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〝迷宮都市〟や〝迷路の街〟として知られるモロッコ・フェズの旧市街。今回はモロッコ人と結婚し、モロッコで暮らした私が考える旧市街のお話です。後半は日本人にはちょっと考えられない!?騒音事情をご紹介。
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モロッコが誇る世界遺産の一つにフェズの旧市街があります。この街は〝まるで迷路のような街〟とか〝世界一の迷宮都市〟とか〝巨大な迷路〟と紹介される有名な場所。
そんな素晴らしいところなら是非見てみたいとのことで私も行ってみました。〝巨大な迷路〟という触れ込みだったのでかなり身構えていたのですが、実際はちょっと拍子抜けした記憶があります。
旧市街の道はとても狭く、車は通過できません。その狭さなのに道路の両サイドには路面店がひしめき合っています。絨毯だったりスパイスだったり、陶器だったり、ガタガタの石畳の道にはあらゆる品物が並んでいます。
そして狭い路地には人が溢れ返っています。有名な観光地なだけあって、外国人がたくさん。同じだけかそれ以上に地元の人もいます。人と人とがひしめき合って、ネコがいて、荷物を運ぶロバがいて、その間を縫うように巨大な布袋を背負った人が歩いていくその光景にパーソナルスペースはありません。地元の人も外国人も、動物も食べ物も全てがいっしょくたになった空間。それがフェズの旧市街です。
ただ迷路かと言われると…私は正直そうは思えませんでした。メイン通りがきちんとあるので、その道路から大幅に外れなければ道に迷うことはありません。「意外と迷わないかも」それがフェズの旧市街の思い出です。
モロッコ人と結婚し、モロッコで暮らした経験がある私からすると、観光で有名なフェズの旧市街は、普通の旧市街とはまた別のカテゴリーなのかなと思っています。
私が思うモロッコらしい旧市街は、メイン道路も目印になる建物もない旧市街。細い道が入り組んでいて、どこの角を曲がっても同じ色・同じ造りの家が無造作に並ぶ街並みです。そこに真っ直ぐな道は一本もなく、常に道路は曲がりくねっています。細かくうねった道路とひしめく家々は、まさに迷宮。碁盤の目とはかけ離れた混乱した造りです。
モロッコ人の夫と暮らした旧市街は、観光客も来ない寂しい旧市街です。方向音痴ではない私も何度も道に迷いました。今日こそはと意気込んで家から一歩出ます。前後左右の景色をじっくり観察しながら道を進みます。一本目、二本目、三本目まではOK、でもそこから先がいつも不安になります。入り組んだ路地は、どこまで進んでも同じ景色しか見せてくれません。普通の家、同じ色の壁、同じ色の扉、同じ造り…。違いを見つけるのは本当に困難でした。
旧市街から外に出てしまえばOKなのですが、旧市街の中は住んでいても「わけが分からない」の一言に尽きました。
滅多に道に迷わない私ですが、モロッコ旧市街においてはお手上げ状態。いつまでたっても道を覚えられない方向音痴から卒業することができませんでした。
私の勝手な思い込みかも知れませんが、モロッコ人は騒々しい人間です。私は夫の家族と同居していたのですが、普通の家族の会話でさえ「喧嘩が始まった!」と勘違いするような激しいものでした。モロッコでは、男も女も老いたる者も若き者も、みんなが素直に感情をぶつけてくるので、日常の会話はいつも「騒がしい」の一言。
モロッコ式のアラビア語は抑揚が強めなので、もしかしたら他の言語より騒がしく聞こえただけかもしれません。でも、窓が開いていようが閉まっていようが、感情が高ぶってくると大声を張り上げて会話をする人々なので、どの家庭もどの店もやっぱり「騒がしい」のです。
だから、家と家がひしめく旧市街を歩いていると色々な音が聞こえました。通りの向こうまで響くような大きな声で世間話をしている女性、窓から友達の名を叫び続けている少年、玄関前で「開けて~!遊びにきたよ!」と声を張り上げるおじさん。ギイギイと壊れそうな音を立てながら移動する荷台、引き売りの掛け声…。旧市街はいつも音で溢れていました。いつもどんな時間でも人の声が聞こえてくる街、それが私が住んでいた旧市街です。
またモロッコはイスラム教徒の国。祈りの時間になると、どこから大音量のアザーンが響いてくることがあります。その音量は、窓を閉め切った家の中にも届くほど。あえて例えるのなら、町内放送のレベルでしょうか?全ての者に放送が行き渡りますようにとの思いを込めアザーンは大音量で流れます。
ラジカセを担いだ男性がカフェで勝手に音楽を流していたり、ちょっとした集まりで女性たちが突然歌い踊りだしたり、ほんとうに自由。朝も昼も夜中でも結構な音量で、いつもどこかで音楽が流れています。好きな音楽を好きな音量で楽しんでいるスタンスなので、そこに罪の意識はありませんし、周囲に配慮しようという気持ちも少ないように思います。きっと国全体が音にかなり寛容なのでしょう。
日中は人の行き来の騒がしさもあってあまり気になりませんが、夜の音楽はビックリするくらいに響きます。陽が沈んでから聞こえてくるのは、テクノのようなクラブミュージックだったり、ズドンズドンと振動と音が心臓に響き渡るような流行りの音楽だったり、比較的若い子の曲が多かったように思えます。それは毎晩、続きました。
面白いのはTVで音楽番組が放送されたとき。人気の歌手が出演していると、隣近所の家も同じ番組を見るので、あっちの家からもこっちの家からも同じ曲が大合唱のように響き渡るのです。住人の歌声と共に。でも「近所迷惑だわ」と思ったことは一度もありませんでした。むしろ少し楽しみだった気さえします。
異国で暮らす私にとって、夜は少し特別。時々、やるせない感情や不安が膨らみました。眠ろうとする体に耳に響く音楽は、まるで子守歌のように私を安心させてくれる存在だったと思っています。
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大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。マイナーな国をメインに、世界中を旅する。旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。公式HP:Lucia Travel
〝迷宮都市〟や〝迷路の街〟として知られるモロッコ・フェズの旧市街。
今回はモロッコ人と結婚し、モロッコで暮らした私が考える旧市街のお話です。
後半は日本人にはちょっと考えられない!?騒音事情をご紹介。
Lucia Travel連載一覧は こちら
目次
〝巨大迷路〟だけど迷わなかったフェズ旧市街
モロッコが誇る世界遺産の一つにフェズの旧市街があります。
この街は〝まるで迷路のような街〟とか〝世界一の迷宮都市〟とか〝巨大な迷路〟と紹介される有名な場所。
そんな素晴らしいところなら是非見てみたいとのことで私も行ってみました。
〝巨大な迷路〟という触れ込みだったのでかなり身構えていたのですが、実際はちょっと拍子抜けした記憶があります。
旧市街の道はとても狭く、車は通過できません。その狭さなのに道路の両サイドには路面店がひしめき合っています。絨毯だったりスパイスだったり、陶器だったり、ガタガタの石畳の道にはあらゆる品物が並んでいます。
そして狭い路地には人が溢れ返っています。有名な観光地なだけあって、外国人がたくさん。同じだけかそれ以上に地元の人もいます。
人と人とがひしめき合って、ネコがいて、荷物を運ぶロバがいて、その間を縫うように巨大な布袋を背負った人が歩いていくその光景にパーソナルスペースはありません。
地元の人も外国人も、動物も食べ物も全てがいっしょくたになった空間。それがフェズの旧市街です。
ただ迷路かと言われると…私は正直そうは思えませんでした。
メイン通りがきちんとあるので、その道路から大幅に外れなければ道に迷うことはありません。「意外と迷わないかも」それがフェズの旧市街の思い出です。
名もなき旧市街こそが本当の迷路
モロッコ人と結婚し、モロッコで暮らした経験がある私からすると、観光で有名なフェズの旧市街は、普通の旧市街とはまた別のカテゴリーなのかなと思っています。
私が思うモロッコらしい旧市街は、メイン道路も目印になる建物もない旧市街。細い道が入り組んでいて、どこの角を曲がっても同じ色・同じ造りの家が無造作に並ぶ街並みです。
そこに真っ直ぐな道は一本もなく、常に道路は曲がりくねっています。細かくうねった道路とひしめく家々は、まさに迷宮。碁盤の目とはかけ離れた混乱した造りです。
モロッコ人の夫と暮らした旧市街は、観光客も来ない寂しい旧市街です。方向音痴ではない私も何度も道に迷いました。
今日こそはと意気込んで家から一歩出ます。前後左右の景色をじっくり観察しながら道を進みます。一本目、二本目、三本目まではOK、でもそこから先がいつも不安になります。
入り組んだ路地は、どこまで進んでも同じ景色しか見せてくれません。普通の家、同じ色の壁、同じ色の扉、同じ造り…。違いを見つけるのは本当に困難でした。
旧市街から外に出てしまえばOKなのですが、旧市街の中は住んでいても「わけが分からない」の一言に尽きました。
滅多に道に迷わない私ですが、モロッコ旧市街においてはお手上げ状態。いつまでたっても道を覚えられない方向音痴から卒業することができませんでした。
音で溢れ返るモロッコの旧市街
私の勝手な思い込みかも知れませんが、モロッコ人は騒々しい人間です。
私は夫の家族と同居していたのですが、普通の家族の会話でさえ「喧嘩が始まった!」と勘違いするような激しいものでした。
モロッコでは、男も女も老いたる者も若き者も、みんなが素直に感情をぶつけてくるので、日常の会話はいつも「騒がしい」の一言。
モロッコ式のアラビア語は抑揚が強めなので、もしかしたら他の言語より騒がしく聞こえただけかもしれません。でも、窓が開いていようが閉まっていようが、感情が高ぶってくると大声を張り上げて会話をする人々なので、どの家庭もどの店もやっぱり「騒がしい」のです。
だから、家と家がひしめく旧市街を歩いていると色々な音が聞こえました。
通りの向こうまで響くような大きな声で世間話をしている女性、窓から友達の名を叫び続けている少年、玄関前で「開けて~!遊びにきたよ!」と声を張り上げるおじさん。ギイギイと壊れそうな音を立てながら移動する荷台、引き売りの掛け声…。
旧市街はいつも音で溢れていました。いつもどんな時間でも人の声が聞こえてくる街、それが私が住んでいた旧市街です。
夜な夜な鳴り響く大音量の音楽
またモロッコはイスラム教徒の国。祈りの時間になると、どこから大音量のアザーンが響いてくることがあります。その音量は、窓を閉め切った家の中にも届くほど。
あえて例えるのなら、町内放送のレベルでしょうか?全ての者に放送が行き渡りますようにとの思いを込めアザーンは大音量で流れます。
ラジカセを担いだ男性がカフェで勝手に音楽を流していたり、ちょっとした集まりで女性たちが突然歌い踊りだしたり、ほんとうに自由。朝も昼も夜中でも結構な音量で、いつもどこかで音楽が流れています。
好きな音楽を好きな音量で楽しんでいるスタンスなので、そこに罪の意識はありませんし、周囲に配慮しようという気持ちも少ないように思います。きっと国全体が音にかなり寛容なのでしょう。
日中は人の行き来の騒がしさもあってあまり気になりませんが、夜の音楽はビックリするくらいに響きます。
陽が沈んでから聞こえてくるのは、テクノのようなクラブミュージックだったり、ズドンズドンと振動と音が心臓に響き渡るような流行りの音楽だったり、比較的若い子の曲が多かったように思えます。それは毎晩、続きました。
面白いのはTVで音楽番組が放送されたとき。人気の歌手が出演していると、隣近所の家も同じ番組を見るので、あっちの家からもこっちの家からも同じ曲が大合唱のように響き渡るのです。住人の歌声と共に。
でも「近所迷惑だわ」と思ったことは一度もありませんでした。むしろ少し楽しみだった気さえします。
異国で暮らす私にとって、夜は少し特別。時々、やるせない感情や不安が膨らみました。
眠ろうとする体に耳に響く音楽は、まるで子守歌のように私を安心させてくれる存在だったと思っています。
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日本人とは正反対のモロッコ人の性格をご紹介▼
モロッコ人ってどんな性格?日本人女性が見た義兄の驚くべき行動
国際結婚の手続きで目の当たりにしたモロッコ人の時間感覚▼
日本人には衝撃のルーズすぎるモロッコ文化を体験
筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel