絶対に女性に触れてはいけない?タイの僧侶が守る厳しいルール

タイにラオス、カンボジア。東南アジアを旅しているとオレンジ色の袈裟を着たお坊さんの姿をよく見かけます。
タイの僧侶にとって女性は魔物。厳しく律した生活を送っている人は女性との会話さえ避けるといいます。今回は親切なお坊さんから直接聞いた「タイ僧侶が女性に絶対に触らない理由」です。

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信心深いタイの人々の習慣

仏教が生活に根付いているタイやラオス。町を散策していると、オレンジ色の派手な袈裟をまとった僧侶の姿を何度も見かけます。
また早朝には、町の人々が托鉢するお坊さんに喜捨する姿、ひざまずいて彼らが現れるのを待つ姿、お寺へ出向きお供え物を送る姿を見ることができます。

日本ではちょっと珍しいこの光景も、タイやラオスでは普通のこと。得を積む=”僧侶に托鉢を施すことやお寺にお供えの品を送ること”という考え方が根付いていて、お坊さんとの関わり方が密な暮らしをしています。

今では観光化も!タイの僧侶の托鉢

タイ仏教の戒律では、僧侶はお金に触れることが禁じられています。日本のお坊さんと違って所有物も持ってはいけません。殺生をしてはいけないので畑仕事もNG。そのため自給自足も難しい状態です。
では、どうやって生活していくのかというと………生きていくために必要なものは全て人々からの施しで賄っているのです。

また食事は基本、托鉢で施されたもののみを口にします。そのため僧侶は基本的に毎朝、托鉢へと出かけます。
町の人々も得を積むために托鉢僧を待っていて、今ではこれがタイの観光の一部に。観光客向けに托鉢体験ツアーが生まれるほどになっています。

タイのお坊さん02
カラフルなお寺。カラフルで繊細な装飾は、日本のお寺とは大違い

乗合タクシーで僧侶に出会う

タイには小型トラックの荷台を改造した乗合バス(以下ソンテウ)があります。値段も安く、目的地で自由に乗り降りできるため、人々の日常的な交通手段として愛されています。
でも行先を告げる案内板はタイ語、運転手もタイ語しか話せなかったりするため、旅行客にはちょっとハ ードルが高い乗り物。旅行客の場合、運賃は要交渉だったりもします。

ある日このソンテウに乗る機会がありました。そこは多分、ソンテウの始発場所。舗装さえされていない土の道路に一台のソンテウが止まっていたのです。「チャンス!」
行先を運転手に告げるとOK!(行先が異なると乗せてもらえません)もでました。

ソンテウには先客がいて、僧侶が3人座っていました。座席は詰めて座るべきかな?と僧侶の近くに座ろうとした時です。運転手に「そっちはだめ!こっちへ」と反対側の座席に座るよう促されました。

タイのお坊さん03

観光客はぼったくられます?

乗合バスに時刻表はありません。座席が満席になったら、運転手が出発したくなったら、なんとなく時がきたら出発です。

念願かなってソンテウに乗れたは良いものの、待てど暮らせど出発の気配がありません。手持無沙汰になってガイドブックを読みだした私にある言葉が飛び込んできました。
「乗合バス、観光客はぼったくられます。事前に確認を!」

しまった。やってしまった。値段はいくらなんだろう。後で揉めたらイヤだな。今から聞きに行く?グルグル考えていると、僧侶が話しかけてきました。
「どこへ行くの?」
少し驚きました。このお坊さんは英語が話せるんだ。そしてさっき運転手に僧侶とは離れて座るように注意されたけれど、お話して良いんだ。

彼は穏やかな顔で私がどこへ行くのか、何がしたいのか尋ねます。そして、その話の流れで正しい運賃を教えてもらうこともできました。
「この距離なら10バーツでいいからね。」親切なお坊さんのその視線の先にはバスの運転手さんがいました。
良かったこれでぼったくりに合うことはない。

タイのお坊さん04
こちらはトゥクトゥク。トゥクトゥクもタイの交通手段の一つです

僧侶にとって俗世は汚い?新聞紙ごしの貸し借り

話をしている間、お坊さんが私の持っているガイドブックを気にしていることに気付きました。「何が書いてあるの?」「どんな写真がのっているの?」と興味津々です。

「この本、見てみますか?」私の提案に、嬉しそうにうなずきます。
ところが、本を渡そうとした時にSTOPがかかりました。お坊さんは一緒にいたお付きのお坊さんに何やら指図。そのお坊さんはどこからか新聞紙を取り出すと、その新聞紙の上にガイドブックを置くようジェスチャーで伝えてきます。

無知だった私は勝手に「俗世のモノは触らないのかな?」と思いながらその光景を眺めていました。
お坊さんたちはパラパラとページをめくり、時にじっくりガイドブックを読みこんでは私の分からないタイ語で会話しています。一通り読み終わると本は返ってきました。やっぱり新聞紙を介して。

タイのお坊さん05

タイの僧侶が絶対に女性に触れない理由は?

さすがに気になって尋ねます。「どうして?新聞紙ごしなのですか?」
するとお坊さんはニコっと笑って「私たち僧侶は、絶対に女性に触れてはいけないんだよ」と答えてくれました。

「…女性は汚いですか?」
私は心の中で、赤不浄という言葉を思い出していました。赤不浄とは古く日本にある考え方で、出産や月経などで血を流している期間の女性は不浄とされます。

21世紀を生きる女の私から見たら、本当に変な風習・考え方だと思うのですが、残念なことに女性を不浄とする考え方は東南アジア全般に根付いていて、地域によっては隔離小屋に押し込められたりします。
女性が血を流さなければ子孫は繁栄しないのに、汚いとするこの風習。タイにもこの考え方が根付いているのでしょうか?

女性の肌は魔物!?

そんな私の考えを知ってか知らずかお坊さんは話を続けます。
「そうではなくて、女性の肌は魔物だからね」
「え?」想定していなかった答えに息をのみます。

「私たちは煩悩を消すために、自分を律して生活しています。ルールもたくさんあって、毎日さまざまな制限を自分自身に与えています。全ては煩悩を消すため。でもね、女性に触れると全てが消し飛んでしまうんです。これまでの40年の努力が一瞬で吹き飛んでしまうんですよ。」
「そういうものですか?」
「そうですよ。だから絶対に女性に触れてはいけない。可能性も排除しなくてはいけない。女性の肌の魔力は、凄まじいモノだからね!私は負けてしまうんだ。」

タイのお坊さん06
ラオスのお寺には、こんな小さな僧侶も。見習いかな?

タイに行く女性旅行者は絶対に注意を!

茶目っ気たっぷりに女性に触れない理由を語る僧侶。不謹慎かもしれませんが、何だかカワイイなと思ってしまいました。
そして同時に寺に籠って生きるのではなく、下界に出て人々と交流しながら生きているタイのお坊さんたちにとって、それはとても困難なことなのだろうなとも思いました。

女性から托鉢を受けることもあるでしょう。道ですれ違った時に、バスを降りる時に、ふとした瞬間に誤って女性に触れてしまう、そんな危険性はたくさんあるはずです。
「煩悩を消すための何十年の努力が、一瞬で消え去るんだ」軽く話してくれましたが、結構重い言葉です。

もしタイやラオスに行く機会があったなら、女性の方は僧侶に触れたり不用意に近付いたりしないでくださいね。私が出会った僧侶は気さくな方でしたが、会話さえ制限する僧侶もいると聞きます。
バスの席が空いたから僧侶の隣りに座る…絶対NGです。スマホに夢中になって僧侶にぶつかる…もっとNGです。私はきちんと下調べをせず、乗合バスで僧侶の近くに座ろうとして運転手さんにたしなめられました。
これから旅する皆さんには、土地の人々の信仰に敬意を示し、日々自分を律して精進する僧侶たちとはよい距離感をもって旅を楽しんでもらいたいと思っています。

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R.香月(かつき)プロフィール画像

筆者プロフィール:R.香月(かつき)

大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel

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