掲載日:2024.06.11

半夏生でタコを食べるのはなぜ?2024年の半夏生の日程もご紹介!

みなさんは、「半夏生(はんげしょう)」という言葉を聞いたことがありますか?
日本の歴史や文化に興味がある方であれば、雑節のひとつとして知っているかもしれませんね。また、植物に詳しい方であれば、植物の半夏生なら知っている、という場合もあるでしょう。

雑節としての半夏生では、昔から「タコを食べる」という風習があります。
そこで、今回のコラムでは、どうして半夏生にタコを食べるのか、その理由についてわかりやすく解説していきます。2024年の半夏生はいつなのか、またタコを食べるメリットや、タコ以外を食べる習わしについてもご紹介したいと思います。

このコラムを読んで、ぜひ日本人の知恵と風情に触れてみませんか?

「半夏生」とは

「半夏生」には、雑節(ざっせつ:日本の暦で、二十四節気(にじゅうしせっき)や五節句以外に、季節の移り変わりの目安となるような日)としての意味と、植物としての意味がありますので、混乱しないために、まずは雑節としての半夏生についてご紹介します。

半夏生は、一年でもっとも昼の時間が長くなる夏至から数えて11日目となる7月2日ごろから、七夕(7月7日)にいたるまでの5日間のことを指します。
また、現在では半夏生は「太陽黄経(太陽が天球上を通る経路(黄道)を等角に分割した座標)が100度を通過する日」と定義されていますので、日にちは年によって多少変わることがあります。

半夏生のころは、ちょうど梅雨明けの時期と重なります。
昔、関西では半夏生の時期になると、なんと天から毒が降ると言われていたとか!

そのため、農家さんたちは、この時期までに田植えを終わらせておく必要がある、と考えていたそうです。また、半夏生に収穫した野菜には毒が含まれるとも言われていたため、半夏生のあとの数日は農作業を休む習慣があったのです。
さらに、半夏生よりもあとの時期に田植えを行うと、秋以降の収穫量が大きく減ると考えられていたため、半夏生は農業にとってとても大切な節目となる時期でした。

「半夏生」とは

「半夏生」はいつ?

2024年の半夏生は、7月1日の月曜日です。
先ほどもご紹介したとおり、半夏生の日は7月2日になることが多いものの、年によって変わり、2024年はそのイレギュラーな年にあたります。

ちなみに、半夏生が7月1日になるのは、2020年以来、4年ぶりのことです。

植物としての「半夏生」

次に、植物としての「半夏生」についてご紹介します。
植物の半夏生は、葉の半分ほどが白くなり、その様子が真っ白な白粉を塗ったように見えるため「半化粧」と呼ばれ、それが変化して「半夏生」と言われるようになりました。植物の半夏生は、水の近くに群生します。美しい白い斑が涼しげな印象を与えてくれる植物です。

雑節としての「半夏生」の名前は、植物の半夏生が花をつける時期と重なることに由来します。一方で、漢方薬に使われる半夏(カラスビシャク)という薬草が生えるころだからという説もあります。

「半夏生」とは

「半夏生」でタコを食べるのはなぜ?

雑節の半夏生、そして植物の半夏生があることがわかりましたね。
主に関西地域で、半夏生のころにタコを食べるという風習が古くから残っています。先ほどもご紹介したとおり、半夏生を特に意識しているのは農家さんたち。農業とタコは一見すると関係がないように思えますよね。

ここからは、半夏生のころにタコを食べる理由についてご紹介します!

その風習の由来

半夏生のころは、ちょうど農家さんたちが田植えを終える時期です。
そのころにタコを食べるのは、8本足のタコの吸盤が吸いつく様子にあやかって、「植えた苗や種がしっかりと根を張り、豊作になりますように」という願いを込めて、神様にタコをお供えしたから。この風習が今でも残り続けています。

また、ほかにも、タコがちょうど半夏生のころに旬を迎えること、栄養価が高いタコを食べて、農作業の疲れをいやしたり、これからやってくる暑い夏に向けてエネルギーをたくわえることなども、半夏生のころにタコを食べる理由といわれています。

タコを食べるメリット

お寿司などでも人気のタコですが、タコを食べることのメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?

