世界最古の水筒は「ひょうたん」だった!? 驚きの歴史と様々な使い方とは

8月8日は「ひょうたんの日」。ひょうたんは装飾品や縁起物として知られていますが、実は「世界最古の水筒」とも言われるほど、古くから人類の暮らしに欠かせない存在でした。
天然素材の容器として、人類最古の栽培植物のひとつにも数えられるひょうたん。
そんなひょうたんの起源や用途、意外な事実など魅力に迫ります。

「ひょうたん」ってどんな植物?

ひょうたんについて、姿、形は思い浮かぶけれど、よく知らない方も多いのではないでしょうか。

ひょうたん(瓢箪)はウリ科の植物の一種で、よく皆さんが夏に食べる野菜(きゅうり、スイカ、カボチャ、メロン、ゴーヤ、ズッキーニなど)の仲間です。

「ひょうたん」ってどんな植物?

果実は成熟すると硬くなり、乾燥させて中をくり抜き穴を開けることで、水やお酒、調味料を入れる自然の容器として活用されてきました。
原産地は西アフリカともいわれており、その後世界中へと広がり各地で独自の用途と文化が育まれました。

暖かい国が原産国なので、温暖な気候を好み、日光が大好きです。育つ土壌が超えているとより大きく成長しやすくなります。

形は細長いものから独特のくびれのあるタイプ、小さいものから大きなものまで、さまざまな種類があります。こんなにも形やサイズが1種類で違う植物は実はとても珍しいといわれています。

英語で「ひょうたん」はgourd(ゴード) や、特に楽器や容器に使うボトル状のひょうたんはcalabash(カラバッシュ) といいます。

漢字では「瓢箪(ヒョウタン)」と書きますが、「瓢」がお椀、「箪」がお皿を意味しています。日本語では「ひょうたん」と平仮名で書かれることも多く、親しみやすさを感じさせる語感も人気の理由です。

また、ひょうたんの「ひょう」という音は果実が乾燥して中でタネがカラカラと鳴る様子を表しているという面白い名前の語源があります。

その他にも日本では縁起物として親しまれ、古くから祭礼や装飾品に用いられています。

なぜ「世界最古の水筒」なの?ひょうたんの歴史と人類との関係

なぜ「世界最古の水筒」なの?ひょうたんの歴史と人類との関係

ひょうたんは「世界最古の栽培植物」のひとつと言われ、人類とともに歩んできた歴史がとても長い植物です。なんと約1万年前から人類に利用されています。

もっとも古い人類とひょうたんの歴史は、メキシコのオアハカ地方や南米ペルーの遺跡から発見されており、紀元前8000〜7000年頃のひょうたんを使用した痕跡が見つかっています。用途としては、水や種の保存、調理器具、さらには音響装置など、非常に幅広い目的で用いられていました。

ひょうたんはその形状と素材の特性から、軽くて丈夫、しかも密閉性も高く、携帯に非常に適していたため、「世界最古の水筒」とも呼ばれています。

また日本でも、長崎県の福井洞窟から約5300年前の縄文時代中期に器として加工されたひょうたんが発見されており、同じように日常で使われていたことがわかります。

このように、ひょうたんは人類の生活に欠かせない道具として長い間使われてきました。
特に液体を持ち運ぶという点においては、陶器や金属容器に比べて軽量で割れにくいという大きな利点があり、自然環境に寄り添った暮らしの中で重宝されていたことが想像できます。

ひょうたんは、人類が自然と向き合う中で培ってきた“知”の象徴ともいえる存在なのです。

ひょうたんはどうやって世界中に広まった?2つの有力説を紹介

そんなひょうたんは、どのようにして世界中に広がったのでしょうか。
ひょうたんが世界中に広がった経緯については、主に2つの説があると言われています。

海を漂っていった説

ひょうたんの種子はとてもに軽く、さらに水に浮く性質を持っています。加えて、塩水に長時間浸かっても発芽可能です。

そのため、海流に乗って遠く離れた大陸へ自然に伝わったという説があります。
実際に太平洋を渡って漂着した例も報告されており、植物が自力で海を越えて分布を広げた可能性が考えられています。

人によって運ばれた説

人によって運ばれた説

人類の移動とともにひょうたんも運ばれたという説です。ひょうたんは水の運搬に適しており、農耕・狩猟民族にとって持ち運びのしやすい道具でした。
その利便性から、移動する人々が意図的に栽培・携行した結果、世界中へ広まったと考えられています。

ひょうたんはどこにでも育つというわけではありませんが、比較的乾燥にも強く、つる性植物として管理しやすいという特徴があります。
そうした性質もまた、人の移動とともに持ち運ばれた理由のひとつと言えるでしょう。

水筒だけじゃない!ひょうたんの多彩な活用法

ひょうたんは軽くて丈夫なこと以外にも、彫る、透かす、焼く、塗る、描く、染める、変形させるなど加工が自由自在です。
持ち運びにも非常に適していたため、驚くほど用途は多岐にわたります。

なんと人類が道具として使っているヒョウタンの使い道には、200種類以上もあるのだそうです。

そんな世界中で使われてきたひょうたんの道具の種類を一部ご紹介します。

◇持ち運び容器・保存容器

持ち運び容器・保存容器

水だけではなく、油、お酒、お茶、ミルクなどの液体を持ち運ぶことが可能でした。
さらにはバター、ヨーグルト、ごはん、石灰、火薬、筆、服などを入れる器や保管容器として、世界各地で使われています。

例えば、中国ではコオロギ入れとして、南米ではマテ茶を入れる容器として使われていました。

また昔から薬を入れる容器としても使われており、丸みのある形は生命の源である「水」や「生命力」を連想させ 医療のシンボルともされています。

◇食器・掬う道具

縦にも横にも切って使える加工のしやすさから、食器やスプーン、ひしゃくなど掬う道具としても使われていました。

朝鮮半島では、ヒョウタンを二つ割りにして作った柄杓や食器を「パガジ」と呼び、庶民の間で広く用いられていました。
現在ではプラスチック製のものが主流ですが、ひょうたんの形の名残があります。

◇喫煙具・水パイプ

穴を開けて喫煙具・水パイプとしても親しまれていました。

またタバコの収納に 「シャーロック・ホームズ」の挿絵や映画で有名になった、こんもりした形のパイプがあります。
これはタンザニア産のヒョウタンでできた「キャラバッシュパイプ」というものです。

◇楽器

楽器

ひょうたんは中の果実が感想して空洞になるため、打つ、鳴らす、共鳴、吹くなど多様な楽器としての演奏方法があります。
そのため昔からひょうたんを利用した楽器が数多く存在しています。

代表的な楽器をいくつか見ていきましょう。

ギロ(中南米の打楽器)

ヒョウタンの表面に刻みを入れ、棒でこする、叩くなどして演奏する打楽器のことです。ラテン音楽などに欠かせない楽器として知られています。

詳しくはこちら世界の楽器-中南米編-

イプ(ハワイの打楽器)

イプ(ハワイの打楽器)

イプはハワイ語で「ひょうたん」を意味し、フラダンスでよく使われます。

詳しくはこちら世界の楽器-ハワイ編-

シェケレ&マラカス(アフリカ/中南米のシェイカー)

シェケレは西アフリカのヨルバ族で生まれた伝統的な打楽器、マラカスはラテン音楽にかかせないリズム楽器です。
どちらもひょうたんを中空にしたものに、ビーズや種子などを網状に編み込んだもので、振って音を出す楽器になります。

詳しくはこちら世界の楽器-アフリカ編-

コラ(アフリカのハーブ)

西アフリカが発祥の卵を縦に割ったような丸みのある胴を持ったの撥弦楽器です。
セネガル、ガンビア、マリ、ギニア、ブルキナファソなどの国々で300年以上に渡って受け継がれてきた伝統的な民族楽器で ハープやギターの原型とも言われています。

フルシ(中国)

ひょうたん笛とも呼ばれ、ミャンマー、タイなどでも用いられる空気の振動で音を出す気鳴楽器です。
音色は笙、ハーモニカ、オルガン、ピアニカなどと似ています。

プーンギ(インドの蛇使いの笛)

こちらも空気の振動で音を出す気鳴楽器です。
ヒョウタンの底に竹管などを2本差し込んだもので、ヘビ使いが演奏する「蛇つかいの笛」として知られています。

詳しくはこちら世界の楽器-インド編-

◇装飾品

軽くて加工のしやすい特徴を活かし、ひょうたんから様々な装飾品が作られていました。

装飾品

変わったものだと、ニューギニア島などでは、先住民によって「ペニスケース(コテカ)」として加工され、民族衣装の一部となっています。
これは単なる隠蔽具ではなく、民族によって形や大きさに特徴があり、タバコやお札を入れられる便利なタイプまであります。
TPOによる使い分けや流行まであるとされています。

◇神具・縁起もの

ひょうたんは神話、伝説、信仰、呪術といった精神的な分野と結びつき、神具・縁起ものとしても世界各地で知られています。

例えば、韓国ではひょうたんでできた「パガジ(ひょうたんのこと)仮面」と呼び、主に仮面劇の仮面や、結婚式で邪気を払うために踏む道具として用いられました。

また「イカイカ」というハワイの伝統的なヘルメットがあります。イカイカとは、ハワイ語で「強さ」や「勇気」を意味する言葉で、ひょうたんを用いたこのヘルメットは、古代ハワイの戦士が着用していたものです。今では魔除けや幸運のお守りとして人気があります。

中国や日本では、ひょうたんは縁起物としてだけでなく、絵画や焼き物にも多く描かれています。

◇インテリア・民芸

インテリア・民芸

江戸時代には、ひょうたんに絵を描いて飾り物とする「絵付け瓢箪」も庶民に親しまれていました。

また現在も使われているカラフルに彩られたひょうたんランプは、光と色のコントラストで幻想的な空間を演出できます。

他にも観賞用オブジェとしての活用方法もあり、絵を描いたり、表面に模様を彫ってみたり、ひょうたんの形も含めて楽しまれています。

自分だけのひょうたん水筒を作ってみよう!

自分でもひょうたんで「何か作ってみたい」と思われた方もいるのではないでしょうか。

ひょうたんが最古の水筒とされるのは、軽くて加工しやすく持ち運びに便利なだけでなく、表面の細かな穴が気化熱を発生させ、水の温度を快適に保つという、まるで自然がつくった魔法瓶のような特性を備えているからです。

そんな方のために、簡単にできるひょうたん水筒の作り方をまとめてみました。

自分だけのひょうたん水筒を作ってみよう!

1.収穫
秋ごろ、表皮が硬くなったひょうたんを収穫します。

2.中身を腐らせる
方法① 大きな容器に水を入れて密閉し、1~2週間くらい水につけ置きにします。そうすることで、果肉を腐敗させ取り出すことができます。
しかし、この方法だと時間もかかり中身を腐らせるため、匂いもキツイことが難点です。そのため、次の方法②をオススメします。

方法② 「ひょうたんごっこ」という市販されている酵素を使う方法です。中身を腐らせる工程が1~3日で終わり、匂いもかなり軽減され短い時間で簡単に済ませることができます。

3.洗浄とあく抜き
内部の残留物をしっかり洗い落とし、必要に応じて重曹や酵素であく抜きします。

4.乾燥
風通しのよい日陰で完全に乾燥させます(数週間〜数ヶ月)。
自然乾燥させたひょうたんは、飴色のようなやさしい色合いが特徴で、工芸品としての美しさも持ち合わせています。

5.加工・仕上げ・栓を作る
内部を殺菌し、表面に柿渋や漆を塗ることで防水性と耐久性を向上させます。
また栓を作る際は、ひょうたんの口部分に合うように木製の栓や、樹脂製の栓を差し込みます。

こうして作ったひょうたん水筒は、ステンレスボトルのような保温・保冷機能、ペットボトルの手軽さには適いませんが、なんといっても歴史ある天然素材で個性的な形が魅力的です。

雑学

ひょうたんにまつわる面白トリビア3選

ひょうたんについて意外と知られていない面白トリビアを3つ取り上げてみました。
皆さんはいくつ知っているでしょうか。

①もともとくびれていなかった⁉ ひょうたんのかたちは突然変異

現在一般的なひょうたんの「くびれ型」は、実は突然変異から生まれたものって知っていましたか。
もともとは球状や細長い形が主流でしたが、偶然生まれたくびれ形が人々に好まれ育てられた結果、今の「くびれたひょうたん」が広まったと言われています。

②ひょうたんは食べられるの?

ひょうたんは食べられるの?

基本的に果肉には苦味成分が含まれており、毒性があるため食用には適しません。
ただし、品種改良された一部のひょうたんは、あく抜きをしたうえで漬物(ひょうたん漬け)として食べられます。

③豊臣秀吉とひょうたんの関係。馬印(うまじるし)として使われていた⁉

馬印(うまじるし)とは、武将が戦場で自分の居場所や本陣を示すために、馬のそばや本陣に立てた標識のことです。
戦国時代、豊臣秀吉が馬印に「千成瓢箪(せんなりひょうたん)」を用いていました。ひょうたんは多くの実を結ぶことから、繁栄や勝利の象徴とされています。

古代から続く天然のマルチツール「ひょうたん」の魅力を暮らしに

ひょうたんは、古代から現代まで、人類の暮らしに寄り添い続けてきた植物です。単なる容器にとどまらず、文化や芸術、宗教、そして遊びや学びの道具として、多面的な役割を果たしてきました。

身の回りにある装飾や道具の中にも、ひょうたんの影響は数多く見られます。その歴史や成り立ちを知ることで、ただの「不思議な形のもの」がより意味深く、美しく感じられるかもしれません。

もしも興味が湧いたなら、ひょうたんの種を蒔いて育ててみるのはいかがでしょうか。

また夏休みの自由研究に、親子でオリジナル水筒を作りにチャレンジするのも楽しそうですね。土に触れ植物と向き合いながら過ごす経験、何かを自分の手で作るという経験は、きっと心豊かな時間になるでしょう。

現代でもエコや伝統文化に目を向ける中で、ひょうたんの価値は再注目されています。

あなたも、世界最古の水筒――ひょうたんの魅力を、日々の暮らしに取り入れてみませんか?


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