ウズベキスタンで一番レートの良い両替方法は市場での〇〇

お金をどこで両替するかは旅人の永遠のテーマです。
空港での両替は安全。両替所での両替も安全。でも海外では時々イジワルな看板があって、両替所でさえ思っていたレートと違ったなんてこともあります。

今回はあまりおススメできないけれどレートよくお金を両替する秘密の方法を、ウズベキスタンでの体験を交えてご紹介します。

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一番レートの良い両替方法は両替所ではなく〇〇

バックパッカーになってから、誰からともなく聞いた話があります。
「もし両替するなら、銀行や両替所ではなく街の人から両替をするといいよ。めちゃくちゃレートがいいから」と。
とはいえ街の人から両替するなんてかなりグレーですし、見知らぬ旅行者に声をかけて両替を頼む地元の人など普通に考えて、そうそういるものではありません。

私がお金を両替する場所はいつも真っ当に銀行か両替所。しかしウズベキスタンの首都タシュケントの街を歩いていた時、そのチャンスはやってきました。

道端で両替を持ち掛けてきた少年

「僕からお金を両替しない?」
そう声をかけてきたのは、若い男性でした。見た目から判断するに20代前半か10代後半。
大きなカバンを持っていたり、スーツを着ているわけでもない普通の恰好をした普通の青年です。他の通行人と同じように、街に溶け込む出で立ちでした。

突然のことにビックリしてしまった私は思わず聞き返します。
彼は英語がわからない?とでも言うかのようにもう一度、ゆっくり私に述べました「お金を僕から両替しない?」と。
聞けば彼は、米ドルと自国のお金を交換して貰いたいそうで、額も50ドルでも100ドルでも高額なだけ嬉しい様子です。

〝街の中で両替しないかって声かけられたらチャンスだよ!〟この言葉を思い出した瞬間でした。
ただ、YESと即答はできません。たったいま出会ったばかりの素性も知らない通りすがりの人物とお金をやりとりするのは、どう考えてもかなりのリスクでした。
私が財布を出したタイミングで潜んでいた仲間が財産を奪いにくるかも知れないし、偽札を掴まされるかも知れない…。考えるほど様々なリスクがありました。

レートは銀行の3割増し!

悩む私は周りを見渡します。その場所は、スイカやトマトなど新鮮な野菜が売られている、かなり大きな青空市場でした。明るく広々とした空間、人通りも多く、すごくクリーンな印象です。
グレーな両替=薄暗い路地やホテルの一室で行われる、と思い込んでいた私はギャップに驚きを隠せません。

少年は明るく朗らかな表情で、私がYESと言ってくれるのを期待しているようでした。
悩む私は彼にレートを尋ねます。レートは驚くほど良いモノでした。控え目にいって銀行より2割り増し…いえ3割り増し!?

あまりの高レートに、危ないから止めようと決めていた心が揺らぎはじめます。
私の聞き間違え?彼の発音の問題?私はよく14と40の聞き間違えをしていたので、改めて彼にレートを聞き、今度は数字を紙に書いてもらって確かめました。やっぱり銀行の3割り増し!

〝こんなレートで交換してもらって良いの?もしかして詐欺?〟新たな疑問が生まれます。
彼は「銀行は手数料があるでしょ。その違いだよ」と言いますが、気持ちが揺れるばかりでなかなか決断できません。

レートは銀行の3割増し! 青空市場の様子。沢山の人が行き来していました。立派なスイカにも注目

次々と見物にやってくる現地の人々

市場で話しこんでいる私たちは少し異色だったようで、通行人が足を止めはじめました。

最初に足を止めたのはおじいさんでした。これぞウズベキスタンのおじいさんといった風貌の彼は、外国人である私が一人でいることに興味を持ったようで「何しているんだい?」と話しかけてきました。
私に代わって若い少年が説明します。おじいさんは、うなずいた後なぜか近くの岩に腰掛けて私たちをじっと観察しはじめました。

昼下がりの明るい市場。そんな感じで通りすぎる多くの人が「何しているの?」と尋ねては去って行ったり、事の顛末を見届けるために足を止めたりしました。
2~3人に囲まれて少し焦った気分になる私。

市場の外から10代の若い女の子が一人こちらに歩いてきます。ヒジャブをつけた彼女は私たちの前で立ち止まると、興味津々といった様子で「何しているの?」と声をかけてきました。
少年はやはり私に代わって状況を説明し、女の子もニコニコしながら話を聞いています。
「へぇ~いいじゃない!」「いくら両替するの?」女の子がそう少年に話す姿を見て、やっと私の心は決まりました。

ここにいる人々は誰一人、今から私たちがしようとしていることを悪いことだとは思っていない様子で、むしろ「良かったね」「お互いラッキーだね」といった温かい気持ちで見守っています。そんな人々に見守られて私は少年にYESと答えました。

新鮮なフルーツ売り場。芸術作品のようにフルーツが展示されています 新鮮なフルーツ売り場。芸術作品のようにフルーツが展示されています

たくさんの通行人に見守られながら両替

両替は周囲の人々に見守られる中で行われました。なんとクリーンな取引でしょう。
両替は100ドル分行いました。当初、私は安全のため10ドル程度の両替を考えていましたが、周囲の人々の高額紙幣への期待があまりに熱く、また銀行より3割も良いレートに惹かれ、思い切って100ドルを両替することに変更したのです。

財布から米ドルを出します。50ドルを1枚と10ドルを5枚。全部で100ドルです。すると青年が言いました。

「100ドル札は無いの?僕はそっちの方が嬉しい」

「ごめん、それは無いんだ。50ドル札2枚ならあるよ」

「そっか。残念。なら50ドル札2枚にしてくれる?」

海外では、お釣りが無いという理由で高額紙幣での支払いを断られることが多い為、私は一番大きくてもお札は50ドルまでと決めていました。
貧乏旅行では50ドルの紙幣だって扱いに困ります。私としても願ってもいない申し出でした。

50ドル札を2枚出すと観客から感嘆が漏れました。
例のヒジャブの女の子は「私にも見せて!」とお札を触らせてもらえるよう頼んでいました。お金を扱っているとは思えない和やかな時間でした。

ウズベキスタンスムの札束を手に

少年は約束した通りの額のお金を渡してくれました。ズボンのポケットからクルクルと丸めたお札を取り出して私に渡します。
ただウズベキスタンの紙幣は米ドルに比べとても弱いお金です。レートは1USドル=13,000ウズベキスタンスム。スムを現金で持つとなると、かなりの枚数になります。当然、お札を数えるのも大変な作業になりました。

ウズベキスタンのお金に慣れていない私は混乱します。少年を信じて両替した身ではありますが、やっぱりお金はその場できちんと確認しなくてはなりません。
しかし、10000札、2000札、5000札、10000札、20000札、50000札…どれもこれも0の数が多すぎて混乱します。

混乱して訳が分からなくなっていると、事の成り行きを見守っていた周囲の人々が助言をくれました。「そのお金は一緒」「そのお金は0が違う」「一緒に数えよう」。
私が警戒していることを知ってか知らずか、誰もお金には手を出しません。ただ指示だけを出します。
そうしてキレイに振り分けられたお金は、ピッタリ少年が約束してくれた通りの金額でした。

1枚のペラぺラな米ドル札は、人をはたけるのでは?というほど分厚いウズベキスタンスムに変身しました。
枚数が多すぎて、とてもじゃないけれどお財布に入り切りません。仕方なく私は、両替を提案してくれた少年と同じようにクルクルと紙幣を丸め無造作にカバンに詰めました。

取引が終わった後、少年が言いました。「もしまた両替したくなったら僕のところに来てね」「大体いつもこの市場にいるから」そう言い終わると、岩に腰掛けて私たちを見守っていたおじいさんに手を差し出します。
その光景を見て胸が熱くなりました。〝レートも良かったけれど、良い人とお金を交換できて良かった〟

ドキドキと人の温かさ、どちらも味わった私は次の場所へ行くためその場を去ります。
つい30分前まで他人同士だったのに、そこにいた全員が立ち上がって「バイバイ~」と手を振ってくれました。

50米ドルをウズベキスタンスムに両替したら、札束ができあがりました 50米ドルをウズベキスタンスムに両替したら、札束ができあがりました
R.香月(かつき)プロフィール画像

筆者プロフィール:R.香月(かつき)

大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel


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