タコの栄養素でもっとも代表的なものは「タウリン」です。
タウリンは、甲殻類や魚類に多く含まれる栄養素で、体内でも作られるアミノ酸の一種。タウリンは疲労回復の効果があるといわれています。また、エネルギーのもととなる「亜鉛」も含まれています。

このように、タコは栄養価が高いうえに、低カロリー・高たんぱく質という、身体にとても良い食材。疲れをいやし、夏本番を迎える前に元気をチャージすることができます。

タコを使ったおすすめメニューとしては、たとえば「タコのからあげ」があります。衣のサクサク感と、タコの歯ごたえが楽しめます。お酒のおつまみにもぴったりです。
また、暑くて「何かさっぱりしたものを食べたい!」と思ったときには「タコときゅうりの酢の物」はいかがでしょう?きゅうりを薄切りにすることで、タコとの食感の違いも楽しめるはず。

タコを食べる以外、ほかの習わし

関西地域では、半夏生の時期にタコを食べることが一般的です。しかし、各地方によって別のものを食べる風習があるんです!

「半夏生」とは

【うどん】

たとえば、「うどん県」としても有名な香川県には、半夏生でもうどんを食べる地域があります。
これは、古くからこの時期に小麦が収穫でき、その小麦を使ってうどんを打ってみんなで食べていたから。その風習が今でも大切に受け継がれています。

【さば】

また、福井県ではさばを食べる習わしがあります。江戸時代に大野藩(現在の福井県大野市)の藩主がこの時期に農民に焼きさばを振る舞ったというエピソードが残っており、これがはじまりだといわれています。
さばには、疲労回復の効果があるため、特に夏の暑さが厳しい盆地では、貴重なエネルギー源になるのです。

【さなぶりもち】

さらに、奈良県や大阪府の一部地域では、さなぶりもちと呼ばれるお餅を食べる風習があります。
さなぶりもちは、小麦にきな粉をまぶした小麦餅のひとつで、柔らかい口あたりと素朴な味わいが特徴です。また、小麦が入っているため、歯切れがよく、消化しやすいため胃もたれしにくいという嬉しいポイントも。

「さなぶりもち」というユニークな名前ですが、これは田の神様に感謝して、豊作を祈る行事である「早苗饗(さなぶり)」に食べられていたことに由来します。

ちなみに、半夏生の時期に食べることから、「半夏生餅」という名前で呼ばれることもあります。
農家さんが手作りする場合もありますし、現在では和菓子屋さんなどで手軽に手に入れることもできます。夏場であっても4~5日は日持ちするため、お土産として買うのも良いかもしれませんね。

【長芋汁/とろろ汁】

また、長野県の一部では、半夏生の時期に長芋汁やとろろ汁などを食べる習わしがあります。
長く伸びる独特の食感があり、長生きを願うものとして人々から愛されてきました。長芋や山芋は栄養もたっぷりで、疲労回復や夏バテ防止にもおすすめの食材です。

まとめ

いかがでしたか?
このコラムでは、どうして半夏生にタコを食べるのか、その理由についてわかりやすく解説していきました。半夏生とタコという意外なつながりには、古くから受け継がれている農家さんたちの願いが込められていましたね。

また、あわせて2024年の半夏生はいつなのか、またタコを食べるメリットや、タコ以外を食べる習わしがある地域などについてもご紹介しました。

半夏生のころにタコを食べるのは、主に関西地方の風習ですので、東日本や北日本にお住まいの方にとっては、新しい発見だったかもしれませんね。タコは身体にうれしい栄養もたっぷり含まれていますので、夏本番を迎える前の半夏生のころに、ぜひ食べてみてはいかがでしょうか?

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