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ハロウィンの夜、フランス・パリの空港には怪しい男の笑い声が響き渡ります。声の主は一体、誰?今回は美しいパリの街とオペラ座の怪人のお話です。
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数年前の10月31日、丁度ハロウィンの夕方にフランス・パリにあるシャルル・ド・ゴール空港に到着しました。日本でもすっかりお馴染みとなったハロウィンですが、ネットやニュースを見ているとやっぱり外国のハロウィンは違います。だから、ちょっとだけ期待していました。
ですが空港内は至って普通。空港内にカボチャやコウモリが浮く演出も、CAや税関の職員がハロウィン仕様の制服や帽子を身に付けていることもありませんでした。いつも通りの、ただの空港。
〝ここはおフランスだし、そこまでお遊びはしないのかな〟と残念に思いながら、空港を出ようとした時です。
天井から「ha-ha ha-ha ha-ha」と男性の笑い声が響いてきました。
響きわたる笑い声に、何事かと足を止め天を仰ぎます。流暢なフランス語が続きました。残念ながら私は、フランス語圏の外国人と結婚していたにも関わらずフランス語が得意ではなくて…。詳しいことは聞き取れませんでしたが、「今宵はハロウィンだ。死者たちが戻ってくるぞ!おまえたちも私の存在に気付くであろう」みたいな内容でした。解釈は違っているかも知れませんが、間違いなく「fantôme,(ファントム)」と口にしています。
ここはパリ・オペラ座があるフランスの空港。ファントム=オペラ座の怪人です。オペラ座の怪人好きの私は、物凄くテンションがあがりました!声質も息遣いもザ・ファントムの声はよく響きます。まるで一人芝居を聞いている気分になり、聞き惚れました。
空港の公式アナウンスなのに、何て憎い演出をしてくれるのでしょう。〝おフランスだからハロウィンなんてしない〟ではありませんでした。〝おフランスだからエスプリの効いた大人のハロウィンの演出をする〟のです。声に惚れてしまった私はムダに空港内を歩き回り、響き渡るファントムの声を何度も何度も耳におさめました。「ハロウィンの今日パリに来てよかった」心から思えた日です。
その後は空港から電車に乗ってエッフェル塔へ。地下を走っていた電車はやがて地上を走行しだし、窓からはパリの華やかな街並みが見えました。でもハロウィンの仮装をしている人の姿も目を引く飾り付けもなく、少し拍子抜け。
外国人だからハロウィンを思いっきり楽しむはずというのは間違った考え方だったようで、静かなパリの夜が続きます。結局、エッフェル塔のそばにある友人の家へ着くまでの1時間、仮装している人には一人も会えませんでした。私が結婚していた外国人の夫は、ハロウィンになるとこちらが引くレベルで仮装に取り組み、パーティーに出かけては大騒ぎをしていたので、その違いにアレ?と変な気分になります。
石畳の上を走るスーツケースが、ガタガタと音を響かせます。100年以上も前から建っているアパルトマン、〝もうちょっと明るくならないの?〟と言いたくなるような暗い街灯。白で統一された石造りの街並みは美しく、ただいつもと変わらぬパリの姿がそこにあります。ふと思いました。日本のように仮装してキャーキャー黄色い声をあげて騒ぐのは、パリの街にふさわしくないのかなと。
ハロウィンの夜。いつもと変わらぬ日常を過ごしていると、どこからともなくファントムが語りかけてきます。もしかしたら、あのカフェの先の暗がりの中に彼は潜んでいるかも知れません。想像力を刺激する演出。それこそがパリ流のハロウィンなのかも知れません。
オペラ座の怪人つながりでもう一つ。この夏、開催されたパリ五輪。その開幕式にオペラ座の怪人と思われる人物が登場し、注目を集めたのを覚えていますか?首を切られたマリー・アントワネットや燃えるピアノ、音楽を奏でる天使の演出もステキでしたが、オペラ座の怪人好きの私としては、随所に怪人らしき人物が出てくるのが、かなり心に刺さりました。
公式のPVを見ると、ジダンから聖火を引き継いだ子どもたちが深い地下へと降りていきます。そこに現れるのが灰色のネズミ。怪人好きな人ならここでピンときたはず。私もまさか!と期待に胸を膨らませました。期待通り湖が映り、そして舟に乗った一人の怪しい男がゆったりと近付いてきます…。
地下、ネズミ、湖、舟は、オペラ座の怪人のキーワード。思ってもみなかった怪人の登場に一人、歓喜しました。公式には何の発表もないですし、その後聖火を持ってからの軽快な動きは絶対に怪人のそれではありませんが、冒頭のシーンは間違いなくオペラ座の怪人だったと今でも思っています。
でも、パリオリンピックなのになぜオペラ座の怪人?アメリカかイギリスの作品でしょ?そう思った人も多いようです。
日本で一番有名なのが、アンドリュー・ロイド・ウェバーの『オペラ座の怪人』。劇団四季、ブロードウェイ、ロンドン等で公演されているミュージカルは全てロイド・ウェバーの作品です。また2004年にアメリカで制作され大ヒットした映画もこちらロイド・ウェバーのもの。物凄く有名なのでこちらの作品を本家と思っている方も多い印象です。
ただ『オペラ座の怪人』を生み出したのは、フランスの作家ガストン・ルル―です。舞台は19世紀のパリ・オペラ座。だからオペラ座の怪人=フランスでOKですし、フランスのオリンピックに相応しい人物です。
ちなみに、世界で一番有名なのがロイド・ウェバー版なだけであって、ケン・ヒル版、アーサー・コピット版とミュージカルだけでも3種類あります。映画も複数あるので、オペラ座の怪人はパリ生まれの有名人として申し分ない地位を築いています。
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。マイナーな国をメインに、世界中を旅する。旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。公式HP:Lucia Travel
ハロウィンの夜、フランス・パリの空港には怪しい男の笑い声が響き渡ります。声の主は一体、誰?
今回は美しいパリの街とオペラ座の怪人のお話です。
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目次
ハロウィンの夜パリ空港に響く笑い声の主は…
数年前の10月31日、丁度ハロウィンの夕方にフランス・パリにあるシャルル・ド・ゴール空港に到着しました。
日本でもすっかりお馴染みとなったハロウィンですが、ネットやニュースを見ているとやっぱり外国のハロウィンは違います。だから、ちょっとだけ期待していました。
ですが空港内は至って普通。空港内にカボチャやコウモリが浮く演出も、CAや税関の職員がハロウィン仕様の制服や帽子を身に付けていることもありませんでした。いつも通りの、ただの空港。
〝ここはおフランスだし、そこまでお遊びはしないのかな〟と残念に思いながら、空港を出ようとした時です。
天井から「ha-ha ha-ha ha-ha」と男性の笑い声が響いてきました。
フランス流の憎い演出に歓喜
響きわたる笑い声に、何事かと足を止め天を仰ぎます。流暢なフランス語が続きました。
残念ながら私は、フランス語圏の外国人と結婚していたにも関わらずフランス語が得意ではなくて…。詳しいことは聞き取れませんでしたが、「今宵はハロウィンだ。死者たちが戻ってくるぞ!おまえたちも私の存在に気付くであろう」みたいな内容でした。
解釈は違っているかも知れませんが、間違いなく「fantôme,(ファントム)」と口にしています。
ここはパリ・オペラ座があるフランスの空港。ファントム=オペラ座の怪人です。オペラ座の怪人好きの私は、物凄くテンションがあがりました!
声質も息遣いもザ・ファントムの声はよく響きます。まるで一人芝居を聞いている気分になり、聞き惚れました。
空港の公式アナウンスなのに、何て憎い演出をしてくれるのでしょう。
〝おフランスだからハロウィンなんてしない〟ではありませんでした。〝おフランスだからエスプリの効いた大人のハロウィンの演出をする〟のです。
声に惚れてしまった私はムダに空港内を歩き回り、響き渡るファントムの声を何度も何度も耳におさめました。「ハロウィンの今日パリに来てよかった」心から思えた日です。
パリの街にハロウィンは似合わない?
その後は空港から電車に乗ってエッフェル塔へ。地下を走っていた電車はやがて地上を走行しだし、窓からはパリの華やかな街並みが見えました。
でもハロウィンの仮装をしている人の姿も目を引く飾り付けもなく、少し拍子抜け。
外国人だからハロウィンを思いっきり楽しむはずというのは間違った考え方だったようで、静かなパリの夜が続きます。結局、エッフェル塔のそばにある友人の家へ着くまでの1時間、仮装している人には一人も会えませんでした。
私が結婚していた外国人の夫は、ハロウィンになるとこちらが引くレベルで仮装に取り組み、パーティーに出かけては大騒ぎをしていたので、その違いにアレ?と変な気分になります。
石畳の上を走るスーツケースが、ガタガタと音を響かせます。
100年以上も前から建っているアパルトマン、〝もうちょっと明るくならないの?〟と言いたくなるような暗い街灯。白で統一された石造りの街並みは美しく、ただいつもと変わらぬパリの姿がそこにあります。
ふと思いました。日本のように仮装してキャーキャー黄色い声をあげて騒ぐのは、パリの街にふさわしくないのかなと。
ハロウィンの夜。いつもと変わらぬ日常を過ごしていると、どこからともなくファントムが語りかけてきます。
もしかしたら、あのカフェの先の暗がりの中に彼は潜んでいるかも知れません。想像力を刺激する演出。それこそがパリ流のハロウィンなのかも知れません。
パリ五輪の過激で華やかな演出を振り返る
オペラ座の怪人つながりでもう一つ。
この夏、開催されたパリ五輪。その開幕式にオペラ座の怪人と思われる人物が登場し、注目を集めたのを覚えていますか?
首を切られたマリー・アントワネットや燃えるピアノ、音楽を奏でる天使の演出もステキでしたが、オペラ座の怪人好きの私としては、随所に怪人らしき人物が出てくるのが、かなり心に刺さりました。
公式のPVを見ると、ジダンから聖火を引き継いだ子どもたちが深い地下へと降りていきます。そこに現れるのが灰色のネズミ。
怪人好きな人ならここでピンときたはず。私もまさか!と期待に胸を膨らませました。
期待通り湖が映り、そして舟に乗った一人の怪しい男がゆったりと近付いてきます…。
地下、ネズミ、湖、舟は、オペラ座の怪人のキーワード。思ってもみなかった怪人の登場に一人、歓喜しました。
公式には何の発表もないですし、その後聖火を持ってからの軽快な動きは絶対に怪人のそれではありませんが、冒頭のシーンは間違いなくオペラ座の怪人だったと今でも思っています。
ケン・ヒル版には、白馬に乗ったオペラ座の怪人が登場するので、この仮面の人物もファントム!?
オペラ座の怪人の本家はフランス?
でも、パリオリンピックなのになぜオペラ座の怪人?アメリカかイギリスの作品でしょ?そう思った人も多いようです。
日本で一番有名なのが、アンドリュー・ロイド・ウェバーの『オペラ座の怪人』。
劇団四季、ブロードウェイ、ロンドン等で公演されているミュージカルは全てロイド・ウェバーの作品です。
また2004年にアメリカで制作され大ヒットした映画もこちらロイド・ウェバーのもの。物凄く有名なのでこちらの作品を本家と思っている方も多い印象です。
ただ『オペラ座の怪人』を生み出したのは、フランスの作家ガストン・ルル―です。舞台は19世紀のパリ・オペラ座。
だからオペラ座の怪人=フランスでOKですし、フランスのオリンピックに相応しい人物です。
ちなみに、世界で一番有名なのがロイド・ウェバー版なだけであって、ケン・ヒル版、アーサー・コピット版とミュージカルだけでも3種類あります。
映画も複数あるので、オペラ座の怪人はパリ生まれの有名人として申し分ない地位を築いています。
筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel