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インドネシア・ジャワ島にある「ボロブドゥール寺院」に行ってきました。 つい先日、日本の天皇陛下もサンダル履きで視察されたというこの遺跡。実際に間近で見ると、細やかなレリーフや、幾層にも積み上げられた石の構造、その壮大さに息を吞んでしまいます。 個人的にはアンコールワットよりおススメ!
今回は、世界遺産に登録されるだけでなく世界七不思議の一つにカウントされるものの、イマイチ日本では有名にならない「ボロブドゥール寺院」の魅力をお伝えします。
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ボロブドゥール寺院は、世界最大級の仏教寺院です! 9世紀に建築されたものの、謎が多く世界七不思議の一つに度々カウントされています(世界七不思議は常時変化します)。
ピラミッドを幾つも重ねたような独特の構造や、回廊に丁寧に掘られたレリーフなどが特長。佇まいはどことなくアンコールワットに似ています。でも実は、ボロブドゥール寺院の方がアンコールワットより300年も早く完成しているんですよ!
回廊には釈迦の等身大の仏像の彫刻が全部で504体あり、ストゥーパ(仏塔)は全部で72基。 ちなみにこのボロブドゥール寺院の中は空洞。この空洞こそが世界七不思議に選出された理由だとも言われています。
このコラムで以前紹介した、ペルーのマチュピチュ遺跡や、インドネシア・バリ島の魔女の古代遺跡ゴアガジャ遺跡と同じように、この遺跡も長い間その存在を忘れられていました。その年月何と1000年! そして1000年もの間、火山灰に埋もれていた遺跡を発見したのもやはり外国人でした。
オランダ人とイギリス人の手によって、その一部が発掘されたのは1814年のこと。 しかしその後もなかなか発掘調査は進まず、発掘されても倒壊の危機から再度埋められてしまったこともあったようです。 そんな紆余曲折を経て20世紀にやっと大規模な修繕が行われ、現在の形になりました。
ジャングルの鬱蒼とした木々で前方が見えない中、歩みを進めていくと突然目の前に現れるアンコールワット遺跡。 写真で見たあのままの姿形が眼下に飛び込んでくる様は、思わず声を出してしまうような感動を私たちに与えてくれます。
ひるがえって、ボロブドゥール寺院は拓けた場所にあります。 公園と間違えてもおかしくないような何もない敷地を歩いていくと、向こうの方に黒っぽい小山が見えます。「遺跡はあの山の上?」なんて思って歩みを進めていると、山だと思っていたそれ自体がボロブドゥール寺院だったことに気が付きました。そのスケールは圧巻!
さらに近付くと、巨大な塔は小さな塔の集合体によってできており、さらにその全てに遠目で見ても分かるほど巧妙な細工が仕掛けられていました。 さらにその奥には、半球体の遺跡。「これ登っていいの…?」と思わずつぶやいてしまうほどの造形美で、建築に費やされた年月や情熱を考えると眩暈がします。 「仏のための寺院に、信仰心のない私が観光気分で登ってよいのか」と思わせるほど、それはそれは壮大でした。
それもそのはず、この巨大寺院が表現しているのは仏教的宇宙観なのです。 200万個もの石をピラミッドのように重ねて、人のいる世界、人と神が交流する世界、神様のいる世界を表しているそうです。
ギザのピラミッド、ドイツのノイシュバンシュタイン城、モロッコのサハラ砂漠、これまで色々な観光スポットを見てきましたが、ボロブドゥール寺院に来て一番驚いたのは、沢山の地元の人が観光に来ている事でした。
遠足なのか校外学習なのか子どもの集団には何度も遭遇しましたし、家族連れらしきグループは至る所にいました。 有名な観光スポットはどこも外国人の姿が多いと勝手に思っていたので、外国の観光客よりも地元の人々が多いのにはビックリしました。
私たち日本人がお城や寺を散策する感覚なのでしょうか。外国人よりも自国民に愛される遺跡ってステキですよね?
