カラフルな色合いが魅力!インドが持つ色彩文化や地域による違い、人々の美意識をご紹介

みなさんは、「インド」と聞いてどのようなイメージを持ちますか?
カレーなどの食べもの、タージマハルなどの観光スポットなど、多様な魅力にあふれたインドですが、伝統衣装のサリーのカラフルさにも目を奪われるのではないでしょうか。

そこで、このコラムでは、インドの「色」に焦点を当ててご紹介していきたいと思います。
インドの色彩文化や人々の美的センスと色の好み、色が大きく関わるお祭りや国旗、さらには地域ごとの色の特徴などもわかりやすくていねいに解説します。

インドがお好きな方、インドの色彩文化に興味がある方などは、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてくださいね。

インドの色彩文化

まずは、インドにおいて色がどのような意味を持ち、どのようなものを象徴するのか、表でチェックしていきましょう!

意味・象徴
愛と豊穣を意味する。シャクティ(女性的な霊力)、創造、情熱、繁栄などを象徴。
ピンク 健康、遊び心
平和、真実、知識
野心、権力、幸福、富、才能
黄/
サフラン色
幸福と平和、精神的な浄化、新たな始まりを意味する。太陽や光、知恵の象徴。
新しい始まり、豊かさ、自然
ヒンドゥー教の神クリシュナ、霊的な力や宇宙的な次元を象徴。
濃紺 性愛のイメージ
高貴さ、神秘性、清浄さ、忍耐
破壊、時間や運命、死後の世界を象徴

インド人の美的センスと色の好み

インド人の美的センスと色の好み

インドでは、色がさまざまな意味を持っていることがわかりましたね。続いては、インドの人々が持つ美意識と色の好みについて、文化的要素が色選びに与える影響とともにご紹介します。

まず、地域ごとに好まれる色が異なるのが特徴です。後ほど詳しくご紹介しますが、寺院ひとつをとっても、南はカラフル、北はシンプルで荘厳自然色が多いといった個性が見られます。

また、インドの人々は、一般的に原色、ビビットカラー、金色を好むと言われています。
一方、パステルカラー、グレイッシュカラー、アースカラー、ナチュラルカラーに関しては無関心で、好きとも嫌いとも言われないそうです。
伝統衣装のサリーを思い浮かべても、はっきりとした原色のイメージが強いですよね。

現代のトレンドや流行、若い人の新しい価値観としては、黄色がやや嫌われる傾向にあり、赤の人気が強いということが調査の結果わかっています。
黄色はもともと重要な色とされていましたが、インドではテロが多発しており、実行した団体のテーマカラーがサフランイエローと呼ばれる赤みの黄色だったことが理由ではないかと言われています。

赤は、なんと冷蔵庫のカラーとしても人気なんだとか。調査では、冷蔵庫の所有色も欲しい色も赤がトップという結果になっています。

インドにおける色の重要性と祭り

ここからは、インドにおける色の重要性と、色が大きく関係するお祭りや行事、タブーについてご紹介します。

ホーリー祭りのカラフルな色彩

ホーリー祭りのカラフルな色彩

インドで「色」が重要な意味を持つお祭りが、ホーリー祭りです。

「色の祭典」とも呼ばれるこのお祭りの最大の特徴が、赤、緑、青、黄、ピンク、オレンジなど、カラフルな粉や水を参加者同士でかけ合うこと。

赤は情熱や愛、豊穣を、緑は新しい始まりを、青はヒンドゥー教の神クリシュナを、黄色はインド全土で強力な自然療法とされるウコン、そして幸福と平和などを表します。また、ピンクは健康や遊び心、オレンジは勇気といった意味合いがあります。

ホーリー祭りでカラフルな粉や水をかけあうのは、祭りの起源にも由来しています。昔、肌が青黒いことを気にしていたクリシュナ神。色白の恋人・ラーダーに肌の色が原因で愛してもらえないのではないかと思ったクリシュナは、母にどうしたらいいか相談します。

クリシュナの母は、遊び心で「ラーダーの肌を好きな色に塗ってしまえばいいのよ」といいます。いたずら好きのクリシュナは、母の言葉通りにラーダーの顔に色を塗って遊びました。これが、身分や肌の色を超えて、誰もが平等に色を塗り合って愛と喜びを分かち合う、ホーリー祭の起源となったのです。

なお、ホーリー祭りについては以下の記事で詳しく紹介しているので、気になる方はぜひ読んでみてくださいね。

結婚式における色の選び方

結婚式における色の選び方

インドの花嫁は白いウエディングドレスを着ない、といううわさを聞いたことがあるかもしれません。
実はこれは本当。

白は喪に服すための色なので、結婚式のようなお祝いの場では着用しません。インドの結婚式で着用される伝統的な色は赤で、金色の装飾と合わせて豪華さを演出します。また、現代的なトレンドとして、クリーム色などのドレスを着る方もいるようです。

色にまつわるタブー

色にまつわるタブーもあります。具体的には、白や黒はプレゼントやそのパッケージにはふさわしくないとされているので注意しましょう。

白は喪に服すための色なので、白い花を贈るのはタブーです。また、上記のように、花嫁衣裳にも白は使われません。また、黒は死/破壊を意味するため、こちらも避けましょう。

インドには青い肌の神様が多いのはなぜ?

インドには青い肌の神様が多いのはなぜ?

インドの主要な宗教のひとつであるヒンドゥー教には、さまざまな神様がいますが、実は「青色」であることが多いことを知っていますか?たとえば、シヴァ(灰色で描かれる場合もある)、ヴィシュヌ、クリシュナ、ラーマ、カーリーなどが挙げられます。

その理由はいくつかあります。
たとえば、浅黒い肌(土着の神様由来)を表すときに、絵画では黒色だと分かりにくいため青い肌で描くようになったという説です。

また、先ほどご紹介したように、黒は避けられる色でもあり、青は宇宙的な性質を表すことから、黒よりも青が神を表現する際に適していたという説もあります。

なお、シヴァの場合は、世界を救うために毒を飲んだ結果、「青い喉」になったというエピソードも残っていますよ。また、ほかの色として灰色も使われますが、これは肌に灰を塗った修行者を表しています。

インド国旗の色の意味

インド国旗の色の意味

インドの国旗に使われている3色にも、さまざまな奥深い意味が込められています。

まず、国旗上部のサフラン色は勇気と犠牲(インドの独立闘争における国民の勇気と、その過程でおきた多くの犠牲)を象徴しています。

中央の白色は平和と真実、知識を意味し、インドの人々が追求すべき誠実さと真実を示しています。

下部の緑色は信仰と繁栄、豊かさや成長、自然の美しさ、騎士道、公正さなどを表しています。

国旗の中央には、「アショーカ・チャクラ(青色の法輪)」があります。インドで初の統一王朝となったマウリヤ朝第3代の王アショーカ王に由来するもので、仏教のシンボルとして国旗に採用されています。24の車軸は永遠と輪廻転生の思想、真実、ダルマ、徳を表し、青色は空と海の象徴とされています。

地域ごとの色の特徴

インドは、南はカラフル、北はシンプルで自然色が多いなど、地域ごとに色彩感覚が全く違うと言っていいほど、色の使い方に特色があるんです!

南インド

南インド Bernard Gagnon,
CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

南インドの寺院では、周囲の壁が赤白ストライプになっていることや、極彩色のゴープラム(寺院塔門)が特徴的です。赤白ストライプの理由は諸説ありますが、赤はシャクティ、白はシヴァを表しており、シャクティとシヴァが一体となって働くことを象徴しているという説もあります。

北インド

南インドと比べて、シンプルな色彩が多く、砂岩の赤、白大理石、金色の装飾などが特徴的な北インド。砂岩や大理石など、地域で採れる自然の色を使っていることがわかります。

ちなみに、北インドでは、サリーにも使われる金や銀の糸を使った「ザリ」という技法がよく使われています。見た目が豪華になる事から、富裕層から富や繁栄の象徴として親しまれてきました。

西インド

砂漠地帯が広がる西インドでは、砂漠でも映えるような鮮やかな民族衣装やパステル建築(ゴア)などが特徴です。また、西インドのラジャスタン州には、街の別名として色の名前が使われていることがあります。

東インド

インド東部の西ベンガル州ビシュヌプールには、テラコッタ色の寺院があります。寺の外壁がテラコッタ(焼いた土)という陶板で構成されていて、この陶板にはヒンズーの神々や動物、人々などが描かれています。

また、赤白サリーもあります。赤白の組み合わせは祝福や吉兆を強調するもので、特別な日などに着用される縁起の良い衣装です。

さらに、プリーなどに代表される東インドの街には、カラフルな床絵や壁画が描かれていることもあります。プリーはヒンドゥー教の四大聖地と呼ばれており、神様の絵などがところどころで見られます。

中央インド

中央インドの色の特徴は、自然色+民族アートの鮮やかさが組み合わさった、活気的な色彩が特徴です。エネルギーや暖かみを表現するために赤、青、緑などの色がよく使われます。

中央インドの民族アートの代表的なものとして、パルダーン・ゴンド族が描くゴンド・アートがあります。自然なやさしい色合いが特徴で、民族の神話や寓話、森の動植物、村の日常生活などが描かれます。

インドの街にまつわる色

インドの街は、「色+City」というように、色で表現されることも多いんです!ここからは、インドの街にまつわる色と、その由来や歴史をご紹介します。なお、ここでご紹介する4つの街は、いずれもインド西部のラジャスタン州にあります。

ピンクシティ:ジャイプール

ピンクシティ:ジャイプール

2019年7月に世界遺産に登録され、特に注目を集めるジャイプールは、「ピンクシティ」と呼ばれます。旧市街にはさまざまな歴史的建造物があるのですが、それらがやさしいトーンのピンクに彩られています。

ジャイプールで採れる建築用の石が独特のピンク色をしていること、イギリスがインドを統治していた際に英国王子が訪れた際、歓迎として、ピンク色をさらに鮮やかにしようと、街全体をピンク色に塗ったところ、王子がとても感動したことなどが、この街がピンクシティとなった理由です。

ブルーシティー:ジョードプル

ブルーシティー:ジョードプル

ジャイプールから西に約300kmの場所にあるのがジョードプル。旧市街全体が真っ青で、「ブルーシティー」と呼ばれています。

街が青い理由は実にさまざま。暑さを和らげるため、青色に使われる塗料が害虫駆除の効果があるからといった生活に密接した理由もあれば、このあたりでは身体が青い「シヴァ神」を信仰する方が多いからといった宗教的な理由もあります。

ホワイトシティ:ウダイプル

ホワイトシティ:ウダイプル

ラジャスタン州の古都・ウダイプルは「ホワイトシティ」と呼ばれています。

王族が住む白亜の宮殿といった白い建物が多いことからこの名前が付いたと言われています。ウダイプルはもともとインドとアラビア海を結ぶ交通の要でした。多くの人が行き交う場所にある白い宮殿は、外観だけでなく内部もとても豪華なんです。

ゴールデンシティ:ジャイサルメール

ゴールデンシティ:ジャイサルメール

ラジャスタン州なかでも西部に位置するジャイサルメールは「ゴールデンシティ」と呼ばれます。黄色の砂岩を用いて建物が造られており、それが夕日に照らされると金色に輝いてみえることが名前の由来です。

ジャイサルメールは、中央アジア・中東・エジプトなど、中継貿易の拠点として栄えた街。そこに12世紀に建設されたジャイサルメール城は、黄砂岩でできており、強固な城として現在しています。

雑学

インドの虹が持つ素敵な意味とは?

インドの虹が持つ素敵な意味とは?

最後に、ちょっとした雑学として、インドの虹が持つ素敵な意味をご紹介します。

インドでは、虹は8色(赤、橙、黄、緑、青、青緑、紫、藍)とされています。8色の虹はアルクシャ(Arkusya)と呼ばれ、古くからインドの人々のあいだで大切にされてきました。

なお、「アルクシャ」はサンスクリット語に由来する言葉で、古典や神話的文脈で使われます。
「現代ヒンディー語では「インドラ(神)の弓」という意味を持つ「インドラダヌシュ」という言葉がありこちらの方が日常会話やニュースでよく使われます。

インドの神話では、虹は神様たちが地上と天界を行き来するための橋と言われています。また、神話のなかには、英雄が虹の橋を渡って天界へと旅立つ描写も。インドの人々にとって虹は単に美しい現象ではなく、神様とのつながりを感じる特別な存在でもあるのです。

また、幸運や希望の前触れや象徴とされ、お祭りなどでアルクシャが見れたときには人々は大喜びするそうですよ♪

奥深いインドの「色の世界」を楽しもう

インドでは、色が文化や宗教などの影響を大きく受け、それぞれに特別な意味や象徴するものがあることがわかりましたね。結婚式では白のドレスを着ないなど、日本との違いも興味深かったのではないでしょうか。

地域による違いや、街にまつわる色があるなど、インドの色彩文化はとても奥深いもの。このコラムが、みなさんがインドやインドの文化に興味を持つきっかけになればうれしいです!


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