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シルクロードを通じて伝わり、今もなお多くの人々に愛され続けているスペインの伝統工芸「ダマスキナード」。現在ではネックレスやブローチ、ピアスなど、さまざまなアイテムで楽しむことができます。
今回は、このスペインの象嵌細工「ダマスキナード」についてご紹介します。
象嵌(ぞうがん)細工とは、「象る(かたどる)」と「嵌める(はめる)」という意味が組み合わさった技法で、金属や木材などの素材に異なる素材をはめ込んで装飾する技術のことです。
この技術はシリアのダマスカスで誕生し、シルクロードを経由して、スペイン、エジプト、ギリシャ、ローマ、中国、日本など、さまざまな文化に広まり発展しました。
日本には飛鳥時代に伝わり、金属の表面に溝を掘り、金や銀などの異なる金属をはめ込む「金工象嵌」や、異なる色や材質の木材を使って絵画や図柄を表現する「木象嵌」など、いくつかの種類があります。
日本各地には京象嵌、肥後象嵌、加賀象嵌などの有名な産地があります。現在、日本では肥後象嵌とスペイン・トレドの象嵌細工「ダマスキナード」を融合させた象嵌師も活躍しています。
首都マドリッドから車で約90分の距離に位置するスペインの古都トレドは、16世紀に首都がマドリッドに移されるまで、長らくスペインの首都として栄えていました。トレドは金工象嵌を始め、イスラム様式とキリスト様式が融合した貴重な建築物や、古代ローマ時代の文化が今も色濃く残り、旧市街全体がユネスコの世界遺産に登録されています。
「スペインに一日しか行けないなら、トレドに行け」と語ったスペインの作家アントニオ・マチャドの格言に象徴されるように、歴史的な魅力が深く根付いた都市で、観光客にとっても必見のスポットです。
そのような歴史を持つ古都トレドでは、鋼板に金や銀の箔、金線をはめ込む「金工象嵌」が発展し、現在もその技法が受け継がれています。象嵌細工が施されたアクセサリーや家具、お皿などの伝統工芸品は、世界中で高い評価を受けています。さらに、トレドは刀剣製造でも有名で、繊細な象嵌細工が施された甲冑や刀剣も有名です。
スペインの古都トレドで作られる象嵌細工は、「ダマスキナード」と呼ばれています。この技法では、黒く変色させた鋼に金や銀を繊細に埋め込み、黒と金、銀の鮮やかなコントラストが特徴的です。ダマスキナードは精緻な模様が施された金属作品として、世界中で高く評価されています。
「ダマスキナード」の名前は、中東のシリアの古都ダマスカス(Damascus)に由来しており、ダマスカスは古代よりメソポタミアと地中海を結ぶ東西交易の要衝として栄えてきました。8世紀から15世紀にかけてダマスカスの技術がシルクロードを通じ、イスラム文化と共にスペインのトレドに伝わりました。
かつて16世紀まで首都だったトレドでは、金銀細工の需要が高く、多くの職人が集まりました。またトレドを囲むタホ川の水が刀の焼き入れに適していたこともあり、ダマスキナードの技法が発展し、現代に至るまで続いています。
しかし、近年では機械生産が進み、短時間で大量に生産される機械製品と職人の手作業によるダマスキナードを価格で区別するのが難しくなっています。くわえて、職人の高齢化が進み、50代以上の職人が多いため、後継者不足が深刻な課題となっています。
一人前の職人になるには10年以上の経験が必要とされていますが、かつて存在した象嵌学校は現在廃校となり、伝統技術の継承が大きな課題となっています。
ダマスキナードには2種類の伝統的なデザインがあります。一つはイスラム文化に由来した幾何学模様を施したアラブ形式のデザイン、もう一つは花や動物、風景をモチーフにしたルネッサンス様式のデザインです。
現在では、宗教的なシーンや、スペインの象徴的なモチーフ(たとえばドン・キホーテやトレド大聖堂)なども取り入れられ多様なデザインが描かれています。とくに「ダマスクバード」と呼ばれる花をついばむ鳥の模様は、吉祥のしるしとして人気となっています。
欧州航路では普段使いにも素敵なダマスキナードのアクセサリーを販売しています。スペインの職人が生み出す繊細な品の数々を是非お手元でお確かめください。
ダマスキナードは以下の5つの手順で制作されます。
トレドの「ダマスキナード スアレス(Damasquinado Suarez)」では、ダマスキナードの制作工房とショップが併設されています。実際にダマスキナードの制作過程を見学することも可能で、ショップでは職人が作る高級品や、手頃な価格のアクセサリーやペンダントなどを購入できます。
たとえば、ペンダントはおよそ25ユーロ前後(約3,970円※2025年2月現在のレート)で購入できます。また、ショップでは甲冑や刀剣なども展示されています。
ダマスキナードは鋼でできているため、水分に弱い性質を持ちます。そのため手入れせずに長い期間使用すると、さび止めのコーティングが剥がれ、さびてしまうことがあります。
保管する際は湿気のない場所に置き、乾燥材などと一緒に保管することをおすすめします。お手入れ方法としては、たまに全体に油を塗り、柔らかい布などで優しく拭き取ります。
また、消しゴムやパンの白い部分で軽く磨くと、きれいに仕上がります。現地では、お手入れとして定期的にオリーブ油を塗り、パンの白い部分で磨いているそうです。
スペインの伝統工芸「ダマスキナード」はシルクロードを経て伝わり、現在も世界中で愛されている象嵌細工の技術です。この技法はアクセサリーや家具、刀剣などに使われ、長い歴史の中でイスラム様式とキリスト様式が融合した独自の文化を形成してきました。
ダマスキナードはデザインや技法の進化を経て現代にも受け継がれており、ネックレスやブローチ、ピアスなどのアイテムや、現在は衣服のデザインとしても活用され親しまれています。さらに、手入れをしっかりと行うことで、日常使いにも適した美しいアイテムとして長く楽しむことができます。
ダマスキナードは、歴史を感じることができるスペインの貴重な工芸品であり、その魅力は今後も多くの人々に伝わり続けることでしょう。
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シルクロードを通じて伝わり、今もなお多くの人々に愛され続けているスペインの伝統工芸「ダマスキナード」。現在ではネックレスやブローチ、ピアスなど、さまざまなアイテムで楽しむことができます。
今回は、このスペインの象嵌細工「ダマスキナード」についてご紹介します。
目次
象嵌細工って何?
象嵌(ぞうがん)細工とは、「象る(かたどる)」と「嵌める(はめる)」という意味が組み合わさった技法で、金属や木材などの素材に異なる素材をはめ込んで装飾する技術のことです。
この技術はシリアのダマスカスで誕生し、シルクロードを経由して、スペイン、エジプト、ギリシャ、ローマ、中国、日本など、さまざまな文化に広まり発展しました。
日本には飛鳥時代に伝わり、金属の表面に溝を掘り、金や銀などの異なる金属をはめ込む「金工象嵌」や、異なる色や材質の木材を使って絵画や図柄を表現する「木象嵌」など、いくつかの種類があります。
日本各地には京象嵌、肥後象嵌、加賀象嵌などの有名な産地があります。現在、日本では肥後象嵌とスペイン・トレドの象嵌細工「ダマスキナード」を融合させた象嵌師も活躍しています。
古都トレドでの象嵌細工の発展
首都マドリッドから車で約90分の距離に位置するスペインの古都トレドは、16世紀に首都がマドリッドに移されるまで、長らくスペインの首都として栄えていました。トレドは金工象嵌を始め、イスラム様式とキリスト様式が融合した貴重な建築物や、古代ローマ時代の文化が今も色濃く残り、旧市街全体がユネスコの世界遺産に登録されています。
「スペインに一日しか行けないなら、トレドに行け」と語ったスペインの作家アントニオ・マチャドの格言に象徴されるように、歴史的な魅力が深く根付いた都市で、観光客にとっても必見のスポットです。
そのような歴史を持つ古都トレドでは、鋼板に金や銀の箔、金線をはめ込む「金工象嵌」が発展し、現在もその技法が受け継がれています。象嵌細工が施されたアクセサリーや家具、お皿などの伝統工芸品は、世界中で高い評価を受けています。さらに、トレドは刀剣製造でも有名で、繊細な象嵌細工が施された甲冑や刀剣も有名です。
ダマスキナードの刀剣類を扱う店もあり、まるでRPGの世界に迷い込んだよう。
スペインの象嵌細工・ダマスキナード
スペインの古都トレドで作られる象嵌細工は、「ダマスキナード」と呼ばれています。この技法では、黒く変色させた鋼に金や銀を繊細に埋め込み、黒と金、銀の鮮やかなコントラストが特徴的です。ダマスキナードは精緻な模様が施された金属作品として、世界中で高く評価されています。
「ダマスキナード」の名前は、中東のシリアの古都ダマスカス(Damascus)に由来しており、ダマスカスは古代よりメソポタミアと地中海を結ぶ東西交易の要衝として栄えてきました。8世紀から15世紀にかけてダマスカスの技術がシルクロードを通じ、イスラム文化と共にスペインのトレドに伝わりました。
何故トレドでダマスキナードが栄えたのか?
かつて16世紀まで首都だったトレドでは、金銀細工の需要が高く、多くの職人が集まりました。またトレドを囲むタホ川の水が刀の焼き入れに適していたこともあり、ダマスキナードの技法が発展し、現代に至るまで続いています。
しかし、近年では機械生産が進み、短時間で大量に生産される機械製品と職人の手作業によるダマスキナードを価格で区別するのが難しくなっています。くわえて、職人の高齢化が進み、50代以上の職人が多いため、後継者不足が深刻な課題となっています。
一人前の職人になるには10年以上の経験が必要とされていますが、かつて存在した象嵌学校は現在廃校となり、伝統技術の継承が大きな課題となっています。
どんな柄が主流?
ダマスキナードには2種類の伝統的なデザインがあります。
一つはイスラム文化に由来した幾何学模様を施したアラブ形式のデザイン、もう一つは花や動物、風景をモチーフにしたルネッサンス様式のデザインです。
現在では、宗教的なシーンや、スペインの象徴的なモチーフ(たとえばドン・キホーテやトレド大聖堂)なども取り入れられ多様なデザインが描かれています。とくに「ダマスクバード」と呼ばれる花をついばむ鳥の模様は、吉祥のしるしとして人気となっています。
欧州航路では普段使いにも素敵なダマスキナードのアクセサリーを販売しています。
スペインの職人が生み出す繊細な品の数々を是非お手元でお確かめください。
ダマスキナードの制作工程
ダマスキナードは以下の5つの手順で制作されます。
制作工程はどこで見れるの?
トレドの「ダマスキナード スアレス(Damasquinado Suarez)」では、ダマスキナードの制作工房とショップが併設されています。実際にダマスキナードの制作過程を見学することも可能で、ショップでは職人が作る高級品や、手頃な価格のアクセサリーやペンダントなどを購入できます。
たとえば、ペンダントはおよそ25ユーロ前後(約3,970円※2025年2月現在のレート)で購入できます。また、ショップでは甲冑や刀剣なども展示されています。
ダマスキナードの手入れ方法
ダマスキナードは鋼でできているため、水分に弱い性質を持ちます。
そのため手入れせずに長い期間使用すると、さび止めのコーティングが剥がれ、さびてしまうことがあります。
保管する際は湿気のない場所に置き、乾燥材などと一緒に保管することをおすすめします。お手入れ方法としては、たまに全体に油を塗り、柔らかい布などで優しく拭き取ります。
また、消しゴムやパンの白い部分で軽く磨くと、きれいに仕上がります。現地では、お手入れとして定期的にオリーブ油を塗り、パンの白い部分で磨いているそうです。
ダマスキナードはスペインの貴重な工芸品!
スペインの伝統工芸「ダマスキナード」はシルクロードを経て伝わり、現在も世界中で愛されている象嵌細工の技術です。この技法はアクセサリーや家具、刀剣などに使われ、長い歴史の中でイスラム様式とキリスト様式が融合した独自の文化を形成してきました。
ダマスキナードはデザインや技法の進化を経て現代にも受け継がれており、ネックレスやブローチ、ピアスなどのアイテムや、現在は衣服のデザインとしても活用され親しまれています。さらに、手入れをしっかりと行うことで、日常使いにも適した美しいアイテムとして長く楽しむことができます。
ダマスキナードは、歴史を感じることができるスペインの貴重な工芸品であり、その魅力は今後も多くの人々に伝わり続けることでしょう。
関連記事
ロマン溢れる情熱が詰まった職人の芸術品▼
中欧の職人が作る美しいフォルムとぬくもりのチェコガラス香水瓶
10万ℓ以上のワインでお祝い!▼
スペインのお祭り「ワインバトル」が奇祭すぎ!参加者全員でワインをかけまくる!