掲載日:2023.07.10
更新日:2024.07.30

お盆に飾る精霊馬の意味とは?正しい作り方や飾り方・処分方法も紹介

日本の夏の風物詩の1つにお盆があります。お盆は大切な故人をお迎えし、追善供養する期間とされています。このお盆の時期によく見かける、きゅうりとなすの置物について知っていますか?

この記事では、お盆に飾られているきゅうりとなすの置物について、その意味や正しい飾り方などを詳しく解説いたします。

お盆にきゅうりとなすで作る精霊馬とは?

精霊馬01

きゅうりやなすに脚をつけた飾り物のことを「精霊馬(しょうりょううま)」と言います。
精霊馬は、お盆の時にお供え物を置く台として用意される精霊棚(しょうりょうだな)に、他のお供え物と一緒に飾ります。

仏教でいう「精霊」とはご先祖様のこと。
「精霊馬」はお盆にご先祖様が自宅に帰ってくる時に乗り物として使われるのでこのように呼ばれています。

きゅうりとなすの両方をまとめて「精霊馬」と呼ぶことが多いのですが、実はきゅうりで作ったものを「精霊馬(しょうりょううま)」、なすで作ったものを「精霊牛(しょうりょううし)」と言います。

きゅうり=馬、なす=牛の理由は?

なぜ、きゅうりで作ったものを「精霊馬」、なすで作ったものを「精霊牛」と呼ぶのでしょうか?

お盆は、ご先祖様の魂が現世に戻り、そして再びあの世にお帰りになるという期間です。

ご先祖様に少しでも早く帰って来て欲しいという願いから脚の速い「馬」を、あの世に帰られる時はゆっくりと戻って欲しいという願いから「牛」が供えられました。また 「牛」には、たくさんの供え物を乗せられるという意味も含まれています。
※地域によっては逆の場合もございます。

では「きゅうり」や「なす」が使われた理由は何でしょうか?

明確な答えはわかりませんが、どちらも夏野菜で日本中どこでも収穫できたためどの地域でも精霊馬を作りやすかったという説があげられます。
「初物はご先祖様にお供えをしてから家族で食べる」という日本の風習があり、ご先祖様にお供えしていた初物のきゅうりやなすで精霊馬を作ったのではないでしょうか。

精霊馬02

実は精霊馬の脚は割り箸じゃない?

最近は、精霊馬・精霊牛の脚を割り箸や爪楊枝で作っているものを多く見かけます。

しかし正しくは、割り箸や爪楊枝ではなく「おがら」で作るんです!
「おがら」とは、皮をはいだ麻の茎の部分のことで、お盆シーズンになると花屋やスーパー、ホームセンターなどで販売されています。

精霊馬・精霊牛の脚に使われる以外では、精霊棚に立てかけるはしごや、お供え物に添えるお箸、迎え火や送り火にも使われます。

精霊馬03

「迎え火」はご先祖様が自宅に戻ってくるときの目印として、「送り火」はあの世にお戻りになる時のお見送りとして火を起こします。

麻は古来より清浄なものとして扱われ、その麻を燃やした時に出る煙にも空間を浄化する効果があると考えられていました。それらをお盆で使用することで、ご先祖様の霊を迎え入れ、送り出すことができるといわれています。

岩座各店舗と通販サイトにて栃木県産の「国産おがら」を取り扱っております。
お盆の準備にぜひご活用ください。
(※成田空港・浅草の店舗では取り扱っておりません。)

精霊馬04

精霊馬の作り方

精霊馬の簡単な作り方は次の通りです。

準備するもの

  • きゅうり1本
  • なす1本
  • おがら(ない場合は割り箸や爪楊枝)

きゅうりやなすを選ぶ時は、生き物らしく見えるよう大きめで少し曲がっているものを選びます。 特になすは細長いものではなく、実がふっくらと太いものを選ぶと牛っぽく見えますよ。

作り方の手順

おがらでの作り方を紹介しますが、おがらがない場合は、割り箸や爪楊枝で代用してくださいね。

【手順1】

まずは精霊馬(=きゅうり)と精霊牛(=なす)の脚を4本ずつ合計8本用意します。
それぞれの長さを揃えるためおがらに印をつけてからカットします。

この時、前脚用のおがらは後ろ脚用のオガラよりも少しだけ長めにカットしましょう。
そうすることで頭が持ち上がり、生き物らしくなりますよ。

おがらは硬いので、カッターナイフやハサミで少しずつカットしてください。おがらをまわしながら傷をつけるようにカットすると切りやすいです。
慌てず丁寧に進めるのが、きれいに作るコツですよ。

【手順2】

カットしたおがらを、きゅうり・なすそれぞれの脚の位置に刺します。
前脚になるおがら2本は長めにカットしたものを使用してください。
少し後ろ(お尻側)寄りにおがらを刺すとバランスよく見えます。

精霊馬05

精霊馬を飾る期間

精霊馬を飾る期間は、ご先祖様が家に戻ってくる盆入り(迎え火)から、盆明け(送り火)までの間で、一般的に8月13日〜16日(※地域によっては15日)です。
一部の地域では、7月13日~16日にお盆が行われる場合もございます。

あまり早く作りすぎると野菜がしおれてしまいますので、できるだけ新鮮な状態で飾れるよう、盆入りの前日に精霊馬を作るのがオススメです。

精霊馬に関する注意点と処分方法

お盆はご先祖様が帰ってくる大切な期間ですので、できるだけ正しくマナーを守りたいですね。
精霊馬についての注意点と、現代に合わせた処分方法について解説します。

注意点①精霊馬を飾らない宗派もある

仏教の宗派のひとつ「浄土真宗」は、基本的にどの地域でも精霊馬は飾りません。
浄土真宗にはお盆がなく、故人は亡くなった時に成仏し極楽浄土で仏様になると考えられているため、お盆にご先祖様をお迎えする風習がないのです。
そのため、精霊馬だけでなく、お盆の飾りやお供え物もありません。

ご自身の宗派や信仰を確認してみてくださいね。

注意点②飾る向き

精霊馬・精霊牛は精霊棚に置きますが、どこに置いてもよいわけではありません。
それぞれ精霊棚に向かって右側に置くのが一般的です。
もし精霊棚に飾るのが難しい場合は、机や台などで代用いただいても問題ございません。

そして、精霊馬・精霊牛は置く向きも大切です。家に帰ってくる時に乗るものは棚の内側に向けて、あの世に帰る時に乗るものは外側に向けて置きます。

精霊馬06

多くの地域では精霊馬は棚の内側に、精霊牛は棚の外側に向けて飾っていますが、行き帰りの乗り物が逆になる地域も。

自宅に帰ってくる時は牛に乗ってゆっくりと景色を楽しみ、あの世に帰る時は疲れているのでできるだけ早く帰れるように馬にのる。
そういった地域では、精霊馬・精霊牛も逆向きに飾るそうです。

注意点③食べてはいけない

多くのお供え物はご先祖様と食事を分け合うという意味で、供養の一貫として家族で食べます。
しかし、精霊馬はご先祖様の乗り物として作ったものなので、基本的には食べずに処分しましょう。

衛生面からみても、食べないほうが安全です。気温が高い夏場に、お盆の期間中ずっと精霊棚に供えているため、傷んでいる可能性もあるでしょう。
お盆が終わったら速やかに処分してくださいね。

処分方法

昔はお盆が明けるとすぐに川や海に流していましたが、近年はそういった行為を禁止している地域も増えてきました。
現代にあった処分方法として、以下の方法があげられます。

【土に埋める】

家の庭や敷地内に埋める場所があれば、土に埋めます。土に還すのが自然ととらえる人も多いようです。

【お盆の飾りと一緒に燃やす】

送り火の時に、他の飾りと一緒に燃やす人もいます。

【お寺に処分を依頼する】

菩提寺では、生前に故人が大切にしていた品物を供養で燃やす「お焚き上げ」をしてもらえる場合があり、そのお寺に依頼する人もいます。

【白い紙に包み塩で清めてからゴミとして処分する】

精霊馬・精霊牛を白い紙に包んで塩で清め、その後一般ごみと一緒に処分します。

ご自身の住まれている地域のマナーを守って、正しく処分してくださいね。

安らかな気持ちでご先祖様をお迎えしましょう

精霊馬・精霊牛について解説しました。
ぜひこの機会に、昔ながらの方法でおがらを使った精霊馬を作ってみませんか?

精霊馬の意味や供え方、お盆が終わった後の処分方法について知ることで、不安なくご先祖様をお迎えする心の準備ができますね。
ご自身の宗派や信仰を確認して、今年のお盆を安らかな気持ちでお迎えください。

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