東京都内で滝行修行?非日常を求めて御岳山の宿坊へ

気分をガラッと変えたいとき、皆さんなら何をしますか? 私が思いついたのは滝行修行でした。
過酷で敷居が高いイメージですが、都内でも体験は可能。意外にも女性に人気で予約も取りづらい滝行の魅力をお伝えします。

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東京都内で滝行をすることになったきっかけ

仕事、家事、そして育児。ただただ、忙しい毎日を追われるように過ごしていたら、何となく全てが上手くいかなくなってしまいました。

そんな時、頭に浮かんだのが「滝行」。ゴウゴウと鳴り響く滝に打たれて自分を無にし、心身を清めるあの修行です。冷たい水が雑念を消し、白装束が現実を遮断する…。今の私に必要なのは「滝行」のような荒修行に違いない。そう勝手に決意した私は、早速修行場所を探しました。

世の中には街中で行う日帰りプチ滝行もあるようですが、私は物理的にも精神的にも家族や日常から離れたかったため、人里離れた場所での滝行を希望しました。できるなら、ちょっとした非日常空間に身をおいて自分を見つめ直したい。

色々探していると、希望にピッタリな滝行修行の場がありました。それも東京都内で!
場所は奥多摩「御岳山」。御岳山は霊山として知られその山頂には宿坊が数軒建っているのですが、その宿の一つが滝行体験を提供していたのです。

奥多摩であれば時間こそかかりますが、飛行機や新幹線を使わずとも在来線でアクセスが可能です。しっかり時間を調べなくても、何となくきた電車に乗れば「御岳山」に行ける。今の気分にピッタリ。決めた、御岳山で滝行しよう!

ちなみにこの時、他に候補にあがったのは、山伏修行(開催時期や場所がかなり限定される上、意外と人気があって予約が困難なため断念)、巫女体験(3時間程度のお試し体験が多数。今回はもっとしっかり心のリセットを行いたかったのでパス)、絶食&脱スマホ道場(門戸は広いが意外と値段が高くて断念)、ヨガリトリート(もっと値段が高くて断念)、修道院での祈りの生活(コロナで受け入れ停止)。でした。

次は、修道院生活をぜひしてみたいと思っています。

滝行修行01
御岳山の山道。こんな大自然なのに東京都です

宿泊施設は、神社が運営する「宿坊」

「宿坊」(しゅくぼう)という言葉、聞いたことありますか?

宿坊とは、お寺や神社が運営する宿泊施設です。もともとは僧侶や参拝者が身を清めたり宿泊したりする施設でしたが、最近では一般客の利用も可能に。最大の特徴は宿泊だけでなく写経や精進料理教室、座禅など+アルファの体験をさせてもらえることです。

私が滝行をすると決めた宿坊では、体験の一つとして「滝行」「瞑想」「断食」を提供していました。

色々調べる中で気付きましたが、宿坊の中には、公式HPもなく予約は電話のみといった施設、門限や制限がある施設もありました。逆に、イベントを企画して広く一般客を受け入れている心意気のある宿坊もありました。

また、お風呂やトイレが共同で部屋のみを貸し出すタイプ、離れを使うタイプ、宿泊は一日一組限定などさまざまなタイプがあります。宿坊自体も高級ホテルに負けない豪華な施設もあれば、畳が敷かれているだけの簡素な施設もありました。

いずれの場合も普通のホテルではないということを頭において探せば、ステキな体験ができそうです。

滝行修行02
御岳山にある宿坊&お茶屋さん。赴きある立派な佇まい

意外にも大人気!2カ月先まで予約でいっぱい

宿坊と聞くと少しとっつきにくい気もしますが、私が決めた宿はそんなことはありませんでした。前衛的な神職がLINEを取り入れていて、予約や問い合わせは全てLINEでOK。即レスとまではいきませんが、忙しい時間帯でなければかなりテンポよく神職と直接LINEでやりとりができます(私はギリギリで予約する人間なので、助かりました)。

またHPがシンプルで見やすく、料金~宿泊の流れまで分かりやすく説明されていたのも決め手でした。

基本は1泊2日で、滝行は15時と翌朝6時、瞑想は19時と翌朝9時30分に行われます。そして2泊3日、3泊4日、一週間…。自分の都合に合わせて期間を好きに選べるのも魅力でした。

がしかし、HPに掲載されている予約カレンダーでは2カ月先までほとんど満室。「え?宿坊ってこんなに人気なの?」と思わず二度見してしまうほどでした。
幸いキャンセルがあって1泊2日の予約が取れましたが、可能なら2泊か3泊し修行僧のような暮らしを体験したかったなと思っています。

参加者の男女比は?初の滝行で気になる異性の目…

宿泊と瞑想体験は決めたものの、初めての滝行。辛いのかな?寒いかな?など憂えることが多々あり「滝行」の申し込みはできずにいました。滝行。魅力的ですがやはり気になるのは他の参加者の存在です。男性だけだったら、どうしよう…。

女性は白装束のみ、男性はふんどし一枚で行うのが正しい滝行だと神職に聞きました(もちろん男女ともに下着もNGです)。

私以外が全員、男性だったら?白装束着て紅一点はやっぱり避けたい。南米でシャーマンの修行をした時みたいに、何十回も滝行しています!という経験者のみだったら?
ここは日本、輪を乱すことなく私は滝行について行けるのか、正直デスクワーク続きで今は体力に自信がない。だからやっぱり、これも避けたい。

気になる点は全て神職に確認しました。神職は「滝行は、初心者でも女性でも大歓迎。ちなみに、あなたが予約しようとしている日の参加者は女性だけですよ」と。

なんてラッキー。女性だけという言葉を聞いた私は安心して「滝行」に挑むことになりました。

滝行修行03
男性の滝行の様子。ふんどし一枚です

大混雑の御岳山と、閉鎖的な宿坊周辺

私が乗った電車は、都心を抜けて青海、そして御岳山の最寄り駅・御嶽へ。御嶽からはバス+ケーブルカーを利用して御岳山を目指します。
乗り換えをするたびに、人気が少なくなり電車内がガランとしていたので勝手に奥多摩や御岳山周辺には、人はあまりいないのだと思っていました。

ところが御嶽駅に着いてビックリ!そこはラフティングにトレッキング、収穫体験などを楽しむ人々で賑わっていたのです。

休日ということもあってか、どこからこんなに?という人の量。川からは「キャー!キャー!」と川下りを楽しむ人の声が溢れ、ケーブルカーへ向かうバスに至っては定員オーバーで断られる人がいるほどの混雑ぶりでした。

後に知ったことですが御岳山は、初心者でも気軽に登れる山やパワースポット、山岳信仰の中心地として知られ、幅広い年代の人々が訪れる場所なんですね。

滝行修行04
山のふもとから、御岳山の山頂へと運んでくれるケーブルカー。カラフルです

ケーブルカー乗り場には「ここから上にATMありません!」こんな注意喚起が書かれていました。

東京都なのにATMのない町。山頂にはそこそこの数の人が暮らしていて、宿坊も並んでいるのに、ATMがないんだ…。ガスはきっとプロパンなんだろうな。食料はどうやって運んでくるんだろう。学校は?病院は?ケーブルカーで通勤?

当たり前のことですが険しい山の上に住んでいると、簡単には下界へ降りられません。その現実を目の当たりにして、私はワクワクしてしまいました。
なんて閉鎖的な空間なんだろう。日本にいながら、東京にいながら、異空間に行けるんだ私、と。

滝行がスタートするのは15時。色々見て回りたい欲求を抑えて、真っ直ぐに宿坊を目指します。

滝行修行5
山頂で見つけた診療所。診療日と診療時間があまりに短くて、色々心配になりました

お宿の想像は「THE神社」。現実は...

宿坊はケーブルカー降り場から、山頂へと上る一本道の途中にありました。宿坊なのでTHE神社の造りを想像していましたが、佇まいは、広くて大きなちょっと古い木造2階建ての家でした。

玄関には立派なしめ縄が飾ってありますが、それ以外は宿坊らしい特別な感じはありません。神職とその家族が住んでいて、空いた部屋を一般客向けに開放している感じでしょうか。玄関を開けると、すぐに神職が出てきて挨拶をしてくれました。

「2階の空いているお部屋を使ってください」

案内されるまま空いている部屋を探します。与えられたのは玄関の真上、階段をのぼった一番手前の部屋でした。
引き戸を引くと、畳10畳ほどの空間。ガランと広い空間には、テーブルとイス、小さなTVがおいてある以外は何もありません。簡素と表現するか、これぞ宿坊と表現すべきか。

トイレや洗面台は共同、お風呂は時間になったら順番にとのことなので、宿泊施設というより「間借り」と表現するのがピッタリかもしれません。

滝行修行6
御岳山のメイン通り。かやぶきの屋根と生い茂った緑を見ていると、自分がどこにいるか分からなくなります

参加者は〝普通〟の女性ばかり 

時刻は14:50。1階の30畳はありそうな広い居間に、滝行の参加者が集まりだしました。今日から2日間一緒に滝行をするメンバーとここで初めて対面する訳ですが、その面々には驚きました。本当に見事に女性ばかり。しかも若い。

OL然としたキレイな身なりの女性に、20歳前後の女子大学生。30~40代の主婦らしき方々。この日の最年長は60才でした。

そして、みなさん至って普通。体形も服装も良い意味で一般的な女性ばかりが集まっていて、自分を追い込んでいる感じも、鼻息荒く意気込んでいる感じも、スピリチュアルに陶酔している感じもありません。
常識的な大人の女性の模範のように一歩引いた感じで、それとなく自己紹介をし、当たり障りのない会話を楽しんでいました。

南米でシャーマンの修行をしていた時とは大違いで、逆にショックを受けました。あの時は、熱心すぎる修行者が、新米物を舐めるように見たり、〇〇の使い方がなっていないと怒ったり、自身の修行の妨げになると判断したら、他人の食生活にまで口をはさむような、何かを求めて自分を追い込んでいる熱心な修行者ばかりが集っていましたから。

だからこんなに普通の人たちが、丸の内で働いていそうな女性が、子どものお弁当を毎日手作りしてます!といった感じの主婦が滝行に参加するなんて、少しショックでした。

滝行というハードルは意外に低いのでしょうか。参加者の明るい面々を見て、安心するとともに驚いてしまったのを覚えています。

さていよいよ次回は滝行へ出発します。

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R.香月(かつき)プロフィール画像

筆者プロフィール:R.香月(かつき)

大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel

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