人気のキーワード
★隙間時間にコラムを読むならアプリがオススメ★
古来、日本には「猫」という語句が含まれることわざや慣用句が多くあります。最近では「ねこ」から始まる言葉を「ねことば」と呼んで、子どもから大人まで楽しんでいるほどです。
そこで今回は、猫好きの人もそうでない人も「知ってよかった!」と思える、猫に関する言葉について詳しく紹介していきます。
どんなに貴重なものを与えても、価値がわからない人にとっては何の役にも立たないという意味で使います。同じような意味のことわざは「豚に真珠」「犬に論語」「馬の耳に念仏」です。
<使い方>
「20世紀最高ともいわれた1996年物のワインだけど、あなたには猫に小判だったわね。」
いつもの様子とは違い、とてもおとなしくしている姿をあらわすことばです。日常的に使いことも多く、知っている人も多いのではないでしょうか。この慣用句は、自分の縄張り以外では不安を感じやすい猫の習性がもとになっています。
江戸時代には、ネズミ退治のためによその家から猫を借りてきていました。しかし借りてきた猫はいつものような働きをせずあまり役に立たなかったようで、そこから「借りてきた猫」ということばが生まれました。同じような意味を持つことばに「内弁慶」があります。
「うちの子たちは知らない人の前だと借りてきた猫のようにおとなしいの。普段はうるさいほどなのにね。」
表面だけおとなしく見せかけている様子をあらわすことわざです。猫はふだんゴロゴロと甘えてきて可愛らしい生き物ですが、じつはライオンなどと同じネコ科の動物ですから、時には獰猛な一面を見せます。そんな二面性を持った猫の様子を「猫をかぶる」と表現したのです。
同じく「猫」をつかった「猫かぶりする」ということばも意味は同じになります。
「ちょっと気が強いところがある私は、彼と付き合い初めのころ、女の子らしくみせようと猫をかぶっていたの。」
意味は、だれもかれも。なにもかも。です。「猫」と「杓子(しゃくし)」はおかしな組合せに感じますが、この語源には諸説あるようです。
猫も杓子もの類語は「老若男女」「右を見ても左を見ても」などです。
「最近電車に乗ると思うけど、ホントに猫も杓子もスマホばかりいじっているよね。」
とても忙しいのに人手不足で、誰でもいいから手伝ってほしいことのたとえです。江戸時代の浄瑠璃(=古典芸能の一つ)に「上から下までお目出度と、猫の手もかりたい忙しさ」という一文があることから、かなり古くから使われていることわざというのがわかります。
いつ頃から「猫の手も借りたい」と使っていたのかは不明ですが、猫の手は細かな作業には向いていないようにみえます。それでも忙しいときには猫でもいいから手伝ってほしいと、人々は思っていたのかもしれません。それほど昔から猫と人間の関係性は深いということです。
「クリスマスは彼女と過ごすからってバイトが休んでしまって、猫の手も借りたいくらい忙しい。」
猫はかつおぶしが大好きです。かつおぶしを猫のそばに置くと食べられてしまうことから、好物をそばに置くのは油断できない状況を作るのと同じこと、あやまちが起こりやすい状況を作り出している、というたとえで使います。日本には同じような意味で「犬に肴の番」「盗人に鍵を預ける」などがあります。
「もらい物のケーキを冷蔵庫に片付け忘れてテーブルに置きっぱなしにしてしまった。まさに猫に鰹節で、子どもたちに食べられてしまっているだろうな。」
大好物のたとえで、何か物を与えたときに非常に大きな効果が得られることを指すことわざです。「猫にまたたびお女郎に小判」と続けることもあります。
「我が家の息子はチョコレートに目がない、ホント猫にまたたびよね。」
落とし物を拾ったときに、それを届けず自分のものにしてしまうこと、素知らぬ顔をして自分の悪事を隠すこと、をあらわすことばです。猫はフンをした後、足で砂をかけて何事もなかったかのように立ち去ることから、悪事を隠すようすに例えて「ねこばば」と表現するようになりました。ちなみに「ばば」を漢字で書くと「糞」で、「ねこばば」は猫の糞そのものをあらわしています。
「子どものころ、自販機の下に落ちていた小銭をねこばばしてジュースを買ってしまったんだよね。」
猫は歩くときに音を立てません。そうやって静かに歩くことや歩き方を「猫足」といいます。夏目漱石の小説「坊ちゃん」のなかで「「例の如く猫足にあるいて来て」と使われています。
「彼は猫足のように近づいてくるから、いつもびっくりさせられる。」
このように、日本には「猫」をつかったことばがたくさんあり、日常的に耳にすることもしばしば。それくらい猫は、昔から身近な存在であったという証なのでしょう。
前項では、ふだんから耳にすることが多い「猫(ねこ)」に関することわざや慣用句を紹介してきました。続いて、知っていると少し人に自慢できるような、ちょっとマニアックな「ねことば」を紹介していきます。
猫の額はとても狭いですが、それと同じように土地や場所などの面積がとても狭いことをあらわす慣用句です。古くは1700年、徳川吉宗が統治する江戸時代の浮世草子の中にすでに登場しています。
「お庭があるなんて羨ましいですね。」
「いえいえ、猫の額ほどしかない庭ですよ。」
猫の目は、メイクや目の形を表すのに用いられるため、一見いい言葉のように思いますが、慣用句としての「猫の目」は心の移り変わりが激しいさまをあらわしています。猫の黒目は明るい場所と暗い場所でくるくると大きさが変わります。そんな猫の目の変化を、移り気が激しい女心にたとえて使うようになりました。
「気まぐれな僕の彼女は、猫の目のようにころころ機嫌が変わる。僕はいつも振り回されてしまうんだ。」
飼い主が家に帰ると、犬はしっぽをふってお出迎えしてくれるのに対し、猫はお気に入りの場所から動かずしらんぷり。引越しをするときも犬は飼い主についていくけど、猫は住み慣れた家や場所にとどまることが多いと聞いたことはありませんか?
犬は人に付き、猫は家に付くということばは、「犬は飼い主から受けた恩を一生忘れない」という意味を含み、どちらかというと犬を持ち上げていることわざです。ただしこれは犬と猫の習性の違いであって、猫好きさんからしてみれば、「猫は家を守っている」という意見もあります。
「うちの猫は引越し先から逃げ出して、前の家の近くで保護されたんだ。犬は人に付き、猫は家に付くってホントなんだね。」
鰹節は猫の大好物なので、もし猫に預けてしまうとぺろりと平らげてしまいます。そこから転じて、大切なものを信用できない人に預けると大変なことになってしまうという意味で使われています。また自分で災いのもとを作ったり、助長したりするという意味でも使われることわざです。
「ポストに新聞をためっぱなしにしておくのは、鰹節を猫に預けるのと同じで泥棒に留守を知らせているようなものだよね。」
猫はねずみを追いかけて捕まえるのが得意とされていますが、鳴いてばかりいる猫はねずみを捕ることができません。つまり口数の多い人は、しゃべってばかりで実行力が伴わないという意味で使います。
同じようなことわざで、「脳無し犬の高吠え」という犬バージョンもあります。
「○○先輩は自分で優勝候補だって言っているよ。」
「あの人、鳴く猫は鼠を捕らぬだからあてにならないよ。」
日本では出入り口から一番遠い席が上座となり、そこに主人が座るというしきたりがあります。そんな上座に、主人以外で言われなくても座るのは、猫・馬鹿・坊主くらいしかいないという慣用句です。「席につくときは自分の立場を考えて、あまり上座に座ってはいけないよ。」と戒めを含んだ意味で使います。
部屋に囲炉裏があった時代には、いちばん温まる席(上座)を横座と言っていました。そして同じ意味で「横座に座るは馬鹿か猫」という慣用句が使われていました。
魚好きな猫でも、食べずに通り過ぎるほどまずい魚を猫跨ぎといいます。
このことばは面白いことに関西では真逆の意味をもちます。猫は魚の骨でなく身の部分が好物ですが、そんな猫が見向きもしないほどに、人がきれいに食べ尽くすほど美味しい魚のことを関西では猫跨ぎというのです。
どちらも猫が見向きもしないという点では同じなのですが、「まずい」魚か「美味しい」魚かは、地域によって異なります。
猫は昼間ごろごろ日向ぼっこをして、夜になるとふらっと出かける習性があります。そんな猫が、たまにお茶を飲みながらひとやすみしている姿を見て、お茶の味もわからないのに…と皮肉を込めてできたことわざです。生意気で身分不相応な行動をとっているときに使います。
ただし実際にはお茶に含まれる成分は、猫にとってあまりよくないものが多く、飲ませないのがベターだといわれています。
日本で「猫」はとても身近な存在ですが、実は世界にも「猫」をつかったことわざや慣用句が多くあります。ここからは世界各国の「ねこ」を使った「ねことば」を地域ごとに紹介していきましょう。
スペインやポルトガルに伝わることわざで、どんなに難しいことに直面しても、うまく対処して困難を乗り越えるときに使います。猫は高いところから落ちても、体をひねって必ず足から着地することから生まれたことばです。
フランスのことわざで、率直にものを言う、ありのままのことを言う人に対して使います。日本でいうところの「歯に衣着せぬ」と同じ意味です。
イギリスのことわざで「しぶとい」「執念深い」といった意味を持ちます。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の中でも使われており、諸説ありますが、猫は神様からいくつもの命を与えられ、なかなか死なないと考えられてきたことが語源ではないかと言われています。日本だと「七転び八起き」が同じような慣用句です。
ロシアで使われることわざで、見張りをしている人がいなければ、誰だって好き勝手なことができるという意味です。日本だと「鬼の居ぬ間に洗濯」と同じ意味です。
ちなみにベルギーでは「猫が留守の間、ネズミはテーブルで踊る」というように使われています。
猫は自由気ままで、次にどのような行動を起こすのか読めない部分があります。そこから転じて、「事の成り行きを見守る。日和見する。」といった意味に使います。
Let’s see which way the cat jumps before we make any plans.
どのような毛色の猫も、暗闇では灰色にみえます。それが転じて「人を見かけで判断してはいけない」という意味になりました。イギリスやフランスにも同じことわざがありますが、スペインでは茶色です。
インドに伝わることわざで、不可能なことを可能にしようとする意味で使われます。
この語源には諸説あります。
中国の鄧小平が残した有名なことばです。もともとは四川に伝わることわざで、猫の毛色は白ではなく黄でしたが、話が伝わっていく中で白猫に変化しました。
意味としては「共産主義だろうが資本主義だろうが、経済と人々の生活が向上すればいい」との思いを込めて発言したものです。
「猫」は日本のことわざや慣用句によく出てきます。そしてじつは海外でも「cat」の出てくることわざや慣用句が数多くあるのです。日常英会話を学ぶ上で、知っていると少し自慢できる「cat」がつく英語のことわざをいくつか紹介します。
諸説ありますが、北欧に伝わる神話では猫は雨を降らせる力があり、犬は風を起こす力を持っていると信じられていました。そうした背景から土砂降りの雨のことを猫と犬にたとえてこのように表現しているようです。
また騒々しい猫と犬のケンカを土砂降りの雨にたとえたという説もあります。
直訳すると「好奇心が猫を殺した」となりますが、猫の性格を考えて内容を膨らませると、
「うっかり毒のあるものを食べてしまって死んでしまった」
「キラキラ光る水面に近づきすぎて池に落ちて溺れ死んでしまった」
など、好奇心から猫が死んでしまったと出来事を指していると考えられます。
「好奇心が過ぎるのは危ないよ、ほどほどにね」というときに使いましょう。
日本には仲の悪いふたりのことをあらわす「犬猿の仲」ということわざがありますが、英語で仲が悪いのは「猫と犬」と表現します。
Brown and Emma lead a cat and dog life.(ブラウンとエマはケンカばかりしている)
直訳すると「クリームを盗んだ猫のよう」となりますが、好物のクリームまみれになった猫はきっと大満足のはず。「ご満悦で。満足した様子で。」という意味で使われています。
おめかししてすましたお顔の猫ちゃんがなんとも可愛らしい、ミニバッグ。それぞれに入った英文はヨーロッパの偉人たちが綴った、猫に関わる言葉を刻んでいます。
たくさんの猫が描かれている、蚊帳生地を使った布巾。それぞれの名前と表情からどんな性格の猫なんだろうと想像してみてください。
動物の柄を大胆にプリントしたシャツです。こちらの猫の絵は、小原古邨「猫と金魚」から。
「猫に小判」や「借りてきた猫」のように、日本には猫にまつわることわざや慣用句が数多くあります。なかにはあまり一般には知られていないことわざもあったのではないでしょうか。
最近では「ねこ」とつくことばを「ねことば」と呼んで、子どもから大人まで楽しめるブームになっています。一方で、世界にも「猫」のつくことわざが多くあり、文化の違いによる「ねことば」を比べてみるのも楽しいでしょう。
古来、日本には「猫」という語句が含まれることわざや慣用句が多くあります。最近では「ねこ」から始まる言葉を「ねことば」と呼んで、子どもから大人まで楽しんでいるほどです。
そこで今回は、猫好きの人もそうでない人も「知ってよかった!」と思える、猫に関する言葉について詳しく紹介していきます。
目次
よく耳にする「猫」がついたことわざ・慣用句(日本編)
猫に小判
どんなに貴重なものを与えても、価値がわからない人にとっては何の役にも立たないという意味で使います。
同じような意味のことわざは「豚に真珠」「犬に論語」「馬の耳に念仏」です。
<使い方>
「20世紀最高ともいわれた1996年物のワインだけど、あなたには猫に小判だったわね。」
借りてきた猫
いつもの様子とは違い、とてもおとなしくしている姿をあらわすことばです。
日常的に使いことも多く、知っている人も多いのではないでしょうか。この慣用句は、自分の縄張り以外では不安を感じやすい猫の習性がもとになっています。
江戸時代には、ネズミ退治のためによその家から猫を借りてきていました。しかし借りてきた猫はいつものような働きをせずあまり役に立たなかったようで、そこから「借りてきた猫」ということばが生まれました。同じような意味を持つことばに「内弁慶」があります。
<使い方>
「うちの子たちは知らない人の前だと借りてきた猫のようにおとなしいの。普段はうるさいほどなのにね。」
猫をかぶる
表面だけおとなしく見せかけている様子をあらわすことわざです。
猫はふだんゴロゴロと甘えてきて可愛らしい生き物ですが、じつはライオンなどと同じネコ科の動物ですから、時には獰猛な一面を見せます。そんな二面性を持った猫の様子を「猫をかぶる」と表現したのです。
同じく「猫」をつかった「猫かぶりする」ということばも意味は同じになります。
<使い方>
「ちょっと気が強いところがある私は、彼と付き合い初めのころ、女の子らしくみせようと猫をかぶっていたの。」
猫も杓子も
意味は、だれもかれも。なにもかも。です。
「猫」と「杓子(しゃくし)」はおかしな組合せに感じますが、この語源には諸説あるようです。
猫も杓子もの類語は「老若男女」「右を見ても左を見ても」などです。
<使い方>
「最近電車に乗ると思うけど、ホントに猫も杓子もスマホばかりいじっているよね。」
猫の手も借りたい
とても忙しいのに人手不足で、誰でもいいから手伝ってほしいことのたとえです。
江戸時代の浄瑠璃(=古典芸能の一つ)に「上から下までお目出度と、猫の手もかりたい忙しさ」という一文があることから、かなり古くから使われていることわざというのがわかります。
いつ頃から「猫の手も借りたい」と使っていたのかは不明ですが、猫の手は細かな作業には向いていないようにみえます。それでも忙しいときには猫でもいいから手伝ってほしいと、人々は思っていたのかもしれません。それほど昔から猫と人間の関係性は深いということです。
<使い方>
「クリスマスは彼女と過ごすからってバイトが休んでしまって、猫の手も借りたいくらい忙しい。」
猫に鰹節
猫はかつおぶしが大好きです。かつおぶしを猫のそばに置くと食べられてしまうことから、好物をそばに置くのは油断できない状況を作るのと同じこと、あやまちが起こりやすい状況を作り出している、というたとえで使います。
日本には同じような意味で「犬に肴の番」「盗人に鍵を預ける」などがあります。
<使い方>
「もらい物のケーキを冷蔵庫に片付け忘れてテーブルに置きっぱなしにしてしまった。まさに猫に鰹節で、子どもたちに食べられてしまっているだろうな。」
猫にまたたび
大好物のたとえで、何か物を与えたときに非常に大きな効果が得られることを指すことわざです。
「猫にまたたびお女郎に小判」と続けることもあります。
<使い方>
「我が家の息子はチョコレートに目がない、ホント猫にまたたびよね。」
ねこばば
落とし物を拾ったときに、それを届けず自分のものにしてしまうこと、素知らぬ顔をして自分の悪事を隠すこと、をあらわすことばです。
猫はフンをした後、足で砂をかけて何事もなかったかのように立ち去ることから、悪事を隠すようすに例えて「ねこばば」と表現するようになりました。
ちなみに「ばば」を漢字で書くと「糞」で、「ねこばば」は猫の糞そのものをあらわしています。
<使い方>
「子どものころ、自販機の下に落ちていた小銭をねこばばしてジュースを買ってしまったんだよね。」
猫足
猫は歩くときに音を立てません。そうやって静かに歩くことや歩き方を「猫足」といいます。
夏目漱石の小説「坊ちゃん」のなかで「「例の如く猫足にあるいて来て」と使われています。
<使い方>
「彼は猫足のように近づいてくるから、いつもびっくりさせられる。」
このように、日本には「猫」をつかったことばがたくさんあり、日常的に耳にすることもしばしば。それくらい猫は、昔から身近な存在であったという証なのでしょう。
こんな「猫」がついたことば、知ってる?(日本編)
前項では、ふだんから耳にすることが多い「猫(ねこ)」に関することわざや慣用句を紹介してきました。
続いて、知っていると少し人に自慢できるような、ちょっとマニアックな「ねことば」を紹介していきます。
猫の額
猫の額はとても狭いですが、それと同じように土地や場所などの面積がとても狭いことをあらわす慣用句です。
古くは1700年、徳川吉宗が統治する江戸時代の浮世草子の中にすでに登場しています。
<使い方>
「お庭があるなんて羨ましいですね。」
「いえいえ、猫の額ほどしかない庭ですよ。」
猫の目
猫の目は、メイクや目の形を表すのに用いられるため、一見いい言葉のように思いますが、慣用句としての「猫の目」は心の移り変わりが激しいさまをあらわしています。
猫の黒目は明るい場所と暗い場所でくるくると大きさが変わります。そんな猫の目の変化を、移り気が激しい女心にたとえて使うようになりました。
<使い方>
「気まぐれな僕の彼女は、猫の目のようにころころ機嫌が変わる。僕はいつも振り回されてしまうんだ。」
犬は人に付き、猫は家に付く
飼い主が家に帰ると、犬はしっぽをふってお出迎えしてくれるのに対し、猫はお気に入りの場所から動かずしらんぷり。引越しをするときも犬は飼い主についていくけど、猫は住み慣れた家や場所にとどまることが多いと聞いたことはありませんか?
犬は人に付き、猫は家に付くということばは、「犬は飼い主から受けた恩を一生忘れない」という意味を含み、どちらかというと犬を持ち上げていることわざです。
ただしこれは犬と猫の習性の違いであって、猫好きさんからしてみれば、「猫は家を守っている」という意見もあります。
<使い方>
「うちの猫は引越し先から逃げ出して、前の家の近くで保護されたんだ。犬は人に付き、猫は家に付くってホントなんだね。」
鰹節を猫に預ける
鰹節は猫の大好物なので、もし猫に預けてしまうとぺろりと平らげてしまいます。そこから転じて、大切なものを信用できない人に預けると大変なことになってしまうという意味で使われています。また自分で災いのもとを作ったり、助長したりするという意味でも使われることわざです。
<使い方>
「ポストに新聞をためっぱなしにしておくのは、鰹節を猫に預けるのと同じで泥棒に留守を知らせているようなものだよね。」
鳴く猫は鼠を捕らぬ
猫はねずみを追いかけて捕まえるのが得意とされていますが、鳴いてばかりいる猫はねずみを捕ることができません。
つまり口数の多い人は、しゃべってばかりで実行力が伴わないという意味で使います。
同じようなことわざで、「脳無し犬の高吠え」という犬バージョンもあります。
<使い方>
「○○先輩は自分で優勝候補だって言っているよ。」
「あの人、鳴く猫は鼠を捕らぬだからあてにならないよ。」
猫馬鹿坊主(ねこばかぼうず)
日本では出入り口から一番遠い席が上座となり、そこに主人が座るというしきたりがあります。そんな上座に、主人以外で言われなくても座るのは、猫・馬鹿・坊主くらいしかいないという慣用句です。
「席につくときは自分の立場を考えて、あまり上座に座ってはいけないよ。」と戒めを含んだ意味で使います。
部屋に囲炉裏があった時代には、いちばん温まる席(上座)を横座と言っていました。そして同じ意味で「横座に座るは馬鹿か猫」という慣用句が使われていました。
猫跨ぎ
魚好きな猫でも、食べずに通り過ぎるほどまずい魚を猫跨ぎといいます。
このことばは面白いことに関西では真逆の意味をもちます。
猫は魚の骨でなく身の部分が好物ですが、そんな猫が見向きもしないほどに、人がきれいに食べ尽くすほど美味しい魚のことを関西では猫跨ぎというのです。
どちらも猫が見向きもしないという点では同じなのですが、「まずい」魚か「美味しい」魚かは、地域によって異なります。
猫も茶を飲む
猫は昼間ごろごろ日向ぼっこをして、夜になるとふらっと出かける習性があります。そんな猫が、たまにお茶を飲みながらひとやすみしている姿を見て、お茶の味もわからないのに…と皮肉を込めてできたことわざです。
生意気で身分不相応な行動をとっているときに使います。
ただし実際にはお茶に含まれる成分は、猫にとってあまりよくないものが多く、飲ませないのがベターだといわれています。
世界の猫にまつわることわざ
日本で「猫」はとても身近な存在ですが、実は世界にも「猫」をつかったことわざや慣用句が多くあります。
ここからは世界各国の「ねこ」を使った「ねことば」を地域ごとに紹介していきましょう。
世界の猫にまつわることわざ・ヨーロッパ編
「猫のように足から落ちる」
スペインやポルトガルに伝わることわざで、どんなに難しいことに直面しても、うまく対処して困難を乗り越えるときに使います。
猫は高いところから落ちても、体をひねって必ず足から着地することから生まれたことばです。
「猫を猫と呼ぶ」
フランスのことわざで、率直にものを言う、ありのままのことを言う人に対して使います。
日本でいうところの「歯に衣着せぬ」と同じ意味です。
「猫には九つの命がある」
イギリスのことわざで「しぶとい」「執念深い」といった意味を持ちます。
シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の中でも使われており、諸説ありますが、猫は神様からいくつもの命を与えられ、なかなか死なないと考えられてきたことが語源ではないかと言われています。
日本だと「七転び八起き」が同じような慣用句です。
「猫がいなければねずみが好き放題」
ロシアで使われることわざで、見張りをしている人がいなければ、誰だって好き勝手なことができるという意味です。
日本だと「鬼の居ぬ間に洗濯」と同じ意味です。
ちなみにベルギーでは「猫が留守の間、ネズミはテーブルで踊る」というように使われています。
世界の猫にまつわることわざ・アメリカ編
「猫がどこへ跳ぶか見てみよう」
猫は自由気ままで、次にどのような行動を起こすのか読めない部分があります。そこから転じて、「事の成り行きを見守る。日和見する。」といった意味に使います。
<使い方>
Let’s see which way the cat jumps before we make any plans.
計画を立てる前に、猫がどちらの方向にジャンプするか見てみよう「暗闇では猫はみな灰色」
どのような毛色の猫も、暗闇では灰色にみえます。それが転じて「人を見かけで判断してはいけない」という意味になりました。
イギリスやフランスにも同じことわざがありますが、スペインでは茶色です。
世界の猫にまつわることわざ・アジア編
「猫の首に鈴を結ぶ」
インドに伝わることわざで、不可能なことを可能にしようとする意味で使われます。
この語源には諸説あります。
いずれにしても、難しい物事に挑戦するときに思い出されることばになります。
「白猫でも黒猫でもネズミを捕るのがいい猫」
中国の鄧小平が残した有名なことばです。
もともとは四川に伝わることわざで、猫の毛色は白ではなく黄でしたが、話が伝わっていく中で白猫に変化しました。
意味としては「共産主義だろうが資本主義だろうが、経済と人々の生活が向上すればいい」との思いを込めて発言したものです。
言えるとかっこいい?「cat」が出てくる英語のことわざ
「猫」は日本のことわざや慣用句によく出てきます。そしてじつは海外でも「cat」の出てくることわざや慣用句が数多くあるのです。
日常英会話を学ぶ上で、知っていると少し自慢できる「cat」がつく英語のことわざをいくつか紹介します。
rain cats and dogs (雨がどしゃぶりに降る)
諸説ありますが、北欧に伝わる神話では猫は雨を降らせる力があり、犬は風を起こす力を持っていると信じられていました。
そうした背景から土砂降りの雨のことを猫と犬にたとえてこのように表現しているようです。
また騒々しい猫と犬のケンカを土砂降りの雨にたとえたという説もあります。
curiosity killed the cat (好奇心もほどほどに)
直訳すると「好奇心が猫を殺した」となりますが、猫の性格を考えて内容を膨らませると、
「うっかり毒のあるものを食べてしまって死んでしまった」
「キラキラ光る水面に近づきすぎて池に落ちて溺れ死んでしまった」
など、好奇心から猫が死んでしまったと出来事を指していると考えられます。
「好奇心が過ぎるのは危ないよ、ほどほどにね」というときに使いましょう。
lead a cat and dog life( ケンカばかりしている夫婦・カップル)
日本には仲の悪いふたりのことをあらわす「犬猿の仲」ということわざがありますが、英語で仲が悪いのは「猫と犬」と表現します。
<使い方>
Brown and Emma lead a cat and dog life.(ブラウンとエマはケンカばかりしている)
like the cat that stole the cream( ご満悦で)
直訳すると「クリームを盗んだ猫のよう」となりますが、好物のクリームまみれになった猫はきっと大満足のはず。
「ご満悦で。満足した様子で。」という意味で使われています。
猫好きのあなたにおすすめ商品
ネコトートBAG
おめかししてすましたお顔の猫ちゃんがなんとも可愛らしい、ミニバッグ。それぞれに入った英文はヨーロッパの偉人たちが綴った、猫に関わる言葉を刻んでいます。
猫のおなまえふきん
たくさんの猫が描かれている、蚊帳生地を使った布巾。それぞれの名前と表情からどんな性格の猫なんだろうと想像してみてください。
獣面相シャツ
動物の柄を大胆にプリントしたシャツです。こちらの猫の絵は、小原古邨「猫と金魚」から。
まとめ:日本と世界の「ねことば」とは
「猫に小判」や「借りてきた猫」のように、日本には猫にまつわることわざや慣用句が数多くあります。
なかにはあまり一般には知られていないことわざもあったのではないでしょうか。
最近では「ねこ」とつくことばを「ねことば」と呼んで、子どもから大人まで楽しめるブームになっています。一方で、世界にも「猫」のつくことわざが多くあり、文化の違いによる「ねことば」を比べてみるのも楽しいでしょう。