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ハワイと聞いて、ホノルルやワイキキビーチといった観光地を思い浮かべる方が多いと思います。実はハワイには世界遺産が2つあります。1つはキラウエア火山で有名なハワイ国立火山公園。そして、もう1つが今回のコラムで紹介するパパハナウモクアケアです。パパハナウモクアケアは自然豊かで多様な生物が生息するだけでなく、ハワイの歴史に関わる重要な場所でもあります。
パパハナウモクアケアは、アメリカ合衆国ハワイ州の北西ハワイ諸島に位置し、小さな島々と環礁などが全長約1931キロに連なる世界最大級の海洋保護区です。
巨大なサンゴ礁があるパール・アンド・ハーミーズ環礁をはじめ、太平洋戦争の激戦地として知られるミッドウェー環礁などが有名です。サンゴ礁やラグーン、海底火山といった様々な海洋環境があり、ハワイの固有種や絶滅危惧種など多様な生物が生息しています。
さらにニホア島(ハワイ語名:モク・マヌ)、ネッカー島(ハワイ語名:マクマナマナ島)にはハワイ先住民の遺跡が残されています。ハワイの先住民はパパハナウモクアケアを生命発祥の地かつ死後に魂が帰る場所として信仰してきました。パパハナウモクアケアはハワイの先住民が代々継承してきた神聖な場所であり、考古学的にも重要な遺産となっています。
パパハナウモクアケアは2010年にユネスコの世界遺産に登録されました。ハワイでは1987年に世界遺産に登録されたハワイ国立火山公園に次ぐ2番目の世界遺産となりました。アメリカでは文化遺産と自然遺産の価値を兼ね備える唯一の複合遺産であり、自然と人間の共生を示す文化的景観の価値も認められています。
パパハナウモクアケアは、ハワイ語を組み合わせた造語が語源になっています。
「パパ」は大地を司る母なる神。「ハナウ」は誕生や出産。「モク」は島。「アケア」は天空を司る父なる神を意味するハワイ語です。つまり、パパハナウモクアケアは母なる大地の女神「パパ」と父なる空の神「アケア」によって誕生した島々ということを表します。
ハワイ王国の王家に代々伝えられてきたクムリポと呼ばれる創世神話には「パパ」と「アケア」によって島々が誕生したことが記されています。そのため、ハワイの先住民はパパハナウモクアケアを聖地とし、生命発祥の地かつ死後に魂が帰る場所と信仰してきました。
また、パパハナウモクアケアの島々の名前にもそれぞれハワイ語の呼び名と意味があります。
パパハナウモクアケアを含むハワイ諸島は、火山活動によって長い年月をかけて誕生しました。最も古い島の地質年代は約2800万年とされています。
長い歴史を持つハワイ諸島ですが、ハワイに初めて上陸したのは、7世紀頃、現在のフランス領ポリネシアのマルキーズ諸島から来た人々であると考えられています。その後、ニホア島とネッカー島では精神的・儀式的な活動が行われ、ハワイの先住民にとって神聖な場所として文化が育まれてきました。
海洋冒険家であるジェームズ・クックに発見された1778年以降は西欧化の波に飲み込まれることになりますが、ハワイ諸島の海洋保護、自然保護も進むことになります。
1903年にはセオドア・ルーズベルト大統領によって、ミッドウェー環礁が野鳥の保護地区に登録されます。2006年には北西ハワイ諸島全域がアメリカ初の海洋国定記念区域(ナショナルモニュメント)に制定。翌2007年にパパハナウモクアケアと名付けられ、2010年に世界遺産に登録されます。さらに2016年に対象区域が150万㎢に拡大し、世界最大級の海洋保護区域となりました。
また、ネッカー島ではポリネシアの伝統航海術を復活させるべく、ポリネシア航海協会が発足されました。ポリネシアの伝統航海術は、羅針盤やGPSなどのテクノロジーを用いない航海術です。広い海を渡ってきたポリネシアの伝統を現代のナビゲーターに伝承する場となっています。現在は観光客の立ち入りが禁止となっていますが、環境保護以外にも文化遺産の調査など、歴史的な研究がされています。
世界遺産に10項目の登録基準があり、そのうち登録基準を1つ以上満たすことで世界遺産に登録することができます。そんな中、パパハナウモクアケアは5つもの登録基準を満たし、世界遺産に登録されました。世界遺産は文化遺産と自然遺産の2つに分類されますが、パパハナウモクアケアは文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えた複合遺産となっています。
二ホア島とネッカー島には、ヨーロッパ人到達以前のハワイ先住民の跡地があり、ヘイアウと呼ばれるハワイ古代遺跡も残っています。ヘイアウとは、ハワイ先住民の信仰する様々な神を祀り、祈祷や儀式を行う聖域として建設された場所のことです。また、ポリネシアの伝統文化が残るタヒチ島やマルキーズ諸島の遺産と類似性が発見され、ポリネシアの伝統文化との結び付きを証明したことも評価されました。
ハワイの先住民はパパハナウモクアケアを生と死にまつわる聖地として信仰してきました。ハワイの伝統が結びついていることも世界遺産に登録された一因になりました。
パパハナウモクアケアはマグマによる火山活動によって形成された島々です。火山活動における重要な証拠が地球の歴史の主要段階を示す遺産として認められました。
パパハナウモクアケアにはサンゴ礁やラグーン、海底火山といった多様な海洋地形があり、ハワイ固有種の海洋動物や希少な鳥類が生息しています。ハワイ独自の生態系があることも世界遺産に登録された理由の一つです。
パパハナウモクアケアには多くの絶滅危惧種が生息しています。
絶滅危惧種の中でも、世界で約1300頭しか生息していないと言われるハワイアンモンクアザラシはハワイの固有種です。ハワイ語名で「イリオホロイカウアウア」と呼ばれ、荒波を走る犬という意味があります。その他にも、レイサンマガモ、アオウミガメなど、絶滅危惧種が多く生息。コアホウドリ、クロアシアホウドリ、クジラといった多様な生物が生息していることも評価されています。
ハワイという観光地にあるパパハナウモクアケアですが、一般の観光客の立ち入りは許可されていません。パパハナウモクアケアにはハワイアンモンクアザラシやレイサンマガモなど多くの絶滅危惧種や固有種が生息しているため、生物保護の観点から、船舶の通過さえも認められていない状況です。
現在はパパハナウモクアケアの環境を保護するために働いている関係者のみ立ち入りが認められています。観光客は入ることができませんが、ハワイ島にはパパハナウモクアケアの歴史や伝統、自然について学べるスポットがいくつか存在します。
ここでは、パパハナウモクアケアの歴史や伝統、自然について学べる場所を2つ紹介します。
モクパパパ・ディスカバリーセンターはハワイ島ヒロのダウンタウンにあるハワイ諸島の自然や伝統を伝える学習センターです。巨大水槽やタッチパネル、映像によって、自然の特徴を楽しく学ぶことができます。特に1階にはハワイの創世記と呼ばれるクムリポを表現した壁画があり、ハワイの歴史を感じられる空間が広がっています。モクパパパ・ディスカバリーセンターは飲食店やショップが集まるヒロ湾沿いにあり、ヒロ空港からも車で約10分の距離です。
ビショップ博物館はオアフ島ホノルルにあるハワイ州最大のミュージアムです。コレクションや体験型の展示を通して、北西ハワイ諸島の歴史や海洋自然について学ぶことができます。特にハワイとポリネシア文化についての展示物は約200万点超。ワイキキからはバスで乗り換えなしで行くことができます。レンタカーやタクシーでも約15分の距離です。
パパハナウモクアケアは、ハワイ先住民の伝統や歴史を伝える貴重な世界遺産です。ハワイの先住民が生と死にまつわる聖地として信仰してきた場所であり、ハワイ文化を知る上で重要な価値を持ちます。
パパハナウモクアケアに行くことはできませんが、みなさんもパパハナウモクアケアについて学べるモクパパパ・ディスカバリーセンター、ビショップ博物館などに足を運んでみてはいかがでしょうか。
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ハワイと聞いて、ホノルルやワイキキビーチといった観光地を思い浮かべる方が多いと思います。実はハワイには世界遺産が2つあります。1つはキラウエア火山で有名なハワイ国立火山公園。
そして、もう1つが今回のコラムで紹介するパパハナウモクアケアです。パパハナウモクアケアは自然豊かで多様な生物が生息するだけでなく、ハワイの歴史に関わる重要な場所でもあります。
目次
パパハナウモクアケアはどんな世界遺産?
パパハナウモクアケアは、アメリカ合衆国ハワイ州の北西ハワイ諸島に位置し、小さな島々と環礁などが全長約1931キロに連なる世界最大級の海洋保護区です。
巨大なサンゴ礁があるパール・アンド・ハーミーズ環礁をはじめ、太平洋戦争の激戦地として知られるミッドウェー環礁などが有名です。サンゴ礁やラグーン、海底火山といった様々な海洋環境があり、ハワイの固有種や絶滅危惧種など多様な生物が生息しています。
さらにニホア島(ハワイ語名:モク・マヌ)、ネッカー島(ハワイ語名:マクマナマナ島)にはハワイ先住民の遺跡が残されています。ハワイの先住民はパパハナウモクアケアを生命発祥の地かつ死後に魂が帰る場所として信仰してきました。
パパハナウモクアケアはハワイの先住民が代々継承してきた神聖な場所であり、考古学的にも重要な遺産となっています。
パパハナウモクアケアは2010年にユネスコの世界遺産に登録されました。ハワイでは1987年に世界遺産に登録されたハワイ国立火山公園に次ぐ2番目の世界遺産となりました。
アメリカでは文化遺産と自然遺産の価値を兼ね備える唯一の複合遺産であり、自然と人間の共生を示す文化的景観の価値も認められています。
パパハナウモクアケアの語源
パパハナウモクアケアは、ハワイ語を組み合わせた造語が語源になっています。
「パパ」は大地を司る母なる神。「ハナウ」は誕生や出産。「モク」は島。「アケア」は天空を司る父なる神を意味するハワイ語です。
つまり、パパハナウモクアケアは母なる大地の女神「パパ」と父なる空の神「アケア」によって誕生した島々ということを表します。
ハワイ王国の王家に代々伝えられてきたクムリポと呼ばれる創世神話には「パパ」と「アケア」によって島々が誕生したことが記されています。そのため、ハワイの先住民はパパハナウモクアケアを聖地とし、生命発祥の地かつ死後に魂が帰る場所と信仰してきました。
また、パパハナウモクアケアの島々の名前にもそれぞれハワイ語の呼び名と意味があります。
パパハナウモクアケアの歴史
パパハナウモクアケアを含むハワイ諸島は、火山活動によって長い年月をかけて誕生しました。最も古い島の地質年代は約2800万年とされています。
長い歴史を持つハワイ諸島ですが、ハワイに初めて上陸したのは、7世紀頃、現在のフランス領ポリネシアのマルキーズ諸島から来た人々であると考えられています。
その後、ニホア島とネッカー島では精神的・儀式的な活動が行われ、ハワイの先住民にとって神聖な場所として文化が育まれてきました。
海洋冒険家であるジェームズ・クックに発見された1778年以降は西欧化の波に飲み込まれることになりますが、ハワイ諸島の海洋保護、自然保護も進むことになります。
1903年にはセオドア・ルーズベルト大統領によって、ミッドウェー環礁が野鳥の保護地区に登録されます。2006年には北西ハワイ諸島全域がアメリカ初の海洋国定記念区域(ナショナルモニュメント)に制定。翌2007年にパパハナウモクアケアと名付けられ、2010年に世界遺産に登録されます。
さらに2016年に対象区域が150万㎢に拡大し、世界最大級の海洋保護区域となりました。
また、ネッカー島ではポリネシアの伝統航海術を復活させるべく、ポリネシア航海協会が発足されました。
ポリネシアの伝統航海術は、羅針盤やGPSなどのテクノロジーを用いない航海術です。広い海を渡ってきたポリネシアの伝統を現代のナビゲーターに伝承する場となっています。
現在は観光客の立ち入りが禁止となっていますが、環境保護以外にも文化遺産の調査など、歴史的な研究がされています。
パパハナウモクアケアが世界遺産に登録された理由
世界遺産に10項目の登録基準があり、そのうち登録基準を1つ以上満たすことで世界遺産に登録することができます。そんな中、パパハナウモクアケアは5つもの登録基準を満たし、世界遺産に登録されました。
世界遺産は文化遺産と自然遺産の2つに分類されますが、パパハナウモクアケアは文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えた複合遺産となっています。
登録基準(ⅲ)文化的伝統または文明の存在に関する証拠を伝える遺産
二ホア島とネッカー島には、ヨーロッパ人到達以前のハワイ先住民の跡地があり、ヘイアウと呼ばれるハワイ古代遺跡も残っています。
ヘイアウとは、ハワイ先住民の信仰する様々な神を祀り、祈祷や儀式を行う聖域として建設された場所のことです。
また、ポリネシアの伝統文化が残るタヒチ島やマルキーズ諸島の遺産と類似性が発見され、ポリネシアの伝統文化との結び付きを証明したことも評価されました。
登録基準(ⅵ)人類の歴史上の出来事や伝統、宗教などと強く結びつく遺産
ハワイの先住民はパパハナウモクアケアを生と死にまつわる聖地として信仰してきました。ハワイの伝統が結びついていることも世界遺産に登録された一因になりました。
登録基準(ⅷ)地球の歴史の主要段階を示す遺産
パパハナウモクアケアはマグマによる火山活動によって形成された島々です。火山活動における重要な証拠が地球の歴史の主要段階を示す遺産として認められました。
登録基準(ⅸ)動植物の進化や発展の過程、固有種などの独自の生態系を示す遺産
パパハナウモクアケアにはサンゴ礁やラグーン、海底火山といった多様な海洋地形があり、ハワイ固有種の海洋動物や希少な鳥類が生息しています。ハワイ独自の生態系があることも世界遺産に登録された理由の一つです。
登録基準(ⅹ)絶滅危惧種の生息地でもあり、生物の多様性を示す遺産
パパハナウモクアケアには多くの絶滅危惧種が生息しています。
絶滅危惧種の中でも、世界で約1300頭しか生息していないと言われるハワイアンモンクアザラシはハワイの固有種です。ハワイ語名で「イリオホロイカウアウア」と呼ばれ、荒波を走る犬という意味があります。
その他にも、レイサンマガモ、アオウミガメなど、絶滅危惧種が多く生息。コアホウドリ、クロアシアホウドリ、クジラといった多様な生物が生息していることも評価されています。
パパハナウモクアケアは絶滅危惧種や固有種の保護のため立ち入り禁止
ハワイという観光地にあるパパハナウモクアケアですが、一般の観光客の立ち入りは許可されていません。パパハナウモクアケアにはハワイアンモンクアザラシやレイサンマガモなど多くの絶滅危惧種や固有種が生息しているため、生物保護の観点から、船舶の通過さえも認められていない状況です。
現在はパパハナウモクアケアの環境を保護するために働いている関係者のみ立ち入りが認められています。観光客は入ることができませんが、ハワイ島にはパパハナウモクアケアの歴史や伝統、自然について学べるスポットがいくつか存在します。
パパハナウモクアケアの歴史や自然について学べる場所
ここでは、パパハナウモクアケアの歴史や伝統、自然について学べる場所を2つ紹介します。
モクパパパ・ディスカバリーセンター
モクパパパ・ディスカバリーセンターはハワイ島ヒロのダウンタウンにあるハワイ諸島の自然や伝統を伝える学習センターです。巨大水槽やタッチパネル、映像によって、自然の特徴を楽しく学ぶことができます。
特に1階にはハワイの創世記と呼ばれるクムリポを表現した壁画があり、ハワイの歴史を感じられる空間が広がっています。
モクパパパ・ディスカバリーセンターは飲食店やショップが集まるヒロ湾沿いにあり、ヒロ空港からも車で約10分の距離です。
ビショップ博物館
ビショップ博物館はオアフ島ホノルルにあるハワイ州最大のミュージアムです。コレクションや体験型の展示を通して、北西ハワイ諸島の歴史や海洋自然について学ぶことができます。特にハワイとポリネシア文化についての展示物は約200万点超。
ワイキキからはバスで乗り換えなしで行くことができます。レンタカーやタクシーでも約15分の距離です。
パパハナウモクアケアはハワイの歴史と自然を伝える重要な世界遺産
パパハナウモクアケアは、ハワイ先住民の伝統や歴史を伝える貴重な世界遺産です。ハワイの先住民が生と死にまつわる聖地として信仰してきた場所であり、ハワイ文化を知る上で重要な価値を持ちます。
パパハナウモクアケアに行くことはできませんが、みなさんもパパハナウモクアケアについて学べるモクパパパ・ディスカバリーセンター、ビショップ博物館などに足を運んでみてはいかがでしょうか。
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