猫ブームの始まりは江戸時代だった!?かわいい猫の浮世絵について歴史を詳しく紹介。

現代は、空前の猫ブームです。ペットとしての猫の数が、とうとう犬を抜いたと言われています。猫の愛らしい姿と散歩の必要がないことが、現代人の忙しいライフスタイルに合致するのでしょう。

しかし日本における「猫ブーム」は、江戸時代にも起こっていました。それは、現代を超える大ブームだったようです。その痕跡を今に残しているのは、江戸時代に沢山描かれた「浮世絵」です。

日本人は生粋の猫好き!?日本人と猫の関係とは?

日本人は生粋の猫好き!?日本人と猫の関係とは?

猫が中国からやってきてから、長い時間が経っています。その間、猫はネズミを捕るという本来の目的を黙々と果たしただけではありません。猫の愛らしい容姿や気ままな振る舞いが、宮中の人々を魅了して愛玩用としても飼われるようになったのです。そして長い時代を経て、庶民にも広がって行きました。

猫と日本人の関係

猫と日本人の関係

日本に猫がやって来たのは、奈良時代(710年~794年)だといわれています。
貴重な仏教の経典がネズミに食い荒らされるのを防ぐため、中国から輸入されたという説が有力です。(ただし弥生時代の遺跡の中で猫の骨が見つかったという情報もあり、もしかしたら更に古い時代から、人間と猫は共同生活を送っていたのかもしれません。)

中国からやって来た「唐猫」は、その愛らしさ故に、平安時代(794年~1185年)には天皇をはじめとする貴族のペットとしても可愛がられるようになりました。『枕草子』や『源氏物語』にも、猫についての記述が多く見られます。特に一条天皇(在位986年~1011年)は愛猫家として有名で、自らの飼い猫に貴族の位を与え、貴族として扱ったほどです。

さらに猫は、恐らくネズミ退治と愛玩用の両方の目的で、次第に庶民にも広く飼われるようになり、長い年月をかけて「日本猫」として定着しました。

そして江戸時代(1603年〜1868年)には、庶民の間でペットとして飼われる猫が急増しました。

猫は縁起物としても扱われ、お馴染みの「招き猫」が登場したのも、この時代です。

当時の庶民の生活を表した浮世絵にも、猫は沢山描かれています。浮世絵の中に描かれた動物の中で最も多いのは、猫だそうです。

明治時代以降になると、猫はさらに多くの家庭で飼われるようになり、ペットとしての地位を完全に確立しました。

現代では、猫は「家族」として扱われることが一般的になり、完全室内飼いが主流となっています。

江戸時代空前の猫ブーム到来!

「江戸時代には、庶民の間でペットとして飼われる猫が急増した」と書きましたが、その思い入れの深さは少々度を過ぎていたようで、当時のことは「第一次猫ブーム」と呼ばれているほどです。ちなみに、「第二次猫ブーム」は、現代です。

江戸時代の庶民にとって、猫はやっかいなネズミを始末してくれる有難い動物であると共に、愛らしくてたまらない生活の相棒だったのでしょう。

浮世絵に最も多く描かれた動物は猫だった!

浮世絵にはさまざまな動物も描かれています。しかしその中で、最も多く描かれたのは「猫」です。犬でも小鳥でもありません。猫は、非常に人気のある浮世絵のモチーフでした。このことは、江戸時代の第一次猫ブームの規模の大きさを示唆しています。

浮世絵とは?

「浮世絵」とは江戸時代に日本で発展した木版画です。文字通り「浮世」を表す絵、つまり当時の世相や風俗を表現しています。

浮世絵は分業による大量生産で制作され、安価で庶民が手に入れやすい価格で販売されました。

そのため現代においても、芸術的な価値と共に、江戸時代の人々が何を好み、どんな生活を送っていたかを探るための素晴らしい資料としての役割があります。

浮世絵には多くのジャンルがありますが、特に当時の風俗・評判の美人(美人画)・人気歌舞伎役者(役者絵)・名所旧跡・武士や戦いの場面(武者絵)が有名です。

浮世絵は現代のグラビア誌やファッション雑誌、あるいは旅行誌のような役割を果たしており、江戸時代の庶民の間で、大変な人気を博しました。

それだけでなく浮世絵は19世紀にヨーロッパに伝わって、その頃の芸術様式にも大きな影響を与えています。

擬人化された猫がかわいい!浮世絵にも猫が描かれる

擬人化された猫がかわいい!浮世絵にも猫が描かれる 画像出典: 和樂web

この時代の庶民の嗜好や生活の一面を示している浮世絵には、たくさんの猫が登場します。その中には人間の少女が猫と遊んでいるリアルな絵も含まれていますが、擬人化された猫が登場してさまざまなストーリーを紡ぎ出す、漫画のような愉快な作品も多くあります。

このような浮世絵が制作されていた当時は、幕府から「贅沢禁止令」が出されていたので、華麗な美人を描いた浮世絵は絵師にとって書きづらい題材になっていました。そのため当時の絵師たちは「美人絵」ならぬ「擬人化された猫」を描いたという説もあります。

しかし擬人化の題材として「猫」が多く選ばれたのは、当時の庶民にとって、猫はとても身近で親しまれていた動物だったためではないでしょうか。

さらに絵師の中には、幕府の「贅沢禁止令」には関係なく、「このような場面で登場人物を猫に置き換えてみたら…」といった純粋な好奇心で猫の浮世絵を描いた者が含まれていた、と思われるふしもあります。

絵を愛でる庶民の方も、顔を猫に似せた人気役者のうちわを持って劇場に応援に行ったりして、猫に対する熱狂度もなかなかのものでした。

猫の浮世絵の立役者「歌川国芳」について

擬人化された猫がかわいい!浮世絵にも猫が描かれる 画像出典: 東京富士美術館

猫が登場する浮世絵、すなわち「猫の浮世絵」を沢山描いた有名な浮世絵師として、歌川国芳(1798年~1861年)を忘れることはできません。

彼は猫の浮世絵を描いただけでなく、愛猫家としても有名です。国芳は常に数匹の猫を飼っていただけでなく、絵を描く際には懐に子猫を入れて描いていたと伝えられています。

また国芳は飼っていた猫が亡くなると非常に悲しみ、猫のために仏壇を作り、戒名を記した位牌を飾って供養していたそうです。そして弟子にも猫の供養を依頼するほど、猫を心から愛していました。

国芳の創作活動は、生活面においてと同様に、常に猫と共にあったといっても過言ではありません。

猫の浮世絵の魅力とは?

猫の浮世絵が世に広まるようになったきっかけのひとつに、天保の改革(1841年~1843年)による贅沢禁止令、そしてそれに伴う役者絵や美人画など華やかな絵の出版統制があります。この絶体絶命のピンチに、浮世絵の版元と絵師たちは、擬人化した動物、特に庶民に最も親しまれていた猫による擬人化などで対抗します。

そして前述の歌川国芳と彼の一門のユーモアたっぷりの猫の擬人化作品が、このブームに拍車をかけます。

歌川国芳一門による猫の擬人化作品には、思わずクスリと笑いたくなる描写が多く含まれています。そしてこの「笑い」には、猫に対する愛と共に、痛烈な社会風刺が含まれています。猫自体の描写に関しても、愛猫家の国芳らしい、美しく精密な描写が光っています。

そして現代の研究者にとっても、彼らの猫の浮世絵は、当時の世相を探る貴重な資料になっています。

かわいい猫がたまらない!猫の浮世絵紹介!

いったい猫の浮世絵とはどのようなものだったのでしょうか?さまざまな猫の浮世絵が残されていますが、その中でもユニークな特徴を持つ三つの作品を紹介します。

「流行猫のおも入」 歌川国芳作

「流行猫のおも入」 歌川国芳作

大の猫好きでも知られる浮世絵師、歌川国芳の猫の浮世絵です。

1841年ごろから1842年ごろに制作されました。人気の歌舞伎役者9名を猫に擬人化した作品で、当時の人々には、猫の着ている着物の紋や、それぞれの猫の独特の表情から、どの役者をモデルに擬人化したのかわかったようです。尚、9匹の猫役者の輪郭には、鈴のついた首輪があしらわれています。

「五拾三次之内猫之怪」 歌川芳藤作

「五拾三次之内猫之怪」 歌川芳藤作

歌川国芳の弟子の歌川芳藤によって1847年に描かれた猫の浮世絵です。

モチーフが歌舞伎に登場する化け猫であるため、一見ぎょっとする風貌ですが、よく見ると目は猫の鈴、耳は二匹の猫、舌は首輪の紐など、すべて猫に関連するもので構成されており、見つめれば見つめるほど楽しくなってしまう猫ちゃん作品に仕上がっています。

歌川芳藤は子供向けの浮世絵を得意とした絵師で、「おもちゃ芳藤」と呼ばれたほどです。芳藤が得意とした子供向けの組上絵やおもちゃ絵は、遊び終わったら捨てられる運命にあるため、現存するものは少数ですが、わずかに残った彼の作品からは、その丁寧な仕事ぶりが伺えます。

「志ん板猫の湯」 長谷川其吉作

「志ん板猫の湯」 長谷川其吉作

明治期に入ってからも、しばらくの間は猫の浮世絵の歴史が続きます。この『志ん板猫の湯』は明治14年、すなわち1881年に制作された木版画で、擬人化された沢山の猫が、温泉に入って湯あみを楽しんでいます。「おもちゃ絵」の範疇に分類される浮世絵です。

作者の長谷川其吉は1877年ごろから1905年まで活動しており、地本問屋を兼業し、主に浮世絵の出版を手掛けていました。

浮世絵師としての長谷川其吉には、主に風俗画や春の遊楽をテーマにした作品が多く、大判の錦絵が多いことが特徴です。また子供向けの「おもちゃ絵」も沢山手掛けていましたが、使用後に捨てられたものがほとんどで、あまり残っていません。彼の作品は、明治時代初期の風俗を知る上で、大きな役割を果たしています。

猫の浮世絵を大胆にデザイン!カヤ商品を紹介

ユニークで魅力的な猫の浮世絵をモチーフにしたいくつかの商品を、オンラインショップ「倭物やカヤ」では扱っています。第二次猫ブームである現代、和テイストの効いた猫でいっぱいのカヤ商品は、現代の愛猫家にもアピールするのは間違いなしです。

浮世絵トート KABUKINEKO

浮世絵トート KABUKINEKO 浮世絵トート/ KABUKINEKO ¥2,530 税込

浮世絵を大胆にプリントしたトートバッグです。A3サイズなので大きな物もたっぷり入れられる上、浮世絵の強烈な印象が目に焼き付きます。

浮世絵のバリエーションにはさまざまなものがありますが、もちろん猫の浮世絵をプリントしたものも多く含まれており、猫好きをアピールするために、ぴったりのアイテムです。

倭の絵シャツ GR BAKENEKO

倭の絵シャツ GR BAKENEKO 倭の絵シャツ/ BAKENEKO ¥5,500 税込

浮世絵をリデザインした、日本風のアロハシャツです。刺し子のような風合いの、コットンドビー生地を使用しています。

MとLの2サイズを用意しているので、性別に関係なく着られます。しゃドクロ・鳳凰・兎など人気の柄が揃っており、その中にはもちろん「猫」のモチーフのものも多く含まれています。

浮世絵を通して江戸時代の猫ブームを覗いてみよう!

浮世絵を通して江戸時代の猫ブームを覗いてみよう!

現代はかなりの猫ブームですが、江戸時代はそれ以上に猫の大ブームで盛り上がっていました。当時の浮世絵、特に歌川国芳に代表される猫の浮世絵を見ると、そのことがよくわかります。ごく普通の生活を送っていると猫の浮世絵を見る機会はあまりないかもしれませんが、美術館で展覧会が開かれるなどの機会があったら、ぜひ見に行ってください。

もうすぐ2月22日です。実は日本では、この日を猫の鳴き声の「ニャン(2)ニャン(2)ニャン(2)」にちなんで、「猫の日」と定めています。2月22日には愛猫を可愛がりながら、猫と共に暮らす幸せに感謝するのも良いですね。

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