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今回はちょっとショッキング?イスラム教徒と結婚し男児を生んだ私が21世紀のリアルな割礼事情をお伝えします。世界には残酷な割礼がたくさんありますが、ここでは包皮を切除するライトな男性割礼に関してのみご紹介。「性的虐待だから絶対に受け付けない!」という方もいるでしょうが、こういう考え方もあるのだと知るきっかけになれば嬉しいです。
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【改宗が絶対条件!?イスラム教徒との国際結婚】
【隠れた酒飲みが沢山!イスラム教徒とお酒の関係】
【イスラム教徒にとってのクリスマスとは?】
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日本人には少し理解しがたい割礼は何のために行われるのでしょうか。この割礼、実は宗教によってちょっとずつ捉え方が異なっているってご存じでしたか?
イスラム教とユダヤ教は古くから割礼の慣習をもつ宗教です。中でもユダヤ教は割礼がマスト。割礼をとても重要な儀式としており、なんと生後8日目に行うことがベストと日付まで指定されています。割礼=神様との契約の証という意味があるので、大人になってからユダヤ教に改宗した場合は割礼義務があるのだとか。
キリストはユダヤ人なので割礼を受けていますが、キリスト教そのものは割礼はどっちでも良い派。ちょっと意外ですよね。
イスラム教にとって割礼は大人になるための儀式の一つ。男の子たちは6~10歳くらいの年に割礼を受けます。日本の元服のイメージでしょうか。これをもって男とするという捉え方をしています。
外国人の夫の実家で暮らしていた時、一枚の写真を見つけました。そこには真っ白な衣装を着て王様のような冠を被り、立派な椅子に鎮座している幼い夫が映っていました。頬がぷくぷくしていて顔には未だ幼さが残っていました。周囲にはたくさんの人がいます。
「これ誕生日の写真?」何ともなしに私は夫に尋ねました。
「違うよ。割礼後のお披露目パーティーだよ」
「えっ!」
その写真を見るまで男児の割礼というものは赤ちゃんの内に行われると思っていたため私は大ショック。さらに「僕は麻酔なしだったんだよ」という夫の言葉にもショックを受けました。女の私が想像しても痛い…
イスラム教徒にとって割礼は祝福のイベント。チョキンと切った後には、親戚や友人・隣人を招いてお披露目パーティーを開催します。割礼=一人前の男になった証ですから、お祝いは盛大に行われるのが習わし。テーブルには、普段は食べられないお肉やケーキが並び、遠方から親戚が駆けつけます。
夫の5つ年上のお兄さんは病院で割礼を受けました。きちんと麻酔もして割礼を専門に行う先生がそれは手際よく施術をしてくれたそうです。もちろん後遺症もなし。なのに弟である夫はなぜか伝統的な手法で割礼を受けたといいます。
「なんで病院で行わなかったの?」気になって尋ねます。
「さぁ、ママが決めたから」
「でもお兄さんは病院だったんでしょ?あなたも病院が良いって言えばよかったじゃない」
「別に僕はどっちでも良かったし。兄さんは10歳過ぎてたから病院だったんじゃない?僕は強い男だから伝統的な手法で良かったんだよ!」
兄は病院に連れてってもらえたのに酷くない?という思いをこめて質問しましたが、夫は全く気にしていませんでした。それどころか、自分は古き良きやり方で割礼を受けた強い男なんだ!と謎の自慢をしてくる始末。
1990年代生まれの夫は7歳のある日、母親に連れられて割礼の儀式に向かいました。訪れたのは普通の民家。ドアを開けると中には2人の男性が待っていました。
ズボンと下着を脱いだらベッドに寝るよう言われたといいます。横たわると男性の一人が余分な包皮を糸で縛りました。糸で縛られた不思議な光景を眺めていたら、別の男性が「あっ!鳥がいるよ」と楽しそうな声をあげました。
「こんな綺麗な鳥は初めてだ。君も見てよ!」と頭の上を指さします。でも鳥は見つかりません。それでも、男は続けます。
「あっちだよ!今あっちに止まった!」鳥はどんどん夫の頭の上の方へと移動していきます。
男の声に従って目を動かし頭を動かし、自分で自分の頭上を見上げる形になったときパチン!もう一人の男が包皮を切りました。“鳥を追っているうちに、手術は終わった”らしく、パニックになったり痛みで泣き叫んだりは一切しなかったそうです。
「怖くなかったの?」恐る恐る夫に尋ねました。夫はおどけて「ぜ~んぜん」と答えます。
「でも麻酔もなしでしたんでしょ?」
「そうだよ。男になるんだから当然だ!」
日本人が同じ目にあったらトラウマ級の出来事ですが、育った環境や信じている宗教の影響なのでしょうか。夫はそれを恨むでもなく、むしろ誇らしいことと受け止めていました。
時は流れ、私たちの間には男の子が生まれました。イスラム教徒の男児にとって割礼は避けては通れない問題です。そのため私は妊娠中ずっと〝生まれてくる我が子の割礼問題〟について悩んでいました。
私の意見はこうでした。「絶対に割礼をしなければならないのなら、乳児のうちに済ませてあげたい。痛みや恐怖が記憶に残るのは避けたい」でもここは日本。乳児の割礼を引き受けてくれる病院なんてあるのでしょうか?
出産する病院に問い合わせをしましたが、もちろんNO。念のため周辺の産科に電話で問い合わせるも「え?割礼?そんなのやるわけないでしょ」と門前払いが続きました。
それならばとネットで情報を収集すると、東京のいくつかの病院では赤ちゃんに割礼を行っているようでした。さすが東京。誰もが名前を知っているあのセレブ病院も割礼を行っていました。ただし、そこで出産した人の子のみが対象という制約つきです。
赤ちゃんの割礼といえどバリエーションはさまざま。全身麻酔で、局部麻酔で、麻酔なしで…。早ければ早いほど良いとか、体重〇キロ以下しか受け付けないとか、入院は必須とか日帰りできますとか、病院によって実にさまざまな条件がありました。
気になる料金は全額自費になるため7万~10万円が相場でした。どの病院も細かい条件があり、そして意外と予約でいっぱい。「生まれたら、すぐ予約してくださいね」と早め早めの行動を促されました。
気が焦る私と反比例するように、夫は「急ぐことはない。自分も通った道なんだから10歳になってからだって大丈夫だ」と呑気でした。結局、我が子の割礼問題は先送りになりました。
ネット記事を読んでいたら「今どき病院以外で割礼を受ける男児はいない」と書いてありました。でも少なくとも私の夫は2000年に伝統的な手法で割礼を受けています。
夫の話を聞く限り伝統的な割礼技術は今も継承されており、人々も利用している模様。そんな危険なと思いますか?私は夫の話を聞いていて伝統的な手法を選ぶ心理は、助産院で出産する感覚に近いように感じました。もちろん使い古したナイフや剃刀を使ったり、素人が行うなんてのは論外ですが、きちんと消毒した器具で正しく割礼を行うのなら、それはそれでありなんだろうなと私は思います。
この記事が好きなあなたにおすすめ▼改宗が絶対条件!?イスラム教徒との国際結婚
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。マイナーな国をメインに、世界中を旅する。旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。公式HP:Lucia Travel
今回はちょっとショッキング?イスラム教徒と結婚し男児を生んだ私が21世紀のリアルな割礼事情をお伝えします。
世界には残酷な割礼がたくさんありますが、ここでは包皮を切除するライトな男性割礼に関してのみご紹介。「性的虐待だから絶対に受け付けない!」という方もいるでしょうが、こういう考え方もあるのだと知るきっかけになれば嬉しいです。
イスラム文化について知りたい方はこちら▼
【改宗が絶対条件!?イスラム教徒との国際結婚】
【隠れた酒飲みが沢山!イスラム教徒とお酒の関係】
【イスラム教徒にとってのクリスマスとは?】
Lucia Travel連載一覧は こちら
目次
宗教によって異なる割礼の捉え方
日本人には少し理解しがたい割礼は何のために行われるのでしょうか。
この割礼、実は宗教によってちょっとずつ捉え方が異なっているってご存じでしたか?
イスラム教とユダヤ教は古くから割礼の慣習をもつ宗教です。
中でもユダヤ教は割礼がマスト。割礼をとても重要な儀式としており、なんと生後8日目に行うことがベストと日付まで指定されています。
割礼=神様との契約の証という意味があるので、大人になってからユダヤ教に改宗した場合は割礼義務があるのだとか。
キリストはユダヤ人なので割礼を受けていますが、キリスト教そのものは割礼はどっちでも良い派。ちょっと意外ですよね。
イスラム教にとって割礼は大人になるための儀式の一つ。男の子たちは6~10歳くらいの年に割礼を受けます。
日本の元服のイメージでしょうか。これをもって男とするという捉え方をしています。
親戚やご近所に割礼後の晴れ姿を披露
外国人の夫の実家で暮らしていた時、一枚の写真を見つけました。
そこには真っ白な衣装を着て王様のような冠を被り、立派な椅子に鎮座している幼い夫が映っていました。頬がぷくぷくしていて顔には未だ幼さが残っていました。周囲にはたくさんの人がいます。
「これ誕生日の写真?」何ともなしに私は夫に尋ねました。
「違うよ。割礼後のお披露目パーティーだよ」
「えっ!」
その写真を見るまで男児の割礼というものは赤ちゃんの内に行われると思っていたため私は大ショック。
さらに「僕は麻酔なしだったんだよ」という夫の言葉にもショックを受けました。女の私が想像しても痛い…
イスラム教徒にとって割礼は祝福のイベント。チョキンと切った後には、親戚や友人・隣人を招いてお披露目パーティーを開催します。
割礼=一人前の男になった証ですから、お祝いは盛大に行われるのが習わし。テーブルには、普段は食べられないお肉やケーキが並び、遠方から親戚が駆けつけます。
病院を選んだ兄、伝統技法を選んだ弟
夫の5つ年上のお兄さんは病院で割礼を受けました。
きちんと麻酔もして割礼を専門に行う先生がそれは手際よく施術をしてくれたそうです。もちろん後遺症もなし。
なのに弟である夫はなぜか伝統的な手法で割礼を受けたといいます。
「なんで病院で行わなかったの?」気になって尋ねます。
「さぁ、ママが決めたから」
「でもお兄さんは病院だったんでしょ?あなたも病院が良いって言えばよかったじゃない」
「別に僕はどっちでも良かったし。兄さんは10歳過ぎてたから病院だったんじゃない?僕は強い男だから伝統的な手法で良かったんだよ!」
兄は病院に連れてってもらえたのに酷くない?という思いをこめて質問しましたが、夫は全く気にしていませんでした。
それどころか、自分は古き良きやり方で割礼を受けた強い男なんだ!と謎の自慢をしてくる始末。
麻酔なし!伝統的な割礼儀式
1990年代生まれの夫は7歳のある日、母親に連れられて割礼の儀式に向かいました。
訪れたのは普通の民家。ドアを開けると中には2人の男性が待っていました。
ズボンと下着を脱いだらベッドに寝るよう言われたといいます。横たわると男性の一人が余分な包皮を糸で縛りました。
糸で縛られた不思議な光景を眺めていたら、別の男性が「あっ!鳥がいるよ」と楽しそうな声をあげました。
「こんな綺麗な鳥は初めてだ。君も見てよ!」と頭の上を指さします。
でも鳥は見つかりません。それでも、男は続けます。
「あっちだよ!今あっちに止まった!」鳥はどんどん夫の頭の上の方へと移動していきます。
男の声に従って目を動かし頭を動かし、自分で自分の頭上を見上げる形になったときパチン!もう一人の男が包皮を切りました。
“鳥を追っているうちに、手術は終わった”らしく、パニックになったり痛みで泣き叫んだりは一切しなかったそうです。
「怖くなかったの?」恐る恐る夫に尋ねました。夫はおどけて「ぜ~んぜん」と答えます。
「でも麻酔もなしでしたんでしょ?」
「そうだよ。男になるんだから当然だ!」
日本人が同じ目にあったらトラウマ級の出来事ですが、育った環境や信じている宗教の影響なのでしょうか。夫はそれを恨むでもなく、むしろ誇らしいことと受け止めていました。
どうする?子どもの割礼問題
時は流れ、私たちの間には男の子が生まれました。イスラム教徒の男児にとって割礼は避けては通れない問題です。
そのため私は妊娠中ずっと〝生まれてくる我が子の割礼問題〟について悩んでいました。
私の意見はこうでした。「絶対に割礼をしなければならないのなら、乳児のうちに済ませてあげたい。痛みや恐怖が記憶に残るのは避けたい」
でもここは日本。乳児の割礼を引き受けてくれる病院なんてあるのでしょうか?
出産する病院に問い合わせをしましたが、もちろんNO。
念のため周辺の産科に電話で問い合わせるも「え?割礼?そんなのやるわけないでしょ」と門前払いが続きました。
さすが東京!乳児割礼OKな病院
それならばとネットで情報を収集すると、東京のいくつかの病院では赤ちゃんに割礼を行っているようでした。
さすが東京。誰もが名前を知っているあのセレブ病院も割礼を行っていました。ただし、そこで出産した人の子のみが対象という制約つきです。
赤ちゃんの割礼といえどバリエーションはさまざま。
全身麻酔で、局部麻酔で、麻酔なしで…。早ければ早いほど良いとか、体重〇キロ以下しか受け付けないとか、入院は必須とか日帰りできますとか、病院によって実にさまざまな条件がありました。
気になる料金は全額自費になるため7万~10万円が相場でした。
どの病院も細かい条件があり、そして意外と予約でいっぱい。「生まれたら、すぐ予約してくださいね」と早め早めの行動を促されました。
気が焦る私と反比例するように、夫は「急ぐことはない。自分も通った道なんだから10歳になってからだって大丈夫だ」と呑気でした。
結局、我が子の割礼問題は先送りになりました。
ネット記事と現実のズレ
ネット記事を読んでいたら「今どき病院以外で割礼を受ける男児はいない」と書いてありました。でも少なくとも私の夫は2000年に伝統的な手法で割礼を受けています。
夫の話を聞く限り伝統的な割礼技術は今も継承されており、人々も利用している模様。そんな危険なと思いますか?
※世界にはさまざまな割礼があります。肉体的にも精神的にも多大な苦痛を与える方法もあり毎年死者も出ています。私は夫の話を聞いていて伝統的な手法を選ぶ心理は、助産院で出産する感覚に近いように感じました。
もちろん使い古したナイフや剃刀を使ったり、素人が行うなんてのは論外ですが、きちんと消毒した器具で正しく割礼を行うのなら、それはそれでありなんだろうなと私は思います。
今回はあくまでも一部の地域・宗教のお話です。
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筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel