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「日本の修道院に泊まりたい」という願いが叶い、修道院に宿泊できた私。修道院でシスターたちと交わした会話の中には、驚きがたくさんありました。 今回は日本の修道院に泊まる~番外編~。私たちの知らないシスターの暮らしぶりを紹介します。
前回の記事は こちら
Lucia Travel連載一覧は こちら
私がお世話になった修道院は、人や社会との交わりを大切にする都会型の修道院。そのためシスターたちは全員が外の世界で働いていました。
シスターの仕事と聞くと、修道服を着て静かに炊き出し等を行う奉仕活動をイメージしませんか?でもこちらの修道院は違っていました。
シスターは、私たちと変わらない働き方をしています。 つまり、普通の企業で普通に仕事をしています。職業も介護職だったり心理士だったり様々。
かつては教会が「あなたは〇〇へ行きなさい」と教会のツテを使って職業の斡旋をしていたようですが、今は時代が変わりました。 「私は〇〇で働きたい!」と自ら仕事を探して応募、教会もそれを認めるという流れになってきているそうです。
教会の斡旋で仕事を得るのではなく、自ら職場を探し就職するシスターたち。 驚くことに彼女たちの場合は、シスターという身分を隠して働いているそうです。
「だって、ビックリしちゃうでしょ?」とシスター。
「私は普通の人と同じように就職活動をして試験を受け、就職したの。他の人と同じように仕事している。仕事場で宣教活動なんかしないし、わざわざシスターと知らせる必要はないよね」
私がお世話になった修道院は、普段から修道服ではなく私たちと変わらない洋服を着て生活をする穏やかなルールの修道院。当然、通勤服も一般的な洋服です。 話していて気付きました。私は通勤電車で彼女が隣に座っても、彼女をシスターだと認識しないと。
「あえて言う必要はない」
そう言い切るシスターの言葉には、言わない美徳が隠れていました。
10代の頃、私はキリスト教の教えを基盤にした中高一貫の女子校に通っていました。 山の頂上に建つその学校では、授業の一環として宗教の時間が儲けられており、校内には常にシスターの姿がありました。 厳かで静粛なキリスト教の学校です。でも、面白いことに少なくとも2人の教師はお坊さんでした。
中でも国語の教師はユニークでした。
「僕はね、髪生えていますけど坊さんです。」
「坊さんの活動をする時は、袈裟も着ます。法要もします。ちゃんとした寺の坊さんです。でもそれだけじゃ食べていけないから非常勤講師をやっています。」
お喋りが大好きなその先生は、色々なことを教えてくれました。 お布施として渡された袋の中が空だった事件、袈裟を着たまま車の運転をして危ない目に遭った話、お経を読んでいるとみんな寝ちゃうんだよね…など。
流行りのキレイ目な洋服を着て、髪をワックスでセットし、冗談を次々と口にする若い男性教師。彼の場合は自分から身分を明かしていたので言う美学。私がお世話になった修道院のシスターとは真逆の存在です。 言う美徳と言わない美徳。どちらかが正しい訳ではなく、考えた末の〝告白〟のようです。
修道服は着ず、ベールもかぶらず、普通の姿で働いて生活しているシスターたち。疑問に思って聞いてみました?
私:「お洋服に決まり事はあるのですか?」
シスター:「ありますよ。まず色は、黒・茶・紺の3色と決められています。あと過度な露出や装飾のものはダメ。でもそれさえ守れば、何を着てもOKです。迷ったら地味な方、地味な方って選んでます」
私:「シスターが集まるような専用のお店があって、そこで購入されるのですか?」
シスター「ないですよ。みんな個人で好きなお店で購入しています。あっ通販もOKですよ。さっき、ポストにカタログ届いていたでしょう? 通販でまとめて、みんなで購入したりもします」
私:「意外と自由ですね。アクセサリー類は?」
シスター:「基本はつけないかな。この十字架のピンブローチは修道師の証なので、アクセサリーとは考えていないし…。あと時計はしています。仕事をするのに時間が分からないと困るでしょ?」
ミサや礼拝で着用する品以外は、制約があるものの自由な様子。シスターが通販のカタログを見ながら、ワイワイ洋服を選んでいる姿想像できますか?
一人のシスターの左薬指にキラリと指輪が光っていました。シンプルな銀色の指輪です。一見すると結婚指輪のようにも見えたので気になって尋ねました。
「これ?これは終生誓願式で頂いた指輪よ。簡単に言うと、私は神様と結婚しています、生涯忠誠を誓いますって意味。普通は右手の薬指につけるんだけど、私は左手にしている」
「なんで?って。仕事の時はアクセサリーを外さなきゃいけないでしょ、でも結婚指輪は外さなくていいのよ。だから左の薬指にしているの」
「あとね、もう私いい年でしょ?この年齢の人間は、ほとんどが結婚している。だから独身だと詮索されたりして面倒なのよ。私は社会に溶け込んで必要な人に必要な助けを与えたい。だから独身を強調したくない。そういう面倒に時間を裂きたくない。左手薬指にはめた銀色の指輪は一般的に〝結婚指輪〟に見える。それでいいのよ」
「なんで結婚しないの?」「結婚する気はあるの?」長く独身でいると、必ず一度や二度言われたことがあるこの言葉。シスターもウンザリの様子です。
そしてまさに今回、私が伝えたかったことは「あなたの周りにもシスターがいるかも!」
※終生誓願式とは、修道院に入ってから交わされる誓願の一つ。志願期→修練期→初誓願期→有期誓願期を経て、生涯すべてを神様に従うと決心した者のみが交わします。
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。 マイナーな国をメインに、世界中を旅する。 旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。 出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。 公式HP: Lucia Travel
「日本の修道院に泊まりたい」という願いが叶い、修道院に宿泊できた私。修道院でシスターたちと交わした会話の中には、驚きがたくさんありました。
今回は日本の修道院に泊まる~番外編~。私たちの知らないシスターの暮らしぶりを紹介します。
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目次
日本人シスターの就職事情
私がお世話になった修道院は、人や社会との交わりを大切にする都会型の修道院。そのためシスターたちは全員が外の世界で働いていました。
シスターの仕事と聞くと、修道服を着て静かに炊き出し等を行う奉仕活動をイメージしませんか?でもこちらの修道院は違っていました。
シスターは、私たちと変わらない働き方をしています。
つまり、普通の企業で普通に仕事をしています。職業も介護職だったり心理士だったり様々。
かつては教会が「あなたは〇〇へ行きなさい」と教会のツテを使って職業の斡旋をしていたようですが、今は時代が変わりました。
「私は〇〇で働きたい!」と自ら仕事を探して応募、教会もそれを認めるという流れになってきているそうです。
シスターであることは隠して働く
教会の斡旋で仕事を得るのではなく、自ら職場を探し就職するシスターたち。
驚くことに彼女たちの場合は、シスターという身分を隠して働いているそうです。
「だって、ビックリしちゃうでしょ?」とシスター。
「私は普通の人と同じように就職活動をして試験を受け、就職したの。他の人と同じように仕事している。仕事場で宣教活動なんかしないし、わざわざシスターと知らせる必要はないよね」
私がお世話になった修道院は、普段から修道服ではなく私たちと変わらない洋服を着て生活をする穏やかなルールの修道院。当然、通勤服も一般的な洋服です。
話していて気付きました。私は通勤電車で彼女が隣に座っても、彼女をシスターだと認識しないと。
「あえて言う必要はない」
そう言い切るシスターの言葉には、言わない美徳が隠れていました。
キリスト教学校のお坊さん教師
10代の頃、私はキリスト教の教えを基盤にした中高一貫の女子校に通っていました。
山の頂上に建つその学校では、授業の一環として宗教の時間が儲けられており、校内には常にシスターの姿がありました。
厳かで静粛なキリスト教の学校です。でも、面白いことに少なくとも2人の教師はお坊さんでした。
中でも国語の教師はユニークでした。
「僕はね、髪生えていますけど坊さんです。」
「坊さんの活動をする時は、袈裟も着ます。法要もします。ちゃんとした寺の坊さんです。でもそれだけじゃ食べていけないから非常勤講師をやっています。」
お喋りが大好きなその先生は、色々なことを教えてくれました。
お布施として渡された袋の中が空だった事件、袈裟を着たまま車の運転をして危ない目に遭った話、お経を読んでいるとみんな寝ちゃうんだよね…など。
流行りのキレイ目な洋服を着て、髪をワックスでセットし、冗談を次々と口にする若い男性教師。彼の場合は自分から身分を明かしていたので言う美学。私がお世話になった修道院のシスターとは真逆の存在です。
言う美徳と言わない美徳。どちらかが正しい訳ではなく、考えた末の〝告白〟のようです。
通販もOK!修道服ではなく洋服を着るシスター
修道服は着ず、ベールもかぶらず、普通の姿で働いて生活しているシスターたち。疑問に思って聞いてみました?
私:「お洋服に決まり事はあるのですか?」
シスター:「ありますよ。まず色は、黒・茶・紺の3色と決められています。あと過度な露出や装飾のものはダメ。でもそれさえ守れば、何を着てもOKです。迷ったら地味な方、地味な方って選んでます」
私:「シスターが集まるような専用のお店があって、そこで購入されるのですか?」
シスター「ないですよ。みんな個人で好きなお店で購入しています。あっ通販もOKですよ。さっき、ポストにカタログ届いていたでしょう? 通販でまとめて、みんなで購入したりもします」
私:「意外と自由ですね。アクセサリー類は?」
シスター:「基本はつけないかな。この十字架のピンブローチは修道師の証なので、アクセサリーとは考えていないし…。あと時計はしています。仕事をするのに時間が分からないと困るでしょ?」
ミサや礼拝で着用する品以外は、制約があるものの自由な様子。シスターが通販のカタログを見ながら、ワイワイ洋服を選んでいる姿想像できますか?
左手薬指に指輪をはめて結婚しているフリ
一人のシスターの左薬指にキラリと指輪が光っていました。シンプルな銀色の指輪です。一見すると結婚指輪のようにも見えたので気になって尋ねました。
「これ?これは終生誓願式で頂いた指輪よ。簡単に言うと、私は神様と結婚しています、生涯忠誠を誓いますって意味。普通は右手の薬指につけるんだけど、私は左手にしている」
「なんで?って。仕事の時はアクセサリーを外さなきゃいけないでしょ、でも結婚指輪は外さなくていいのよ。だから左の薬指にしているの」
「あとね、もう私いい年でしょ?この年齢の人間は、ほとんどが結婚している。だから独身だと詮索されたりして面倒なのよ。私は社会に溶け込んで必要な人に必要な助けを与えたい。だから独身を強調したくない。そういう面倒に時間を裂きたくない。左手薬指にはめた銀色の指輪は一般的に〝結婚指輪〟に見える。それでいいのよ」
「なんで結婚しないの?」「結婚する気はあるの?」長く独身でいると、必ず一度や二度言われたことがあるこの言葉。シスターもウンザリの様子です。
そしてまさに今回、私が伝えたかったことは「あなたの周りにもシスターがいるかも!」
※終生誓願式とは、修道院に入ってから交わされる誓願の一つ。志願期→修練期→初誓願期→有期誓願期を経て、生涯すべてを神様に従うと決心した者のみが交わします。
前回の記事は こちら
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筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP: Lucia Travel