掲載日:2025.07.07

着物の八掛(はっかけ)とは一体なに?八掛の役割とTPOに合わせた選び方を紹介!

皆さんは、着物の「裏地」の意味を気にしたことはありますか?
袷(あわせ)と呼ばれる着物には、八掛(はっかけ)と呼ばれる裏地がついています。
八掛があることで着心地が良くなるだけでなくおしゃれ度が上がり、着物をさらに楽しむことができます。
また、八掛には色々な種類があり、それぞれに意味や役割もあるのです。

そこで今回は、見えないおしゃれ「八掛」の役割や種類、着物との合わせ方などについて、八掛を現代風にアレンジした商品とともに詳しく解説していきます。

八掛とは?意味や基本知識とその役割

着物には「八掛」と呼ばれる部位がありますが、着物初心者の方にはあまり聞いたことのない部位だと思われます。
そこで今回は、八掛の意味や役割などの基本的なことについて紹介しましょう。

八掛とは

八掛とは

「八掛」とは、「袷(あわせ)」と呼ばれる裏地をつけて仕立てた着物の、袖口・前身頃の裾・後ろ身頃の裾・衿先(えりさき:衿の下先の部分))・衽(おくみ:前身頃に重ねて縫い付ける衿(えり)から裾(すそ)まで続く約15㎝幅の布)の裏に付ける布のことを指します。
衿先に2枚、衽に2枚、前身頃の裾に2枚、後ろ身頃の裾に2枚の合計八枚を、1枚の大きな布を八つに裁って作った布を掛け合わせることから「八掛」と呼ばれるようになりました。
もともと袖口には違う布が使われていましたが、近年は袖口も同じ布を使うため八掛の1つとして加えられています。

八掛のルーツ

八掛が行われるようになったのは江戸時代からだといわれています。
八掛のルーツには諸説ありますが、江戸時代に発令された「贅沢禁止令」に反発した裕福な町人たちが、目立たない裏地部分に贅を尽くしたことが八掛のルーツであるという説と、江戸時代の芸者たちは裾の長い着物を引きずって歩いており、その際に裾が広がって裏が見えるのでその部分で色気や意外性を演出するために豪華な裏地を付けるようになったことがルーツであるという説などがあります。

八掛の役割と特徴

八掛は裾や袖口から1~2mm程度見えるように仕立てるという特徴があります。

これは、八掛に「着物の生地を保護する」「裾裁きを良くする」「さりげなくおしゃれに見せる」といった役割があるからです。
もともと八掛は贅沢の象徴でしたが、一般にまで広がったことで、より実用的な目的で仕立てられるようになったからだといわれています。

着物の裾や袖口などは着ている人が動くことによって擦れたり当たったりする部分です。この部分を八掛で保護することによって着物の劣化を防ぐことができます。
また、八掛が見えることでおしゃれを楽しむこともできるので、八掛の布は着物の柄や色との調和が取れるものを選びます。

八掛の種類はなにがあるの?特徴も紹介

八掛の種類はなにがあるの?特徴も紹介

八掛には、大きく分けて4つの種類と紬用のものがあります。
それぞれの特徴や着物の種類によって使われ方の違いがあるので、ここで詳しく解説していきましょう。

  • 無地八掛
  • ぼかし八掛
  • 共八掛
  • 柄八掛
  • 紬用の八掛(紬八掛)

無地八掛

無地八掛とは、白生地を単色で染め上げた模様の無い八掛のことです。
一番スタンダードな八掛なので、付け下げ・色無地以外のカジュアル寄りな着物などに付けられます。

ぼかし八掛

ぼかし八掛とは、白生地をぼかし染めにした生地を使った八掛のことです。
こちらもスタンダードな八掛なので、カジュアル寄りな着物からフォーマル寄りな着物まで幅広く使われています。

また、淡い色の着物に合わせることで透けて表地に響かないようにしながらおしゃれに見せるという効果もあります。

共八掛

着物の表地と同じ生地を使った八掛のことで、柄も付いています。
主に訪問着・留袖・色留袖などに付けられます。

柄八掛

柄がついた生地を使った八掛のことで、主に2種類あります。
1つは、とび柄や無地などの着物に合わせるもので全体に小紋柄が付いています。
もう1つは、付け下げや色無地などに使われるもので、上前にワンポイントの柄が付いています。

紬用の八掛(紬八掛)

先に染められた糸を使って織りあげられた「紬(つむぎ)」と呼ばれる生地を使った八掛のことで、主に紬(先染めの糸で織られた生地)などの織物で仕立てられた着物に付けられます。

八掛と胴裏はどう違うの?詳しく解説

八掛と胴裏はどう違うの?詳しく解説

着物には、八掛とは別に「胴裏(どううら)」と呼ばれる裏地があります。
八掛とは違う特徴や役割があるので、解説していきましょう。

胴裏とは

「胴裏」とは、着物の胴の部分の裏側に付ける生地のことを指します。
八掛とは違って見えない部分にあるため、主に白や白に近い薄いピンク色の生地が使われるのが特徴です。
胴裏には、「着物自体を支える」「着崩れを起こしにくくする」「着心地を良くする」といった役割があるため、一般的には絹や羽二重などの肌触りが良くて丈夫な生地が使われます。
しかし、胴裏があたる部分は、背中やお腹周りなど汗をかきやすい部位のため汗などで汚れやすく、黄ばんだりカビが生えたりするので、定期的に陰干しをします。
汚れがひどくなった場合は、専門のクリーニングに出したり新しいものに交換したりすると良いでしょう。

八掛と胴裏の違い

八掛と胴裏の違いは、見せるかどうかという点です。
胴裏は見せない部分にあり衣服の裏地としての役割が強いので、表に透けない色の生地を使うのが一般的です。
一方、八掛は裏地とはいえ戸見える部分にあるため、装飾的な役割が大きいのが胴裏との大きな違いとなります。
そのため、八掛には鮮やかな色のものや柄が付いたものなど華やかな生地を使い、着物に合わせて選ぶことで着物の美しさを引き立てる役割があるのです。

八掛を着こなす!おすすめの選び方

八掛を着こなす!おすすめの選び方

八掛は、着物の種類や季節、着物を着るシーンによって選び方が変わってきます。
今回は、八掛の選び方について紹介しましょう。

着物の生地で選ぶ

着物には、生地を織りあげてから染めたり柄を付けたりする「やわらかもの」と先染めした糸を織り上げた生地を使った「かたもの」があります。
「やわらかもの」と呼ばれるのは縮緬(ちりめん)や羽二重(はぶたえ)、繻子(しゅす)、絽(ろ)などの絹糸を織りあげてから染めた「後染め」の着物で、「かたもの」と呼ばれるのは紬や紗など絹織物や麻織物の上布(じょうふ)、木綿の織物の絣(かすり)などの糸を先に染めてから織りあげた「先染め」の着物です。

八掛には、「やわらかもの」用の「パレス八掛」と呼ばれる後染め生地のものと、「かたもの」用の「紬八掛」や「駒撚(こまより)」と呼ばれる先染め生地のものがあり、それぞれの表地に合わせて選びます。
これは、「やわらかもの」と「かたもの」の吸縮率(湿気を吸った時の生地の縮み具合)が異なるためです。
「やわかもの」は縮みやすく、「かたもの」は縮みにくいので、性質が同じものを選ぶのが一般的です。
しかし、紬は傷みやすいので、頻繁に紬の着物を着る人はあえて「やわらかもの」の着物に使う八掛を付ける人もいます。

着物の色柄による選び方

八掛は、着物に使われている色や柄で合わせましょう。
着物の表地と同じ、もしくは同系色の八掛は、個性的ではないものの大人なイメージになります。
また、裾を柔らかく見せる効果もあるので上品なイメージを出したい人におすすめです。
同系色でも明るめのトーンを合わせると、若々しく個性的なイメージになりますが、バランスよく纏まります。

着物の表地とは反対色を合わせると個性的なイメージになりますが、明るさのトーンを抑えるとシックで落ち着いたイメージになります。

柄八掛を合わせると個性的で可愛らしいイメージになります。
選ぶのが難しいと感じる場合は、着物や帯に使われている柄や色に合わせると、バランスよく纏まるのでおすすめです。
また、無地の着物に柄八掛を合わせると粋なイメージになります。

ただし、着物の色が薄い色の場合に濃い色の八掛を使うと表に透けて見えてしまうので、ぼかし八掛や薄い色の八掛を選ぶと良いでしょう。

着物の着用場面による選び方

八掛を合わせる時には、どんな場面で着るのかを考えて選ぶことも重要です。

訪問着や留袖、色留袖などのフォーマルな場面で着る着物は、表地と同じ生地の「共八掛」が基本です。
訪問着よりもシンプルな付け下げや色無地などは表に透けにくいぼかし八掛や無地の八掛を用います。

小紋や紬など普段着として着る着物の場合は、共八掛以外のものから自由に選んで大丈夫です。
表地と同じ色や明るさのトーンを抑えた同系色の八掛にするとフォーマルなイメージになります。
反対色や柄八掛を選ぶとカジュアルなイメージが強くなるので、散歩や親しい友人とのお出かけなどにおすすめです。

八掛からインスパイアされた〝八掛STYLE″

八掛からインスパイアされた〝八掛STYLE″

八掛は、江戸時代から続く着物のちら見えのお洒落です。
どんな色や柄を合わせるかでさりげなく個性を発揮できる八掛は、現代も着物を着る人たちのおしゃれアイテムとして注目されています。
倭物やカヤは、そんな八掛を現代風にアレンジして、昔から親しまれてきたお洒落を再現しました。

倭物やカヤ 八掛商品のコンセプト

商品のデザインのルーツは、着物の裾や袖口などからちらりと見える八掛です。
倭物やカヤの商品は、江戸時代から続く小粋な風情の八掛を現代の洋服に取り入れることで、歩くたびにまたふとした仕草の中に和の彩りが垣間見える、そんな美しさを日常に、というコンセプトのもとに誕生しました。
着物のようにアレンジされた洋服で、着物よりも気軽に着ることができて着心地の良いカヤの商品は、様々なコーデに合わせやすく色々なシーンで活躍します。
日本の伝統美と現代の感性が響き合う一枚をぜひ身に付けてみてください。

倭物やカヤおすすめの八掛商品を紹介!

倭物やカヤには、多くの八掛を取り入れた商品があります。
そこでここでは人気の八掛商品を紹介していきましょう。

花版画八掛ワンピース

花版画八掛ワンピース 花版画八掛ワンピース /¥7,920 税込

無地生地の後ろ側に鮮やかな一枚絵の花の生地を八掛の様に縫い付けたワンピースです。
木版画の温かみのある雰囲気を活かしたデザインで、動くたびにひらりと可愛くて大きな花柄が見えます。
柄は、浪速茨(ナニワイバラ)、蓮華(レンゲ)つつじ、虞美人草(グビジンソウ)、桔梗(キキョウ)の4種類です。
ゆったりとしたシルエットのロングワンピースで、パンツと合わせるのもおすすめです。

四季の夏姿長丈TOP

四季の夏姿長丈TOP 四季の夏姿長丈TOP /¥4,180 税込

正面は無地ですが、背中部分に夏の花々や風景をモチーフにした和風柄の生地を八掛のように合わせたトップスです。
柄は、華やかな潤朱、涼しげな瑠璃、新緑の翠色、爽やかな藤の4種類で、動くたびに風を含んで柄が見えます。
お尻まで隠れるゆったりとした丈と七分袖のトップスですが、さらりとしたレーヨン素材なので夏でも涼しく着ることができます。
サイドにはスリットが入っていて、前身頃がパンツインできるので、すっきりとお洒落に着こなせます。

そよ風八掛パンツ

そよ風八掛パンツ そよ風八掛パンツ /¥6,820税込

無地のワイドパンツの両サイドに、華やかで繊細な草木の柄をプリントした生地を八掛のように合わせた商品です。
動くたびに華やかな柄がチラリとのぞき見えることで、さりげないお洒落を楽しめます。

八掛は江戸時代から続くさりげないお洒落

着物の裏地の1つである「八掛」は、袖口や裾から少しだけ見えるさりげないお洒落です。
ルーツは江戸時代にあるとされ、現代では裾や袖口の表地を守るといった役割もあります。

八掛は、TPOに合わせて生地を選ぶ必要はありますが、普段着として着る着物には鮮やかな色味のものや柄八掛を合わせることで自分だけのお洒落を楽しむことができます。
チラ見えのお洒落である八掛を取り入れてアレンジした洋服もあるので、着物を日常的に着ない人も現代風な八掛スタイルを楽しんでみてはいかがでしょうか?

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