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エローラ石窟群(遺跡)とは、仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教の石窟寺院が共存するインドの世界遺産です。圧巻のカイラーサナータ寺院をはじめ、おびただしい彫刻に彩られた寺院群が美を競い共鳴する、神秘の巨大遺跡。歴史や見どころを徹底解説します!
世界でも比類なき美しさと壮大さを誇る石窟群、エローラ石窟群をご存じでしょうか?
エローラ石窟群とは、デカン高原の岸壁約2kmにわたり34もの石窟が削り出されているインドの世界遺産です。ムンバイの北東約380kmの場所にあり、地域の中心都市オーランガバードから約30km離れた村エローラにあります。
最大の見どころカイラーサナータ寺院をはじめ、おびただしい数の彫刻に彩られた石窟群は、まるで神々の宮殿!
そして不思議なことに、ここには3つの宗教の寺院が共存しているのです。
石窟とは岩を削って掘られた人工の洞窟のこと。インドには特に多くの石窟があります。なぜでしょうか?
インドに多くの石窟がある理由はその風土にあります。インド内陸部にはデカン高原が広がり岩山が豊富にあるうえに、乾燥した気候も石窟の保存に適していたのです。
さらにインドではさまざまな宗教が花開き、社会で重要な存在となりました。もともと石窟は宗教と関わりが深く、自然の洞窟に住んでいた修行僧が代わりに石窟を掘るようになったのが始まりと考えられます。
インドの自然と文化。その両方が、石窟寺院を発展させたのです。
エローラ石窟群には、奇妙な特徴があります。なんと、異なる3つの宗教、仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の寺院が共存しているのです!
最初に、5世紀~7世紀にかけて仏教石窟が造られました。南東にある古い石窟から北西に向かって新しい石窟が築かれていったのです。
7世紀からはヒンドゥー教寺院の建設が始まり、位置も直前の仏教石窟に隣接しています。
最後に築かれたのが、8世紀~10世紀にかけてのジャイナ教石窟です。
信仰の異なる人々が同じ地域で活動し、時には同じ時代に文化や技術を共有し、引き継ぐ。こんな不思議なことが起きたのは、宗教に対する寛容性が高いインドならではのことと考えられます。
エローラに最初に石窟寺院を築いたのは、仏教徒たちです。石窟群の南東の端にある第1窟~第12窟は仏教石窟で、5~7世紀にかけて築かれました。
日本人にもなじみの深い、仏教。インドで釈迦が始めたことは、皆さんご存じですね!
釈迦は紀元前6世紀前後の人物と考えられています。仏教は古代インドで支配的な宗教になりましたが、7世紀以降はヒンドゥー教やイスラム教が広まるにつれて徐々に衰退しました。
仏教石窟には、大きくヴィハーラ窟とチャイティヤ窟の2種類があります。ヴィハーラ窟とは、僧侶が生活をする場所、つまり僧院で、修行や瞑想も行われました。チャイティヤ窟とは、ストゥーパつまり仏塔をまつる礼拝堂です。
仏教石窟で特に見どころなのが、第10窟のヴィシュヴァカルマ窟。エローラの仏教寺院の中でも後期の石窟で、奥に巨大なストゥーパが据えられたチャイティヤ窟です。
ストゥーパの前には仏像が鎮座しています。この仏像の配置には、実は仏教寺院の変遷を表す重要な情報が隠されているのです。
初期の仏教石窟では、仏像は石窟の奥に置かれていました。時代が進むにつれて仏像の存在感が増し、ストゥーパを背にして中央に近いホールに置かれるようになったのです。
また、ヴィシュヴァカルマ窟は大工の石窟とも呼ばれ、木造建築を模した天井や装飾の豪華さが際立っています。
エローラの仏教石窟では、時代が進むにつれて仏像や装飾の重要性が増していった変遷を見ることができるのです。
第13窟~第29窟は、7世紀~9世紀のヒンドゥー教寺院です。
ヒンドゥー教は4世紀頃にバラモン教から発展する形で確立し、急速にインドに広まりました。現在でもインドの人口の80%以上がヒンドゥー教徒です。
日本でも、インド料理店などでシヴァやガネーシャといった神々に触れる機会も多いのではないでしょうか?実は多くのヒンドゥー教の神々は、仏教を通じて日本人にもなじみ深い存在なのです。
例えばヒンドゥー教の最高神の一柱であるシヴァ神は、密教の守護神マハーカーラ(大黒天)となり、さらに日本では七福神の大黒様として大人気の神様になりました。
他にも、弁財天、吉祥天といった女神や十二神将など、多くの仏法の守護神がもとはヒンドゥー教の神々です。
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エローラのヒンドゥー教寺院は、神々を描いた彫刻に彩られています。ヒンドゥー教の神話が壁に刻まれ、あたかも天上の世界に迷い込んだかのよう。シヴァ神がそこかしこに恐ろしい姿や踊る姿でダイナミックに描かれ、その妻の女神パールヴァティも優美な姿を披露します。
そしてこれらのヒンドゥー教石窟のうちの一つが、エローラ石窟群で最大の寺院にしてクライマックス、カイラーサナータ寺院です。
カイラーサナータ寺院とは、第16窟にあたるヒンドゥー教寺院で、その存在感はエローラ石窟群でも別格です。
幅約45m、奥行き約85m、高さ約32mにも及ぶ巨大寺院は、まさに圧巻!
実際にカイラーサナータ寺院の前に立てば、圧倒的な質量感と建物を埋め尽くす彫刻の神々しさに、言葉を失うことになるでしょう。
しかしその威容もカイラーサナータ寺院のすごさの表面にすぎません。この巨大寺院はなんと、すべて人の手によって岩山から削り出されたのです。
カイラーサナータ寺院は、8世紀にラーシュトラクータ朝のクリシュナ1世により、シヴァ神が住むカイラス山を模して建造されました。100年以上かけて削り取られた岩山は、実に300万立方mに及びます。
岩を穿ちこれほどの荘厳な神殿を造りあげた人々の情熱に、胸を打たれずにはいられません。
2階以上に彫刻が集中しており、壁にはヒンドゥー教神話の「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」のレリーフが彫られています。
石窟群の北西の端に、比較的新しい第30窟~第34窟があります。9~10世紀にかけて造られたジャイナ教の寺院です。
ジャイナ教については、よく知らない方が多いのではないでしょうか?ジャイナ教とは、釈迦と同時代のマハーヴィーラによって始められ、徹底した苦行によって悟りに至ろうとする宗教です。インドで主流の宗教になったことはありませんが、現在でもインドの人口の0.4%はジャイナ教信者です。
ジャイナ教石窟では、緻密な彫刻に目を見張ることになるでしょう。柱は優美な女神が、天井は見事な蓮の花が彩り、彫刻の美しさはヒンドゥー教石窟を凌駕するとされます。
特に第32窟はチョーターカイラーサ(小カイラーサ)とも呼ばれ、ヒンドゥー教のカイラーサナータ寺院と同じように一枚岩から削り出された見事な建造物です。
ジャイナ教石窟でまつられている人物像の多くは、全裸で動きのない姿をしています。建物の装飾は豪勢なのに、なぜ人物は質素なのでしょうか?
これは、ジャイナ教の開祖や聖者たちが物を持たないことを理想としたためです。豪華な彫刻と簡素な人物像の共鳴が、石窟に満ちる精神の静寂を際立たせます。
1983年に世界遺産に登録された、エローラ石窟群。
ユネスコでは世界遺産の登録条件として10項目の登録基準を定めています。世界遺産に登録されるには、少なくとも1つ以上の基準を満たさなくてはなりません。
そしてエローラ石窟群は、基準を3つも満たしているのです!
一枚岩から造られた石窟寺院の集合体であるエローラ石窟群は精緻な彫刻が施され、特にカイラーサナータ寺院は単一の岩盤から造られた世界最大級の石窟寺院です。このことが「人間の創造的才能を表す傑作である」という基準を満たします。
3つの宗教が共存したエローラ石窟群は、各宗教の信仰や様式を伝え、宗教に対する寛容の精神を示す、世界でも希少な遺跡です。このことが「現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である」という基準を満たします。
エローラ石窟群は、単なる遺跡ではありません。古代から各時代の信仰や宗教文化が受け継がれ、今なお多くのヒンドゥー教徒にとって巡礼地となっています。このことが「歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である」という基準を満たします。
3つの基準を満たすエローラ石窟群は、世界遺産のなかでも高い評価なのです。
エローラ石窟群へは、ムンバイの東約350kmにあるオーランガバードからアクセスします。
オーランガバード空港は日本からの直行便はなく、ムンバイやデリーで国内線に乗り換えなければなりません。国内線の本数は各社1日1~2便しかないので、待ち時間には要注意です。
エローラは空港から約40kmの場所にあり、途中、空港から約10kmの場所にオーランガバードの中心街があります。タクシーを利用すると楽に向かうことができます。
オーランガバードはアジャンター石窟群の観光拠点でもあり、観光客が多く訪れる街です。大都市と比べると、外国人がトラブルに巻き込まれにくいことで知られます。とはいえ、スリや置き引きに注意するなど、最低限の安全対策は必要です。
タクシーやオートリキシャーの料金も、外国人が割高な請求されることが少なくありません。これらの料金はそもそも交渉で決まることが多く、割高なのか見分けにくい面もあります。メーター付きのタクシーでも、実際には多くの場合で交渉をもちかけられるでしょう。
料金の相場を知っておくことと、乗る前に料金を決めておくことが重要です。ただ、インドではインフレが進行しており、適正相場も変化する可能性があります。できれば料金交渉の前に現地の人から適正相場の情報を得ておくと、交渉で有利でしょう。
オーランガバードからエローラまでローカルバスも運行していますが、多くの場合、地元の乗客で非常に混み合います。インド特有の豪華な装飾のバスは一見の価値がありますが、よほど現地慣れした方でなければ乗るのは避ける方がよいでしょう。
オーランガバードに寄る必要がなければ、タクシーで直接空港からエローラ石窟群に向かうのがおすすめです。交渉などの手間を省きたい場合は、あらかじめチャータータクシーを手配しておく選択肢もあります。
ツアーに参加するのもよいでしょう。世界遺産のエローラ石窟群は各旅行社のプランも充実しており、移動はお任せの場合も少なくありません。
インドの世界遺産、エローラ石窟群は、仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教の寺院が共存する壮大な遺跡です。
人々の情熱は岩山を削り、無数の彫刻を刻み、天上の世界を地上に現出させました。それ以上に、異なる宗教が同じ場所・技術を共有し継承した石窟群のあり方こそが、独特の文化が築き上げた奇跡といえます。
エローラ石窟群を訪れ、悠久の歴史と豊潤な精神が織りなす美の神髄に浸ってはいかがでしょうか?
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エローラ石窟群(遺跡)とは、仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教の石窟寺院が共存するインドの世界遺産です。圧巻のカイラーサナータ寺院をはじめ、おびただしい彫刻に彩られた寺院群が美を競い共鳴する、神秘の巨大遺跡。歴史や見どころを徹底解説します!
目次
エローラ石窟群って何?
世界でも比類なき美しさと壮大さを誇る石窟群、エローラ石窟群をご存じでしょうか?
エローラ石窟群とは、デカン高原の岸壁約2kmにわたり34もの石窟が削り出されているインドの世界遺産です。ムンバイの北東約380kmの場所にあり、地域の中心都市オーランガバードから約30km離れた村エローラにあります。
最大の見どころカイラーサナータ寺院をはじめ、おびただしい数の彫刻に彩られた石窟群は、まるで神々の宮殿!
そして不思議なことに、ここには3つの宗教の寺院が共存しているのです。
インドで発展した石窟寺院とは
石窟とは岩を削って掘られた人工の洞窟のこと。
インドには特に多くの石窟があります。なぜでしょうか?
インドに多くの石窟がある理由はその風土にあります。
インド内陸部にはデカン高原が広がり岩山が豊富にあるうえに、乾燥した気候も石窟の保存に適していたのです。
さらにインドではさまざまな宗教が花開き、社会で重要な存在となりました。もともと石窟は宗教と関わりが深く、自然の洞窟に住んでいた修行僧が代わりに石窟を掘るようになったのが始まりと考えられます。
インドの自然と文化。その両方が、石窟寺院を発展させたのです。
3つの宗教の寺院群が集まる遺跡
エローラ石窟群には、奇妙な特徴があります。なんと、異なる3つの宗教、仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の寺院が共存しているのです!
最初に、5世紀~7世紀にかけて仏教石窟が造られました。南東にある古い石窟から北西に向かって新しい石窟が築かれていったのです。
7世紀からはヒンドゥー教寺院の建設が始まり、位置も直前の仏教石窟に隣接しています。
最後に築かれたのが、8世紀~10世紀にかけてのジャイナ教石窟です。
信仰の異なる人々が同じ地域で活動し、時には同じ時代に文化や技術を共有し、引き継ぐ。こんな不思議なことが起きたのは、宗教に対する寛容性が高いインドならではのことと考えられます。
石窟群の中で最も古い「仏教石窟」
エローラに最初に石窟寺院を築いたのは、仏教徒たちです。石窟群の南東の端にある第1窟~第12窟は仏教石窟で、5~7世紀にかけて築かれました。
日本人にもなじみの深い、仏教。インドで釈迦が始めたことは、皆さんご存じですね!
釈迦は紀元前6世紀前後の人物と考えられています。仏教は古代インドで支配的な宗教になりましたが、7世紀以降はヒンドゥー教やイスラム教が広まるにつれて徐々に衰退しました。
仏教石窟には、大きくヴィハーラ窟とチャイティヤ窟の2種類があります。
ヴィハーラ窟とは、僧侶が生活をする場所、つまり僧院で、修行や瞑想も行われました。
チャイティヤ窟とは、ストゥーパつまり仏塔をまつる礼拝堂です。
仏教石窟の変遷が刻まれた「ヴィシュヴァカルマ窟」
仏教石窟で特に見どころなのが、第10窟のヴィシュヴァカルマ窟。エローラの仏教寺院の中でも後期の石窟で、奥に巨大なストゥーパが据えられたチャイティヤ窟です。
ストゥーパの前には仏像が鎮座しています。
この仏像の配置には、実は仏教寺院の変遷を表す重要な情報が隠されているのです。
初期の仏教石窟では、仏像は石窟の奥に置かれていました。時代が進むにつれて仏像の存在感が増し、ストゥーパを背にして中央に近いホールに置かれるようになったのです。
また、ヴィシュヴァカルマ窟は大工の石窟とも呼ばれ、木造建築を模した天井や装飾の豪華さが際立っています。
エローラの仏教石窟では、時代が進むにつれて仏像や装飾の重要性が増していった変遷を見ることができるのです。
石窟群の中で最大「ヒンドゥー教石窟」
第13窟~第29窟は、7世紀~9世紀のヒンドゥー教寺院です。
ヒンドゥー教は4世紀頃にバラモン教から発展する形で確立し、急速にインドに広まりました。現在でもインドの人口の80%以上がヒンドゥー教徒です。
日本でも、インド料理店などでシヴァやガネーシャといった神々に触れる機会も多いのではないでしょうか?
実は多くのヒンドゥー教の神々は、仏教を通じて日本人にもなじみ深い存在なのです。
例えばヒンドゥー教の最高神の一柱であるシヴァ神は、密教の守護神マハーカーラ(大黒天)となり、さらに日本では七福神の大黒様として大人気の神様になりました。
他にも、弁財天、吉祥天といった女神や十二神将など、多くの仏法の守護神がもとはヒンドゥー教の神々です。
シヴァについて知りたい方はコチラ
エローラのヒンドゥー教寺院は、神々を描いた彫刻に彩られています。ヒンドゥー教の神話が壁に刻まれ、あたかも天上の世界に迷い込んだかのよう。シヴァ神がそこかしこに恐ろしい姿や踊る姿でダイナミックに描かれ、その妻の女神パールヴァティも優美な姿を披露します。
そしてこれらのヒンドゥー教石窟のうちの一つが、エローラ石窟群で最大の寺院にしてクライマックス、カイラーサナータ寺院です。
まるで巨大な神の山「カイラーサナータ寺院」
カイラーサナータ寺院とは、第16窟にあたるヒンドゥー教寺院で、その存在感はエローラ石窟群でも別格です。
幅約45m、奥行き約85m、高さ約32mにも及ぶ巨大寺院は、まさに圧巻!
実際にカイラーサナータ寺院の前に立てば、圧倒的な質量感と建物を埋め尽くす彫刻の神々しさに、言葉を失うことになるでしょう。
しかしその威容もカイラーサナータ寺院のすごさの表面にすぎません。この巨大寺院はなんと、すべて人の手によって岩山から削り出されたのです。
カイラーサナータ寺院は、8世紀にラーシュトラクータ朝のクリシュナ1世により、シヴァ神が住むカイラス山を模して建造されました。100年以上かけて削り取られた岩山は、実に300万立方mに及びます。
岩を穿ちこれほどの荘厳な神殿を造りあげた人々の情熱に、胸を打たれずにはいられません。
2階以上に彫刻が集中しており、壁にはヒンドゥー教神話の「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」のレリーフが彫られています。
緻密な彫刻が光る「ジャイナ教石窟」
石窟群の北西の端に、比較的新しい第30窟~第34窟があります。9~10世紀にかけて造られたジャイナ教の寺院です。
ジャイナ教については、よく知らない方が多いのではないでしょうか?
ジャイナ教とは、釈迦と同時代のマハーヴィーラによって始められ、徹底した苦行によって悟りに至ろうとする宗教です。インドで主流の宗教になったことはありませんが、現在でもインドの人口の0.4%はジャイナ教信者です。
ジャイナ教石窟では、緻密な彫刻に目を見張ることになるでしょう。柱は優美な女神が、天井は見事な蓮の花が彩り、彫刻の美しさはヒンドゥー教石窟を凌駕するとされます。
特に第32窟はチョーターカイラーサ(小カイラーサ)とも呼ばれ、ヒンドゥー教のカイラーサナータ寺院と同じように一枚岩から削り出された見事な建造物です。
ジャイナ教石窟でまつられている人物像の多くは、全裸で動きのない姿をしています。建物の装飾は豪勢なのに、なぜ人物は質素なのでしょうか?
これは、ジャイナ教の開祖や聖者たちが物を持たないことを理想としたためです。
豪華な彫刻と簡素な人物像の共鳴が、石窟に満ちる精神の静寂を際立たせます。
エローラ石窟群が世界遺産に選ばれた理由
1983年に世界遺産に登録された、エローラ石窟群。
ユネスコでは世界遺産の登録条件として10項目の登録基準を定めています。世界遺産に登録されるには、少なくとも1つ以上の基準を満たさなくてはなりません。
そしてエローラ石窟群は、基準を3つも満たしているのです!
一枚岩から造られた石窟寺院の集合体であるエローラ石窟群は精緻な彫刻が施され、特にカイラーサナータ寺院は単一の岩盤から造られた世界最大級の石窟寺院です。このことが「人間の創造的才能を表す傑作である」という基準を満たします。
3つの宗教が共存したエローラ石窟群は、各宗教の信仰や様式を伝え、宗教に対する寛容の精神を示す、世界でも希少な遺跡です。このことが「現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である」という基準を満たします。
エローラ石窟群は、単なる遺跡ではありません。古代から各時代の信仰や宗教文化が受け継がれ、今なお多くのヒンドゥー教徒にとって巡礼地となっています。このことが「歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である」という基準を満たします。
3つの基準を満たすエローラ石窟群は、世界遺産のなかでも高い評価なのです。
アクセスには空港からタクシーの利用がおすすめ
エローラ石窟群へは、ムンバイの東約350kmにあるオーランガバードからアクセスします。
オーランガバード空港は日本からの直行便はなく、ムンバイやデリーで国内線に乗り換えなければなりません。国内線の本数は各社1日1~2便しかないので、待ち時間には要注意です。
エローラは空港から約40kmの場所にあり、途中、空港から約10kmの場所にオーランガバードの中心街があります。タクシーを利用すると楽に向かうことができます。
オーランガバードはアジャンター石窟群の観光拠点でもあり、観光客が多く訪れる街です。大都市と比べると、外国人がトラブルに巻き込まれにくいことで知られます。とはいえ、スリや置き引きに注意するなど、最低限の安全対策は必要です。
タクシーを利用する際の注意点
タクシーやオートリキシャーの料金も、外国人が割高な請求されることが少なくありません。これらの料金はそもそも交渉で決まることが多く、割高なのか見分けにくい面もあります。メーター付きのタクシーでも、実際には多くの場合で交渉をもちかけられるでしょう。
料金の相場を知っておくことと、乗る前に料金を決めておくことが重要です。ただ、インドではインフレが進行しており、適正相場も変化する可能性があります。できれば料金交渉の前に現地の人から適正相場の情報を得ておくと、交渉で有利でしょう。
オーランガバードからエローラまでローカルバスも運行していますが、多くの場合、地元の乗客で非常に混み合います。インド特有の豪華な装飾のバスは一見の価値がありますが、よほど現地慣れした方でなければ乗るのは避ける方がよいでしょう。
ツアーの利用もオススメ
オーランガバードに寄る必要がなければ、タクシーで直接空港からエローラ石窟群に向かうのがおすすめです。交渉などの手間を省きたい場合は、あらかじめチャータータクシーを手配しておく選択肢もあります。
ツアーに参加するのもよいでしょう。世界遺産のエローラ石窟群は各旅行社のプランも充実しており、移動はお任せの場合も少なくありません。
情熱と歴史が交錯する、石窟寺院の最高峰
インドの世界遺産、エローラ石窟群は、仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教の寺院が共存する壮大な遺跡です。
人々の情熱は岩山を削り、無数の彫刻を刻み、天上の世界を地上に現出させました。それ以上に、異なる宗教が同じ場所・技術を共有し継承した石窟群のあり方こそが、独特の文化が築き上げた奇跡といえます。
エローラ石窟群を訪れ、悠久の歴史と豊潤な精神が織りなす美の神髄に浸ってはいかがでしょうか?
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猿神ハヌマーンは王子ラーマに対して忠誠心のある義理堅い英雄
世界遺産で思わぬトラブル?▼
ヨルダンの世界遺産「ペトラ遺跡」の入場料が高すぎる!?