掲載日:2025.10.03

奇妙で面白い!世界の珍しい植物たち

みなさんは植物に興味がありますか?
ご存知のとおり世界には様々な植物が存在しています。その中にはとっても奇妙な植物や珍しい植物があります。

このコラムでは、そんな世界の奇妙な植物や珍しい植物をご紹介します。植物好きな方も、そうでもない方も驚くような不思議な世界を覗いてみてください。

見た目が奇妙な珍しい植物

世界には見た目が奇妙な植物がたくさん存在しています。
今回は「まるで翡翠のような植物」「血を流す大木」「厚い唇を思わせる植物」をご紹介。
何故そのような見た目になったのか予想しながら読み進めてみてくださいね。

翡翠のような美しさ:ジェイドバイン

翡翠のような美しさ:ジェイドバイン

はじめにご紹介するのはこちらの植物。
フィリピン諸島の一部の熱帯雨林地域にしか自生しない、マメ科の品種です。
現地では雨林や小川のそばなどの樹木に絡みつき、1ⅿ近くまで伸びる花房に大ぶりな花を咲かせます。

それにしても美しい色合いの花でしょう。
この色が翡翠の色に似ていることから、ジェイドバインと名付けられました。日本名はヒスイカズラといいます。

■ジェイドバインの花色の秘密

さて、ジェイドバインのこの珍しい花色には訳があります。ジェイドバインは自家受粉できないのですが、その受粉の方法も奇妙で、なんと受粉をコウモリに手伝ってもらっているのです。

具体的にはジェイドバインのつぼ状の花に入っている蜜でコウモリを誘うのですが、その時コウモリが花にぶら下がるとおしべ、めしべが現れその際に花粉がコウモリの頭に付きます。

そして他の株のもとで同様に蜜を飲んでもらうことで、花粉を媒介してもらうことで受粉を行っているのです。そのため夜行性のコウモリに見つかりやすいように、夜でも目立つこの色になったと言われています。

そんなジェイドバインですが、原産地であるフィリピンでは森林の伐採により絶滅の危機にあります。

血を流す大木:竜血樹

血を流す大木:竜血樹

インド洋のソコトラ諸島と大西洋のカナリア諸島に生息する、15ⅿにもおよぶ独特な形の樹木です。ソコトラ島諸島に生息するものはドラセナ・シナバリ、カナリア諸島に生息するものはドラセナ・ドラコという品種で、どちらもリュウゼツラン科ドラセナ属の近縁種です。この2種を竜血樹といいます。

ソコトラ島は特異な進化をとげた貴重な植物が多く自生していることで、2008年に世界遺産登録されました。

■ドラゴンが死ぬと竜血樹になる?

さて、このドラセナ・シナバリとドラセナ・ドラコはなぜ竜血樹という奇妙な名前で呼ばれているのでしょうか。それは樹液が血のように赤いためです。カナリア諸島では「ドラゴンが死ぬと竜血樹になる」という言い伝えがあります。

■金と同等の価値があった竜血樹

この珍しい赤い樹液は、古くから人々の生活に利用されてきました。
その歴史はとても古く、2000年以上とも言われています。古代ローマ時代には鎮痛効果や止血のための薬品として重宝されたそうです。

そして、中世期には染料や顔料として高価で取引されるようになります。またその珍しさから一部では錬金術や魔術のための素材としても用いられた歴史があります。
「赤い金」ともてはやされ高額で取引された時代もあったようで、金と同等の価値があったそうです。

■ヴァイオリンにも使用されている

17~18世紀にかけて制作された最高峰といわれるヴァイオリン「ストラディバリウス」にも竜血樹の染料が使われました。現在制作されるヴァイオリンにも染料として使用されることがあるそうです。

厚い唇:サイコトリア・ペピギアナ

厚い唇:サイコトリア・ペピギアナ

メキシコからアルゼンチンの熱帯アメリカの熱帯雨林に自生する大型の低木です。その奇妙な見た目から別名「熱い唇」「口内炎の木」とも呼ばれています。

一見花のように見える唇の部分は苞葉と呼ばれ、この内部にある小さな五弁状で薄黄色のものが花です。この苞葉は普段は緑色をしていますが、開花時期が近づくと次第に鮮やかな赤へと変わっていきます。そして赤い苞葉の間から唇を開くようにして花が姿を表します。

この鮮やかな色は花粉を媒介してくれるハチドリや虫を引き付けるためであると言われています。草葉は賞用としてだけでなく、痛み止めや筋肉痛を和らげる薬草としても利用されているのだとか。

咲く期間が珍しい植物

植物の魅力の1つに美しい花が挙げられます。
ここからは1しか花が咲かなかったり、100年に一度しか咲かないといわれている植物をご紹介していきます。

嗅げたらラッキー⁉:死体花

嗅げたらラッキー⁉:死体花

世界最大級の花であるショクダイオオコンニャクは、花がロウソクを乗せる燭台に似ているサトイモ科コンニャク属の品種です。
「死体花」とも呼ばれており、イギリスの王立園芸協会はこの花を「世界で最も醜い植物」と表現しています。その理由はこの花が放つ強烈な香りが要因です。

■ギネス記録を持つ花

何故このような奇妙な名前になったかというと、開花の際、アカモンオオブトシデムシという甲虫の仲間を呼び寄せるために腐肉のような強烈な匂いを放つからです。

しかしながら数年に一度、2日間しか花を広げないため、その匂いを嗅げるのはとても貴重な体験です。

またこの花は「最も高さのある花」「最も臭い花」として2つのギネス記録を持っています。
自生地はスマトラ島の熱帯雨林ですが、近年では日本の植物園にも植えられており、インターネットで開花の様子が配信されることもあります。

100年に一度咲くといわれる:竜舌蘭

100年に一度咲くといわれる:竜舌蘭

株幅が2~3mになる大型の植物で、主にメキシコに自生しています。
数十年かけて成長し、一度花を咲かすと枯死してしまいます。花茎はとても高く成長し、7ⅿほどにもなり目立ちます。

リュウゼツラン属はいくつかの品種に分けられるのですが、特に有名なのはアガベ・アスールという品種です。
メキシコのお酒、テキーラはこのアガベ・アスールの葉の根元で長い年月をかけて育つ球茎を主原料に作られます。

■テキーラとメスカルの違いは?

そもそもテキーラとはハリスコ州テキーラ市周辺でアガベ・アスールを用いて限られた製法で作られた蒸留酒のみを差す言葉で、それ以外のものはメスカルと呼ぶそうです。メスカルはアガベ・アスール以外のリュウゼツラン属の球茎も用いられています。

育つ場所が珍しい植物

世界には他の植物の根に寄生して成長する植物や、特定の地域にしか咲かない植物が存在しています。ここからは育つ場所が珍しい植物に焦点を当て、その生態や特徴についてご紹介していきます。

まるでクリーチャー:キナバルヒドノラ

キナバルヒドノラ © Seth Musker

アフリカの砂漠地帯に生息する寄生植物で、トウダイグサ科の植物の根に寄生し、その養分を宿主から奪って育つという奇妙な生態をしています。
「全寄生植物」と呼ばれる光合成ができない植物であり、寄生根で宿主植物に寄生し、地上に大きな花を咲かせます。光合成をしないため葉がありません。

この奇妙な見た目の花は、開くとまるで肉が腐ったような悪臭を放ちます。この悪臭で、フンコロガシなどをおびき寄せ花粉の媒介者にするのです。
花の見た目、悪臭や他の植物に寄生する生態など、まるで映画に出てくるクリーチャーのようですね。

■全寄生植物と半寄生植物の違い

他の植物に寄生する寄生植物には「全寄生植物」と「半寄生植物」の2種があり、どちらも宿主から養分を奪って生きています。
この2種の違いは「全寄生植物」は光合成をする能力をもたず、全ての養分や水を宿主に頼るのに対して、「半寄生植物」は光合成する能力はあるため部分的に養分や水を宿主に頼って生きていることです。「半寄生植物」の例としてはヤドリギなどがあります。

ハワイの蜂を虫媒花とする:シルバー・スウォード

シルバー・スウォード

マウイ島のハレアカラ山とハワイ島のマヌア・ケア、ヒマラヤの3か所にしか生息しない珍しい高山植物で、姿を変えながら成長するため変態植物とも言われます。
銀色の尖った葉を生やすことから、別名「銀剣草」とも呼ばれており、成長すると茎の高さが2ⅿ以上にもなります。花は10~50年に一度だけ咲き、その後は種を残して枯れ死してしまいます。

ハワイに生息するシルバー・スウォードはハワイ固有種のHylaeus volcanicaという蜂に花粉を媒介してもらっています。
絶滅危惧種に指定されている貴重な植物で、ハワイでは手で触ると罰せられるそうです。

奇妙な植物や珍しい植物の世界

いかがだったでしょうか。世界にはこんなにも奇妙な植物や珍しい植物が生息しているのです。その中には竜血樹のように人々の生活に密接に関わってきた品種もあります。奇妙な植物や珍しい植物の生態や歴史を知ることであなたの知的好奇心を満たすことができたなら幸いです。

また、ジェイドバインやショクダイオオコンニャクは日本の熱帯植物園でも見ることができます。このコラムを読んで興味がわいたらぜひ実物も見てみてください。写真とはまた違った姿を見ることができますよ。


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