掲載日:2025.05.10

ラーメンどんぶりの模様とその意味は?知られざる歴史にも迫ります!

みなさんは、ラーメンがお好きですか?
ダシのきいたスープ、コシのある麺、ネギやメンマなどの具材が組み合わさったラーメンはとてもおいしいですよね。

そんなラーメンですが、ラーメン屋さんや中華料理屋さんでは、専用のラーメンどんぶりで出されることが多いですよね。
このコラムでは、ラーメンどんぶりに描かれている模様についてご紹介します。そもそもどんな種類があるのか、ラーメンどんぶりを使っているのは日本だけなのかなど、気になるラーメンどんぶり事情を一緒にチェックしていきましょう!

ラーメンどんぶりの模様とその意味

「ラーメンどんぶり」と聞くと、多くの方が思い浮かべるのが四角い渦巻き模様かもしれません。しかし、実はラーメンどんぶりの模様はいろいろな種類があるんです……!ここでは、ラーメンどんぶりの模様とそれぞれの意味をわかりやすくご紹介します。

雷紋

雷紋

ラーメンどんぶりの最も有名なものが、中国の伝統的な模様である「雷紋(らいもん)」ではないでしょうか。これは、赤や朱色の四角い渦巻き模様です。

雷といえば、自然界の脅威の象徴です。そんな雷をモチーフした模様は、迷路のようなうずまきで、鬼を惑わせる魔よけの意味が込められているそうです。ほかにも、古代中国では「雷は天から意志を表すもの」であり、天の恵みである「雨」をイメージさせるものだったため、雷紋は脅威の象徴としてだけではなく、豊作の象徴としても使われていたといわれています。

双喜紋

双喜紋

「喜」という文字を横に二つならべた模様が「双喜紋(そうきもん)」です。こちらも雷紋とならんで、ラーメンどんぶりに描かれているのをよく見かけるのではないでしょうか。

これは、中華圏で「新郎新婦がならんでいる姿」を表すもので、喜びが2つもある・重なるほどおめでたいという意味があるそうです。そのため、結婚式や春節といったお祝いの日で使われることが多い特別な模様です。

龍

龍は中国やそのほかのアジア文化圏で、特別な存在として考えられてきました。龍は「天帝の使者」として、力強さや幸運の象徴とらえられてきたのです。また、雨をよく降らせ、五穀豊穣をもたらすありがたい存在としても人々から崇拝され、大切にされてきました。

特別な存在である龍が描かれたお皿は、かつての中国では皇帝しか使うことが許されなかったといわれています。このことからも、龍がいかに高貴な模様だったかがわかりますね。

龍が描かれたラーメンどんぶりを使うことで、お客様の幸運を願いながら、お店の繁栄への願いも込めているお店も多いですよ。

鳳凰

鳳凰

雷紋や双喜紋、龍の模様と比べると見かける機会がやや少ないかもしれませんが、「鳳凰(ほうおう)」がラーメンどんぶりに描かれていることもありますよね。

鳳凰は、古代中国における最も高貴で幸運をもたらすと考えられていた空想上の鳥です。「鳳」は雄鳥で皇帝の紋章、「凰」は雌鳥で皇后の紋章をそれぞれ表すものとして、古くから中国で使われてきた模様です。

ちなみに、龍と鳳凰が対になって(向かい合って)描かれているラーメンどんぶりもありますよ。

ラーメンどんぶりの象徴「雷紋」

ラーメンどんぶりには、さまざな模様があることがわかりましたね。見たことがある模様であっても、それがどのような意味なのか知らなかった!という方も多かったのではないでしょうか。

ここからは、ラーメンどんぶりの象徴である「雷紋」について、さらに詳しく歴史やバリエーションなどをご紹介していきたいと思います。

雷紋の歴史

雷紋の歴史はとても古く、約3,000年以上前から中国で磁器、土器、骨器、彩陶、銅器といった食器だけではなく、建築物などにも描かれてきました。ちなみに、後ほど詳しく解説しますが、中国だけでなくギリシャなどでも歴史的な建築物に描かれています。

雷紋模様のバリエーション

雷紋模様のバリエーション

雷紋は、渦巻を2つでワンセットとし、それを等間隔にならべることが基本なのですが、「絶対にこう描かなければならない」という決まりはありません。そのため、「雷紋模様」と一言でいっても、実はさまざまなバリエーションがあるんです!

たとえば、S字型。2つの渦巻きを「S」の形でつないだ形です。ほかにも、C字型もあります。C字型は、2つの渦巻きを下の部分でつないだ形(アルファベットのCを180度横にするようなイメージ)です。

ちなみに、渦巻きを内側に巻く回数や線の太さについても、はっきりとしたルール・決まりはありません。また、巻く方向についても、左回りでも右回りでも大丈夫で、どちらも使われています。

雷紋模様の配色については、ラーメン屋では白と赤、赤と黄色、赤と金色などが使われることが多いです。しかし、それ以外にも黒と赤やベージュと白、赤茶と白といったバリエーションもあります。また、ラーメンどんぶり以外のデザインとして使われる場合は、白と緑、黒とグレー、白と青、茶色と白などの組み合わせもあります。

ラーメンどんぶり以外にも雷紋が使用される場所

雷紋が使われているのは、ラーメンどんぶりだけではありません。

「雷紋=ラーメン屋」というイメージから、ラーメン屋や中華料理屋さんの暖簾、メニュー表などにも使用されています。暖簾は、下部だけでなくまわり全体を囲うように雷紋がデザインされているものも多いです。

そのほか、石川県南部の九谷焼(くたにやき)や佐賀県の伊万里焼(いまりやき)といった伝統工芸の絵皿に描かれることもあります。

さらに、昔をさかのぼれば、山科家という公家や備中岡山藩の伊藤氏という武家の家紋として使われていました。また、日本で最も初期(明治時代)に発行された郵便切手である「竜切手(りゅうきって)」の四辺にも雷紋がデザインされていました。

ラーメンどんぶりの歴史

雷紋にもいろいろな種類があることがわかりましたね。ここからは、少し視点を変えて、ラーメンどんぶりそのものの歴史について迫ってみたいと思います!

ラーメンどんぶりの始まり

ラーメンどんぶりは、その模様が中国にルーツを持つものが多いことから、ラーメンどんぶり自体も中国からもたらされたもの、とイメージしがちですよね。

しかし、実はラーメンどんぶりは日本人によって作られたものだったんです……!中国から陶磁器が日本に伝わり、そこに石川県の伝統工芸品である九谷焼に雷紋が使われるようになっていきました。

石川県 九谷焼 石川県 九谷焼

そして、1910年ごろ、日本ではじめて中華そば店(ラーメン屋)が誕生。その際、ラーメンを入れる器として、浅草にあるかっぱ橋道具街の九谷焼陶器店に「中華らしい器を作ってほしい」と依頼した結果、雷紋入りのラーメンどんぶりが完成した、という歴史があります。

ラーメンどんぶりは日本だけ?

ラーメンどんぶりに似た食器は、中国ではあまり見られないそうです。そのため、ラーメンどんぶりは日本ならではのもの、日本の発明品といっていいという意見もあります。

ちなみに、筆者(私)はイギリスに住んでいますが、こちらでも日本食レストランなど以外ではラーメンどんぶりに似た食器を見ることはほとんどありません。

ギリシャ雷紋もあるって本当?

ギリシャ雷紋もあるって本当?

雷紋といえば中国、というイメージがあるかもしれません。しかし、先ほど少しご紹介したとおり、古代ギリシャの建築物や器などにも描かれています。

これらは、メアンダー、メアンドロス模様、メアンドロス柄などと呼ばれているギリシャ雷紋です。名前は、小アジアを流れるマイアンドロス川に由来しています。

ギリシャ雷紋は、はるか昔、新石器時代にバルカン地方のドナウ川流域に存在したトリポリエ文化・ディミニ文化で使われた土器の装飾文様としてはじまりました。その後、アッペンニーノ山脈文化に受け継がれ、ギリシャの幾何学紋様として発展しました。

中国の雷紋と同じように魔よけや幸福のシンボルとしての意味もあります。さらに、連続した模様が「永遠」を連想させるため、縁起がいいと考えられていました。

ギリシャ文明では、壁画や家具、工芸品、食器の装飾としてさまざまな場所で使われていました。

模様の意味を知れば、ラーメンがもっと楽しめる♪

私たちにもなじみのあるラーメンどんぶりですが、その模様はさまざまなものがあり、意味も多様であることがわかりましたね。

ラーメンどんぶりの模様に込められた意味を知っていることで、ラーメンを食べるときの楽しみもいっそう増すはず。今度ラーメンを食べる機会があれば、ぜひどんぶりの模様にも注目してみてくださいね。


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