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「欲張るものはすべてを失う」「嘘はやがてばれる」「バラの花を愛するならトゲをがまんして」なんて言葉、少しドキッとしますよね。 こんな言葉をまとうことで、時には愛を、時には皮肉を伝えているのが、アフリカの女性たちです。 今回は「カンガ」という東アフリカの布を紹介します。 ちょっと主張強めな布のおしゃべりを一緒に聞いてみましょう!
「カンガ」はスワヒリ語でホロホロ鳥という意味。 タンザニアやケニアの女性たちがまとう綿100%の一枚布で、約160×110(センチ)と大判な長方形をしています。
生地のデザインは3つの要素でできていて、Pindo(ピンド)という全体の縁取り、ピンドの内に描かれた絵柄のMuji(ムジ)、そして布の中央下に書かれたJina(ジナ)と呼ばれるメッセージの部分で構成されています。 使われるモチーフは伝統的な柄から花や果物、日用品まで多彩。アフリカらしくカラフルなところも特徴です。
色とりどりのカンガの伝統的な着こなしは、ショールと巻きスカートという組み合わせ。 女性たちは上下2枚同じものを身につけていることが多いようです。 まるでセットアップのようですが、実はカンガは2枚つながりで売られています。 購入時に店でカットしてもらったり、自宅でカットしたりして一組のカンガにしているのです。 また、2枚のうち1枚を親しい友人に友情の証として贈ることもあるそうです。
カンガが登場したのは19世紀後半、ヨーロッパから入ってきたスカーフをつなぎ合わせて作った「レソ」と呼ばれる一枚布が前身といわれています。 日本のカンガ研究の第一人者の織本知英子さんによると、20世紀には、日本・インド・中国などでもカンガは作られるようになったそうです。 戦前期、輸出振興策をとっていた日本にとって、東アフリカは一大市場となっていて、カンガは「捺染綿布」とも呼ばれ、輸出品目のひとつだったのです。
カンガのいちばんの特徴はジナというメッセージ部分で、スワヒリ語でプリントされています。 かつてはアラビア文字でしたが、現在はローマ字(アルファベット)表記になっています。 メッセージ部分は「カンガセイイング」とも呼ばれ、身につける女性は自分の思いや考えを託します。また相手に贈る時には気持ちをしのばせます。
カンガにプリントされるジナ(カンガセイイング)は大きく分けて6種類あります。
「若さは煙のごとし。立ち上れば再び立ち返ることはない」
(Ujana ni moshi ukenda haurudi)
「幸福は人と分かちあうもの」
(Radhi ni bora kuliko mali)
「我が身をつねって人の痛さを知れ」
(Mtenda akitendwa hujihisi kaonewa)
「うそつきは常に自分のうそに追われ、心休まる暇がない」
(Muongo hana likizo kila saa yupo kazini)
「母の愛に終わりなし」
(Penzi la mama haliishi)
「父と母は黄金のように大切なもの」
(Mama na Baba ni dhahabu)
「バラの花を愛するならトゲをがまんして」
※バラは女性の比喩。チクリと言われてもガマン!
(Ukipenda waridi uvumille miiba)
「愛は思いやり」
(Mpenzi fanya imani)
「神よ、われらに光とお恵みを与えたまえ」
(Mola Tutilie nuru na baraka)
「神の祝福よ、永遠なれ」
(Mungu akupe kheri daima)
「教育に終わりなし」
(Elimu haina mwisho)
※教育の重要性を啓蒙する目的のカンガ、独立後に多く作られました。
「おめでとう、私の子供、おめでとう!」
(Hongera mwanangu hongera)
※タンザニーカ(現タンザニア)がイギリスから独立した日を記念して作られたカンガ。
ほかにも、カンガセイイングは生活の中で相手に見せるメッセージとしても使われます。 たとえば、自分の友人たちがフィアンセの悪口を言っているときには「言いたい人には言わせておけ」というカンガを身につけたり、浮気がちな夫には「どの肉も同じ味がするのに、肉屋を回って疲れるだけ」というカンガを着て見せたりするとか。 スワヒリ社会では女性が不満を口にすることは恥と考えられていて、カンガをうまく使って自分の言いたいことを見せているのだそうです。
カンガに使われるモチーフはまさに多種多様。意外なものまで・・・!
伝統的なモチーフ、キストゥ。19世紀か ら伝わる図柄で、細かい水玉、カシューナッツや十字模様が配置されたデザインです。 もともと赤・白・黒の組み合わせでしたが、最近はカラフルに仕上げられたものもあるようです。
ペイズリー柄はインドのカシミール地方に古くから伝わる文様。18世紀にイギリスのペイズリー市で量産されるようになったことから、この呼び名が広まりました。 カンガにも多く使われるモチーフです。なかにはカシューナッツやマンゴーの形にデフォルメされた文様もあります。
カンガにはアフリカの日常に根ざしたモチーフも多くあります。 果物や農作物は日々の糧という大切なもの。主食のもとになるトウモロコシやトマト、バナナ、マンゴーなどがあしらわれます。 特にマンゴーは女性の成熟(お嫁にいけるほど成熟した)を暗に表すこともあるとか。 日用品のモチーフはランプやカゴなど生活に密着したものがある一方で、時代の先端を表すものもあります。 1950〜60年代にはテレビや車が描かれ、2002年頃には携帯電話柄も登場しました。
月や星、幾何学模様(アラベスク)はイスラムの象徴的なモチーフです。 東アフリカにはムスリムも多く、タンザニアでは人口の40%がムスリムといわれています。 東アフリカ沿岸地方は、古代からインド洋の季節風を利用した船が行き交う場所で、アラブやペルシアと交易が盛んだったそう。長い歴史がカンガにも表されています。
ボタニカルもカンガの主要なモチーフ。明るい色で描かれた花のカンガは結婚や恋愛にまつわるジナがつけられることが多いようです。 草木モチーフはピンドに使われることがよくあり、唐草模様風に描かれます。 バラはケニアのカンガによく見られる柄。 ケニアでは切り花輸出が外貨獲得産業の柱のひとつとなっていて、特にバラの輸出が際立っているのです。
政治的・社会的キャンペーンに使われることの多いモチーフです。 1999年に亡くなったタンザニアの国父、ニエレレ初代大統領を追悼するカンガでは、故ニエレレ大統領の姿を中央に配し、色は国旗の緑・黄・黒・青を使っています。
大判な一枚布のカンガは、まとったり、かぶったり、包んだりとまさに万能。使い方も多彩です。
ギュッと締めつけながら巻いて、前で結べばできあがり。 結び端を多く出して小物を包むとポケット代わりにもなります。身体の横で結ぶのもOK。 ビーチでも活躍しそうですね!
胸から下にクルッと巻きつけてトラディショナルドレスの完成。お風呂上がりのバスタオル姿にも見えるかも? 背中から布を回し、胸の前で端をクロスして首の後ろで結ぶとネックノットドレスに。 タヒチのパレオ風でリゾート感も満点です。
髪にも使えるのがカンガの万能なところ。 ヘッドスカーフはバサッとかぶって首の後ろでねじって結び目を作るだけ。 ターバン風は、首の後ろでねじった端をそのまま頭に巻きつけて端を折り込みます。暑い夏もこれで乗り切れそう!
カラフルで個性的なプリントはインテリアにも好相性。 テーブルに掛ければテーブルクロスに。大判なのでソファやベッドのカバーにもどうぞ。 ゲストハウスやリゾートホテルでは壁飾りとして部屋や廊下に飾られていることもあるようです。
布があれば包んでしまうのは世界共通の文化なのでしょうか。普段のお買い物はもちろん、赤ちゃんをおんぶするベビースリングとしても活用されています。
多彩なデザインと多様な使い道で万能な一枚布、カンガ。アフリカらしい色彩と個性的なモチーフはこれからの季節にぴったりです。 また、カンガセイイングをうまく使えばいつもお世話になっている方に感謝を伝えることもできますね。嫌味な人にはチクリと言うこともできたりして? ぜひカンガを取り入れて、おしゃれに、さりげなく堂々と(!)自分の気持ちをまとってみてはいかがでしょうか?
室内に敷いたり、外でも使えるプラスチック製の大判マット。 畳むとコンパクトになり軽くて持ち運びに便利。防カビでリバーシブル。 カンガのことわざより「性格の良い人は、お金以上の報酬を得る」という文字が描かれています。
6箇所のループ付きでタープとしても使えて、アウトドアシーンでも大活躍です。 カンガのことわざ「見たら一目惚れ」と書かれており、一目惚れという花言葉を持つハルシャギクの花が描かれています。
こんなクッション欲しかった。アフリカ・ケニアの伝統布カンガの柄を大胆にアレンジしたスポンジ入りクッション。 重ねてもかわいいカラフルなバリエーション。 車のシートやフローリングにもそのまま使えます。
参考文献
「欲張るものはすべてを失う」「嘘はやがてばれる」「バラの花を愛するならトゲをがまんして」なんて言葉、少しドキッとしますよね。
こんな言葉をまとうことで、時には愛を、時には皮肉を伝えているのが、アフリカの女性たちです。
今回は「カンガ」という東アフリカの布を紹介します。
ちょっと主張強めな布のおしゃべりを一緒に聞いてみましょう!
目次
アフリカンプリント「カンガ」とは
ユニークなデザイン
「カンガ」はスワヒリ語でホロホロ鳥という意味。
タンザニアやケニアの女性たちがまとう綿100%の一枚布で、約160×110(センチ)と大判な長方形をしています。
生地のデザインは3つの要素でできていて、Pindo(ピンド)という全体の縁取り、ピンドの内に描かれた絵柄のMuji(ムジ)、そして布の中央下に書かれたJina(ジナ)と呼ばれるメッセージの部分で構成されています。
使われるモチーフは伝統的な柄から花や果物、日用品まで多彩。アフリカらしくカラフルなところも特徴です。
2枚で1セット
色とりどりのカンガの伝統的な着こなしは、ショールと巻きスカートという組み合わせ。
女性たちは上下2枚同じものを身につけていることが多いようです。
まるでセットアップのようですが、実はカンガは2枚つながりで売られています。
購入時に店でカットしてもらったり、自宅でカットしたりして一組のカンガにしているのです。
また、2枚のうち1枚を親しい友人に友情の証として贈ることもあるそうです。
カンガは海を越えてやってきた
カンガが登場したのは19世紀後半、ヨーロッパから入ってきたスカーフをつなぎ合わせて作った「レソ」と呼ばれる一枚布が前身といわれています。
日本のカンガ研究の第一人者の織本知英子さんによると、20世紀には、日本・インド・中国などでもカンガは作られるようになったそうです。
戦前期、輸出振興策をとっていた日本にとって、東アフリカは一大市場となっていて、カンガは「捺染綿布」とも呼ばれ、輸出品目のひとつだったのです。
おしゃべりな布、カンガ
カンガのいちばんの特徴はジナというメッセージ部分で、スワヒリ語でプリントされています。
かつてはアラビア文字でしたが、現在はローマ字(アルファベット)表記になっています。
メッセージ部分は「カンガセイイング」とも呼ばれ、身につける女性は自分の思いや考えを託します。また相手に贈る時には気持ちをしのばせます。
カンガのことば
カンガにプリントされるジナ(カンガセイイング)は大きく分けて6種類あります。
1.スワヒリ地方に伝わることわざ
「若さは煙のごとし。立ち上れば再び立ち返ることはない」
(Ujana ni moshi ukenda haurudi)
「幸福は人と分かちあうもの」
(Radhi ni bora kuliko mali)
2.人生の教訓・指針
「我が身をつねって人の痛さを知れ」
(Mtenda akitendwa hujihisi kaonewa)
「うそつきは常に自分のうそに追われ、心休まる暇がない」
(Muongo hana likizo kila saa yupo kazini)
3.母親や妻としての誇り、両親への感謝
「母の愛に終わりなし」
(Penzi la mama haliishi)
「父と母は黄金のように大切なもの」
(Mama na Baba ni dhahabu)
4.恋愛・結婚に関する言葉
「バラの花を愛するならトゲをがまんして」
※バラは女性の比喩。チクリと言われてもガマン!
(Ukipenda waridi uvumille miiba)
「愛は思いやり」
(Mpenzi fanya imani)
5.神への感謝・祈り、神の祝福を願う言葉
「神よ、われらに光とお恵みを与えたまえ」
(Mola Tutilie nuru na baraka)
「神の祝福よ、永遠なれ」
(Mungu akupe kheri daima)
6.社会的・政治的スローガン
「教育に終わりなし」
(Elimu haina mwisho)
※教育の重要性を啓蒙する目的のカンガ、独立後に多く作られました。
「おめでとう、私の子供、おめでとう!」
(Hongera mwanangu hongera)
※タンザニーカ(現タンザニア)がイギリスから独立した日を記念して作られたカンガ。
ほかにも、カンガセイイングは生活の中で相手に見せるメッセージとしても使われます。
たとえば、自分の友人たちがフィアンセの悪口を言っているときには「言いたい人には言わせておけ」というカンガを身につけたり、浮気がちな夫には「どの肉も同じ味がするのに、肉屋を回って疲れるだけ」というカンガを着て見せたりするとか。
スワヒリ社会では女性が不満を口にすることは恥と考えられていて、カンガをうまく使って自分の言いたいことを見せているのだそうです。
カンガのモチーフ
カンガに使われるモチーフはまさに多種多様。意外なものまで・・・!
伝統柄(キストゥ)
伝統的なモチーフ、キストゥ。19世紀か ら伝わる図柄で、細かい水玉、カシューナッツや十字模様が配置されたデザインです。
もともと赤・白・黒の組み合わせでしたが、最近はカラフルに仕上げられたものもあるようです。
ペイズリー柄(カシミール文様)
ペイズリー柄はインドのカシミール地方に古くから伝わる文様。18世紀にイギリスのペイズリー市で量産されるようになったことから、この呼び名が広まりました。
カンガにも多く使われるモチーフです。なかにはカシューナッツやマンゴーの形にデフォルメされた文様もあります。
果物・農作物・日用品
カンガにはアフリカの日常に根ざしたモチーフも多くあります。
果物や農作物は日々の糧という大切なもの。主食のもとになるトウモロコシやトマト、バナナ、マンゴーなどがあしらわれます。
特にマンゴーは女性の成熟(お嫁にいけるほど成熟した)を暗に表すこともあるとか。
日用品のモチーフはランプやカゴなど生活に密着したものがある一方で、時代の先端を表すものもあります。
1950〜60年代にはテレビや車が描かれ、2002年頃には携帯電話柄も登場しました。
月・星・幾何学模様
月や星、幾何学模様(アラベスク)はイスラムの象徴的なモチーフです。
東アフリカにはムスリムも多く、タンザニアでは人口の40%がムスリムといわれています。
東アフリカ沿岸地方は、古代からインド洋の季節風を利用した船が行き交う場所で、アラブやペルシアと交易が盛んだったそう。長い歴史がカンガにも表されています。
バラ・花・草木
ボタニカルもカンガの主要なモチーフ。明るい色で描かれた花のカンガは結婚や恋愛にまつわるジナがつけられることが多いようです。
草木モチーフはピンドに使われることがよくあり、唐草模様風に描かれます。
バラはケニアのカンガによく見られる柄。
ケニアでは切り花輸出が外貨獲得産業の柱のひとつとなっていて、特にバラの輸出が際立っているのです。
人物・国家・記念など
政治的・社会的キャンペーンに使われることの多いモチーフです。
1999年に亡くなったタンザニアの国父、ニエレレ初代大統領を追悼するカンガでは、故ニエレレ大統領の姿を中央に配し、色は国旗の緑・黄・黒・青を使っています。
カンガの使い方
大判な一枚布のカンガは、まとったり、かぶったり、包んだりとまさに万能。使い方も多彩です。
巻きスカート
ギュッと締めつけながら巻いて、前で結べばできあがり。
結び端を多く出して小物を包むとポケット代わりにもなります。身体の横で結ぶのもOK。
ビーチでも活躍しそうですね!
ワンピース
胸から下にクルッと巻きつけてトラディショナルドレスの完成。お風呂上がりのバスタオル姿にも見えるかも?
背中から布を回し、胸の前で端をクロスして首の後ろで結ぶとネックノットドレスに。
タヒチのパレオ風でリゾート感も満点です。
ヘアアクセサリー
髪にも使えるのがカンガの万能なところ。
ヘッドスカーフはバサッとかぶって首の後ろでねじって結び目を作るだけ。
ターバン風は、首の後ろでねじった端をそのまま頭に巻きつけて端を折り込みます。暑い夏もこれで乗り切れそう!
インテリア
カラフルで個性的なプリントはインテリアにも好相性。
テーブルに掛ければテーブルクロスに。大判なのでソファやベッドのカバーにもどうぞ。
ゲストハウスやリゾートホテルでは壁飾りとして部屋や廊下に飾られていることもあるようです。
風呂敷
布があれば包んでしまうのは世界共通の文化なのでしょうか。普段のお買い物はもちろん、赤ちゃんをおんぶするベビースリングとしても活用されています。
カンガでいつもの暮らしにスパイスを
多彩なデザインと多様な使い道で万能な一枚布、カンガ。アフリカらしい色彩と個性的なモチーフはこれからの季節にぴったりです。
また、カンガセイイングをうまく使えばいつもお世話になっている方に感謝を伝えることもできますね。嫌味な人にはチクリと言うこともできたりして?
ぜひカンガを取り入れて、おしゃれに、さりげなく堂々と(!)自分の気持ちをまとってみてはいかがでしょうか?
室内に敷いたり、外でも使えるプラスチック製の大判マット。
畳むとコンパクトになり軽くて持ち運びに便利。防カビでリバーシブル。
カンガのことわざより「性格の良い人は、お金以上の報酬を得る」という文字が描かれています。
6箇所のループ付きでタープとしても使えて、アウトドアシーンでも大活躍です。
カンガのことわざ「見たら一目惚れ」と書かれており、一目惚れという花言葉を持つハルシャギクの花が描かれています。
こんなクッション欲しかった。アフリカ・ケニアの伝統布カンガの柄を大胆にアレンジしたスポンジ入りクッション。
重ねてもかわいいカラフルなバリエーション。
車のシートやフローリングにもそのまま使えます。
参考文献