掲載日:2024.05.11

中南米の楽器-日本でも大人気!ラテンアメリカの音楽-

ラテンアメリカの音楽というとサンバやルンバをイメージする人が多いのではないでしょうか。
ラテンアメリカの音楽と言ってもそのジャンルは様々で、邦楽でもその音楽の要素を取り入れた歌が多くあります。日本ではポルノグラフィティの「アゲハ蝶」や松任谷由実の「真夏の夜の夢」が有名です。

ラテンアメリカの音楽や中南米の楽器は打楽器が多くポップスなどにもよく取り入れられており音楽的にも熱い国です。プエルトリコは中南米の小さな国ですが音楽がとても盛んでリッキー・マーティンなど世界的にヒットしたアーティストが数多くいます。今も昔も世界中に大きな影響を与えているラテンアメリカの音楽と楽器について今回は紹介していきます。

ラテンアメリカの音楽の特徴

ラテンアメリカの音楽は中南米の民族音楽を指し、そのジャンルは多岐にわたります。
先住民たちのインディアンの音楽、16世紀にこの地に進出してきた欧米人のヨーロッパの音楽、アフリカから連れてこられた黒人奴隷の音楽がお互いに影響し合って時代や地域ごとにそれぞれの音楽スタイルを作り上げていきました。

キューバなどカリブ系を起源とするルンバ、マンボ、サルサ、レゲエ。
ブラジルを起源とするサンバ、ボサノヴァ。メキシコを起源とするマリアッチなど様々なジャンルがあります。
どの音楽もノリの良い軽快なリズムが特徴です。

ラテン音楽のリズムに関してはアメリカの黒人音楽の特徴が浸透しています。
2拍子と3拍子の複合リズム(ポリリズム)などが取り入れられていますが、他にもスペイン民謡や中南米の民謡に見られる2ビートと3ビートの交互進行などもあり様々です。

ラテンアメリカの音楽はアフリカの黒人奴隷の歴史と深く関係があります。
アフリカから奴隷として連れてこられた人々にとって音楽と踊りは数少ない楽しみであり、人間としての尊厳を保つためのものでした。

ラテンアメリカの音楽は軽快で明るいものが多いですが、こういった悲しい歴史の背景もあるのです。
その音楽は現在様々なポップスやロックに影響を与えています。

ラテンアメリカの楽器

ラテンアメリカの楽器はコンガやボンゴ、マラカスなどパーカッションが有名ですが他にも様々な打楽器があります。
打楽器のほかにもユニークな楽器がたくさんありますので早速見ていきましょう!

アゴゴ

アゴゴ

アゴゴはラテン系では代表的な金属製の打楽器で、いわゆる2連の鉄琴です。
大小2つの三角錐を、細い棒を曲げてつないでいる楽器です。アゴゴベルと呼ばれることもあります。
小さい方が高音、大きい方が低音です。

見た目はカウベルによく似ていますがアゴゴはカウベルに比べ甲高い澄んだ音が特徴。
その軽快なサウンドはブラジルのサンバ音楽において大変重要です。

大小の三角錐を利き手ではないほうでぶつけて演奏します。利き手ではドラムスティックなどを持って三角錐を叩き演奏することが出来ます。

アゴゴはアフリカのヨルバなど西アフリカで生まれたとされています。
アゴゴとはヨルバ語でベルという意味です。
サンバなどの演奏によく使われますがポップスや吹奏楽にも取り入れられている楽器です。

ビリンバウ

ビリンバウ

ビリンバウはブラジルの打弦楽器で、主にカポエイラで使用されます。
カポエイラとは格闘技と音楽、ダンスが融合されたブラジルの護身術です。
アフリカから連れてこられた黒人奴隷が編み出したものと言われており、看守にばれないようにダンスを踊るふりをして技を修練したという説があります。

ビリンバウの見た目は弓の形状をしたシンプルな楽器です。
アフリカを起源としブラジルに伝わった楽器という説が有力ですが、アフリカの楽器はヒョウタンがついたものが多く、ビリンバウも下のほうにヒョウタンがついています。
このヒョウタンは音を増幅させる役割を持っています。倍音が特徴的な楽器です。
「ケバタ」という棒で弓の弦を叩き演奏します。

ビリンバウには様々なトーキ(リズム)がありカポエイラのジョーゴ(ゲーム)ではトーキによって動きが大きく変化することもあります。カポエイラを行っている最中は注意深く音を聴く必要があります。
ビリンバウは19世紀後半ごろからカポエイラに導入されるようになり広く知られるようになりました。

カシシ

カシシ

カシシは細い木で編んだ入れ物の中に小石や豆、木の実などを入れて演奏する小さな打楽器です。
アフリカ、南アメリカが発祥の地だと言われています。
こちらもビリンバウとともにカポエイラで使用されます。

素材や大きさには様々な種類があり、中に入れるものの種類、木の素材などで音が変わる面白い楽器です。
また演奏技法によっても音色が変わります。
シェーカーのように振って演奏する場合もあればカシシの底に中に入っている豆などを下に打ち付ける奏法もあり、複雑で表情豊かな演奏が可能です。

カポエイラではビリンバウと一緒に演奏され、左手にビリンバウ、右手にカシシとビリンバウを弾くためのケバタを持ちメロディとリズム両方を演奏します。

クイーカ

クイーカ

クイーカはサンバなどブラジル音楽に多く使われる打楽器です。
見た目はスネアドラムのような太鼓の形状をしていますがその演奏方法は大変ユニークです。

太鼓の内側の皮に付けられた棒があり、濡らした手や湿った布でこするとその振動が皮に伝わり音がでるという仕組み。
棒を挟む指の力を調整したり、もう一方の手で皮の張力を調整することで音の高低を作ることが出来ます。
かなり独特な音なのでクイーカの音色が苦手…と言う人もいるかもしれません。

フリクション・ドラム(擦奏太鼓)という総称がありクイーカもアフリカが起源とされています。狩猟のために動物を油断させる音色を鳴らしクイーカを演奏する説や遠く離れた伝達手段としてトーキングドラムの代わりにクイーカを使う説などたくさんのエピソードがあるようです。

ギロ

ギロ

ギロは主にラテン音楽で使用される打楽器です。
小学校の音楽の授業などで見たことがある人も多いのではないでしょうか。
主にサルサやレゲエなどで使われることが多いようです。

ギロはヒョウタンの内側をくりぬき、外側に刻みを入れたもので、ギザギザの部分を棒でこすったり、叩いたりして様々な音を奏でることが出来ます。
カリブ海の先住民、アラワク人によって使用されていたという説が一般的です。

南米や東南アジアでも見られる楽器で、中南米のものは魚に似た形をしていますが、アジア由来のものはカエルの形をしたものもあります。

グアチャラカ

グアチャラカ

グアチャラカはコロンビアの先住民族によって発明された木製の打楽器です。
棒状の木の外面に溝があり、数本の針金を並べたフォークで表面のギザギザを擦ることで音を出します。
コロンビアの民族音楽であるバジェナートでは必須の楽器です。

バジェナートはカリブ海側のローカルミュージックから出発した民族音楽で、アコーディオンと歌をメインにパーカッションが入ります。

グアチャラカと呼ばれる鳥の鳴き声を模しているのがその名の由来ですが、かなり変わった鳴き声をしています。その鳴き声は言うなればスクラッチ音に近いです。

スティールパン

スティールパン

スティールパンはトリニダード・ドバゴ共和国でドラム缶から生まれた旋律打楽器です。
ドラム缶をへこませて音階をつくっていきます。ピアノのように音階が規則正しく並んでいるわけではなくバラバラになっているのが特徴で、バチで叩いて演奏します。

アルミのドラム缶をへこませた見た目をしていますが、その音色はとても繊細で美しく多彩な音を出すことが可能です。
量産することが難しく近年でも職人により手作業で作られており、またチューニングには専門のチューナーがおり非常に高度な技術が必要と言われています。

19世紀半ば、イギリス政府にドラムの使用を禁止された黒人たちがボロボロになったドラム缶を叩いたところ位置によって音が違うことに気づいたことが始まりとされています。

ビーチボーイズの「ココモ」に取り入れられるなど世界的に有名になった楽器でもあり、「20世紀最後にして最大のアコースティック楽器発明」と言われトリニダード・トバゴの国民楽器に認定されています。ジャズやクラッシックで使用されることもある楽器です。

文化や歴史とともに発展してきたラテンアメリカの音楽

ラテンアメリカの音楽には様々なジャンルが存在し、面白い楽器も多数あります。
軽快で明るい音楽が多いですが、その歴史には黒人奴隷貿易など悲しい過去もあります。

ラテンアメリカの音楽は人間としての生きる権利や楽しみを求めること、そして様々な文化と混ざり合うことで現在まで進化してきたと言えるでしょう。

今回紹介した楽器はほんの一部です。
興味がわいた方は是非、他の国の楽器も調べてみてはいかがでしょうか?

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