東北の民俗芸能とアミナコレクション【創業記念】

本日12月15日は、アミナコレクションが卸専門業者として巡回サービスを開始した日、つまり創業記念日になります!

アミナコレクションは、エスニックから日本、ハワイやヨーロッパなど様々な地域の<フォークロア>をテーマに事業を展開しています。
本記事では、アミナコレクションの創業者であるBOSSの魂の原点について綴っていきます。

アミナコレクションにとっての、東北の民俗芸能の位置づけについてもご紹介しております。
ぜひ最後までご覧になってください。

民俗文化を、商売を通して伝えたい

私が物心ついた頃にはアミナコレクションはその活動を始めていた。
自宅の車は営業車を兼ねていたのだが、アミナコレクションの会社ロゴと理念「TO WALK WITH THE SUN」がプリントされ、車内はいつもインド香の匂いが染みていた。自宅の一部も倉庫になっていて、インドを中心に舶来の民芸が身近にあったものだ。

アミナコレクション創業記念コラム

同時に子供の頃、朝、笛の囃子で目覚めることがよくあった。母が東北の民俗芸能を学んでいたため、その練習や復習を自宅でしていたのだ。
手を引かれて、民俗芸能を見に連れて行かれたことも多々あった。男三兄弟で剣舞を教えられ、衣装を着て舞台に立ったこともある。

父が「民俗文化を商売を通して伝えたい」としてアミナコレクションを創業したのだが、そもそも父を民俗文化に傾倒させたのは東北の民俗芸能なのである。
高校生の時に東北を訪れた際に、鬼剣舞や鹿踊りといった民俗芸能に出会い、人生が変わるほどの衝撃を受けた、と語っている。大学時代に創作舞踊ダンス部で父と知り合った母は、ダンスを追求する先に父の影響もあって東北の民俗芸能に辿り着いた。

いったい東北の民俗芸能の何が2人を惹きつけたのだろうか?

アミナコレクション創業記念コラム
アミナコレクション創業記念コラム
陸前高田市にて、東北の民俗芸能である鬼剣舞や鹿踊りなどに出会った

芸能の庭、シルクロード舞踏館

アミナコレクションは今でこそ多業態化し、全国に展開しているが、創業から約25年の2002年まで、その歴史の半分以上はほぼ横浜中華街での店舗展開と卸でお客様との関係性や社風を作り上げていった。

その横浜中華街にはシルクロード舞踏館というイベントスペースがある。
第二次オイルショックによる不安定な商売環境の中、意を決してシルクロード舞踏館を立ち上げた、という。
民俗芸能をはじめ、身体に宿る文化、心身不二を発信する場とし、季刊誌の発行もはじめた。まだ店舗が2店舗で小規模、かつ、不況時で商売もままならぬときのこと。会社の魂に関わる重大な位置付けだからこそ、そして自分を奮い立たせるために決断した、と父は語っていた。

アミナコレクション創業記念コラム
その当時のシルクロード舞踏館

創業初期、父は事業の立ち上げを。そして民俗芸能の相棒である母は父の事業をサポートしながらシルクロード舞踏館館長として、二人三脚で築いていった。
当時シルクロード舞踏館は1階建てガラス張りで、本社もあったチャイハネ1号店の目の前。
会社と芸能は一つのものとして会社の礎が作られていった。

ファッションライブと民俗芸能の融合

ところが事業が成長し、中華街の中で6店舗と増え卸も拡大して従業員の数が増えると、意図が伝わらず「なぜエスニックの会社で、日本の民俗芸能をやっているのだろう?」という従業員も増え、なんとなく社長の趣味程度の捉え方をする社員も増えていたのである。

そんなことお構いなしにアミナコレクションとチャイハネの30周年には、父と母が主導してファッションショーと民俗芸能を融合させたファッションライブを開催した。ファッションのショーの狭間に、民俗舞踊や音楽を織り交ぜるという、他にない構成であった。
チャイハネ30周年のファッションライブでは、岩手県の「岳神楽」とハワイの古典フラ「カヒコ」のダンサーも誘致し、芸能交流会まで開催している。その際に父が書き残した言葉がある。

ファッションと民俗芸能は深く結びついている。私たちの創業時の直感は、世界中の民芸と民俗芸能を追い求める旅を続け、チャイハネ30周年を迎えた今、確信へと変わりました。

旅先で見た空はどこも青く澄み、陽の光が燦々と降り注いでいました。各地の民族に受け継がれてきた伝統技法や素材、生活に根ざした歌と踊りは、太陽のように私たちを活気付けてくれます。

この言葉は、アミナコレクションの理念「WALK WITH THE SUN」を言い得て、民俗芸能と商売の精神的融合の確信を伝えるコメントとなっている。
ここで言う融合とは、民俗舞踊で着るようなファッション、とか物理的なことを言いたいのではない。民俗芸能であろうとアミナコレクションの商品であろうと、フォークロアの奥底にある原初の人類の心、叡智や活力といったものを発信したいという想いにおいて1つ、という意味なのである。

ただなかなか社内の理解は得られがたかった。なぜエスニック=発展途上国の民俗文化をテーマにやってきた会社が、日本の芸能を持ち込むのか?

アミナコレクション創業記念コラム
チャイハネ30周年のファッションライブのようす

アミナコレクションの掲げるフォークロアの定義

しかしこのファッションライブの翌年、2009年にアミナコレクションに大きな分岐点が訪れた。30年以上、いわゆるエスニックだけでやってきたアミナコレクションに、日本の民俗文化をテーマにした「倭物やカヤ」が誕生した。
なにしろ従業員もエスニック好きしかいない状況で和雑貨をやり出すものだから、これまた社内の理解を得ることは簡単ではなかった。
しかし父の創業の原点が日本の民俗文化にあったことを知っているからこそ、私の中では確信があり何も揺らがなかったのだ。そして「倭物やカヤ」の成功は、有無を言わさぬ原動力となり、アミナコレクションの核心に迫る方針転換へ繋がっていくことになった。

つまりアミナコレクションはエスニックを根にした会社ではなく、フォークロア(=民俗文化)を根にした会社である、と再定義。
「フォークロア再創造」の展開指針を掲げて、ポリネシアのルーツをテーマにしたハワイアン業態「カヒコ」、日本の心の根源である祈りをテーマにした「岩座」、ヨーロッパをテーマにした「欧州航路」、フィンランドの民俗文化であるサウナをとらえて「ハレタビサウナ」など事業を展開してきた。
15年近くかけて事業を多様化したことで、もうすっかりと、エスニック、ではなく、フォークロアの会社となった。

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次なるステップとして考えるべきは、フォークロアを大事にしている、と言っても学者のようにすべてを平等にクローズアップするわけでもない。
父には目的があったのだ。近代化によって失われた、自然と共に紡がれた人類社会の感性や活力。それをフォークロアの中から見出して、商売や芸能を通して世の中を活気づけていきたかったのである。

言い換えれば我々はフォークロアの中でも、近代以前に存在した《原初の心》とも言うべき躍動が強く感じられる、そんな伝承や民芸、芸能に特にフォーカスしているのである。
アミナコレクションが各業態でお客様と関係性を築けているのも、どこか無意識レベルでこの価値観との共感があると感じているし、原初の心を届けて近代にあえぐ世を活気づけることが使命なのだと確信している。

東北の民俗芸能との関わり

そして同じように全ての民俗芸能を平等にクローズアップしてこなかった。
民俗芸能の中でも共感できる活力に満ちた芸能は東北地方に多いのである。
おそらく蝦夷から始まった歴史的苦難、地理的な苦難などにより、まさに危機迫る中で生き抜いてきた人間の力が芸能に込められ継承されてきたからであろう。
父の言葉を借りると「古代からの躍動が眼の前に現れる驚き」があるのである。

アミナコレクションのシルクロード舞踏館の活動で30年近く、毎年年末に「魂鎮(たましずめ)」を新横浜駅近くの篠原八幡神社境内にて行っている。
黒川さんさを学ぶ横浜グループ、二子流東京鬼剣舞、金津流横浜獅子躍りという芸能を首都圏で学ぶ3つのグループによる、奉納舞である。1年間、仲間と共に踊りを練習できたことへの感謝、そして無病息災、平和を祈るための、舞い納め。これらも全て東北、岩手の芸能だ。

アミナコレクション創業記念コラム
三団体による魂鎮(たましずめ)についてはこちら

岳神楽とみるアミナコレクション

岳神楽は、岩手県の早池峰山を御神体とする早池峰神社の麓で継承されてきた神楽で、早池峰神楽と総称されたりもする。
国指定の重要無形民俗文化財であり、ユネスコの無形文化遺産に登録されている。とても稀少で貴重な神楽であるのだが、アミナコレクションの創業前から交流があり、母は50年以上、毎年2回通い続けてきた。
そのご縁もあって、折に触れ、横浜で公演をやっていただいている。

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最初の公演は1991年にシルクロード舞踏館で行われた。
以降定期的に横浜に来ていただいているのだが、チャイハネ アナという店舗兼本社の落成式での公演があった。

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チャイハネ アナ

当時、5店舗目で新築、社運を賭けた新店舗であった。それにも関わらず、エスニックショップのオープンを社内外に発信した文章の7割が岳神楽のことであったことから、いかに父が民俗芸能と商売を一つの価値として捉えていたか、を示すものとして興味深い。

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チャイハネ アナ オープン時に発信したシルクロード舞踏館誌

岳神楽は神話や伝承を切り口に、テーマごとに舞われる神楽なのだが、「諷誦(ふうしょう)」といった荒々しい舞の数々が象徴的で人気もある。
是非、足腰やテンポの抑揚から、伝承されてきた古代の躍動を感じ取って欲しい。自分自身が原始的なレベルで活気づけられるはずである。

亡き父のお別れ会で「いつもニコニコ夢中で神楽を見ていたのが印象的」と神楽の方々からコメントをいただいた。
父が好んでいたのは「岩戸開き」で天岩戸神話をテーマにした舞である。太陽神であるアマテラスが世に再び姿を現して光が戻る、というストーリー。

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余談になるかもしれないが、アミナコレクションの理念「WALK WITH THE SUN」のSUNは岩戸開きをはじめとする太陽信仰からインスピレーションを得ていると考えるのが自然である。

父は小学生から日本神話に興味があったと聞いているし、晩年に「詩でつづる 日本神社百選」という書籍まで執筆していること、そして岳神楽でいつも「岩戸開き」の舞を希望していたこと、普段話していた息子である私が感じる必然からである。

岳神楽とアミナコレクションの歴史については、もう少し詳細に踏み込んだ、私と母の対談記事があるので是非読んでいただきたい。

詳細はコチラ

コロナ禍が明けて、5年ぶりに岳神楽をシルクロード舞踏館で上演出来る運びとなった。
岩座10周年も兼ねているが、アミナコレクションの魂に関わるものでもある。
岳神楽は、アミナコレクションが店舗や商品で届けたい根の価値と同じベクトルであると同時に、それがより根源的・直感的に感じ取れる民俗芸能なのだ。

東北の民俗芸能との関りは、歴史的にアミナコレクション創業の魂の原点であることはもちろん、海外の方々相手にも商売が拡大している中で日本企業としてのアイデンティティとしても大事な位置付けにしていきたいと考えている。
是非、皆さんにも観て、その躍動に触れていただきたい。

港横浜にて、「早池峰 岳神楽」上演決定!

先述にあったとおり、5年ぶりにシルクロード舞踏館にて岳神楽を上演いたします。

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霊峰 早池峰山の麓に原始から伝えられた山伏神楽。そこには日本の神話が今に生きづき、古代の躍動が眼前に現れる。
欧米の近代文明を日本に広めた港横浜にて、近代以前にあった人類原初の躍動を発信。令和の世に港横浜から日本が、そして世界が甦る。

開催日時: 2024年2月3日(土) 14:00~17:40(開場 13:30~)/直会 18:40~20:40
2024年2月4日(日) 13:30~16:00(開場 13:00~)

※2月3日(土)のみ上演後、直会が予定されております。
料金: 各5,000円(税込)/ノベルティ付き
※直会にご参加される方は別途2,000円頂戴しております。
会場: シルクロード舞踏館
神奈川県横浜市中区山下町 80 ネネビル地下1階
<アクセス方法>
●みなとみらい線 元町・中華街駅(②③番出口) 徒歩約3分
●JR京浜東北線・根岸線 石川町駅 徒歩約10分
●お車の場合は周辺の有料駐車場をご利用ください。
  • 各公演 先着50名様の上演となります。
  • 直会の参加は先着となります。
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統括プロフィール画像

筆者プロフィール:進藤さわと

アミナコレクション創業者 進藤幸彦の次男坊。2010年に社長に就任。
1975年生まれ。自然と歴史と文化、それを巡る旅が好き。


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