和風月名「霜月」って何月のこと?霜月と呼ばれるようになった由来とは

12か月の月を日本ならではの呼び方で表した「和風月名」の1つ「霜月(しもつき)」は、何月を指しているのでしょうか?

今回は、「霜月」が何月なのかやこの名前で呼ばれるようになった由来と共に、「霜月」に行われる行事や誕生石など「霜月」について詳しく解説していきましょう。

霜月は何月?

「霜月(しもつき)」とは、旧暦の11月を指す和風月名です。
現代の日本で使われている暦(新暦)に照らし合わせると、だいたい12月ごろ(11月下旬から1月上旬ごろ)になります。
当時の霜月は冬の季節に分類されていました。
冬の始まりとされる「立冬」を含む月で、日を追うごとに寒さが増していき、平野部にも霜が降りる時期でした。

霜月は何月?

和風月名(わふうげつめい)とは

風情のある呼び方「和風月名」は、明治5年まで使われていた旧暦の中での月の呼び方で、他の月は次のように呼ばれていました。

旧暦の月 和風月名
1月 睦月(むつき)
2月 如月(きさらぎ)
3月 弥生(やよい)
4月 卯月(うづき)
5月 皐月(さつき)
6月 水無月(みなづき/みなつき)
7月 文月(ふみづき/ふづき)
8月 葉月(はづき/はつき)
9月 長月(ながつき/ながづき)
10月 神無月(かんなづき)
11月 霜月(しもつき)
12月 師走(しわす)

和風月名がいつから使われ始めたのかは不明ですが、奈良時代に成立した日本最古の歴史書「日本書紀」の中で、四月(うげつ)や二月(きさらぎ)のような訓読みが書かれているため、奈良時代には使われていたことが分かっています。

なぜ旧暦と新暦とでは約1か月もの違いがあるの?

日本で明治5年(1872年)まで使われていた旧暦は「太陰暦」と呼ばれ、月の満ち欠けの周期を基準に1か月を定めていました。太陰暦では1か月が約29.5日となるため、29日と30日の月を交互に配置して1年を約354日としています。
太陽の動きに基づく季節よりも約11日短いため、3年ほどでおよそ1か月分のずれが生じます。そこで、数年に一度「閏月(うるうづき)」と呼ばれる13か月目の月を設け、季節とのずれを調整していました。

一方、現在使われている新暦は「太陽暦」で、地球が太陽の周りを一周する周期(約365.24日)を1年とし、4年に1度、1年を366日としてずれを修正する「閏年」を設けています。

日本では明治6年(1873年)から太陽暦が採用されました。
新暦が使われ始めた時、旧暦の明治5年12月3日を明治6年1月1日としたため、旧暦と新暦では実際の季節感が1か月ほど早まった印象になったのです。

なぜ旧暦と新暦とでは約1か月もの違いがあるの?

霜月の由来と意味

旧暦の11月を「霜月」と呼ぶようになったのは、この時期に霜がしきりに降ることが由来とされています。
かつては「霜降月(しもふりつき)」と呼ばれており、これが後に短くなって「霜月」になりました。

霜月の由来と意味

また、11月は五穀の実りを神様に感謝する宮中行事「新嘗祭(にいなめさい)」が行われることが由来とされる説もあります。

新嘗祭では、天皇が天照大神をはじめとした神々にその年の新米を捧げ、天皇もその年の新米を食べるという儀式が行われます。
このことから11月を「食物月(おしものづき)」と呼ぶようになり、これが短くなって「しもつき」になったとされています。

霜月の別名

旧暦の11月は、「霜月」以外の呼び方があります。
その中のいくつかを紹介します。

神楽月(かぐらづき)

「神楽月」は、旧暦の11月に神楽が多く奉納されたことから付けられたとされる名前です。
神楽とは、神様に奉納する音楽や踊りのことで、旧暦の11月には一年の農事を終えた人たちが神社や村の集会場など日本中で行われていました。

神帰月(かみきづき/かみかえりづき)

「神帰月」は、旧暦の10月「神無月」を受けて付けられた名前です。
「神無月」とは、10月に日本中の神様が島根県の出雲地方に集まるため、日本各地で神様が留守になることから付けられた和風月名です。ちなみに、出雲では「神在月」と名を変えています。詳しくはこちら

神様たちは11月になると各地に帰ってくるので、11月を「神帰月」と名付けられたとされています。

雪待月(ゆきまちづき/ゆきまつつき)

旧暦の11月の季節は、これから来る雪の季節に備えて冬支度をする時期でした。
そのため、冬支度を万全にして雪を待つことからこの名前が付けられたとされています。

露隠葉月(つゆごもりのはづき)

「露隠葉月」とは、「葉から露が隠れてしまう月」という意味です。
露は、空気中の水分が冷えて水となり葉などについた水滴のことですが、旧暦の11月の時期は寒さが強くなって空気中の水分が凍って霜となってしまいます。
そのため、露が葉に着かなくなってしまうのでこの名前が付けられたとされています。

その他にも、霜が降りる月であることから「霜見月(しもみづき)」、雪が降り始める月であることから「雪見月(ゆきみづき)」、寒くなって花がしぼんでいく月であることから「凋月(しぼむづき)」などの異名があります。

このように、旧暦11月の和風月名は行われてきた大切な行事や、冬の始まりを感じさせる風景などが反映されていて、自然と共生し恐れ敬ってきた「日本人の自然観」を知る手掛かりとなります。

霜月にまつわる日本の行事・風物詩

日本には、昔から季節に合わせて行われてきた年中行事やお祭りが数多くあります。
そこで今回は、霜月を感じられる風物詩となっている行事や記念日などを紹介していきましょう。

七五三(11月15日)

七五三(11月15日)

七五三とは、毎年11月15日に神社で子供が無事成長したことを神様に感謝し、これからも幸福で健やかに成長することを願う行事です。
七五三は、男の子は3歳と5歳の時に、女の子は3歳と7歳の時に行いますが、これはかつて公家や武家の間で行われていた、男の子女の子ともに3歳になると髪を伸ばし始める「髪置(かみおき)の儀」、5歳の男の子が初めて袴を着る「袴着(はかまぎ)の儀」、7歳の女の子が初めて帯を締める「帯解(おびとき)の儀」の儀式に由来しています。

七五三が11月15日となったのは、この日が「鬼宿日(きしゅくにち)」という最吉日に当たるからだといわれています。
また、江戸幕府5代将軍・徳川綱吉が長男・徳松の祝いを11月15日に行ったことが由来となったという説もあります。

勤労感謝の日(11月23日)

勤労感謝の日は、「勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝し合う」ことを目的とし、昭和23年(1948年)に誕生した祝日です。
勤労感謝の日となった11月23日は元々「新嘗祭(にいなめさい)」という、祝日でした。
しかし第二次世界大戦後、GHQが天皇が行う宮中行事と国民行事を切り離すべきとして、勤労感謝の日が法律で定められました。

新嘗祭

新嘗祭とは、飛鳥時代に始まったとされる宮中行事です。
新嘗祭は毎年11月23日に行われます。
天皇が神々にその年に収穫された新米や作物を捧げて神々にその年の収穫に感謝し、翌年の豊作を願い、天皇自らも新米を召し上がるという儀式が宮中で行われ、昔は新嘗祭が終わるまでは新米を食べてはいけないと言われていました。
日本全国の神社でも祭祀が行われ、かつては一般の人たちも参加していましたが、第二次世界大戦後に11月23日を「勤労感謝の日」という祝日になったため、新嘗祭に参加する人はほとんどいなくなってしまいました。

霜月祭(しもつきまつり)

霜月祭とは、旧暦の霜月に行われてきた「湯立神楽」などの祭りの総称です。
旧暦霜月には冬至の季節にあたります。
かつて冬至は、昼が最も短くなるため生命力が弱まると考えられていました。
そこで全国の神々を招いて湯でもてなし、自分たちも湯を浴びて体を清め、生命の再生を願う神事が行われるようになりました。
霜月祭の始まりは、平安時代に行われていた「湯立(ゆだて)」という宮中行事で、鎌倉時代ごろから全国各地の神社などで行われるようになったとされています。

「湯立」とは、神前に大きな鎌を置いて湯を沸かし、巫女が笹や幣串などを湯に浸して周りや自身に振りかけたり、その湯を使って吉凶を占ったりするという儀式です。
現在、各地の神社で行われている湯立神楽は湯立の儀式が引き継がれているものが多く、国の重要無形民俗文化財に指定されている長野県飯田市の「遠山の霜月祭り」では、神前に置かれた大釜の湯を煮えたぎらせて神々に捧げ、その後天狗などの面を付けた人たちが大釜の湯を素手で参加者たちに振りかけるという儀式が行われています。

霜月(11月)の誕生石

誕生石とは、1月から12月までそれぞれの月にちなんだ石のことです。
どの月もいくつかの誕生石があり、霜月(11月)の誕生石は「トパーズ」と「シトリン」です。

トパーズ

トパーズ

「トパーズ」という名前は、ギリシャ語で「探し始める」という意味の「トパゾス(topazos)」や、サンスクリット語で「火」という意味の「トパズ(tapas)」が語源とされています。
和名は「黄玉(おうぎょく)」で、日本でも産出されています。

トパーズは昔から持ち主の潜在能力を引き出し、守ってくれる力があると信じられ、古くから装飾品として身に付けられてきました。

石言葉は、「好機到来・良縁・洞察力・希望・友情・誠実」などで、仕事や恋愛、物など必要とするものに出会わせてくれる効果や直観・洞察力を高めて曖昧な事を明確にする効果、友達との絆を深める効果などがあるといわれています。

シトリン

シトリン

シトリンは、クォーツ(水晶、石英)の変種で、黄色やオレンジの発色がある宝石です。

「シトリン」という名前は、フランス語で「レモン」を意味する「シトロン(citron)」や、ラテン語で「黄色」を意味する「シトリーナ」が語源とされています。
和名は「黄水晶」です。

シトリンは富をもたらす幸運の石とされ、何千年も前から装飾品として身に付けられてきました。

石言葉は、「事業繁栄・財運・幸運・富・友愛・希望」などで、事業や会社を拡大したい人を助ける効果や金運を向上させる効果、人間関係を円滑にする効果などがあるといわれています。

ほかの月の和風月名は?

和風月名には、それぞれの月に行われる行事や気象などに由来した名前が付けられています。

和風月名 由来
1月 睦月(むつき) 正月に家族や親族・知人が仲睦まじく集うことが由来。
2月 如月(きさらぎ) 旧暦の2月は現代の3月ごろで、寒さがぶり返すため着物を更に重ねて着る(衣更着(きさらぎ))が語源。
漢字は中国最古の辞書「爾雅(じが)」に記載されている「二月を如となす」が由来。
3月 弥生(やよい) 草木がますます生い茂るという意味の「弥生(いやおい)」が由来。
4月 卯月(うづき) 「卯の花(ウツギ)」が咲き乱れる月であることが由来。
5月 皐月(さつき) 田植えで早苗を植える「早苗月(さなえづき)」の略語「早月(さつき)」が語源。
後に水田という意味の「皐」があてられた。
6月 水無月(みなづき/みなつき) 旧暦の6月は現代の7月ごろで、暑くて田んぼに水が無くなる月であることが由来。
田んぼに水を張る「水張月(みずはりづき)」や田植え仕事が終わった「皆仕尽(みなしつき)」が転じたともいわれている。
7月 文月(ふみづき/ふづき) 七夕の短冊に歌や詩を書いて字の上達を願う風習から「文披月(ふみひろげづき)」と呼ばれたことが由来。
また稲穂が膨らむ月であることから「ふくみ月」が転じたともいわれている。
8月 葉月(はづき/はつき) 旧暦の8月は現代の9月ごろで、葉が散り始める「葉落月(はおちづき)」が由来。
9月 長月(ながつき/ながづき) 夜がだんだんと長くなる「夜長月(よながづき)」が由来。
10月 神無月(かんなづき) 日本中の神様が島根県の出雲地方に集まり留守になることが由来。
出雲地方では「神在月(かみありづき)」という。
11月 霜月(しもつき) 霜が降りしきる月のため「霜降月(しもふりつき)」と呼ばれたのが由来。
12月 師走(しわす) 一年の終わり、師(僧)をお迎えしてお経をあげてもらう月で、師が忙しく走り回らなければならない月という意味がある。

旧暦では霜が降っていた「11月」

旧暦では12月頃だったことから「霜が降る月」という寒さを感じる名前や、農作物の収穫を終え神さまに感謝を届ける祭祀や神事を行う事から、行事にまつわる名前が見られました。

昔から、日本特有である「四季」と共に生活し、神さまへの祈りを欠かさなかった背景を伺い知る事ができる「和風月名」。
それぞれに付けられた名前から、日本の原風景や人々の暮らしに思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

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