掲載日:2024.05.10

幸せな花嫁のためのジューンブライド - ヨーロッパに伝わる結婚の習慣 -

6月の花嫁、ジューンブライド。「6月に結婚した花嫁は幸せになる」という言い伝えがあります。欧米では、晴天が多く日差しが柔らかな6月は、結婚シーズンになっています。日本では梅雨の季節に当たりますが、今ではこのヨーロッパ発祥の美しい伝統を取り入れる方も多いですね。

今回は、ジューンブライドの魅力とヨーロッパの結婚式を紐解きます。
ロマンチックなジューンブライドは、多くの花嫁を魅了し続けています。あなたの特別な一日にも、ジューンブライドの幸せを。

ジューンブライドってなに?

海外由来の文化である「ジューンブライド」(June Bride)は、日本でも定着しており、言葉を聞いたことがないという人はいないでしょう。でも、その由来や習慣まで、深く知る機会はあまりないかもしれません。ジューンブライドの始まりは古く、由来には諸説ありますが、古代から今日まで脈々と受け継がれてきた、歴史ある伝統です。
ヨーロッパではこの伝統が広く根付き、6月に結婚式を挙げるカップルも多くいます。

ジューンブライドってなに?

由来①女神の守護

有力な説のひとつに、ローマ神話の主神ユピテルの妻である女神ユノがあります(この夫婦神は、ギリシャ神話の最高神ゼウスと妻ヘラと同一視されることもあります)。
女神ユノは、結婚や出産を司り、子どもや家庭を守護します。このユノ(Juno)が守護するのが6月(June)であるため、「6月に結婚すると幸せになれる」と考えられるようになりました。

由来②農閑期

中世ヨーロッパでは、農作業において、春と秋の種まきの時期、夏の収穫の時期が繁忙期に当たりました。
6月は忙しさが一段落して、新しい生活を始めるのに適した時期だったと言えるでしょう。6月に結婚して夏までに妊娠できれば、次の夏には収穫期を手伝う体力を取り戻せるだろう、という思惑もあったようです。

由来③キリスト教の教え

キリスト教では、中世から近世にかけて、四旬節(2月中旬から4月上旬頃まで)と待降節(11月下旬から12月上旬頃まで)に結婚を禁止する習慣がありました。
この期間は、過ちを悔い改め、祈り、断食する期間とされていたからです。キリスト教徒は、できるだけこの期間を避けて結婚式をしていたようです。

由来④穏やかな気候

ヨーロッパでは、寒い冬が終わり、朝晩の寒暖差が激しい春を過ぎ、夏の訪れを感じられるのが6月です。色とりどりの花々が咲き誇り、ヨーロッパの人々が大好きな明るい太陽の下でありながら、穏やかで過ごしやすい気候の中で結婚式を行うことができる、とても良い季節なのです。

日没が遅いため、特別な一日を思う存分楽しむことができること、7月から夏のバカンス時期に入るため、結婚式の後に長いハネムーンに行くことができることも、ジューンブライドを選ぶ理由になっています。

伝統的なヨーロピアンウェディングが美しい

ヨーロッパの結婚式には、国や地域により、さまざまな伝統的な習慣やしきたりが残っています。
結婚への異議申し立てができる「婚約公示期間」、離婚時のトラブルを避ける合理的な「婚前契約書」、ご祝儀代わりの「ウェディングリスト」、独身最後の大騒ぎ「バチェロッテ/バチェラーパーティー」、花嫁花婿の介添人、民族衣装の着用などなど、日本では馴染みのないものがたくさんあります。

素敵な伝統を上手に取り入れながら、現代風のアレンジを加え、オリジナリティあふれる演出で作る結婚式は、生涯忘れられないものになりそうですね。

結婚式のジンクス「サムシング・フォー」

幸運を運ぶ4つのアイテム「サムシング・フォー」(Something Four)について聞いたことはありますか?古くから伝わるジンクスで、結婚式に花嫁が身に付けると幸せな結婚生活が訪れると信じられています。

●「サムシング・オールド」(Something old:古いもの)

家族から受け継いだ宝石やアクセサリーを身に付けます。古いものは、過去からの絆や幸せな思い出を象徴しており、長い間存在してきたアイテムは、この結婚の継続と安定を願うものです。
例えば、大好きな祖母が大切に使ってきた真珠のネックレス、幼い頃に使っていた洋服のリメイクなどもいいですね。

「サムシング・オールド」(Something old:古いもの)

●「サムシング・ニュー」(Something new:新しいもの)

新しく仕立てたり買ったりしたものを身に付けます。新しいものは、新たな人生の始まりを象徴しており、まっさらな新品のアイテムは、新生活の幸運を願うものです。
例えば、ウェディングドレスやベールなど、結婚式のためにあつらえた品々がこれに当たるでしょう。

「サムシング・ニュー」(Something new:新しいもの)

●「サムシング・ボロウド」(Something borrowed:借りたもの)

友人など周囲の人から借りたものを身に付けます。借りたものは、友情と祝福を象徴しており、幸せな結婚生活を送る人から借りたアイテムは、その人から頂く幸運のおすそわけです。
例えば、幼馴染が使ったグローブやハンカチなどの小物が取り入れやすいかもしれません。

「サムシング・ボロウド」(Something borrowed:借りたもの)

●「サムシング・ブルー」(Something blue:青いもの)

聖母マリアのシンボルカラーである青いものを身に付けます。青いものは、愛、純潔、忠誠を象徴しており、夫婦の純粋な愛と幸福が末永く続くことを願うものです。
例えば、青い下着や宝石を身に付ける、ブーケやブートニアの差し色として青い花を使うなど、さりげなく取り入れるのが一般的です。色の濃淡は自由で、ロイヤルブルーでもターコイズでもパステルでも好きな青で構いません。

「サムシング・ブルー」(Something blue:青いもの)

花嫁の三種の神器:ウェディングドレス・ベール・ブーケ

結婚式と言えば、真っ先に思い浮かぶのがこの3つではないでしょうか?
小さな女の子が描く「お嫁さん」の絵にも登場する程、広く浸透した花嫁の姿という気がします。

●ウェディングドレス

ヨーロッパの花嫁は伝統的に白いウェディングドレスを着用しますが、この習慣はさほど古いものではなく、花嫁の純潔や清らかさを象徴するためのものでもありません。
白は汚れやすく貴重なため、むしろ富の象徴とされている時代でした。

流行の発端は、1840年に結婚したイギリス王室のヴィクトリア女王です。それまでは、裕福な花嫁は高価な生地で仕立てた豪華なドレス、貧しい花嫁は持っている中で最高のドレスを着ていましたが、女王は繊細なレースの美しさを際立たせるために、白を選んだのです。女王にならって白いウェディングドレスを選ぶ人々が増え、世界各国に広まって、「結婚=白」という現在のイメージが定着したのです。

●ベール

花嫁がかぶるベールの伝統は、紀元前から続く長い歴史があり、起源には、純潔の象徴、両親の愛、魔除けなど、さまざまな説があります。ベールは、花嫁がバージンロードを歩き、花婿のもとへ向かうまで花嫁の身を守ります。
現代ではその意味が薄れ、花嫁の美しさを際立たせるひとつのアイテムになっています。

●ブーケ

結婚式に彩りを加える美しいブーケは、プロポーズの象徴と言われています。丸・楕円・滝・三日月・茎を残した形、キュート・エレガント・ナチュラルな雰囲気などたくさんのスタイルがあり、使うお花の種類や色によっても雰囲気が随分と変わります。

好きなお花を選び、ウェディングドレスやベール、髪型や髪飾りなどと合わせて決めるといいでしょう。
白一色も、「サムシング・ブルー」の青やアクセントになる華やかな色を入れても素敵です。愛と情熱の象徴であるバラや、ジューンブライドの由来となった女神ユノの聖花であるユリ、牡丹、ラン、チューリップ、ラナンキュラス、ライラック、紫陽花などが人気のお花です。

ブーケ

結婚式の山場4選

伝統的な結婚式は、教会で厳かで静寂な雰囲気の中で執り行われますが、花嫁と花婿、ゲストも盛り上がる見せ場もたくさんあります。

●誓いの言葉と誓いのキス

永遠の愛を誓う言葉として定番なのは「健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、富める時も貧しき時も、死が二人を分かつまで、愛し慈しみ、敬い慰め、共に助け合い、貞操を守ることを誓います」というものですね。これをアレンジしたり、カップル独自のフレーズを盛り込んだりすることもあります。
ここで誓った永遠の愛を閉じ込めるのが、誓いのキスです。

指輪の交換

結婚指輪も、古代ローマ時代から続く結婚式の伝統です。始まりも終わりもない円の形をしている指輪は、永遠の愛を象徴しています。かつて「左の薬指はひとつの血管で心臓とつながっている」と考えられていたことから、二人の心をつなぐために左薬指に結婚指輪をつけるようになったと言われています。
海外では、右の薬指や足の指につける国や地域もあります。

指輪の交換

●フラワーシャワー

新郎新婦の豊かで幸せな生活を祈って、豊かさの象徴であった小麦や米をかけたことがその由来です。その後、花びら、紙吹雪、イタリアの砂糖菓子コンフェッティなど、さまざまな種類が登場しました。フラワーシャワーではバラの花びらがよく使われます。香り高く、色も華やかで、地面に落ちた後もフラワーロードのようで美しいため、とても人気があります。

フラワーシャワー

●ブーケトス

花嫁がつかんだ幸運にあやかるために、女性ゲストが花嫁のドレスやブーケ、小物などに触っていたことを発端に、花嫁がブーケをゲストに向かって投げるようになったと言われています。ブーケをキャッチできた女性には花嫁の幸せのおすそわけがあります。今では、その女性が次に結婚すると信じられています。
ヨーロッパでは、花嫁が身に付けているガーターを花婿が男性ゲストに投げる、ガータートスも行われています。

ブーケトス

日本でもできる!ジューンブライド

日本では、梅雨の時期と重なる6月は、結婚式を控える傾向がありました。
しかし、1960年代頃にホテル業界やブライダル業界がこの打開策として取り入れ始めたのが、日本のジューンブライドです。きっかけは商業的でしたが、この幸せな習慣は日本でも広まり、6月に結婚式を行うことは珍しくなくなりました。

とは言え、雨の中の挙式は、新婚夫婦にもゲストにも少し大変ですよね。日本でのジューンブライドなら、幸せなエッセンスだけを上手に取り入れて楽しむことをおすすめします。
思い切って海外挙式を選ぶのも、ひとつの方法ですね。

全天候型の結婚式場を選ぶ

伝統的な結婚式は、教会で厳かで静寂な雰囲気の中で執り行われますが、花嫁と花婿、ゲストも盛り上がる見せ場もたくさんあります。

全天候型の結婚式場を選ぶ

6月に入籍する

人生の一大イベントである結婚式は、型にはまらず個性を生かしたものが増えています。
式場やプランナーもさまざまな趣向を凝らし、魅力的な提案をしてくれます。伝統的な神社仏閣での挙式もしっとりと美しく、植物の緑や美しい花々に囲まれたガーデンウェディングも華やかです。
全天候型の式場も増えているので、お天気の崩れや暑さ・寒さを気にせずに、ジューンブライドの花嫁になることができます。

6月に新婚旅行に行く

夫婦水入らずの甘い時間、ハネムーンを6月にするのもおすすめです。海外に行くのであれば、この時期は気候が穏やかで過ごしやすい国も多く、夏休み前のため比較的人も少なくて、旅行費用も控えめです。日常の喧騒から離れて、ゆっくりと二人だけの時間を過ごしてください。

「ジューンブライド」を夢見る皆さまの、末永い幸せをお祈りしています!

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筆者プロフィール:gracen

ヨーロッパ在住ライター・翻訳家。
海外在住歴15年・旅行歴25ヶ国の経験を活かして幅広い分野で執筆。
幼少期に「いろいろな国の本当の姿をこの目で確かめたい」と強烈に感じたことが原動力に。得意分野は、海外移住・旅行、語学、お花・農業、自然療法、IT、法律など。パリの老舗花店であるMouliéとLa Maison Vertumneで花修行の経験あり。


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