礼拝中に授乳&お喋り?キルギスにある中央アジア最大級のモスクに行ってきた

「外国人の私が入っても大丈夫だろうか」
そんな不安を抱えながら訪れた、キルギスの首都ビシュケクにある中央アジア最大級のモスク。
そこで出会ったのは、言葉の通じない私を当たり前のように受け入れ、お喋りを楽しみながら祈る女性たちでした。

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キルギスのセントラルモスク

キルギスの首都ビシュケクには、セントラルモスクという巨大なモスクが建っています。中央アジア最大級と呼ばれるそのモスクを、私はずっと楽しみにしていました。

タクシーの助手席から窓の外を眺めていると、遠くにモスクの美しいミナレットがちらりと見えました。車が進むにつれ、その姿は大きくなっていきます。「あれだ!」まるでお城に向かっている気分でした。
宗教施設だというのに警備の人の姿はなく、誰でも自由に出入りできる穏やかな雰囲気でした。

トイレらしき小屋の外に設置された水道では、年配の男性が熱心に足を洗っていました。
敬虔なイスラム教徒たちは、祈りの前に手や足など体の一部を水で清めます。きっと彼もこれから神様に祈りを捧げに行くのでしょう。その姿が余りに真摯で、私は彼に敬意を抱きました。

駐車場内は、ほぼ満車でした。
タクシーの運転手は「君を降ろして、ここで待っているよ」と私に告げます。モスクの入口まで付いてきてくれるものだと思いこんでいた私は動揺してしまいました。男性が主流のイスラム教の世界。外国人の女性である私が一人で向かうのは、やはり少し不安でした。

そんな私の気持ちを払拭するかのように、礼拝を告げるアザーンの音が辺り一面に響き渡ります。私はそれを「神様に歓迎されているサイン」だと受け取りました。

キルギスのセントラルモスク お城にも見える立派な外観

モスクの入り口は男女で別

真っ白な衣装に身を包んだムスリムの男性たちが、次々とモスクの中へ消えていきます。若い青年から高齢の男性まで幅広い年代がそろっていて、みんなどこか楽しそうでした。

多くのモスクは男性用・女性用と入口が分かれているため、女性の私は男性たちが利用している扉から内部に入ることはできません。
私は、女性用の入口を探しつつモスクを散策することにしました。

建物の半分を歩き終わった頃、小窓から内部の広場が見えました。チラリと見るだけのつもりが、あまりの美しさに足が止まります。
幾重にも連なるアーチと細い支柱で構成された空間は、アルハンブラ宮殿で一番有名なライオンの宮殿を囲む回廊そのものに見えました。

いつまでも見ていたい気持ちを抑えて次へ進みます。すると、ベビーカーを押した女性が扉の奥へ消えていきました。「やった!女性用の扉を見つけた」
その扉は、正面にあった男性用の扉のちょうど真裏にありました。あちらと比べると少し質素な気がしますが、それでも充分立派です。

暫く観察していると、女性が次々にやってきました。多くが幼子を連れた母子で、家族でやってきて母子を見送ったあと、父親だけが男性用の扉へ向かうパターンもありました。
私は、生後3ヵ月くらいの赤ちゃんを抱えた女性にジェスチャーで「入っていい?」と聞きます。女性は「どうぞ、どうぞ、入って」と言わんばかりに大きく頷きました。

  • モスクの入り口は男女で別
  • モスクの入り口は男女で別
右側/チラリと見えた広場は、引き込まれる美しさでした

なかなか見えない礼拝堂

扉を開けると中は二重扉になっていました。
広い下足スペースと壁一面の下駄箱。でも、その先にも扉があります。「やっと入れた」そう思ったのに、肝心のモスクの内部はまだ見えません。

重厚な木の扉を開けると、通路が目の前にありました。薄暗いその通路を進んで行くと、突然天井が高くなり光があふれました。
メイン広場のようですが、目隠しのようにパーテーションが置かれていてよく見えません。それでも、仰ぎ見た天井は「どうしてここまで厳かに造れるのだろう」と言いたくなるほど威厳に満ちていました。

通路はそのまま階段へと繋がっています。
誰の姿も見えず不安を抱えながらも階段を上ると2階に辿り着きました。

なかなか見えない礼拝堂 ちょうど礼拝の時間、次々に人が集まってきました

想像以上!自由な礼拝スタイル

足を踏み入れると、一面に青緑の絨毯が敷かれた空間が広がっていました。
階段すぐの場所に6人の老婆。熱心にコーランを読んでいる女性もいれば、完全に横になって休憩している女性もいました。

ある場所では、乳児を連れた若いお母さんをはじめ、比較的若い女性たちが座っています。
一番奥の壁沿いには、まだヒジャブも着用していない若い女の子たちが座っていて、楽しそうにお喋りしていました。

すごく自由な雰囲気で、座る位置も自由な様子です。
私は乳児連れの若いお母さんの少し後ろの位置に座ることにしました。

導師の声が響き渡り、礼拝が始まりました。足を崩した正座をして、心静かにただ声に耳を傾けます。
言葉の意味は分かりませんでしたが、聞いているとどこか懐かしく厳かな気持ちになりました。

イスラム教徒のお祈りの仕方は独特です。途中、立ち上がったり、座ったり、右を向いたり、左を向いたり、額を床につけたり様々な動きをします。

私はイスラム教徒ではありませんが、ムスリムだった元夫のお祈りを間近で見ていたので、何となく流れは分かっていました。
迷った時は周囲を見ましたが、みなさん自由。右を向かなきゃいけないのに下を向いていたり、赤ちゃんをあやしていたり、座り込んで動かなかったり…。あまり気にしていないようだったので、私も祈りたいように祈ることにしました。

想像以上!自由な礼拝スタイル 祈祷室はこちらの看板。何だか可愛いイラストです

憩いの場としてのモスク

祈りの中盤になると、斜め前にいた乳児が泣き出しました。お母さんはその場でお乳をあげます。周囲にたくさん人がいても、礼拝の最中でも、躊躇せず母乳を与えるその姿は美しく、子を見つめる目は慈愛に満ちていて、まるでそこだけスポットライトが当たっているかのように輝いて見えました。

やがて礼拝が終わります。
私が祈っていた四角い空間の奥には、細長いスペースが続いていました。礼拝中から気になっていたその場所へ行ってみることにします。そこはまるで劇場の2階席。モスク全体が一望できる特等席でした。改めてモスクを見渡します。豪華な天井、まばゆいばかりのステンドグラス…どこを切り取っても壮大でした。

そんな一番の特等席部分では、赤ちゃん連れの若いお母さんのグループがお喋りに花を咲かせていました。
すごく楽しそうな雰囲気で誰一人帰る様子はありません。その様子を見て私は、モスクは祈りの場であると同時に、女性たちの社交場・憩いの場でもあるのだと気付きます。

憩いの場としてのモスク 見惚れるほど美しい天井は、芸術作品のようでした

厳格なイメージと裏腹に

礼拝の最中に授乳したり、お喋りしたり、退屈そうにしていたり…。私が見た女性たちの礼拝の風景は、とてもおおらかなものでした。

イスラム教というと、厳格で近寄りがたいイメージを持つ人もいるかもしれません。でも私が見たのは、赤ちゃんをあやし、お喋りを楽しみ、言葉の通じない外国人の私にも笑顔を向けてくれる女性たちの姿でした。

この記事を通して、そんな人間味あふれる温かな一面が少しでも伝われば幸いです。

R.香月(かつき)プロフィール画像

筆者プロフィール:R.香月(かつき)

大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel


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