神さまの乗り物「神馬(しんめ)」とは?| 2026年午年こそ訪れたい神馬のいる神社も紹介!神社に馬がいる意味や由来

神社へ参拝に行った際、馬舎を見かけた事がありますか?
この馬舎は「神馬舎」といって、馬を模した像が奉納されている場合もあれば、実際に馬が祀られている事も。ではなぜ神社に馬がいるのでしょう。

神社に奉納されている馬は「神馬(しんめ)」と呼ばれ、神の御使いとされます。
今回は、なぜ「神馬」が神社に奉納されているのかについて、そして神馬についての歴史を紐解いていきます。2026年の初詣は、「神馬」が祀られている神社にお参りしてみませんか?

神馬とは

神馬(しんめ)とは、神社に奉納された馬のこと。
神社で行われる神事などの際に登場する、神様の乗り物です。

神馬とは

馬と神様はどんな関係があるの?「絵馬」が生まれた理由

なぜ馬が神社にいるのでしょうか。
受験や就職…人生の節目に差し当たり、大切な願い事をするときに「絵馬」を書いた事はありませんか?
絵馬の成り立ちに、大きな関係があります。

馬と神様はどんな関係があるの?「絵馬」が生まれた理由

古来、雨ごい等の大切な願い事を神さまに叶えてもらうために、お祈りとともに本物の馬を神社へ奉納したそうです。しかし奉納する側に多大な負担がかかるため、時代と共に馬を模した人形に移り変わり、やがて絵にかいた馬へと簡略化されてゆきました。

こうしてできたのが絵馬だといわれています。
ちなみに絵馬の歴史や正しい書き方についてはこちらで紹介しています。

そして奉納された馬が神馬となり、神社で「神の使い」としての役割を賜るのです。

馬は神さまの乗り物だった

そもそもどうして馬が神様の使いなのか。
それは昔から神様が人間界にやって来るときは、馬に乗って現れると信じられたからと言われています。

日本に乗馬文化が伝わり定着したのは、四世紀末ごろ。五世紀ごろには古墳の副葬品として「馬具」が一般化し、貴い身分の乗り物という認識が根付いたとされています。

馬は神さまの乗り物だった 西宮山古墳 馬具 鉸具|京都国立博物館 所蔵

また、平城京跡をはじめとする遺跡では馬をかたどったお守り「土馬(どば)」が発掘され、また平安時代の法律書「延喜式」には伊勢神宮への馬の奉納の仕方が書かれています。この時代から「馬は神様の乗り物」というイメージがあったのですね。

そのため神社で行われる神事や祭祀の際に神さまが乗れるように、馬を必要としていた面がありました。これが今に連なる「神馬」の起源です。

また、神馬は「神さまの乗り物である」がために、現在に伝わる馬にまつわるご神事・行事でも神馬の上に人が騎乗する事は滅多になく、あるとしても一部の限られた神職や皇族などといわれています。

奉納する馬の毛色にも意味がある?|14年間に数百回、生きている馬を奉納した曽我天皇

奉納する馬は、一般的には白馬が良いとされていたようですが、特に雨乞いの祭祀には黒毛の馬、晴れ乞いの祭祀には赤毛や白馬をおさめていました。

これは安倍晴明でおなじみ中国の陰陽道、五行説では「赤や白は火、黒は水」を司るという考え方から来ているといわれています。

奉納する馬の毛色にも意味がある?

京都・貴船(きふね)神社では、嵯峨天皇の御代(約14年間)だけでも数百回、馬を奉納しての祈願が行われたという記録が残っているそう。ちなみに最初に絵馬の原型「板立馬」を作り出したのは貴船神社といわれています。

どこの神社にも神馬舎はある?

どこの神社にも神馬舎はある?

「神馬舎」とは神さまがお乗りになる馬をおさめておく厩舎のことで、すべての神社にあるわけではありません。また生きている馬が飼育されている神社は全国的にも少ないです。
伊勢神宮や日光東照宮などの規模の大きな神社で飼育されていることが多く、小さな神社ではその余裕がないため、銅像や木彫、絵に描かれた馬が神馬舎に収められている場合があります。

猿は馬の守り神?神馬舎に猿がいる理由

神馬舎には稀に「猿」が模された意匠を見かけることができます。
これは、インドから中国を経て日本に伝わった「五行」という思想から生まれたものとされています。「火」に属す馬を、よわい「水」に属する猿で丁度よく御するという意図のもとが起源になっているそう。

馬がなぜ火に属するのかは、こちらでも説明しています!

ちなみに「見ざる・言わざる・聞かざる」で有名な、日光東照宮の三猿も神馬舎に彫られているものです。

2026年午年に訪れたい!実際に神馬が奉納されている神社

運が良ければ見られるかも!?神馬が飼育されている神社を紹介します。
神馬はいつもいるわけではなく、神事に合わせて神馬舎に「出社」してくる馬もいるため、詳細は神社のサイトなどで確認してから出かけましょう。

上賀茂神社(京都)

上賀茂神社(京都) 上賀茂神社|詩でたどる日本神社百選より

上賀茂神社は日本初の国営牧場が作られた地であり、祭祀としての競馬が行われている、馬にまつわる神社の中でも重要な神社です。
現在の神馬「神山号7世」は、2004年の桜花賞など日米の重賞を制した名馬「ダンスインザムード」の子で、自らも競走馬「マンインザムーン」として競馬場を駆けていた馬。普段は近くの京都産業大学馬術部厩舎で大切に飼育されていて、日曜日と祝日は会える時間帯があるそうです。
また、毎年5月に4頭の馬を競争させ、その年の作柄を占うお祭り「賀茂競馬(かもくらべうま)」は、五穀豊穣・無病息災を願って行われています。
宮中行事を神社に移したお祭りで、その様子は吉田兼好著の随筆「徒然草」にも記されているそうですが、なんといっても神山号は神様の乗り物なので、出場はありません。

〒603-8047
京都府京都市北区上賀茂本山339

伊勢神宮(三重)

伊勢神宮(三重) 伊勢神宮(外宮)|詩でたどる日本神社百選より

伊勢神宮の神馬は皇室が奉納した神馬で、普段は外宮と内宮の御厩(みうまや)に2頭ずついます。外宮の神馬は13時から15時あたりを狙って見に行けば会えるようですが、内宮の神馬が厩舎にいる時間は不定期で「会えたらすごくラッキー」のパワースポットとして訪れる人が多いパワースポットです。
なお内宮の神馬・元勇(もといさむ)号は愛子さまが愛でられている馬としても有名。1日、11日、21日の3日間の午前8時頃に、皇室にゆかりの菊花紋章の衣をまとって正宮にお参りする「神馬牽参(けんざん)」が行われるので、そこではその姿を見ることができます。

〒516-0023
三重県伊勢市宇治舘町1(内宮)

日光東照宮(栃木)

日光東照宮の初代神馬は家康公が関ケ原の戦いで騎乗した真っ白の名馬だったそう。
現在は全国で唯一「外国産神馬」がいます。1964年東京オリンピックの時に、ニュージーランド政府が日本馬術連盟に贈った白馬が東照宮に奉納されたのがきっかけで、その馬が亡くなるたびにニュージーランドから馬が贈られています。50年以上続いている伝統で、現在は4代目「光丸合」。名づけの由来はマオリ語の「コーマル=守られている」から来ているそうです。あの有名な「三猿」が彫刻された「神厩舎(しんきょうしゃ)」で飼育されています。

〒321-1431
栃木県日光市山内2301

住吉大社(大阪)

住吉大社| 住吉大社|詩でたどる日本神社百選より

神馬「白雪号」は、普段は大阪・和泉の乗馬クラブで飼育されていますが、参加する神事の時には神社にやってきます。毎年1月7日に行われる「白馬神事(あおうましんじ)」は、白雪号が本宮を参拝後に境内を駆け巡るという神事で「年の初めに白馬を見ると邪気が祓われる」という言い伝えをたよりに、多くの参拝客が訪れます。

〒558-0045
大阪府大阪市住吉区住吉2丁目9-89

五方山熊野神社(東京)

北海道出身で、祖父が調教師、父親は騎手、自身は馬術の選手だったという宮司が「やはり神馬は生きた馬じゃないと」と2000年にお迎えしたシェットランドポニーの神馬「きらら」がいます。秋には、きららと他2頭の馬が引く「ポニー馬車」で、七五三の祈祷を終えた子どもたちが境内を巡回できるイベントが人気の神社です。

〒124-0012
東京都葛飾区立石8丁目44−31

2026年午年におすすめ!日本各地に残る、馬にまつわるお祭り

農耕民族である日本人は、馬を愛し、馬とともに生きてきました。その大切な馬を神々の乗り物とし神事や祭祀でいたわる。そんなお祭りが全国各地に伝わっています。来年2026年は干支・午年にちなんで、馬にまつわるお祭りを訪ねてみませんか?神さまの御使いである馬の開運パワーを分けてもらえるかも!

相馬野馬追(福島県相馬市)

福島県相馬地方で毎年初夏に行われる行事です。
さて「野馬追」は約1000年も前、平将門が馬を敵兵に見立てて野に放ち、軍事訓練をしたことがその起源。甲冑姿の騎馬武者約400騎が集い、甲冑を付けたまま競馬を行う「甲冑競馬」、神旗を奪い合う「神旗争奪戦」、そして野馬を神社へ追い込み奉納する神事「野馬懸(のまかけ)」などの、盛大な行事が三日かけて行われます。
元が実戦形式だった事もあり、軍事訓練として一度は鎌倉幕府に禁止されましたが、多くの馬の中から神に奉納する馬を選ぶ名目として存続しています。

チャグチャグ馬コ(岩手県滝沢市・盛岡市)

チャグチャグ馬コ

岩手県滝沢市・鬼越蒼前神社から盛岡市・盛岡八幡宮までの約14kmの道のりを、華やかに着飾った60頭から100頭ほどの農耕馬が、鈴の音を「チャグチャグ」響かせながら約5時間をかけて行進する祭りです。
岩手県は古くから馬の産地で、農耕馬を家族の一員としてとても大切にしていました。かつては農繁期でただ1度の休息日で、馬にちなんだ「端午の節句」に開催していました。

いつもよく働いてくれる愛馬への感謝と無病息災を祈願し、馬の守り神である 「蒼前神社」や「駒形神社」へお参りするのです。馬のおめかし衣装は、農家の人々が麻を編んだり、草木染めなどで丹精込め、その子のために手作りした品。取り付けられた大小700個の鈴が鳴るきらびやかな音は、1996年に「残したい日本の音風景100選」にも選出されました。

花馬祭り(岐阜県中津川市・蛭川村、長野県南木曾町)

岐阜県中津川市の坂下神社に800年前から伝わる、木曽義仲ゆかりのお祭り。
花串と呼ばれる色紙などで飾った竹串をたくさん背中に背負った馬が、町を練り歩きます。この紙の色はそれぞれ農作物を表し、金は稲穂、銀は麦、赤は人参、白は大根、黄色は大豆、紫は小豆、青と緑は菜っ葉を模していて、馬一頭につき約400本を飾るそうです。この花串は「花奪り(はなとり)」と呼ばれるイベントで参拝客が一斉に奪い合い、持ち帰り縁起物とします。映画「男はつらいよ」44作目「寅次郎の告白」のクライマックスシーンでは、岐阜県蛭川村安弘見神社の花馬祭りが取り上げられました。また長野県南木曾町五宮神社でも同様の「田立の花馬祭り」が行われています。

流鏑馬神事(全国各地)

流鏑馬神事(全国各地)

馬場を駆け抜ける駿馬にまたがり、射的を行う勇壮な行事「流鏑馬(やぶさめ)」神事は、全国各地で行われています。数年前に埼玉県毛呂山町の歴史民俗資料館が調査したところによると、全国116の地区で流鏑馬が実施されているそうです。中でも「日本三大流鏑馬」に数えられているのは、9月に行われる神奈川県の鶴岡八幡宮、7月に行われる長野県の若一王子神社、そして5月の葵祭と共に行われる京都府の下鴨神社の3つです。

鶴岡八幡宮の流鏑馬

1187年、源頼朝が天下泰平を願い、全国から弓の名手を集めて始めたと言われています。

若一王子神社の流鏑馬

1221年、後鳥羽上皇が北条義時を討つ際に武運を祈り家来たちが始めたと言われている由緒あるもので、全国でも珍しい「子ども流鏑馬」で有名です。大人の流鏑馬のように疾走する馬ではなく、各町の代表である10騎の少年射隊が町内を巡行しながら射手をつとめます。

下鴨神社の流鏑馬

「糺の森(ただすのもり)」と呼ばれる全長400mの馬場を馬で駆け抜けながら的を撃つもので、なんと日本書紀に「雄略天皇即位の年(457年)」に行われたという記録が残っており、これを流鏑馬の起源とする説もあります。流鏑馬といえばほとんどが武家の軍事訓練の延長であることから、武具を身につけた武士の姿で行われるものが多いのですが、下鴨神社では公家装束(束帯)を着用して行われる珍しいものです。

神馬を見に行くときに気を付ける事

全国に数万社ある神社の中で、生きている神馬を飼育している神社は数えるほどしかありません。神馬の御利益をいただきに、初詣には生きた神馬がいる神社にお参りしてみませんか?以下、神馬と接するときの注意事項をお伝えしておきます。

会えたら幸運

普段は神社内の神馬舎ではなく、近くの学校や競馬場などの厩舎で飼育されていることも多いです。「会えたらすごく幸運」なのです。
土日祝は出社していたり、また馬にまつわる神事が行われている場合も多いので、リサーチしてから行くのがおすすめです。

絶対に食べ物を与えない

上賀茂神社などニンジンタイムが設けられている神社もありますが、もちろん勝手にえさやおやつをあげるのは厳禁。野菜でもトマトやキャベツ、ジャガイモなどは、馬にとっては中毒を起こすこともある危険な食べ物。馬はとても繊細な生き物なので、ちょっとした出来心が大事故につながります。

驚かせない

馬は草食動物なので、猛獣から身を守るための本能として、慣れていない刺激にとても敏感とされています。例えば大きな音や、大きな物体、激しく動いているものに突然遭遇すると混乱してしまい、暴れ出すことも。馬と接するときは、落ち着いた声でゆっくり話しかける事を意識しましょう。

パーソナルスペースを守り、敬意を持つ

どんな動物にも本能としてパーソナルスペースを持っていますが、馬は特にパーソナルスペースを重視する頭が大変良い動物です。
初めて触れ合う馬とはまだ信頼関係ができていませんから、どこからが「甘え」で、どこからが「わがまま」「いたずら」なのか、初心者には判別が難しいもの。それを理解せずに近づきすぎると、噛まれたり、突き飛ばされたり、蹴られたりして、とても危険です。
もし触れる機会があっても敬意を持って接しましょう。

馬アイテムで2026年を力強く駆け抜ける!

2026年の干支である「馬」。干支を模したモチーフはその一年、持ち主を守ってくれるそうです。
かわいい馬のアイテムで新年を駆け抜けてみませんか?

お年賀にぴったり|午飴缶

おみくじ入りの飴缶

2026年の干支である午をデザインした飴缶です。
中にはおみくじが入っていて、年末年始のプチギフトにもぴったり。飴を食べ終わった後の缶は、ちょっとした小物入れとしても使えます。

使うほど馴染む|午ふきん

使うほど馴染む|午ふきん

吸水にすぐれ速乾性も高い。上部で糸くずも出にくいので、どんな場所でも大活躍します。使うたび柔らかく生活に馴染んでいきます。

午年の開運インテリアにも|午てぬぐい

午年の開運インテリアにも|午てぬぐい

月岡芳年が手掛けた「芳年武者无類 阪額女」を手拭いで再現。
躍動感あふれる馬が印象的。手ぬぐい額に入れて飾っても素敵な一枚です。

2026年午年は「神馬」に会いに行こう!

馬は神社や神様と縁が深く、そして何より人間とのつながりが深い動物として、とても大切にされてきました。来たる2026年は午年。初詣や参拝の際には「馬」に会いに、出かけてみませんか。
馬の活気をすこしわけてもらって、2026年を馬のように力強く美しく、駆け抜けることができるかもしれません!


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