このボロブドゥール寺院は、仏教の建築物です。至るところに仏像が置いてありますし、釈迦が生まれる瞬間から説法を説くまでの過程を事細かに表現したレリーフもあります。
でもインドネシア・ジャワ島の人々は、そのほとんどがイスラム教徒。テレビや新聞では過激な宗教争いばかりが取り上げられるのでビックリする人もいるかもしれませんが、そこにはイスラム教徒が仏教寺院を観光している光景が広がっていました。
映画『インディ・ジョーンズ』の舞台として知られるペトラ遺跡があるヨルダン。この国もイスラム教徒が大多数を占める国ですが、マダバという古い町にはたくさんの教会が建っており、人々は2つの宗教の間を行ったり来たりして生きていました。この町では、ヒジャブ(スカーフ)をかぶった女性と一緒にミサに参加した記憶もあります。
私の元夫もイスラム教徒でしたが、私が他宗教の行事へ参加することを嫌がりませんでしたし、テレビで報道されるような過激な思想も持っていませんでした。 対立の象徴として示されることが多い宗教ですが、スポットライトの当たらないところでは、今も昔も静かな交流が続いている。そんな宗教の在り方を教えてもらった光景でした。
ボロブドゥール寺院は、世界最大級のストゥーパ(仏塔)を誇る寺院です。このストゥーパは素晴らしいの一言!
なぜなら、石を積み上げて造っているのにドーム型の形をしているからです。例えるならクリスマスで聖歌隊が使うベルを立てた状態や、教会の鐘をそのまま地面に置いた状態。
石を掘るのではなく格子状に積み上げることで丸みのあるその形を再現しているんです。 しかも中に安置された仏像が拝めるよう格子の半分は空洞。さらに中には等身大の仏像が安置されており、その全てが違うポーズや表情をしています
丸みを帯びた形はとてもキュートで、それがいくつも並んでいる光景は気持ちをほんわかさせてくれました。これまで見たどんな遺跡とも違う構造。 こんなに素晴らしいのに日本ではあまり認知されていないなんて、もったいない!
寺院を巡っていると、あの人もこの人もストゥーパの中に向かって腕を伸ばしていることに気が付きました。どうやら、中に安置されている仏像に触ろうとしているようです。 心に響く仏像を見つけたので、私も手を伸ばします。届きそうで届かない。角度が違えば…。もう少し腕が伸ばせたら…。自分自身の手足の短さを嘆きながら、頑張る。でも手は届きません。
諦めきれず周囲の様子を観察します。あっちでも、こっちでも、手を伸ばしているのは男性ばかり。みんな必死ですが、触れている様子はありません。
でも、気付いてしまいました。どうやら一基だけ、仏像に触れるストゥーパがあるようです。 そのストゥーパの前に立った人は、遠くへ手をやろうと賢明に手を伸ばす仕草をし、そして動きを止めるとニヤッと少し満足そうな顔をして去っていきます。
これは!!!! この一基だけ角度が違うのでしょうか?意外と苦労することなく仏像の指先に触れることができました。ちょっと感動。
後に調べたところ、ストゥーパの中の仏像に触ると願いが叶うとされているそうです。懸命に腕を伸ばしていた地元のおじさんたちは、一体何を願っていたのでしょうか?
ストゥーパの数は72基。私が探した限りでは、1基だけ中にある仏像に触ることができました。 ボロブドゥール寺院に行った際には、あなたもぜひ探してみて下さい。仏様に叶えてもらいたい、お願いごとも忘れずに!
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。 マイナーな国をメインに、世界中を旅する。 旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。 出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。 公式HP:Lucia Travel
インドネシア・ジャワ島にある「ボロブドゥール寺院」に行ってきました。
つい先日、日本の天皇陛下もサンダル履きで視察されたというこの遺跡。実際に間近で見ると、細やかなレリーフや、幾層にも積み上げられた石の構造、その壮大さに息を吞んでしまいます。
個人的にはアンコールワットよりおススメ!
今回は、世界遺産に登録されるだけでなく世界七不思議の一つにカウントされるものの、イマイチ日本では有名にならない「ボロブドゥール寺院」の魅力をお伝えします。
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目次
ボロブドゥール寺院とは
ボロブドゥール寺院は、世界最大級の仏教寺院です!
9世紀に建築されたものの、謎が多く世界七不思議の一つに度々カウントされています(世界七不思議は常時変化します)。
ピラミッドを幾つも重ねたような独特の構造や、回廊に丁寧に掘られたレリーフなどが特長。佇まいはどことなくアンコールワットに似ています。でも実は、ボロブドゥール寺院の方がアンコールワットより300年も早く完成しているんですよ!
回廊には釈迦の等身大の仏像の彫刻が全部で504体あり、ストゥーパ(仏塔)は全部で72基。
ちなみにこのボロブドゥール寺院の中は空洞。この空洞こそが世界七不思議に選出された理由だとも言われています。
全体で見るとピラミッドを並べたような不思議な形をしていて、世界的にも珍しい建築様相をしています。
1000年間も存在を忘れられた幻の遺跡
このコラムで以前紹介した、ペルーのマチュピチュ遺跡や、インドネシア・バリ島の魔女の古代遺跡ゴアガジャ遺跡と同じように、この遺跡も長い間その存在を忘れられていました。その年月何と1000年!
そして1000年もの間、火山灰に埋もれていた遺跡を発見したのもやはり外国人でした。
オランダ人とイギリス人の手によって、その一部が発掘されたのは1814年のこと。
しかしその後もなかなか発掘調査は進まず、発掘されても倒壊の危機から再度埋められてしまったこともあったようです。
そんな紆余曲折を経て20世紀にやっと大規模な修繕が行われ、現在の形になりました。
スケールに感動!造形に驚嘆!
ジャングルの鬱蒼とした木々で前方が見えない中、歩みを進めていくと突然目の前に現れるアンコールワット遺跡。
写真で見たあのままの姿形が眼下に飛び込んでくる様は、思わず声を出してしまうような感動を私たちに与えてくれます。
ひるがえって、ボロブドゥール寺院は拓けた場所にあります。
公園と間違えてもおかしくないような何もない敷地を歩いていくと、向こうの方に黒っぽい小山が見えます。「遺跡はあの山の上?」なんて思って歩みを進めていると、山だと思っていたそれ自体がボロブドゥール寺院だったことに気が付きました。そのスケールは圧巻!
さらに近付くと、巨大な塔は小さな塔の集合体によってできており、さらにその全てに遠目で見ても分かるほど巧妙な細工が仕掛けられていました。
さらにその奥には、半球体の遺跡。「これ登っていいの…?」と思わずつぶやいてしまうほどの造形美で、建築に費やされた年月や情熱を考えると眩暈がします。
「仏のための寺院に、信仰心のない私が観光気分で登ってよいのか」と思わせるほど、それはそれは壮大でした。
それもそのはず、この巨大寺院が表現しているのは仏教的宇宙観なのです。
200万個もの石をピラミッドのように重ねて、人のいる世界、人と神が交流する世界、神様のいる世界を表しているそうです。
遠足?家族旅行?地元の人もいっぱい
ギザのピラミッド、ドイツのノイシュバンシュタイン城、モロッコのサハラ砂漠、これまで色々な観光スポットを見てきましたが、ボロブドゥール寺院に来て一番驚いたのは、沢山の地元の人が観光に来ている事でした。
遠足なのか校外学習なのか子どもの集団には何度も遭遇しましたし、家族連れらしきグループは至る所にいました。
有名な観光スポットはどこも外国人の姿が多いと勝手に思っていたので、外国の観光客よりも地元の人々が多いのにはビックリしました。
私たち日本人がお城や寺を散策する感覚なのでしょうか。外国人よりも自国民に愛される遺跡ってステキですよね?
イスラム教徒が仏教寺院を観光?
このボロブドゥール寺院は、仏教の建築物です。至るところに仏像が置いてありますし、釈迦が生まれる瞬間から説法を説くまでの過程を事細かに表現したレリーフもあります。
でもインドネシア・ジャワ島の人々は、そのほとんどがイスラム教徒。テレビや新聞では過激な宗教争いばかりが取り上げられるのでビックリする人もいるかもしれませんが、そこにはイスラム教徒が仏教寺院を観光している光景が広がっていました。
映画『インディ・ジョーンズ』の舞台として知られるペトラ遺跡があるヨルダン。この国もイスラム教徒が大多数を占める国ですが、マダバという古い町にはたくさんの教会が建っており、人々は2つの宗教の間を行ったり来たりして生きていました。この町では、ヒジャブ(スカーフ)をかぶった女性と一緒にミサに参加した記憶もあります。
私の元夫もイスラム教徒でしたが、私が他宗教の行事へ参加することを嫌がりませんでしたし、テレビで報道されるような過激な思想も持っていませんでした。
対立の象徴として示されることが多い宗教ですが、スポットライトの当たらないところでは、今も昔も静かな交流が続いている。そんな宗教の在り方を教えてもらった光景でした。
急な階段を登るのには適しませんが、遺跡を守るためサンダルはマストです。
石を積み上げてドーム型に?不思議なストゥーパ
ボロブドゥール寺院は、世界最大級のストゥーパ(仏塔)を誇る寺院です。このストゥーパは素晴らしいの一言!
なぜなら、石を積み上げて造っているのにドーム型の形をしているからです。例えるならクリスマスで聖歌隊が使うベルを立てた状態や、教会の鐘をそのまま地面に置いた状態。
石を掘るのではなく格子状に積み上げることで丸みのあるその形を再現しているんです。
しかも中に安置された仏像が拝めるよう格子の半分は空洞。さらに中には等身大の仏像が安置されており、その全てが違うポーズや表情をしています
丸みを帯びた形はとてもキュートで、それがいくつも並んでいる光景は気持ちをほんわかさせてくれました。これまで見たどんな遺跡とも違う構造。
こんなに素晴らしいのに日本ではあまり認知されていないなんて、もったいない!
幸せになれるかも!?触れそうで触れない仏像
寺院を巡っていると、あの人もこの人もストゥーパの中に向かって腕を伸ばしていることに気が付きました。どうやら、中に安置されている仏像に触ろうとしているようです。
心に響く仏像を見つけたので、私も手を伸ばします。届きそうで届かない。角度が違えば…。もう少し腕が伸ばせたら…。自分自身の手足の短さを嘆きながら、頑張る。でも手は届きません。
諦めきれず周囲の様子を観察します。あっちでも、こっちでも、手を伸ばしているのは男性ばかり。みんな必死ですが、触れている様子はありません。
でも、気付いてしまいました。どうやら一基だけ、仏像に触れるストゥーパがあるようです。
そのストゥーパの前に立った人は、遠くへ手をやろうと賢明に手を伸ばす仕草をし、そして動きを止めるとニヤッと少し満足そうな顔をして去っていきます。
これは!!!!
この一基だけ角度が違うのでしょうか?意外と苦労することなく仏像の指先に触れることができました。ちょっと感動。
後に調べたところ、ストゥーパの中の仏像に触ると願いが叶うとされているそうです。懸命に腕を伸ばしていた地元のおじさんたちは、一体何を願っていたのでしょうか?
ストゥーパの数は72基。私が探した限りでは、1基だけ中にある仏像に触ることができました。
ボロブドゥール寺院に行った際には、あなたもぜひ探してみて下さい。仏様に叶えてもらいたい、お願いごとも忘れずに!
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筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel