お盆の迎え火と送り火はいつ?世界にもお盆ってあるの?

普段は離れて暮らしていても、お盆は実家に戻って家族と一緒に過ごす人は多いですよね。
ご先祖様のお墓参りに行くのはお盆の定番行事となっていますが、そもそもお盆にはどのような意味があるのでしょうか。

ここではお盆の風物詩である迎え火と送り火について、やり方や地域による違いなどを詳しく解説しています。また世界へ伝わるお盆に似た行事についてもご紹介します。

いまさら聞けない「お盆」とは?

日本では古くから、夏の時期にご先祖様の魂を祀る風習がありました。
鎌倉時代に仏教の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と呼ばれる先祖供養の考えと、日本の祖霊信仰が結びつき、人々の間に普及し始めたとされています。
江戸時代になるとお盆行事はすっかり庶民に定着し、お坊さんが忙しく家々を回ってお経をあげるようになったのです。

お盆の行事はいろいろあり、法要やお墓参り、迎え火と送り火、盆提灯の飾りつけやお供えなど地域によっても内容はさまざまです。日程も地域によって異なります。

お盆の迎え火・送り火に意味はあるの?

お盆の定番行事である迎え火と送り火ですが、最近では目にすることが減ってきました。お盆には多くのご先祖様が家に帰ってきます。
そのときに自分の家がどこにあるか、ご先祖様の魂が迷わないようにとの思いを込めて火を焚くのが迎え火です。

送り火は、あの世へ帰っていくご先祖様に「私たちはちゃんとお見送りしていますよ」と伝えるための炎です。お盆に焚く炎の煙は、あの世へ届くと言われています。
迎え火・送り火は、ご先祖様が行きも帰りも安心してあの世と家を行き来できるよう、子孫である私たちが示す道しるべでもあるのです。

迎え火・送り火はいつどのように行う?

お盆の初めに迎え火、終わりに送り火を焚きますが、日にちには地域によって差があるのでしょうか。時間は決まっているのでしょうか。具体的な日時についてみていきましょう。

地域で異なる迎え火と送り火の日程

お盆休みというと、8月13日(盆の入り)から16日(盆の明け)を指すことが一般的です。迎え火・送り火の日にちも同じで、迎え火は8月13日、送り火を8月16日にやります。ただし地域によっては「7月盆」といってひと月早くお盆を行うところもあり、その場合は迎え火が7月13日、送り火を7月16日に行います。

地域で異なる迎え火と送り火の日程 迎え火・送り火は一般的に8月に行う場合が多い

7月盆を行う地域は東京・神奈川、北海道の一部、石川県金沢市、静岡県の都市部などです。7月盆と8月盆にわかれた理由は、明治時代に旧暦から新暦に切り替わったことがきっかけです。

明治政府に近い地域では新暦への切り替えが早かったのですが、政府の目が行き届きにくい地方では、従来通り旧暦7月15日(現8月15日ごろ)にお盆が行われ続けたため、7月盆と8月盆に分かれることとなりました。

迎え火と送り火はいつやればいい?

次に、迎え火と送り火を行う時間を見ていきましょう。
お盆の初めに行う迎え火は、夕方に焚くことが多いのですが、じつは明確な決まりごとがありません。昼間は明るいので灯が見えにくく、日の沈んだ夜は周りが見えづらくなってしまうため、薄暗くなりかけた夕方から日没前(17~19時頃)に行う人が多いです。

一方送り火は、帰ってきたご先祖様と少しでも長い時間過ごしたいと夕方以降に行います。日の沈むころから日没後のまわりがすっかり暗くなるころが一般的で、具体的には17時~20時頃を目安にします。

迎え火と送り火はどこでやるの?

迎え火と送り火はどこでやるの?

迎え火と送り火を行う場所は、地域や住まい形態によって異なります。
迎え火と送り火が慣習化した江戸時代には戸口、現代でいう玄関先で行うことが一般的でした。地域によっては墓地で迎え火を焚くところもあります。
マンションやアパートなどの集合住宅では、玄関先で火を焚くことは難しいためベランダなどを利用する家庭も多いようです。

具体的なやり方について紹介

送り火や迎え火は決して難しいものではありません。
ここでは迎え火と送り火に必要な道具や手順、宗教による違いなどを紹介していきます。
道具とやり方を知り、ご先祖様を迎え(送り)ましょう。

迎え火・送り火に準備するもの

  • オガラ(麻の茎をはいで乾燥させたもの。ない場合は割りばしで代用可能)
  • 焙烙(ほうろく)と呼ばれる素焼きの皿(なければ耐熱の平らな皿)
  • 新聞紙など燃えやすいもの
  • マッチやライター
  • 水(消火用)

迎え火(送り火)の手順

  • 玄関先で焙烙皿にオガラをのせる。下に新聞紙などを敷くと燃えやすくなる。
  • 周囲や風に気を付けて火をつける
  • オガラが燃え尽きるまで見守る。燃え尽きたら水をかけて消火する。

送り火のやり方も同様です。暗くなってから焚く場合は、火の取り扱いに十分注意しましょう。

雑学

浄土真宗は迎え火・送り火を行わないってホント?

もしご家庭の宗派が浄土真宗の場合は、お盆での迎え火・送り火は行いません。
浄土真宗には地獄の概念がなく、人が亡くなるとすぐに極楽浄土へ成仏するとされています。極楽浄土に往生しているご先祖様はお盆にも帰ってこないと考えられているため、浄土真宗では迎え火・送り火は行わないのです。

迎え火や送り火ができない場合はどうすればいい?

マンションなどの集合住宅では、火を焚く行為を禁止していることがあります。
その場合の代替案を紹介します。

1.盆提灯を飾る

盆提灯とは、お盆の時期にお仏壇まわりや玄関に飾る提灯を指します。ご先祖様がお盆に帰ってくる際、迷わないよう道しるべとして明かりを灯すものです。最近の盆提灯は電池式(電気式)ものが多く、迎え火・送り火の代わりとして安全に使えます。

2.代用のローソクを使う

オガラの代わりに室内でローソクを灯すことで代用できます。ただし火力は弱くても火を使うことに変わりはないので注意が必要です。最近では倒れても家事の心配がいらないLEDろうそくも販売されています。

3. 形だけ整える

そもそもお盆でもっとも大切なのはご先祖様をお迎えする気持ちです。オガラと焙烙を用意し、お仏壇に飾っておくだけでも気持ちは伝わるでしょう。棒提灯とあわせて飾るのがおすすめです。

世界のお盆はどんなものがある?

日本のお盆は古くから伝わる祖霊信仰と、仏教行事である盂蘭盆会(うらぼんえ)が合わさってできたものです。日本にお盆があるように、世界にもお盆に似た行事が存在します。

中国の「中元節」

中国には「中元節」と呼ばれる伝統行事があります。旧暦7月15日に行われる行事で、冥界の帝と言われている地官大帝の誕生をお祝いする日です。
昔から7月15日は、地獄の扉が開き、死者の霊魂が赦される日だと言い伝えられてきました。そこから「鬼節(死者の日)」と呼ばれるようになり、死者の魂を慰めて供養する日となったのです。

メキシコの「死者の日」

メキシコには「死者の日」と呼ばれるお盆に似た行事があります。毎年11月1日~2日にかけて行われるこの行事は、死んだ人と生きている人がともにひと時を過ごすと言われていて、お墓にマリーゴールの花を飾ったり教会や自宅にオフレンダ(祭壇)を作ってお供え物をささげたりします。

キリスト教圏の「イースター」

キリスト教圏で行われているイースターは、イエス・キリストが十字架にかけられて亡くなった際、3日後に命を吹き返して復活したことを祝う祝日です。イースターの日は、春分日を過ぎた最初の満月の次に来た日曜日と定められているため、毎年日にちが変わります。

イースターのお祝い行事は当日だけでなく前後90日間と長期にわたりますが、代表的なイベントと言えば「イースターエッグ」です。カラフルな色や絵柄を塗ったイースターエッグを木の枝に飾ったりプレゼントしたりして楽しみます。

キリスト教ではイースターをクリスマス(キリストの誕生日)の次に大切にしています。そのためイースターの日は家族と過ごす人が多く、日本のお盆に似ていると言われることもあるのです。

ヨーロッパ・アメリカの「ハロウィン」

すっかり日本にも定着したハロウィンも、じつは死者をこの世に迎え入れる供養祭です。ハロウィンのもととなっているのは古代ケルト民族の「サウィン祭」で、ケルト人は新年を11月1日に定めていました。

「サウィン」は夏の終わりを意味する言葉で、これから始まる厳しい冬の季節を迎えるにあたり死者をお供え物でもてなして、夏の収穫を感謝しつつ冬の平穏を祈ったと言われています。

迎え火で始まり、送り火で終わるお盆

お盆とは、ご先祖様の魂を祀る夏の伝統行事です。一般的には8月13日から16日の期間をお盆と言いますが、7月盆といって7月13日から16日がお盆の地域もあります。

お盆はご先祖様を受け入れる「迎え火」で始まり、魂が帰っていくのを見送る「送り火」で終わります。迎え火・送り火を焚いた時に出る煙は大切なご先祖様への道しるべであり、感謝の心をもって行うといいでしょう。

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