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苦行のイメージが強い滝行ですが、女性に人気ってご存じですか?私が体験した御岳山の宿坊では、神職いわく「参加者は圧倒的(8割位)に女性が多い」そうです。 今回は、私の初めての滝行体験をお伝えします。
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宿坊の1階に集まった参加者たちは、30畳はありそうな広い居間で、神職から「滝行」に関するレクチャーと共に白装束を渡されました。
白装束、勝手にペラペラの着物を想像していましたが、きちんとした白装束は違いました。サラシ+サラシ帯+肌襦袢+肌襦袢用の帯+外用の白装束+外帯でワンセット。帯までもがしっかりした布で出来ているため、ずっしりと重みを感じます。 それら全てをリュックに詰めて滝行の場所まで持って行き、修行後は濡れて重くなった白装束を持って帰ります。
「水を吸って重くなった白装束は10キロ近くになりますから、必ずちゃんとしたリュックを背負ってくださいね。肩紐が千切れますよ」と神職。 10キロの荷物を背負って山道を歩くと聞き、参加者の顔色が曇ったのを感じました。
ちなみに…。こちらの宿坊では、日帰りでの滝行修行も受け付けていますが、この日は全員が1泊2日の宿泊付き滝行+瞑想の体験者でした。私が当初迷っていた「瞑想」のみの参加者も、断食のみの参観者もゼロ。こちらの宿坊に泊まるほとんどの人の目的が滝行(と瞑想)のようです。
日帰りは1回のみの滝行参加ですが、宿泊の場合は初日(15時~)と翌朝(5時~)の2回滝行を体験できます。迷うなら、宿泊付き滝行体験が絶対におススメ!
白装束一式を入れた重たいリュックを背負い、いざ出発。
「ここから滝行ができる場所まで30分~1時間かけて山道を歩きます」 しかし、宿を出て5分。神職は軽やかな足取りで歩みを進めていきますが、急な坂道の連続に、参加者の中から早々に〝遅れる者〟がではじめました。
何を隠そう私も遅れる者の一人。デスクワークばかりでなまった体に、キツイ急こう配が響きます。「町を歩いているだけで、まだ山道にさえ出ていないのに大丈夫なの私?ここから更に30分以上も歩けるの?明日は参加できないかも」と自問自答が続きます。
参加者の心配な気持ちが神職には分かっているのか「ここが一番、辛いところですからね」と。 その言葉通り、山道に入ってしまえば、緩やかな坂が延々と続くのみで、そこまで急な坂に出合うことはありませんでした。風に揺れる木々、鳥のさえずり、動く虫…。大自然の中は、自然の伊吹を感じられるからか、町中を歩くよりずっと快適でした。
そして周囲を眺める余裕ができた私は、気付いてしまいました。結構な頻度で「ツキノワグマに注意」の看板が立ててあることに。 山だし、そういうこともあるよね。と最初は思っていましたが、「〇月〇日、この付近でクマが目撃されました」「〇月〇日、体長100cmのクマ出没」と段々、注意喚起が具体的になっていきます。
歩いているのは、人間が2人ギリギリすれ違える程度の山道。右も左も前も後ろも、すべてが山で、助けを求めたところで誰かに声が届くとは思えません。そんな中を、女性ばかりが6人ノロノロと…。クマの走るスピードは時速50キロだといいます。もしこの傾斜の先にクマがいたら、それはもう命の終わりを意味します。そんなことを心配しながら山道を歩き続けました。
山を登って下ってを繰り返し、45分ほど経ったころでしょうか。石でできた鳥居が見えてきました。そして、鳥居の向こうには滝。滝は意外と小さく落差も少なく、穏やかに見えました。ゴウゴウと爆音をたてて流れ落ちる滝の下での修行をイメージしていた私は、ちょっと拍子抜け。でも、それがとんでもない勘違いだったことに気付きます。
白装束に着替えると、神職がすでに滝行を行っていました。水に打たれているとは思えない清々しい姿に、参加者からは自然と歓声があがります。
神職のお手本が終わると、いよいよ私たちの番。入滝前には全員が足首まで水に浸かり、滝に向かって祝詞を唱えるのですが、その時の水の冷たさといったら! この日の最高気温は19度。薄い長袖&長ズボンで丁度良い気温です。でも山なので、さらに低い気温なのでしょう。水の冷たさに体が痺れました。
予想以上の冷たさに不安になり顔を見つめ合う参加者たち。でも、滝行は始まります。一番最初に飛び込んだのは参加者の中で一番若い女性でした。終わった瞬間「寒い!寒い!!」と叫びだします。
神職はフンドシ一枚で凛々しく滝に打たれていたのであまり気になりませんでしたが、白装束を着た状態で滝行を終えると、全身ずぶ濡れになります。寒さで震えるその姿は、滝行してスッキリ!どころか、悲壮感さえ漂っていました。
「寒い!」「息ができない!」「痛い!」女性たちの悲鳴がこだます中、私の番が巡ってきました。
覚悟をもっていざ、入滝。
遠くから見ると小さく見えた滝も、身を置いてみると物凄い水の量で思うように動けません。滝は冷たく、頭から冷水をかぶった私の全身は一瞬にして強張ります。
でも不思議なことに冷たさはあっという間に消えました。代わりに襲ってきたのは、息苦しさ。滝の水は重く、体が引っ張られそうになります。そして頑張って耐えている私の鼻と口を、流れ落ちる水が同時に塞ぎます。
ドドドッ!という水音が鳴り響く中、神職と共にゆっくり10秒数えあげました。10秒で滝行は終わり。たった10秒。でもキツイ。とんでもなく長く続く10秒の間、私は「痛い」「苦しい」「(水が)重い」という感情を味わい続けました。
滝行は10秒間×3セットで終了です。
1セット目の滝行を終えた私は放心状態。そして滝から離れた途端、とてつもない寒さに襲われました。風が冷たい!水の中の方が温かい!
寒さに震えていると、あっという間に2セット目の順番が周ってきます。滝行は一人ずつ順番に行いますが、持ち時間は一人10秒。参加者は私を含めて6人。45分かけて山道を歩いてきたというのに、あっという間に3セット終わってしまいました。
それでも、1セット目より2セット目、2セット目より3セット目の方が上手にできたという手応えはありました。
ポイントは、滝に打たれつつ息ができるベストポジションをいかに早く見つけられるかな気がします。滝の手前に陣取ると、後頭部を滝に打たれるだけ。でももう一歩入り込むと、その凄まじい水量に顔が埋もれ息ができなくなってします。
最初こそ「滝(自然)」の威力に圧倒されてしまいますが、適度に滝に打たれつつ息ができる状態をキープできれば、その後は滝行のスッキリ感を味わう余裕もでてくるから不思議です。
滝行を終えると、再びビニールシートで覆われただけの簡易的な空間で、着替えます。水を吸って膨らんだ白装束は、予想以上に重くズッシリしていました。でも「コレを背負って帰るのしんどい」と嘆く人は誰もいません。それどころか、全身水浸しで先ほどまで寒さに震えていたというのに、みんな晴れやかな顔をしています。自然と「楽しいよね」「何だか爽やか~」という会話が飛び交います。
帰り道は、スムーズでした。みんな疲労困憊のはずなのに、行きより荷物は重いのに、足取り軽く全員そろって帰路につきます。
滝行して生まれ変わって♪なら良いのですが、私は神職の「山道は怖いから日が暮れる前に、頑張って帰りましょう」という激励と(あの山道を、灯りなしで歩くのは怖すぎ)「宿に帰ったら、まずお風呂で温まりましょうね」というご褒美の言葉が大きかったと思っています。
次回は、クリスタルボウルを使った究極の瞑想体験をお届けします!
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。 マイナーな国をメインに、世界中を旅する。 旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。 出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。 公式HP:Lucia Travel
苦行のイメージが強い滝行ですが、女性に人気ってご存じですか?私が体験した御岳山の宿坊では、神職いわく「参加者は圧倒的(8割位)に女性が多い」そうです。
今回は、私の初めての滝行体験をお伝えします。
前回の記事はこちら
Lucia Travel連載一覧はこちら
目次
ずっしり重い白装束
宿坊の1階に集まった参加者たちは、30畳はありそうな広い居間で、神職から「滝行」に関するレクチャーと共に白装束を渡されました。
白装束、勝手にペラペラの着物を想像していましたが、きちんとした白装束は違いました。サラシ+サラシ帯+肌襦袢+肌襦袢用の帯+外用の白装束+外帯でワンセット。帯までもがしっかりした布で出来ているため、ずっしりと重みを感じます。
それら全てをリュックに詰めて滝行の場所まで持って行き、修行後は濡れて重くなった白装束を持って帰ります。
「水を吸って重くなった白装束は10キロ近くになりますから、必ずちゃんとしたリュックを背負ってくださいね。肩紐が千切れますよ」と神職。
10キロの荷物を背負って山道を歩くと聞き、参加者の顔色が曇ったのを感じました。
ちなみに…。こちらの宿坊では、日帰りでの滝行修行も受け付けていますが、この日は全員が1泊2日の宿泊付き滝行+瞑想の体験者でした。私が当初迷っていた「瞑想」のみの参加者も、断食のみの参観者もゼロ。こちらの宿坊に泊まるほとんどの人の目的が滝行(と瞑想)のようです。
日帰りは1回のみの滝行参加ですが、宿泊の場合は初日(15時~)と翌朝(5時~)の2回滝行を体験できます。迷うなら、宿泊付き滝行体験が絶対におススメ!
あちこちにある「クマに注意!」
白装束一式を入れた重たいリュックを背負い、いざ出発。
「ここから滝行ができる場所まで30分~1時間かけて山道を歩きます」
しかし、宿を出て5分。神職は軽やかな足取りで歩みを進めていきますが、急な坂道の連続に、参加者の中から早々に〝遅れる者〟がではじめました。
何を隠そう私も遅れる者の一人。デスクワークばかりでなまった体に、キツイ急こう配が響きます。「町を歩いているだけで、まだ山道にさえ出ていないのに大丈夫なの私?ここから更に30分以上も歩けるの?明日は参加できないかも」と自問自答が続きます。
参加者の心配な気持ちが神職には分かっているのか「ここが一番、辛いところですからね」と。
その言葉通り、山道に入ってしまえば、緩やかな坂が延々と続くのみで、そこまで急な坂に出合うことはありませんでした。風に揺れる木々、鳥のさえずり、動く虫…。大自然の中は、自然の伊吹を感じられるからか、町中を歩くよりずっと快適でした。
そして周囲を眺める余裕ができた私は、気付いてしまいました。結構な頻度で「ツキノワグマに注意」の看板が立ててあることに。
山だし、そういうこともあるよね。と最初は思っていましたが、「〇月〇日、この付近でクマが目撃されました」「〇月〇日、体長100cmのクマ出没」と段々、注意喚起が具体的になっていきます。
歩いているのは、人間が2人ギリギリすれ違える程度の山道。右も左も前も後ろも、すべてが山で、助けを求めたところで誰かに声が届くとは思えません。そんな中を、女性ばかりが6人ノロノロと…。クマの走るスピードは時速50キロだといいます。もしこの傾斜の先にクマがいたら、それはもう命の終わりを意味します。そんなことを心配しながら山道を歩き続けました。
水の冷たさに悲鳴!
山を登って下ってを繰り返し、45分ほど経ったころでしょうか。石でできた鳥居が見えてきました。そして、鳥居の向こうには滝。滝は意外と小さく落差も少なく、穏やかに見えました。ゴウゴウと爆音をたてて流れ落ちる滝の下での修行をイメージしていた私は、ちょっと拍子抜け。でも、それがとんでもない勘違いだったことに気付きます。
白装束に着替えると、神職がすでに滝行を行っていました。水に打たれているとは思えない清々しい姿に、参加者からは自然と歓声があがります。
神職のお手本が終わると、いよいよ私たちの番。入滝前には全員が足首まで水に浸かり、滝に向かって祝詞を唱えるのですが、その時の水の冷たさといったら!
この日の最高気温は19度。薄い長袖&長ズボンで丁度良い気温です。でも山なので、さらに低い気温なのでしょう。水の冷たさに体が痺れました。
予想以上の冷たさに不安になり顔を見つめ合う参加者たち。でも、滝行は始まります。一番最初に飛び込んだのは参加者の中で一番若い女性でした。終わった瞬間「寒い!寒い!!」と叫びだします。
神職はフンドシ一枚で凛々しく滝に打たれていたのであまり気になりませんでしたが、白装束を着た状態で滝行を終えると、全身ずぶ濡れになります。寒さで震えるその姿は、滝行してスッキリ!どころか、悲壮感さえ漂っていました。
「寒い!」「息ができない!」「痛い!」女性たちの悲鳴がこだます中、私の番が巡ってきました。
滝行は全ての下着を外して挑みます
痛い!苦しい!重い!
覚悟をもっていざ、入滝。
遠くから見ると小さく見えた滝も、身を置いてみると物凄い水の量で思うように動けません。滝は冷たく、頭から冷水をかぶった私の全身は一瞬にして強張ります。
でも不思議なことに冷たさはあっという間に消えました。代わりに襲ってきたのは、息苦しさ。滝の水は重く、体が引っ張られそうになります。そして頑張って耐えている私の鼻と口を、流れ落ちる水が同時に塞ぎます。
ドドドッ!という水音が鳴り響く中、神職と共にゆっくり10秒数えあげました。10秒で滝行は終わり。たった10秒。でもキツイ。とんでもなく長く続く10秒の間、私は「痛い」「苦しい」「(水が)重い」という感情を味わい続けました。
滝行は10秒間×3セットで終了です。
1セット目の滝行を終えた私は放心状態。そして滝から離れた途端、とてつもない寒さに襲われました。風が冷たい!水の中の方が温かい!
寒さに震えていると、あっという間に2セット目の順番が周ってきます。滝行は一人ずつ順番に行いますが、持ち時間は一人10秒。参加者は私を含めて6人。45分かけて山道を歩いてきたというのに、あっという間に3セット終わってしまいました。
それでも、1セット目より2セット目、2セット目より3セット目の方が上手にできたという手応えはありました。
ポイントは、滝に打たれつつ息ができるベストポジションをいかに早く見つけられるかな気がします。滝の手前に陣取ると、後頭部を滝に打たれるだけ。でももう一歩入り込むと、その凄まじい水量に顔が埋もれ息ができなくなってします。
最初こそ「滝(自然)」の威力に圧倒されてしまいますが、適度に滝に打たれつつ息ができる状態をキープできれば、その後は滝行のスッキリ感を味わう余裕もでてくるから不思議です。
足取り軽やかな帰り道
滝行を終えると、再びビニールシートで覆われただけの簡易的な空間で、着替えます。水を吸って膨らんだ白装束は、予想以上に重くズッシリしていました。でも「コレを背負って帰るのしんどい」と嘆く人は誰もいません。それどころか、全身水浸しで先ほどまで寒さに震えていたというのに、みんな晴れやかな顔をしています。自然と「楽しいよね」「何だか爽やか~」という会話が飛び交います。
帰り道は、スムーズでした。みんな疲労困憊のはずなのに、行きより荷物は重いのに、足取り軽く全員そろって帰路につきます。
滝行して生まれ変わって♪なら良いのですが、私は神職の「山道は怖いから日が暮れる前に、頑張って帰りましょう」という激励と(あの山道を、灯りなしで歩くのは怖すぎ)「宿に帰ったら、まずお風呂で温まりましょうね」というご褒美の言葉が大きかったと思っています。
次回は、クリスタルボウルを使った究極の瞑想体験をお届けします!
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筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel