに立っているロバと、その手綱を握ったまま動かないベドウィン族。彼らに対して一方的に怒っている観光客というシーンばかりだったので、何となく観光客が悪いのかな?と思っていましたが…。
私のこのシーンも他の人から見たら〝ロバに乗る約束をしたのにドタキャンしているアジア人〟に見えるのだろうなと。

罪悪感と苛立ち、騙されている観光客の姿を何度も目にしていたにも関わらずやっぱり被害に遭ってしまった自分を恥じる気持ちがごちゃ混ぜになります。

気にせず前を進むことにしました。
すると長い黒髪をなびかせた女性が一人、男の子に話しかけます。どうやら彼女は帰りの足が欲しい様子。チラリと振り返ると、彼女はもうロバに乗っていました。
手ぶらで返らなくて済んだからか、男の子たちも笑顔です。

一体何だったんだろう。「ロバには注意!トラブル多発!」ガイドブックの文言を思い返しながら歩みを進めます。
私はロバも馬車も利用しないから大丈夫!そう思っていたけれど、それでも被害に遭うなんて…。

旅をしていると思いもよらない災いに遭うことがあります。被害ゼロとは言え、気を引き締めなきゃ!と思わされる出来事でした。

悪者にされた私

前回の記事はこちら

Lucia Travel連載一覧はこちら

R.香月(かつき)プロフィール画像

筆者プロフィール:R.香月(かつき)

大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel

ルチアトラベル連載一覧へ

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE