インド料理にカレーは無い――料理と文化

ハロー! アキラです。

2回目の記事です。最初の記事では、インドの言語について取り上げました。 2回目の今回は、料理と文化全般についてお話したいと思います。
私は、日本とインドの非常に豊かで深い文化を身近に感じ、経験することを非常に誇りに思っています。

世界でメジャーな料理を挙げるなら

自国の料理を自慢できる国際的な機会を持つ国はほんの一握りです。
国際的な機会とは、つまり、主要都市のどの街角でも、その料理のレストランを見つけることができるということです。

世界でメジャーな料理は何だと思いますか?
中華、フレンチ、イタリアン、日本食、インド料理でしょうか。
世界にはもっとたくさんの料理がありますが、トップ5を選ばなければならないとしたら、上記の5つを選ぶでしょうか。皆さんはどうですか?

インド料理にカレーは無い――料理と文化01

インド料理について考えてみましょう

すぐにカレーが思い浮かびます。でも、カレーとはなんでしょうか。

インド料理にカレーは無い――料理と文化02

ご飯の上にかけたり、パンと一緒に食べたりできる、スープ、シチューのような料理を想像するのではないでしょうか。
この想像は間違ってはいませんが、インドにはカレーと呼ばれる料理はありません。

日本から友人、同僚、親戚がインドに訪ねてくることがよくあります。
インド料理を食べに行く度に、私は彼らに何を注文したいかを尋ねます。ほとんどの場合、返事はカレーです。
かなりの確率で、カレーはインド料理の代表として使用されますが、本格的なインド料理店のメニューを見ると、カレーという料理はありません。
実はカレーの概念は、インドがイギリスの植民地だったときにイギリス人によって世界的に普及したようです。

インド料理について詳しく説明していきましょう

料理を野菜と肉に分ける代わりに、ベジタリアンとノンベジタリアン(インド流)に分ける方が簡単かもしれません。

まずはベジタリアンメニュー。

<ベジタリアン>

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サラダ:インドのサラダは一般的にトマト、玉ねぎ、きゅうりでできています。ドレッシングにはフレッシュレモン果汁またはライム果汁、スパイシーパウダー(チャーットマサラ)を使用。

ダル(豆):インド料理にはさまざまな豆類があります。通常、ダルは水っぽく、ご飯やパンと一緒に食べます。

ベジタブル(サブジ):日本の野菜炒めに似ていて、一般的に使用される野菜は、オクラ(ビンディ)、ジャガイモ(アル―)、カリフラワー(バンドゴビ)、キャベツ(ゴビ)、ナス(ベンガン)です。

<ノンベジタリアン>

使用される肉は、鶏肉、山羊肉(インドではマトンと呼ばれます)、魚です。魚はインドのノンベジタリアンのカテゴリーに分類されます。

ですから、インド料理店に行くとき、健康に気をつけている場合はサラダを注文します。次に、ダル、ベジタブル(サブジ)料理、およびノンベジタリアン料理を注文できます。お好みに応じて、ご飯またはパン(ナン、チャパティ)のいずれかでこれを食べることができます。

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ナン
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チャパティ

インド料理ではベジタリアンでもノンベジタリアンでも、通常、風味(味)は料理の名前でわかります。日本料理では風味(味)について説明があります。ご想像のとおり、「カレー」だけを注文するのはちょっと難しいです。

注意:インド料理は通常、少人数でシェアをします。インドでインド料理を食べることはおひとりさまに優しいものではありません。ひと皿の量が多いので、数人の友人や家族と一緒に行くのがベストです。日本では一人で外食する人が多い為、インド料理店の多くは個人向けの定食セットの食事を取り入れています。

インドの牛肉と豚肉

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驚いたことに、牛肉はインドで食べられています。
多くの人は、インド人は牛肉を食べないと思っています。まあ、これは完全に真実ではありません。
牛肉を食べないというというのは、ヒンズー教の宗教的信念です。インドのヒンズー教徒は牛肉を食べません。
一方、イスラム教徒とキリスト教徒はそれを自由に食べることができます。

現在、インドの人口の約80%がヒンズー教徒です。したがって、「インド人は牛肉を食べない」と言う時、それは約80%正しいと言えます。
同様に、イスラム教徒は豚肉を食べませんがヒンズー教徒とキリスト教徒はそれを自由に食べることができます。

ここで覚えておくべきことは、多くのヒンズー教徒が菜食主義を実践しているということです。つまり、彼らはいかなる種類の肉も食しません。卵さえ食べない人もいます。

実際のところ、インド人の約40%は菜食主義者です。それはヒンズー教徒の人口の約半分です。

これが、オリンピックでのインドのメダル数が異常に少ない理由でしょうか?
有名なインドのバドミントンコーチに最大の課題は何かと尋ねました。彼は、プレーヤーにノンベジタリアンフードを食べるように説得することです。と答えました。

イスラム教徒の人口の多いいくつかの地域では牛肉を入手することができます。
しかし、全体として見ると、最も一般的に使用される肉製品は鶏肉です。
牛肉はヒンズー教徒の顧客を遠ざけ、豚肉はイスラム教徒の顧客を遠ざけるため、多くのレストランは牛肉と豚肉の提供を控えています。

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インドのマクドナルド

たとえば、インドのマクドナルドは豚肉や牛肉の製品を提供していません。
チキンバーガーとベジタリアンバーガーのみ。
私のような非菜食主義者にとって、宗教に厳密に従わず、ハンバーガーを食べられないことは、実際にはかなりストレスがたまります。
豚肉がないということは、マクドナルドに「ベーコンレタスバーガー」がないことを意味します。牛肉がないということは「ビッグマック」がないということです。

インド料理とスパイス

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インド料理について話すときはいつでも、スパイシーでオイリーなものが思い浮かびます。
国の料理というものは、宗教、社会的規範と慣習、天候、およびその地域で利用可能な原材料の影響を受けると私は考えています。

以前私よりもそれについてよく知っている人と話をする機会がありました。インド料理と日本料理はなぜそれらがそのまま残ってきたのか、について話し合いました。

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多くのインド人は、日本料理は当たり障りのないものだと言います。しかしそれは当たり障りないのではなく、素材や原材料の自然な味わいを自然が意図したとおりに楽しむという発想だと説明しました。
それはトマトそのものの味や、魚の味を生かす味付けをするということだと。

すべてが油とスパイスに浸され、素材の味を失うインド料理とは非常に異なります。
野菜も肉も使用するスパイスにより全てが同じ味になってしまいます。

これに対してある人が、インド料理がその環境の結果であるという上記の概念を私に説明してくれました。
油とスパイスを使うことで料理は長持ちし、極端なインドの暑さで台無しにならないように長い年月をかけて適応してきました。
インドの夏に寿司を食べることは想像できません。冷凍技術のなかった昔に、夏にインドで寿司を食べることは、生命を脅かしたことでしょう。

インドの子供たちは、かなり小さいうちからスパイシーな(世界基準では辛いとされている)食べ物を食べることができます。
それでも、辛すぎて子供たちが食べられない場合の為に、プレーンヨーグルトが混ぜて出されることがあります。ヨーグルトはスパイスの辛さを抑え、かつかなりおいしいのです。
次回インド料理店に行って辛いものを見つけたら是非、食べてみてください。

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ヨーグルト

テーブルマナー

料理の話をするときに頭に浮かぶもう一つのことはマナーについてです。主に食事の時のテーブルマナーです。
良いテーブルマナーの世界基準は西洋のマナーのようです。フォークとナイフをどれだけうまく使うことができるかや、テーブルの上に肘をつけないことなどです。日本料理も食べる時には、適切なマナーに従う必要があります。

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さて、インド人は手を使って食事をします。もちろん手で食べる時もマナーはあります。
例えば左手は使用しないことです。食事中は右手のみを使用します。左手はトイレの後、きれいにするために使用しているので、食事中の使用はしません。

手を使って食べることは、西洋や日本の基準では適切なマナーとされていません。
カトラリーが発明される前は、おそらく人間が食べ物を食べるために手が使われていました。
カトラリーの発明はどういうわけかインドを迂回したのでしょうか。これはインド文化の一面であり、上手に説明することができませんでした。

なぜ、インド人はカトラリーを使って食べないのか?

私は別のインド人とこのことについて話し合いをしました。そして彼の返事は、どうやってあなたは食べ物の温度を知りますか?
手を使って食べると、熱すぎるかどうかがわかるので、口をやけどしないようにすることができます。フォークとスプーンを使用すると、食べ物がどれだけ熱いかわからない場合、口をやけどさせる危険があります。
おお!この簡単な説明は私を驚かせました。思い出してみて下さい。手で食べたときに口をやけどしたことは一度もないと思います。
また、食べ物が熱すぎると金属スプーンが熱くなり、口をやけどする危険性があります。

インドに住む私の食卓

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私と私の家族はインドの家で何を食べているかというと、朝食は主にパン(トースト)と卵(オムレツ、目玉焼きなど)です。時々ハムやウィンナーと一緒に食べることもあります。

ランチはインド風です。サラダ、ダル、野菜料理。

夕食は通常日本のスタイルです。
日本のスタイルとは、日本食ではなく、日本の家族が夕食に食べるものを意味します。日本食、パスタ、フライドチキンやローストチキンなどを食べたりします。

丈夫なチーク、しなやかな竹

料理とは別に、ある国の人々の考え方に外的状況がどのように影響するかについて考えました。

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チークの木

インド人がどれほどタフで耐久性があるかを示したいときはいつでも、彼らはチーク材の例を出します。
「チークと同じくらい強い」。これは、強いものを説明するためにしばしば使われます。

理由としては、チーク材の家具は丈夫な木材であり、それは決して壊れることはなく、何世代にもわたって永遠に引き継がれて使い続けられる可能性があるからです。

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一方、日本人は竹と同じくらい強いと言います。
竹?
インド人は竹を強いとは決して思わないでしょう。なぜこのような違いがあるのでしょうか。
竹は地震に耐えることができます。したがって、日本人の性格は、しばしば竹と比較されます。
竹のようにしなり、打ち負かすことのできない力にも柔軟に対応すると。
インドは地震の起きない土地であるため、竹のように柔軟であるという言葉は聞いたことがありません。
これは言葉だけでなく、各国の人々の性格にも反映されています。
インドでは、トラブルに耐えるタフな態度は美徳と見なされ、日本では、トラブルに適応する柔軟な態度は美徳と見なされます。

似ている日本とインド

違っている部分は別として、日本とインドは非常に似ていると思います。
確かに、宗教、文化、料理、社会などには違いがありますが、それは表面的なものです。より深く掘り下げてみると、類似点が見えます。
インドと日本はどちらも古代文明を持っており、強いアイデンティティを持っており、独自の高度な言語を持っています。
両方の文化における年長者や家族を尊重するところは似ています。料理は異なりますが、独自のアイデンティティを持っています。

インドと日本はまた、お互いに深い敬意、賞賛、尊敬をしあっています。
私の妻は日本人です。私の友達は私がとても賢い結婚をしたと冗談を言うことがよくあります。
インドと日本はとても良い関係にあるので、日本人と結婚するのは良い考えであると。そのようなとき私は、私が日本人の妻と結婚したので、インドと日本は良い関係にあるのです。と答えます。

政治的に言えば、インドのモディ首相は日本の安倍元首相と、とても仲が良く友好的でした。また、日本の元首相のいとこはインド人と結婚しています。
そしてとても歳のいったインドの大臣は日本人と結婚しています。

スポーツで応援する国

日本とインドがスポーツで戦った時、どちらのチームを応援するのかとよく聞かれます。
勝ちそうなチームが私の答えです。
インドはオリンピックであまり良い記録を持っていません。そして日本は常に良い成績を収めています。だから、オリンピックでは日本を応援します。

インドはクリケットが全てであり、強力なチームがあります。だから、私はクリケットでインドを応援します。日本がクリケットを始めない限り、私にとってすべてが良好なのです。

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クリケットの球場

クリケット:英国発祥のスポーツで野球の原型ともいわれる球技です。世界の競技人口はサッカーに次いで第2位といわれ、特にインド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュなどの南アジア諸国では、圧倒的な人気を誇り、プロリーグのトップ選手の年収は30億円を超えます。

日本では、明治維新直後、英国海軍や英国商人たちが横浜にクリケットクラブをつくり、1863年に横浜で行われた、「横浜 vs 英国海軍」の試合が、日本で最初の試合です。

マコトさんのプロフィール画像

筆者プロフィール:
昭 アンクール 山本 チブ

1976年にインド人の父と日本人の母の間に生まれ、日本人の妻と、3人の息子たちとインドで生活している。
英語と日本語とヒンディー語を使い分けているトリリンガル。


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