人気のキーワード
★隙間時間にコラムを読むならアプリがオススメ★
映画『インディ・ジョーンズ最後の聖戦』の撮影地として一躍有名になったペトラ遺跡。世界遺産だけではなく世界7不思議にも登録されているこの遺跡、世界で一番入場料が高いってご存じでしたか?今回はバックパッカー目線で考えるペトラ遺跡と入場料にまつわるお話です。
前回の記事はこちら
Lucia Travel連載一覧はこちら
ペトラ遺跡の入場料は「え!!」と聞き返したくなるほど高額です。1日券=約1万円、2日券=約1万2000円、3日券=1万3000円。1日券と2日券の金額に大差ないのが不思議ですが、それにしても……高い!バックパッカースタイルで貧乏旅行している者にとっては、清水の舞台から飛び降りる覚悟がいる金額です。
その時、私が泊まっていた安宿の値段は1500円。ペットボトルのお水は50円。ヨルダンの物価を考えても、「なんでこんな高額なの?」と首を傾げたくなる額です。
でもヨルダンを代表する否、中東を代表する観光地ペトラ遺跡を観ない選択肢はありません。最初こそ1日券で充分と思っていましたが、それでは不定期で開催される夜間のキャンドルライトアップが見られないと聞きました。またペトラ遺跡は広大で、私たちがすぐに思い描くあの遺跡は全体のほんの一部。あのレベルの荘厳な建物は数えきれないくらい遺されていて、丸一日で全てを見学するのは不可能に近いんです。
駆け足の旅行なら1日券で有名どころだけを見るのもアリかもしれませんが、時間が許すなら3日間チケットにして、朝も昼も夜も満喫するほうが充実した旅になる気がします。
ペトラ遺跡に向かう前、私はヨルダンの首都アンマンに10日ほど滞在していました。教科書に出てきそうな典型的な安宿には、世界各国のバックパッカーが集っています。そこで変な噂を聞きました。
「ペトラ遺跡の入場券は転売できるらしいよ」
「え?でもあれ名前も印字されるんじゃないの?」
「そうだけどさ、外国人の名前なんて現地の人からしたら、みんな異国の名前だろ?細かくチェックしないさ」
「俺なんてアメリカ人だけど、名前でイタリア人に間違われることあるし」
要約するとこうです。昼過ぎ~夕方にペトラ遺跡の入口に行き、その日の観光を終えた人のチケットを格安で譲ってもらい入場する。そうすれば高額な入場料を払わなくても遺跡を見られるのだと。
英語の会話だったので完璧に理解はできませんでしたが、そうした〝転売〟は、欧米の人々の中では軽いノリで行われたりするようで、転売を見越してあえて3日間チケットを買う人もいる様子でした。
映画『インディ・ジョーンズ』は何作まであったかな?なんて考えながら、安宿でビールを呑んでいたら「あっ、この人は日本人だ」という男性が私の前を通りました。相手も同じことを思った様子。お互いビビッときます。
辺境の地を長く旅していると、日本人に会う=無条件に嬉しくなってしまう時があります。トラブルに巻き込まれた後などは特にそう。日本人というだけで少し気が緩みます。幸いなことに相手も同じ様子でした。意気投合した私たちの会話の矛先は例の噂話に向かっていました。
「俺昨日、入場券売り場まで見に行ったんだけど、明らかに転売相手を探してる人がいたよ。」
「アンマンで聞いた時は信じられなかったけど、本当にいるんだ。誰か買ってた?」
「誰も。俺が見てた限りはみんな正規カウンターでちゃんと買ってた」
「そっか。私たちが買うなら…中国人・韓国人あたり?」
「だね。ハングルはムリだろうけど、漢字の名前なら違いなんて分からないと思う。俺たちもアラビア語とペルシャ語の違いなんて分かんないし。でもさ、パスポートのローマ字名をじっくり見比べられたら名前が一致していないことなんてすぐバレる。そのリスクを負ってまで違法チケットを買う必要あるか?」
その通りです。それにペトラ遺跡の入場料はヨルダンの貴重な収入源であり、入場料は遺跡の保全や研究費にも充てられると何かで読みました。私腹を肥やすためではなく遺跡を守るためのお金を、高額だからという理由で観光客である私たちが足蹴にして良いのか…。心の在り方が問われました。
「それにしても高いよね」
「ね、この宿の7日分の代金だよ。」
「知ってる?現地人だったら入場料200円だって。」
「えげつない差だね!」
とはいえ、その高額な料金を前にするとチケット購入はやっぱり躊躇してしまうものがありました。過去の出来事が思い起こされます。
マチュピチュ遺跡を見に行った時は、遺跡のある村までの列車代(1万円)をケチって、山道を28キロ歩きました。数匹の野犬と戦ったあの恐怖は2度と味わいたくありません。
その時の詳しい状況はこちらの記事で↓
【バックパッカー式 マチュピチュの行き方~中編~】
フィリピンでは手持ちのお金が底を尽きかけ、50CCのミニバイク1台に大人3人で乗り込みました。1万円の差額をケチって6時間空港に缶詰になったこともあります。
一つでも多くの国を訪れるために、節約に節約を重ねて続ける旅。でもペトラ遺跡の入場券は必要経費です。次の朝、私は3日間使用できる遺跡のチケットを買いました。もちろん正規のチケットです。
売り場でチケットは簡単に購入できました。転売話がバックパッカー内で噂話になるほどですが、現地の人々は特に何かを警戒している様子もありません。入場ゲートを通り抜けます。警備員はチケットをチラリと見ただけ、念入りにチェックしてもらえない状況に少し拍子抜けしてしまいます。
ペトラ遺跡は、私たちが思っている以上に希少な遺跡です。考古学的にも人類学的にもとても重要。未だ解明されていないことも多く、なんと全体の80%がまだ未発掘なんだとか。今この瞬間も研究者が発掘やフィールドワークを行っている、それがペトラ遺跡。もちろん、警備員も至る所にいました。
自然の岩をそのまま掘って造ったという遺跡を眺めます。ピンクがかった岩肌はバラのように美しく、エジプトのピラミッドにも似た壮大さを醸し出しています。世界中の人々が一度は目にしたいと願って訪れる場所ペトラ。よこしまな思いを抱く人間の小ささなど打ち砕いてしまうかのように、見上げた遺跡は凛と美しい姿をしていました。
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。マイナーな国をメインに、世界中を旅する。旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。公式HP:Lucia Travel
映画『インディ・ジョーンズ最後の聖戦』の撮影地として一躍有名になったペトラ遺跡。
世界遺産だけではなく世界7不思議にも登録されているこの遺跡、世界で一番入場料が高いってご存じでしたか?
今回はバックパッカー目線で考えるペトラ遺跡と入場料にまつわるお話です。
前回の記事はこちら
Lucia Travel連載一覧はこちら
目次
驚愕!世界一高いペトラ遺跡の入場料
ペトラ遺跡の入場料は「え!!」と聞き返したくなるほど高額です。
1日券=約1万円、2日券=約1万2000円、3日券=1万3000円。1日券と2日券の金額に大差ないのが不思議ですが、それにしても……高い!
バックパッカースタイルで貧乏旅行している者にとっては、清水の舞台から飛び降りる覚悟がいる金額です。
その時、私が泊まっていた安宿の値段は1500円。ペットボトルのお水は50円。ヨルダンの物価を考えても、「なんでこんな高額なの?」と首を傾げたくなる額です。
でもヨルダンを代表する否、中東を代表する観光地ペトラ遺跡を観ない選択肢はありません。
最初こそ1日券で充分と思っていましたが、それでは不定期で開催される夜間のキャンドルライトアップが見られないと聞きました。
またペトラ遺跡は広大で、私たちがすぐに思い描くあの遺跡は全体のほんの一部。あのレベルの荘厳な建物は数えきれないくらい遺されていて、丸一日で全てを見学するのは不可能に近いんです。
駆け足の旅行なら1日券で有名どころだけを見るのもアリかもしれませんが、時間が許すなら3日間チケットにして、朝も昼も夜も満喫するほうが充実した旅になる気がします。
それアリなの!?入場券転売の噂
ペトラ遺跡に向かう前、私はヨルダンの首都アンマンに10日ほど滞在していました。
教科書に出てきそうな典型的な安宿には、世界各国のバックパッカーが集っています。そこで変な噂を聞きました。
「ペトラ遺跡の入場券は転売できるらしいよ」
「え?でもあれ名前も印字されるんじゃないの?」
「そうだけどさ、外国人の名前なんて現地の人からしたら、みんな異国の名前だろ?細かくチェックしないさ」
「俺なんてアメリカ人だけど、名前でイタリア人に間違われることあるし」
要約するとこうです。
昼過ぎ~夕方にペトラ遺跡の入口に行き、その日の観光を終えた人のチケットを格安で譲ってもらい入場する。そうすれば高額な入場料を払わなくても遺跡を見られるのだと。
英語の会話だったので完璧に理解はできませんでしたが、そうした〝転売〟は、欧米の人々の中では軽いノリで行われたりするようで、転売を見越してあえて3日間チケットを買う人もいる様子でした。
ヨルダンの安宿で遭遇した日本人男性
映画『インディ・ジョーンズ』は何作まであったかな?なんて考えながら、安宿でビールを呑んでいたら「あっ、この人は日本人だ」という男性が私の前を通りました。
相手も同じことを思った様子。お互いビビッときます。
辺境の地を長く旅していると、日本人に会う=無条件に嬉しくなってしまう時があります。トラブルに巻き込まれた後などは特にそう。日本人というだけで少し気が緩みます。
幸いなことに相手も同じ様子でした。意気投合した私たちの会話の矛先は例の噂話に向かっていました。
「俺昨日、入場券売り場まで見に行ったんだけど、明らかに転売相手を探してる人がいたよ。」
「アンマンで聞いた時は信じられなかったけど、本当にいるんだ。誰か買ってた?」
「誰も。俺が見てた限りはみんな正規カウンターでちゃんと買ってた」
「そっか。私たちが買うなら…中国人・韓国人あたり?」
「だね。ハングルはムリだろうけど、漢字の名前なら違いなんて分からないと思う。俺たちもアラビア語とペルシャ語の違いなんて分かんないし。でもさ、パスポートのローマ字名をじっくり見比べられたら名前が一致していないことなんてすぐバレる。そのリスクを負ってまで違法チケットを買う必要あるか?」
その通りです。それにペトラ遺跡の入場料はヨルダンの貴重な収入源であり、入場料は遺跡の保全や研究費にも充てられると何かで読みました。
私腹を肥やすためではなく遺跡を守るためのお金を、高額だからという理由で観光客である私たちが足蹴にして良いのか…。心の在り方が問われました。
差額50倍!!衝撃の価格差
「それにしても高いよね」
「ね、この宿の7日分の代金だよ。」
「知ってる?現地人だったら入場料200円だって。」
「えげつない差だね!」
とはいえ、その高額な料金を前にするとチケット購入はやっぱり躊躇してしまうものがありました。過去の出来事が思い起こされます。
マチュピチュ遺跡を見に行った時は、遺跡のある村までの列車代(1万円)をケチって、山道を28キロ歩きました。数匹の野犬と戦ったあの恐怖は2度と味わいたくありません。
その時の詳しい状況はこちらの記事で↓
【バックパッカー式 マチュピチュの行き方~中編~】
フィリピンでは手持ちのお金が底を尽きかけ、50CCのミニバイク1台に大人3人で乗り込みました。1万円の差額をケチって6時間空港に缶詰になったこともあります。
一つでも多くの国を訪れるために、節約に節約を重ねて続ける旅。
でもペトラ遺跡の入場券は必要経費です。次の朝、私は3日間使用できる遺跡のチケットを買いました。もちろん正規のチケットです。
壮大なペトラ遺跡とよこしまな人間
売り場でチケットは簡単に購入できました。転売話がバックパッカー内で噂話になるほどですが、現地の人々は特に何かを警戒している様子もありません。
入場ゲートを通り抜けます。警備員はチケットをチラリと見ただけ、念入りにチェックしてもらえない状況に少し拍子抜けしてしまいます。
ペトラ遺跡は、私たちが思っている以上に希少な遺跡です。考古学的にも人類学的にもとても重要。
未だ解明されていないことも多く、なんと全体の80%がまだ未発掘なんだとか。今この瞬間も研究者が発掘やフィールドワークを行っている、それがペトラ遺跡。もちろん、警備員も至る所にいました。
自然の岩をそのまま掘って造ったという遺跡を眺めます。
ピンクがかった岩肌はバラのように美しく、エジプトのピラミッドにも似た壮大さを醸し出しています。
世界中の人々が一度は目にしたいと願って訪れる場所ペトラ。よこしまな思いを抱く人間の小ささなど打ち砕いてしまうかのように、見上げた遺跡は凛と美しい姿をしていました。
前回の記事はこちら
Lucia Travel連載一覧はこちら
筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel