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それは、本当に突然のことでした。一人暮らしをして3カ月目のある日、「孤児院に行きたい。それもエクアドルの孤児院に」と、思い立ったのです。それまで、ボランティアらしいボランティアをしたこともなく、子どもが大好き!というわけでもなく、スペイン語に興味があるわけでもなく…。
今思い返しても、本当になぜそう思ったのか分かりません。よく『雷に打たれたように』という表現がありますが、まさにそれ。
「なぜエクアドル?」「なぜ孤児院?」という疑問を抱きつつも、雷に打たれてしまった私は素直に従い、エクアドルに行くことにしました。
連載一覧はこちら:Lucia Travel
エクアドルは南米にある共和国。北はコロンビア、東と南はベルーと接しています。日本より少し小さなサイズの国ですが、チリやアルゼンチンなど、広大な領土を誇る大国が多い南米の中では、小さな国として扱われます。
首都はキト。でも正直、キトなんて地名聞いたことがありませんよね?私はそうでした。
山あり海あり、自然豊かな国ではありますが、誰もが知っているような有名な観光地はありません。有名なのはダーウィンの進化論で知られる「ガラパゴス諸島」くらい。
でも、ガラパゴス諸島はエクアドル領土ではありますが、離れたリゾート島なので別格のような扱いです。勝手な判断ですが、ガラパゴス諸島に孤児院はなさそうなので…パス。
当然のことながら、エクアドルの孤児院で働くという情報は、(当時)ネットで調べても全くヒットしませんでした。スペイン語で検索すれば出てきたかもしれません。
でも、当時の私はスペイン語力0。探しても、探しても何の情報も出てきません。そして、そのうちに楽しくなってきました。アレ?事前情報0って面白いかも。
エクアドルに孤児院はあるのか。多分、ある。 だけど、見つけられたところで、何の縁もない外国人が勝手に訪問して受け入れて貰えるのか。公用語のスペイン語が全く話せない私が行っても大丈夫なのか…。
いろいろ不安な要素はありましたが、インターネットの世界に情報は0。だから、とりあえず行ってみることにしました。
当然ながら、エクアドルへの直行便はありません。日本からは乗り継ぎを1回か2回経由して約20時間のフライトです。 孤児院の情報を何も得られない私は、日本からフライトが最多で出ている首都キトを目指すことにしました。そこに行けば、きっと何かが分かるはず!
あまりに無計画だったかな…。エクアドルへと向かう乗り継ぎ地のアメリカで、私はうなだれていました。
(私の個人的な感想ですが)アメリカは白人以外に対して、とても厳しいセキュリティチェックをします。乗り継ぎ便の利用だけであってもそう。 黄色人種でありアジア人であり、非アメリカ国民である私は、過剰なボディチェックに苛立っていました。私の横をザ・アメリカ人が何人も、ほぼノーチェックで去っていきます。
やっとの思いでたどり着いた乗り継ぎカウンターは、なんと照明が消えていました。 搭乗時刻を知らせる電光掲示は電源が消され真っ暗、空港職員は誰もおらず、薄暗い雰囲気の中で利用客と思しき人々が地面に座り込んでいました。一体、何事…?
「何があったの?」「どうして飛行機の案内がないの?」「もしかして、もう離陸しちゃった?」状況を尋ねようにも、英語は分からないと断られるばかり。
「無計画すぎる旅だったのかな…」と後悔をしかけた時でした。 右往左往する私を見かねたのでしょうか。ビジネス旅行だという若い日本人男性が私に声をかけてくれたのです。
流暢なスペイン語を操る彼は、首都キト行きのフライトが大幅に遅延していることを教えてくれました。理由は不明。何も分からないし、何も案内することがないから、蛍光灯もコンピューターも、全ての電気を落としているそうです。
衝撃的でした。日本では、数分電車が遅れただけで繰り返しのお詫びアナウンス&お詫びの掲示があるのに、こちらでは飛行機が遅れても、遅延の案内をしないどころか、電気まで消してしまうとは…!
いつ再開されるかも分からないフライトを待つ間、たくさんの話をしました。 キトではとりあえず旧市街の安宿に泊まる予定だと伝えると「えっ!」と驚かれ、さらに私がスペイン語で挨拶もできないことを知ると二重に驚かれました。
「『スペイン語できない』といっても片言くらいは話せる人多いんだけど、君は本当に話せないんだね。向こうでは、本当に英語は通じないよ?」と。
この時、彼に出会わなければ、私は訳がわからないまま失意のうちに帰国していたかも知れません。怖い怖い事件に巻き込まれていたかも知れません。
とても面倒見のよい彼は、「南米、初めてなんだよね。女の子が、旧市街に泊まるのはおススメしないよ。え?予約もしてないの?空きがあるか確認してあげる、宿の電話番号教えて」と、宿の空きを確認し、空港では安全なタクシーに乗せてくれました。宿の入口の中まで私を連れていくように、何度も何度も運転手に指示して。
タクシーの運転手はとてもフレンドリーなおじさんでした。 一生懸命に私に話しかけてくれます。でも私はスペイン語が全く分からない…。そこで初めて実感しました。南米では本当に一切英語が通じないという現実を。
スペイン語が話せない私は、本来ならタクシーに乗ることもできなかったのだと。 片言の英語と身振り手振りで旅してきた私。身振り手振りだけで、治安のよくない国を旅できるのかな。
バックパッカーご用達のガイドブック『地球の歩き方』に掲載されていた安宿に到着したのは、陽が暮れかけた頃でした。
あまり治安のよくないキト。到着時刻が午前中になるようにフライトを調整したのに、予想外の遅延で気付けば夕方です。
旅は計画通りにはいかない。しかも、私は言葉が分からない。泊まりたいことが伝わらなかったら、どうしよう…。でも宿のフロントには、その不安を払拭するかのような明るい人柄の、しかも英語が話せる現地の男性が待っていてくれました。
安宿に泊まって2~3日が過ぎた頃でした。 『地球の歩き方』に紹介されているだけあって、宿には思っていた以上に日本人がいることに気が付きました。
しかも、いわゆる“沈没”組(長旅をしている者が、特に目的もなく1カ所に長期滞在することをバックパッカーの間でそう呼びます)です。 彼らはとても情報通(しかもフレッシュな情報)!さらに宿には、エクアドル人に混じって現地の仕事をしている日本人男性もいました。旅の神様は微笑んでくれるものです。
「一人で南米きたの?チャレンジャーだね。えっ?孤児院?ほんの数週間前に、日本から大学生の女の子がきてたよ。その子、孤児院でボランティアをするプログラムに参加しているって言ってたから、頼んでみたら?ラッキーだね」
情報通の日本人から教えて貰った女性は、私の話を聞くなり、あっけないほど簡単に快諾してくれました。
「じゃあ明日一緒に行こうよ」
彼女自身は、結構なお金を斡旋会社に支払ってプログラムに参加しているそうですが、いわく「斡旋会社と現場は別。誰でも大歓迎だから」。
とんとん拍子に話は進みます。 翌日、彼女と向かった先には、カトリック系列のシスターが運営している孤児院がありました。彼女はそこで、通いのボランティアをしているとのこと。
取り仕切っているシスターは結構なお年でしたが、優しい笑顔で私を迎えてくれます。 つたないスペイン語で「日本から来ました。ここでボランティアをさせて下さい」と伝えると、こちらも呆気ないほど簡単にOKを出してくれました。
ラッキーでは済まされないラッキー。偶然に偶然が重なって、“エクアドルの孤児院でボランティアをする”という、無謀にも思えた夢が叶うことになったのです。
次回は、孤児院でのリアルな生活の様子をお届けします。
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マイナーな国にばかり魅了され、気付けば世界40カ国以上を旅行。 旅先で出会ったイスラム教徒と、国際結婚&出産&離婚。現在は2児の母。
それは、本当に突然のことでした。一人暮らしをして3カ月目のある日、「孤児院に行きたい。それもエクアドルの孤児院に」と、思い立ったのです。それまで、ボランティアらしいボランティアをしたこともなく、子どもが大好き!というわけでもなく、スペイン語に興味があるわけでもなく…。
今思い返しても、本当になぜそう思ったのか分かりません。よく『雷に打たれたように』という表現がありますが、まさにそれ。
「なぜエクアドル?」「なぜ孤児院?」という疑問を抱きつつも、雷に打たれてしまった私は素直に従い、エクアドルに行くことにしました。
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目次
ネット情報0の魅力
エクアドルは南米にある共和国。北はコロンビア、東と南はベルーと接しています。日本より少し小さなサイズの国ですが、チリやアルゼンチンなど、広大な領土を誇る大国が多い南米の中では、小さな国として扱われます。
首都はキト。でも正直、キトなんて地名聞いたことがありませんよね?私はそうでした。
山あり海あり、自然豊かな国ではありますが、誰もが知っているような有名な観光地はありません。有名なのはダーウィンの進化論で知られる「ガラパゴス諸島」くらい。
でも、ガラパゴス諸島はエクアドル領土ではありますが、離れたリゾート島なので別格のような扱いです。勝手な判断ですが、ガラパゴス諸島に孤児院はなさそうなので…パス。
当然のことながら、エクアドルの孤児院で働くという情報は、(当時)ネットで調べても全くヒットしませんでした。スペイン語で検索すれば出てきたかもしれません。
でも、当時の私はスペイン語力0。探しても、探しても何の情報も出てきません。そして、そのうちに楽しくなってきました。アレ?事前情報0って面白いかも。
お告げに従って
エクアドルに孤児院はあるのか。多分、ある。
だけど、見つけられたところで、何の縁もない外国人が勝手に訪問して受け入れて貰えるのか。公用語のスペイン語が全く話せない私が行っても大丈夫なのか…。
いろいろ不安な要素はありましたが、インターネットの世界に情報は0。だから、とりあえず行ってみることにしました。
当然ながら、エクアドルへの直行便はありません。日本からは乗り継ぎを1回か2回経由して約20時間のフライトです。
孤児院の情報を何も得られない私は、日本からフライトが最多で出ている首都キトを目指すことにしました。そこに行けば、きっと何かが分かるはず!
運命の出会い~その1~
あまりに無計画だったかな…。エクアドルへと向かう乗り継ぎ地のアメリカで、私はうなだれていました。
(私の個人的な感想ですが)アメリカは白人以外に対して、とても厳しいセキュリティチェックをします。乗り継ぎ便の利用だけであってもそう。
黄色人種でありアジア人であり、非アメリカ国民である私は、過剰なボディチェックに苛立っていました。私の横をザ・アメリカ人が何人も、ほぼノーチェックで去っていきます。
やっとの思いでたどり着いた乗り継ぎカウンターは、なんと照明が消えていました。
搭乗時刻を知らせる電光掲示は電源が消され真っ暗、空港職員は誰もおらず、薄暗い雰囲気の中で利用客と思しき人々が地面に座り込んでいました。一体、何事…?
「何があったの?」「どうして飛行機の案内がないの?」「もしかして、もう離陸しちゃった?」状況を尋ねようにも、英語は分からないと断られるばかり。
「無計画すぎる旅だったのかな…」と後悔をしかけた時でした。
右往左往する私を見かねたのでしょうか。ビジネス旅行だという若い日本人男性が私に声をかけてくれたのです。
流暢なスペイン語を操る彼は、首都キト行きのフライトが大幅に遅延していることを教えてくれました。理由は不明。何も分からないし、何も案内することがないから、蛍光灯もコンピューターも、全ての電気を落としているそうです。
衝撃的でした。日本では、数分電車が遅れただけで繰り返しのお詫びアナウンス&お詫びの掲示があるのに、こちらでは飛行機が遅れても、遅延の案内をしないどころか、電気まで消してしまうとは…!
いつ再開されるかも分からないフライトを待つ間、たくさんの話をしました。
キトではとりあえず旧市街の安宿に泊まる予定だと伝えると「えっ!」と驚かれ、さらに私がスペイン語で挨拶もできないことを知ると二重に驚かれました。
「『スペイン語できない』といっても片言くらいは話せる人多いんだけど、君は本当に話せないんだね。向こうでは、本当に英語は通じないよ?」と。
この時、彼に出会わなければ、私は訳がわからないまま失意のうちに帰国していたかも知れません。怖い怖い事件に巻き込まれていたかも知れません。
とても面倒見のよい彼は、「南米、初めてなんだよね。女の子が、旧市街に泊まるのはおススメしないよ。え?予約もしてないの?空きがあるか確認してあげる、宿の電話番号教えて」と、宿の空きを確認し、空港では安全なタクシーに乗せてくれました。宿の入口の中まで私を連れていくように、何度も何度も運転手に指示して。
言葉が通じない不安
タクシーの運転手はとてもフレンドリーなおじさんでした。
一生懸命に私に話しかけてくれます。でも私はスペイン語が全く分からない…。そこで初めて実感しました。南米では本当に一切英語が通じないという現実を。
スペイン語が話せない私は、本来ならタクシーに乗ることもできなかったのだと。
片言の英語と身振り手振りで旅してきた私。身振り手振りだけで、治安のよくない国を旅できるのかな。
バックパッカーご用達のガイドブック『地球の歩き方』に掲載されていた安宿に到着したのは、陽が暮れかけた頃でした。
あまり治安のよくないキト。到着時刻が午前中になるようにフライトを調整したのに、予想外の遅延で気付けば夕方です。
旅は計画通りにはいかない。しかも、私は言葉が分からない。泊まりたいことが伝わらなかったら、どうしよう…。でも宿のフロントには、その不安を払拭するかのような明るい人柄の、しかも英語が話せる現地の男性が待っていてくれました。
運命の出会い~その2~
安宿に泊まって2~3日が過ぎた頃でした。
『地球の歩き方』に紹介されているだけあって、宿には思っていた以上に日本人がいることに気が付きました。
しかも、いわゆる“沈没”組(長旅をしている者が、特に目的もなく1カ所に長期滞在することをバックパッカーの間でそう呼びます)です。
彼らはとても情報通(しかもフレッシュな情報)!さらに宿には、エクアドル人に混じって現地の仕事をしている日本人男性もいました。旅の神様は微笑んでくれるものです。
「一人で南米きたの?チャレンジャーだね。えっ?孤児院?ほんの数週間前に、日本から大学生の女の子がきてたよ。その子、孤児院でボランティアをするプログラムに参加しているって言ってたから、頼んでみたら?ラッキーだね」
孤児院に連れてって!
情報通の日本人から教えて貰った女性は、私の話を聞くなり、あっけないほど簡単に快諾してくれました。
「じゃあ明日一緒に行こうよ」
彼女自身は、結構なお金を斡旋会社に支払ってプログラムに参加しているそうですが、いわく「斡旋会社と現場は別。誰でも大歓迎だから」。
とんとん拍子に話は進みます。
翌日、彼女と向かった先には、カトリック系列のシスターが運営している孤児院がありました。彼女はそこで、通いのボランティアをしているとのこと。
取り仕切っているシスターは結構なお年でしたが、優しい笑顔で私を迎えてくれます。
つたないスペイン語で「日本から来ました。ここでボランティアをさせて下さい」と伝えると、こちらも呆気ないほど簡単にOKを出してくれました。
ラッキーでは済まされないラッキー。偶然に偶然が重なって、“エクアドルの孤児院でボランティアをする”という、無謀にも思えた夢が叶うことになったのです。
次回は、孤児院でのリアルな生活の様子をお届けします。
Lucia Travel連載一覧はこちら▼
筆者プロフィール:R.香月(かつき)
マイナーな国にばかり魅了され、気付けば世界40カ国以上を旅行。
旅先で出会ったイスラム教徒と、国際結婚&出産&離婚。現在は2児の母。