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縁結びの神様として有名な出雲大社は、国内国外問わず、毎年多くの参拝者が訪れています。歴史の古い出雲大社では、ほかの神社とは違う参拝方法やルートがあることをご存じでしょうか?
また、出雲大社のご祭神である大国主大神に関する神話を元にした出雲大社ならではの神事やおすすめスポットなどもたくさんあるので紹介していきましょう。
出雲大社とは、島根県出雲市大社町にある日本を代表する神社です。出雲大社の歴史はとても古く、神話にも登場しています。ここでは、出雲大社の歴史や祀られている神様、ご利益などについて解説していきましょう。
一般的に、「いづもたいしゃ」とよばれることが多いですが、正しく読むと、「いづもおおやしろ」とされています。そんな出雲大社は、現存する日本最古の神社の1つといわれています。
出雲大社が造営された年代ははっきりとはしていませんが、飛鳥時代に書かれた「古事記」の中で、神話の時代に豊芦原水穂国(とよあしはらのみずほのくに:日本神話の中の地上世界)を納めていた大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)が高天原(たかまがはら:日本神話の中の天界)の天照大神(あまてらすおおみかみ)の孫である邇邇芸命(ににぎのみこと)に国を譲り、代わりに自分が住む宮殿を建てて欲しいと願い、建てられた宮殿が出雲大社の始まりとされています。
この宮殿は天照大神の宮殿と同じような造りのもので、「天日隅宮(あめのひすみのみや)」と呼ばれていたとされています。また「出雲国風土記」では、大国主大神のために沢山の神様たちが集まって宮殿を築いたとあり、古代から「杵築大社(きずきたいしゃ)」とも呼ばれていました。そのほかにも、出雲大社は様々な名前で呼ばれていましたが、名称を統一するため明治4年(1871年)に「出雲大社」と改称しました。
出雲大社は平安時代には大きな社であったと当時の書物に書き記されていますが、その後何度も遷宮(神社の本殿の修理や造営のためにご祭神を新しい本殿に移すこと)が行われました。現在の境内は江戸時代前期の寛文7年(1667年)に行われた造営遷宮の際に作られ、現在の本殿が造営されたのは江戸時代後期の延享元年(1744年)です。その後も60年に1度の式年遷宮が行われており、2013年には「平成の大遷宮」と呼ばれるご本殿の大改修が行われました。この改修工事では、東日本大震災で被災した東北の木材も使われています。
出雲大社のご祭神は、大国主大神です。大きな袋を担いで打ち出の小槌を持った姿の「大黒様」としても親しまれている大国主大神は、縁結びや子授、夫婦円満、五穀豊穣、商売繁盛などのご利益があるとされています。
大国主大神は、須佐之男命(すさのおのみこと)の6世の孫で、多くの兄弟の末っ子で、心優しく賢い神様です。大国主大神には沢山の妻がいて多くの子を成したことから、縁結びや子孫繁栄のご利益があるといわれています。中でも、本妻となった須勢理毘売命(すせりびめのみこと)はお互い一目ぼれして結婚し、結婚を許してもらうために須勢理毘売命の父親の須佐之男命が与えた試練を二人で乗り越えて幸せになったという神話もあり、恋愛成就のご利益もあるとされています。
また、大国主大神は、人間たちに農業や漁業、医学など生きていくうえで大切な知恵を授け、人間と共に困難を乗り越えて国造りの大業を成し遂げます。そのため、五穀豊穣や商売繁盛などのご利益があるとされています。
出雲大社の本殿に参拝する方法は、一般的な神社と少し違っています。ここでは、出雲大社の正しい参拝方法と基本的なルートを紹介します。
出雲神社の正しい参拝ルートは、一般的な神社とは違って右回りに行います。二の鳥居からスタートして三つの鳥居をくぐった後、拝殿に参拝してから本殿を参拝し、本殿参拝後は、本殿の周りを右回りに歩きながら、他のお社をお参りするというルートが基本的なルートなので、参拝にかかる時間は40分~60分ほどです。
おすすめの順序は次のようになります。
出雲大社には、出雲大社の参道に入る一の鳥居「宇迦橋(うかばし)の鳥居」、出雲大社の正門となる二の鳥居「勢溜(せいだまり)の鳥居」、松並木の途中にある三の鳥居「松の参道の鳥居」、拝殿の手前にある四の鳥居「銅の鳥居」の4つの鳥居があります。
参拝ルートの始まりは、出雲大社の正門は二の鳥居「勢溜の鳥居」です。二の鳥居をくぐってすぐの場所に広場があり屋台が並んでいますが、江戸時代にはこの場所に芝居小屋などがあり、人の勢いが溜っていたことから「勢溜」と呼ばれるようになりました。以前の二の鳥居は木の鳥居でしたが、2018年10月に行われた「平成の大遷宮」の際に建て替えられ、現在は鉄の鳥居となっています。
「勢溜の鳥居」をくぐって進んでいくと、右手側に「祓社」と呼ばれる小さなお社があります。このあとも手水舎で清めますが、「祓社」にお参りすると心身が清められるとされているので、先にこちらでお参りして身を清めましょう。参拝ルートではないのですが、「祓社」の裏には小さな階段があり、階段を降りると「浄め(きよめ)の池」があります。休憩所もあるので、立ち寄ってみるのもおすすめです。
三の鳥居「松の参道の鳥居」は松並木の途中にあります。参道は中央に一本と左右両方に一本ずつありますが、中央の参道は神様が通る道なので、左右どちらかの参道を通るようにしましょう。
四の鳥居「銅の鳥居」の先は神域となります。神域に入る前に、手水舎で手と口を清めましょう。
手順は次のようになります。
四の鳥居「銅の鳥居」をくぐると正面に拝殿があるので参拝しましょう。拝殿は、通常の参拝者のご祈祷や、様々な奉納行事などが行われる場所です。有名な大しめ縄があるのは、この拝殿です。
参拝の作法は一般的な神社と違い、「二礼四拍手一礼」です。二度拝礼をした後、四回柏手を打ち、最後に一度拝礼をします。
出雲大社での正式な参拝方法は「二礼八拍手一礼」です。「八」という数字は古来より無限の数を意味するもので、神様を称える最高の作法だとされているため、「八拍手」が正式とされてきました。しかし現代では、毎年5月14日に行われる大祭礼・例祭(勅祭)の時にのみ「二礼八拍手一礼」が行われています。通常が「四拍手」なのは、正式な「八拍手」の略式だからです。しかし、略式だからといって神様を讃える心に差はないので、心を込めて参拝してください。
ちなみに、出雲大社では拝殿だけでなく他のお社でも同じ作法で参拝を行います。
拝殿の後方にあるのが、大国主大神が祀られているご本殿です。通常はご本殿に最も近づくことができる「八足門(やつあしもん)」と呼ばれる門から参拝します。しかし、正月の期間(1月1日~1月5日)は八足門をくぐって本殿手前の楼門前まで入ることができるので、機会があればぜひ正月に参拝してみてください。八足門で参拝したあとは、回り込んで西側からも参拝するようにしましょう。
ほかの神社の本殿では、ご神体が正面を向いていてすぐに見えるイメージですが、出雲大社のご神体は西側を向いて鎮座しているそうです。これは、旧暦の10月になると全国の神様が出雲大社に集まるといわれており、その際に神様たちがご本殿の西側にある「稲佐の浜」からお越しになるので、神様方をお迎えするためにそちらを向いているのだそうです。また、大国主大神の義理の父で6代前の祖父にあたる須佐之男命を祀るお社が本殿の後ろにあり、背を向けるのは不敬だからという説もあります。
出雲大社の本殿は、太古の昔から「天下無双の大廈(たいか:大きな建物)」と称えられる巨大な建造物として語り継がれてきました。
この言い伝えは神話の時代からのもので、確証の無い言い伝えだと思われていました。しかし、2000年(平成12年)に行われた拝殿北側の地下工事中、言い伝えにあったような巨大な御柱が出土されたことで、本当に巨大な建造物だったのではないかと考えられるようになったのです。
出雲大社の本殿は、神話の時代から巨大な建物だといわれてきました。出雲大社の伝えだと、古代には「高さ32丈(約96m)」あったとされ、中世には「16丈(約48m)もあったといわれています。96mというのは25階建てのビルくらいで、本殿の背後にある八雲山と同じくらいの高さなので、八雲山のことを指しているとも考えられています。48mは17階建てのビルくらいで、代々出雲大社の宮司を担っている「千家」家のある古代の出雲大社の設計図に巨大な木3本を1つの柱として組んだ巨大柱9本で本殿を支える構造が記されていて、48mであったことは信憑性が高いとされてきました。
また、平安時代に源為憲(みなもとのためのり)という貴族の家庭教師が書いた教科書ともいえる「口遊(くちずさみ)」という書物には当時の巨大建造物を大きな順に並べた「雲太(うんた)・和二(わに)・京三(きょうさん)」という言葉が記されています。「雲太」というのは「出雲太郎」の略語で、出雲大社が1番という意味になります。「和二」は「大和二郎」の略で東大寺大仏殿が二番目に大きいという意味、「京三」は「京都三郎」の略語で平安京大極殿が三番目に大きいという意味となります。ですから、平安時代には出雲大社が日本一高い建物として有名だったことが分かります。
出雲大社には、普段の参拝以外にも特別な祭事や見どころがあります。ここでは、出雲大社をより楽しめるスポットや祭事を紹介していきましょう。
出雲大社では、昔から境内の砂を「お清めの砂」として持ち帰るという習慣があります。持ち帰ってよい砂が置いてあるのは、境内の最北にある「素鵞(そが)の社」の軒下に置いてある砂箱の中です。
しかし、ただ持って帰るだけというのはNGで、必ず「稲佐の浜」の砂を持っていき、砂箱の砂と交換しなければなりません。
また、砂を交換するのは参拝後が良いとされているので、参拝前に稲佐の浜に寄って砂を採取しておきましょう。交換の手順は次のようになります。
持ち帰った「お清めの砂」は、自宅の敷地内や周りに撒くと、邪気を祓い幸運を招いてくれるといわれています。庭がない家の場合は、小瓶などに入れて部屋に置いておくと良いそうです。
出雲大社の祓社を過ぎると下り坂になった参道が続きます。一般的な神社では本殿が山や丘の上などの高い場所にあるので、参道が下っていくことはごく少ないといわれています。出雲大社の参道がなぜ下っているのかはっきりとした理由は分かっていませんが、ご祭神である大国主大神が天照大神に国を譲った後、「幽世(かくりよ)」を治める神になったとされているからだという説があります。
「幽世」とは「あの世」のことで、「あの世」は地下にあると考えられています。つまりは、大国主大神に会うためには、地下の「あの世」に向かう必要があるというわけなのです。また、勢溜に集まった人々のエネルギーを本殿に流し込むために下り参道になっているという説もあります。いずれにせよ、下り参道は神聖で大きなエネルギーが通るパワースポットなのです。
出雲大社の境内の色々な場所に可愛らしいウサギの石像があります。このウサギは、大国主大神にまつわる有名な神話「因幡の白兎」が元になったものです。
隠岐の島に住んでいた1匹のウサギがある姫神様に会いたくなり因幡の国に行こうと考え、サメを騙して海を渡ろうとしたのですが、ついサメたちに「まんまと騙されたな」と言ってサメの怒りを買い、前身の毛をむしり取られてしまったウサギが浜辺で泣いている所を大国主大神とその兄弟たちが通りかかった際、兄弟たちはウサギにわざと間違った治療法を教えケガが悪化したウサギをあざ笑っていたのに、大国主大神は正しい治療法を教えてウサギを助けたという逸話です。 ウサギは大国主大神に感謝し、因幡の国の八神姫と大国主大神の縁を取り持ち、二人はめでたく結婚することができました。
このウサギを元にして作られたウサギの石像は出雲大社の境内に約60体あり、お祈りをしたり相撲の回しを締めていたりと表情も豊かなので、ぜひ探してみてください。
日本の暦では、旧暦の10月を「神無月」といいますが、島根県だけは昔から「神有月(かみありづき)」と呼ばれてきました。神代の時代から、旧暦の10月10日に日本中の神々が出雲にやってきて、10月11日から10月17日の7日間で「神議り(かみはかり)」といういわゆる神様会議を行い、色々なことを取り決めるといわれています。
出雲大社では、毎年旧暦の神有月に次のような儀式が行われています。
旧暦の10月10日の夜、出雲大社の神職たちが稲佐の浜に到着される神々をお迎えする「神迎神事(かみむかえのしんじ)」を行います。夜7時になると、稲佐の浜に設けられた祭場で「御神火(ごじんか)」が炊かれます。祭場では、「神籬(ひもろぎ)」と呼ばれる2本の榊(さかき)の枝と神々の先導役となる龍蛇神が海に向かって置かれます。約20人の神職が海に向かって並び、1人の神職が「神籬」に祝詞を上げて神々をお迎えします。「神籬」とは一時的に神様が宿る依り代のことで、神迎神事では榊を依り代にして出雲大社までお運びするのです。神々を「神籬」にお迎えする儀式が終わると、「絹垣(きぬがき)」と呼ばれる白い布で「神籬」を囲み、浜から出雲大社まで歩いて向かいます。出雲大社に到着すると神楽殿で神有祭が執り行われ、その後「神籬」は神様の宿泊施設である東西の「十九社」へ遷されます。
神迎祭は見学と「神籬」をお運びする行列に参加することができます。
ただし、稲佐の浜には神様の通り道に菰(こも:ゴザのようなもの)が敷いてあるので、絶対に踏まないようにしてください。
出雲大社に集まった日本の神々は、旧暦の10月11日から10月17日の間に出雲大社の摂社「上宮(かみのみや)」で「神議り」を行います。神議りでは、人々の縁結びや来年の収穫などについての会議が行われているとされています。出雲大社ではこの期間、「十九社」で連日祭事が執り行われますが、一般の人は参加できませんが、旧暦の10月15日と17日に執り行われる「縁結大祭(えんむすびたいさい)」には参列することができます。ただし、参列するには申し込みが必要なので、詳しくは出雲大社のHPでご確認ください。
神有祭の期間は、神々に失礼があってはいけないということで、地元の人たちは音楽を奏でたり踊ったり家を建てたりせず、ひたすらに静寂を保つことから「御忌祭(おんいみさい・おいみさい)」とも呼ばれています。
毎年旧暦の10月17日に執り行われる神々を日本全国にお送りする神事です。夕方4時に、東西の「十九社」に納められていた「神籬」は、再び絹垣で囲まれ拝殿に遷されます。拝殿には2本の「神籬」と龍蛇、餅が供えられ、祝詞が上げられます。その後、1人の神職が本殿楼門の扉を3回叩いて「お立ち~、お立ち~」と唱えます。この瞬間に神々は「神籬」から離れて出雲大社から自分たちのお社へと帰っていくといわれています。神等去出祭は、見学はできますが基本的には非公開の神事なので、写真や動画などは撮らないようにしてください。
出雲大社を参拝する際には、事前に日本神話の事や祝詞のことを調べておくとより楽しめます。また、出雲大社では御朱印を頂けるので御朱印帳を用意しておくのもおすすめです。ここでは、出雲大社参拝にぴったりのアイテムを紹介します。
洗練された白を基調とした「浄めの白」の御朱印帳です。表面には丈夫で美しい美濃和紙を使用しております。清浄でまっさらな御朱印帳を持って、神社に詣でてみてはいかがでしょうか。
岩座が開催する学びの場「COTOAGE」から生まれたノート。
学びの助けとなる「神様の系図一覧」「天岩戸神話あらすじ」付きで、自由筆記欄は24ページ。神社へお出かけの際、気付きや想いを書き留めておくのも素敵ですね。
祭事などに用いられる祝詞の中でも、特に祓い清める力が強いとされる「大祓詞(おおはらえことば)」を収録した祝詞本です。日本では、太古の時代から言葉に力が宿ると信じられており、祝詞には一字一句に荘厳かつ美しい言い回しが用いられています。祝詞は神様をお祀りしたり神様にお祈りしたりする際に唱えられる言葉で、荘厳かつ美しい古い文体が使われています。祝詞本は持っているだけでもお守りとして活用できますし、難しい言い回しの祝詞を間違えずに読み上げることもできます。また、現代語訳付きなので、情景を思い浮かべることで神様の世界をより深く理解できます。おしゃれな表紙とコンパクトなサイズなので、持ち歩くのにもおすすめです。
出雲大社は、日本の礎を築いたとされる大国主大神が祀られた神社です。神々が集う神社として昔から人々の信仰を集めて、縁結びや恋愛成就のご利益があることでも人気の高く、現代でも多くの参拝者が訪れています。出雲大社には「二礼四拍手一礼」という一般的な神社とは違う参拝方法がありますが、これは本来の「二礼八拍手一礼」の略式で神様を讃える最高の作法なのです。
神様に失礼のない参拝方法を行うことで、神様に声が届きやすくなるといわれているので、正しい作法で参拝してください。また、出雲大社には神話をなぞらえたスポットが沢山あるので古事記などを読んで事前に知っておくこともおすすめです。
出雲大社にまつられている「大国主」=「大黒天」はインドでも大活躍の神様!▼
日本の大黒様はインドの破壊神シヴァ? インドの神様シヴァとは?
ハワイの出雲神社。御朱印もいただける?▼
ハワイに出雲大社があることを知っていますか?気になる歴史や参拝方法をご紹介!
縁結びの神様として有名な出雲大社は、国内国外問わず、毎年多くの参拝者が訪れています。
歴史の古い出雲大社では、ほかの神社とは違う参拝方法やルートがあることをご存じでしょうか?
また、出雲大社のご祭神である大国主大神に関する神話を元にした出雲大社ならではの神事やおすすめスポットなどもたくさんあるので紹介していきましょう。
目次
出雲大社とは
出雲大社とは、島根県出雲市大社町にある日本を代表する神社です。
出雲大社の歴史はとても古く、神話にも登場しています。
ここでは、出雲大社の歴史や祀られている神様、ご利益などについて解説していきましょう。
出雲大社の歴史
一般的に、「いづもたいしゃ」とよばれることが多いですが、正しく読むと、「いづもおおやしろ」とされています。
そんな出雲大社は、現存する日本最古の神社の1つといわれています。
出雲大社が造営された年代ははっきりとはしていませんが、飛鳥時代に書かれた「古事記」の中で、神話の時代に豊芦原水穂国(とよあしはらのみずほのくに:日本神話の中の地上世界)を納めていた大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)が高天原(たかまがはら:日本神話の中の天界)の天照大神(あまてらすおおみかみ)の孫である邇邇芸命(ににぎのみこと)に国を譲り、代わりに自分が住む宮殿を建てて欲しいと願い、建てられた宮殿が出雲大社の始まりとされています。
この宮殿は天照大神の宮殿と同じような造りのもので、「天日隅宮(あめのひすみのみや)」と呼ばれていたとされています。
また「出雲国風土記」では、大国主大神のために沢山の神様たちが集まって宮殿を築いたとあり、古代から「杵築大社(きずきたいしゃ)」とも呼ばれていました。
そのほかにも、出雲大社は様々な名前で呼ばれていましたが、名称を統一するため明治4年(1871年)に「出雲大社」と改称しました。
出雲大社は平安時代には大きな社であったと当時の書物に書き記されていますが、その後何度も遷宮(神社の本殿の修理や造営のためにご祭神を新しい本殿に移すこと)が行われました。
現在の境内は江戸時代前期の寛文7年(1667年)に行われた造営遷宮の際に作られ、現在の本殿が造営されたのは江戸時代後期の延享元年(1744年)です。
その後も60年に1度の式年遷宮が行われており、2013年には「平成の大遷宮」と呼ばれるご本殿の大改修が行われました。
この改修工事では、東日本大震災で被災した東北の木材も使われています。
出雲大社のご祭神とご利益
出雲大社のご祭神は、大国主大神です。
大きな袋を担いで打ち出の小槌を持った姿の「大黒様」としても親しまれている大国主大神は、縁結びや子授、夫婦円満、五穀豊穣、商売繁盛などのご利益があるとされています。
大国主大神は、須佐之男命(すさのおのみこと)の6世の孫で、多くの兄弟の末っ子で、心優しく賢い神様です。
大国主大神には沢山の妻がいて多くの子を成したことから、縁結びや子孫繁栄のご利益があるといわれています。
中でも、本妻となった須勢理毘売命(すせりびめのみこと)はお互い一目ぼれして結婚し、結婚を許してもらうために須勢理毘売命の父親の須佐之男命が与えた試練を二人で乗り越えて幸せになったという神話もあり、恋愛成就のご利益もあるとされています。
また、大国主大神は、人間たちに農業や漁業、医学など生きていくうえで大切な知恵を授け、人間と共に困難を乗り越えて国造りの大業を成し遂げます。
そのため、五穀豊穣や商売繁盛などのご利益があるとされています。
出雲大社の正しい参拝方法:順序編
出雲大社の本殿に参拝する方法は、一般的な神社と少し違っています。
ここでは、出雲大社の正しい参拝方法と基本的なルートを紹介します。
参拝ルートは右回り
出雲神社の正しい参拝ルートは、一般的な神社とは違って右回りに行います。
二の鳥居からスタートして三つの鳥居をくぐった後、拝殿に参拝してから本殿を参拝し、
本殿参拝後は、本殿の周りを右回りに歩きながら、他のお社をお参りするというルートが基本的なルートなので、参拝にかかる時間は40分~60分ほどです。
おすすめの順序は次のようになります。
勢溜の鳥居
出雲大社には、出雲大社の参道に入る一の鳥居「宇迦橋(うかばし)の鳥居」、出雲大社の正門となる二の鳥居「勢溜(せいだまり)の鳥居」、松並木の途中にある三の鳥居「松の参道の鳥居」、拝殿の手前にある四の鳥居「銅の鳥居」の4つの鳥居があります。
参拝ルートの始まりは、出雲大社の正門は二の鳥居「勢溜の鳥居」です。
二の鳥居をくぐってすぐの場所に広場があり屋台が並んでいますが、江戸時代にはこの場所に芝居小屋などがあり、人の勢いが溜っていたことから「勢溜」と呼ばれるようになりました。
以前の二の鳥居は木の鳥居でしたが、2018年10月に行われた「平成の大遷宮」の際に建て替えられ、現在は鉄の鳥居となっています。
祓社(はらえのやしろ)
「勢溜の鳥居」をくぐって進んでいくと、右手側に「祓社」と呼ばれる小さなお社があります。
このあとも手水舎で清めますが、「祓社」にお参りすると心身が清められるとされているので、先にこちらでお参りして身を清めましょう。
参拝ルートではないのですが、「祓社」の裏には小さな階段があり、階段を降りると「浄め(きよめ)の池」があります。
休憩所もあるので、立ち寄ってみるのもおすすめです。
松の参道
三の鳥居「松の参道の鳥居」は松並木の途中にあります。
参道は中央に一本と左右両方に一本ずつありますが、中央の参道は神様が通る道なので、左右どちらかの参道を通るようにしましょう。
手水舎
四の鳥居「銅の鳥居」の先は神域となります。
神域に入る前に、手水舎で手と口を清めましょう。
手順は次のようになります。
拝殿
四の鳥居「銅の鳥居」をくぐると正面に拝殿があるので参拝しましょう。
拝殿は、通常の参拝者のご祈祷や、様々な奉納行事などが行われる場所です。
有名な大しめ縄があるのは、この拝殿です。
出雲大社ならでは「二礼四拍手一礼」
参拝の作法は一般的な神社と違い、「二礼四拍手一礼」です。
二度拝礼をした後、四回柏手を打ち、最後に一度拝礼をします。
出雲大社での正式な参拝方法は「二礼八拍手一礼」です。
「八」という数字は古来より無限の数を意味するもので、神様を称える最高の作法だとされているため、「八拍手」が正式とされてきました。
しかし現代では、毎年5月14日に行われる大祭礼・例祭(勅祭)の時にのみ「二礼八拍手一礼」が行われています。
通常が「四拍手」なのは、正式な「八拍手」の略式だからです。
しかし、略式だからといって神様を讃える心に差はないので、心を込めて参拝してください。
ちなみに、出雲大社では拝殿だけでなく他のお社でも同じ作法で参拝を行います。
ご本殿
拝殿の後方にあるのが、大国主大神が祀られているご本殿です。
通常はご本殿に最も近づくことができる「八足門(やつあしもん)」と呼ばれる門から参拝します。
しかし、正月の期間(1月1日~1月5日)は八足門をくぐって本殿手前の楼門前まで入ることができるので、機会があればぜひ正月に参拝してみてください。
八足門で参拝したあとは、回り込んで西側からも参拝するようにしましょう。
ご神体は西を向いている?
ほかの神社の本殿では、ご神体が正面を向いていてすぐに見えるイメージですが、出雲大社のご神体は西側を向いて鎮座しているそうです。
これは、旧暦の10月になると全国の神様が出雲大社に集まるといわれており、その際に神様たちがご本殿の西側にある「稲佐の浜」からお越しになるので、神様方をお迎えするためにそちらを向いているのだそうです。
また、大国主大神の義理の父で6代前の祖父にあたる須佐之男命を祀るお社が本殿の後ろにあり、背を向けるのは不敬だからという説もあります。
・巨大な建築の歴史が残る「本殿」
出雲大社の本殿は、太古の昔から「天下無双の大廈(たいか:大きな建物)」と称えられる巨大な建造物として語り継がれてきました。
この言い伝えは神話の時代からのもので、確証の無い言い伝えだと思われていました。
しかし、2000年(平成12年)に行われた拝殿北側の地下工事中、言い伝えにあったような巨大な御柱が出土されたことで、本当に巨大な建造物だったのではないかと考えられるようになったのです。
・出雲大社の本殿が日本で一番高い建物だった!?
出雲大社の本殿は、神話の時代から巨大な建物だといわれてきました。
出雲大社の伝えだと、古代には「高さ32丈(約96m)」あったとされ、中世には「16丈(約48m)もあったといわれています。
96mというのは25階建てのビルくらいで、本殿の背後にある八雲山と同じくらいの高さなので、八雲山のことを指しているとも考えられています。
48mは17階建てのビルくらいで、代々出雲大社の宮司を担っている「千家」家のある古代の出雲大社の設計図に巨大な木3本を1つの柱として組んだ巨大柱9本で本殿を支える構造が記されていて、48mであったことは信憑性が高いとされてきました。
また、平安時代に源為憲(みなもとのためのり)という貴族の家庭教師が書いた教科書ともいえる「口遊(くちずさみ)」という書物には当時の巨大建造物を大きな順に並べた「雲太(うんた)・和二(わに)・京三(きょうさん)」という言葉が記されています。
「雲太」というのは「出雲太郎」の略語で、出雲大社が1番という意味になります。
「和二」は「大和二郎」の略で東大寺大仏殿が二番目に大きいという意味、「京三」は「京都三郎」の略語で平安京大極殿が三番目に大きいという意味となります。
ですから、平安時代には出雲大社が日本一高い建物として有名だったことが分かります。
もっと知りたい!出雲大社のこと
出雲大社には、普段の参拝以外にも特別な祭事や見どころがあります。
ここでは、出雲大社をより楽しめるスポットや祭事を紹介していきましょう。
お清めの砂を持ち帰る:砂の交換って何?
出雲大社では、昔から境内の砂を「お清めの砂」として持ち帰るという習慣があります。
持ち帰ってよい砂が置いてあるのは、境内の最北にある「素鵞(そが)の社」の軒下に置いてある砂箱の中です。
しかし、ただ持って帰るだけというのはNGで、必ず「稲佐の浜」の砂を持っていき、砂箱の砂と交換しなければなりません。
また、砂を交換するのは参拝後が良いとされているので、参拝前に稲佐の浜に寄って砂を採取しておきましょう。
交換の手順は次のようになります。
砂をすくうのは、波が打ち寄せてきたときがおすすめです。
波が引いた時の砂は運気が引いてしまうので良くないといわれています。
稲佐の浜で採取した砂を納めてから砂箱の乾いた砂をいただきましょう。
自分が納めた砂よりも少ない量を持ち帰るようにしてください。
持ち帰った「お清めの砂」は、自宅の敷地内や周りに撒くと、邪気を祓い幸運を招いてくれるといわれています。
庭がない家の場合は、小瓶などに入れて部屋に置いておくと良いそうです。
下り参道
出雲大社の祓社を過ぎると下り坂になった参道が続きます。
一般的な神社では本殿が山や丘の上などの高い場所にあるので、参道が下っていくことはごく少ないといわれています。
出雲大社の参道がなぜ下っているのかはっきりとした理由は分かっていませんが、ご祭神である大国主大神が天照大神に国を譲った後、「幽世(かくりよ)」を治める神になったとされているからだという説があります。
「幽世」とは「あの世」のことで、「あの世」は地下にあると考えられています。
つまりは、大国主大神に会うためには、地下の「あの世」に向かう必要があるというわけなのです。
また、勢溜に集まった人々のエネルギーを本殿に流し込むために下り参道になっているという説もあります。
いずれにせよ、下り参道は神聖で大きなエネルギーが通るパワースポットなのです。
因幡の白兎
出雲大社の境内の色々な場所に可愛らしいウサギの石像があります。
このウサギは、大国主大神にまつわる有名な神話「因幡の白兎」が元になったものです。
「因幡の白兎」とは
隠岐の島に住んでいた1匹のウサギがある姫神様に会いたくなり因幡の国に行こうと考え、サメを騙して海を渡ろうとしたのですが、ついサメたちに「まんまと騙されたな」と言ってサメの怒りを買い、前身の毛をむしり取られてしまったウサギが浜辺で泣いている所を大国主大神とその兄弟たちが通りかかった際、兄弟たちはウサギにわざと間違った治療法を教えケガが悪化したウサギをあざ笑っていたのに、大国主大神は正しい治療法を教えてウサギを助けたという逸話です。
ウサギは大国主大神に感謝し、因幡の国の八神姫と大国主大神の縁を取り持ち、二人はめでたく結婚することができました。
このウサギを元にして作られたウサギの石像は出雲大社の境内に約60体あり、お祈りをしたり相撲の回しを締めていたりと表情も豊かなので、ぜひ探してみてください。
出雲の神有月
日本の暦では、旧暦の10月を「神無月」といいますが、島根県だけは昔から「神有月(かみありづき)」と呼ばれてきました。
神代の時代から、旧暦の10月10日に日本中の神々が出雲にやってきて、10月11日から10月17日の7日間で「神議り(かみはかり)」といういわゆる神様会議を行い、色々なことを取り決めるといわれています。
出雲大社では、毎年旧暦の神有月に次のような儀式が行われています。
・神迎祭(かみむかえさい)
旧暦の10月10日の夜、出雲大社の神職たちが稲佐の浜に到着される神々をお迎えする「神迎神事(かみむかえのしんじ)」を行います。
夜7時になると、稲佐の浜に設けられた祭場で「御神火(ごじんか)」が炊かれます。
祭場では、「神籬(ひもろぎ)」と呼ばれる2本の榊(さかき)の枝と神々の先導役となる龍蛇神が海に向かって置かれます。
約20人の神職が海に向かって並び、1人の神職が「神籬」に祝詞を上げて神々をお迎えします。
「神籬」とは一時的に神様が宿る依り代のことで、神迎神事では榊を依り代にして出雲大社までお運びするのです。
神々を「神籬」にお迎えする儀式が終わると、「絹垣(きぬがき)」と呼ばれる白い布で「神籬」を囲み、浜から出雲大社まで歩いて向かいます。
出雲大社に到着すると神楽殿で神有祭が執り行われ、その後「神籬」は神様の宿泊施設である東西の「十九社」へ遷されます。
神迎祭は見学と「神籬」をお運びする行列に参加することができます。
ただし、稲佐の浜には神様の通り道に菰(こも:ゴザのようなもの)が敷いてあるので、絶対に踏まないようにしてください。
・神有祭
出雲大社に集まった日本の神々は、旧暦の10月11日から10月17日の間に出雲大社の摂社「上宮(かみのみや)」で「神議り」を行います。
神議りでは、人々の縁結びや来年の収穫などについての会議が行われているとされています。
出雲大社ではこの期間、「十九社」で連日祭事が執り行われますが、一般の人は参加できませんが、旧暦の10月15日と17日に執り行われる「縁結大祭(えんむすびたいさい)」には参列することができます。
ただし、参列するには申し込みが必要なので、詳しくは出雲大社のHPでご確認ください。
神有祭の期間は、神々に失礼があってはいけないということで、地元の人たちは音楽を奏でたり踊ったり家を建てたりせず、ひたすらに静寂を保つことから「御忌祭(おんいみさい・おいみさい)」とも呼ばれています。
・神等去出祭(からでさい)
毎年旧暦の10月17日に執り行われる神々を日本全国にお送りする神事です。
夕方4時に、東西の「十九社」に納められていた「神籬」は、再び絹垣で囲まれ拝殿に遷されます。
拝殿には2本の「神籬」と龍蛇、餅が供えられ、祝詞が上げられます。
その後、1人の神職が本殿楼門の扉を3回叩いて「お立ち~、お立ち~」と唱えます。
この瞬間に神々は「神籬」から離れて出雲大社から自分たちのお社へと帰っていくといわれています。
神等去出祭は、見学はできますが基本的には非公開の神事なので、写真や動画などは撮らないようにしてください。
参拝にぴったり!おすすめアイテム
出雲大社を参拝する際には、事前に日本神話の事や祝詞のことを調べておくとより楽しめます。
また、出雲大社では御朱印を頂けるので御朱印帳を用意しておくのもおすすめです。
ここでは、出雲大社参拝にぴったりのアイテムを紹介します。
御朱印帳
洗練された白を基調とした「浄めの白」の御朱印帳です。
表面には丈夫で美しい美濃和紙を使用しております。清浄でまっさらな御朱印帳を持って、神社に詣でてみてはいかがでしょうか。
COTOAGE NOTE BOOK
岩座が開催する学びの場「COTOAGE」から生まれたノート。
学びの助けとなる「神様の系図一覧」「天岩戸神話あらすじ」付きで、自由筆記欄は24ページ。神社へお出かけの際、気付きや想いを書き留めておくのも素敵ですね。
COTOAGE祝詞本(現代語訳付)
祭事などに用いられる祝詞の中でも、特に祓い清める力が強いとされる「大祓詞(おおはらえことば)」を収録した祝詞本です。
日本では、太古の時代から言葉に力が宿ると信じられており、祝詞には一字一句に荘厳かつ美しい言い回しが用いられています。
祝詞は神様をお祀りしたり神様にお祈りしたりする際に唱えられる言葉で、荘厳かつ美しい古い文体が使われています。
祝詞本は持っているだけでもお守りとして活用できますし、難しい言い回しの祝詞を間違えずに読み上げることもできます。
また、現代語訳付きなので、情景を思い浮かべることで神様の世界をより深く理解できます。
おしゃれな表紙とコンパクトなサイズなので、持ち歩くのにもおすすめです。
正しい参拝方法を知って楽しむ「出雲大社」
出雲大社は、日本の礎を築いたとされる大国主大神が祀られた神社です。
神々が集う神社として昔から人々の信仰を集めて、縁結びや恋愛成就のご利益があることでも人気の高く、現代でも多くの参拝者が訪れています。
出雲大社には「二礼四拍手一礼」という一般的な神社とは違う参拝方法がありますが、これは本来の「二礼八拍手一礼」の略式で神様を讃える最高の作法なのです。
神様に失礼のない参拝方法を行うことで、神様に声が届きやすくなるといわれているので、正しい作法で参拝してください。
また、出雲大社には神話をなぞらえたスポットが沢山あるので古事記などを読んで事前に知っておくこともおすすめです。
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