掲載日:2024.05.08

ハワイの誇り「ホクレア号」 ~ポリネシア伝統航海術の復活~

「ハワイアンは海を誰よりも知っている…」
海洋民族としての誇りを胸に、失われた古代ポリネシアの航海術を復活させ、ハワイの文化復興のシンボルとなったカヌー「ホクレア号」をご存じでしょうか?

1976年、ハワイからタヒチへ…。遥か約4,000km彼方のハワイアンのルーツを辿る旅を、古代より伝わる航海術を再現し成功させたことで世界から脚光を浴びました。

あれから50年、今も航海を続けるハワイの伝統航海船「ホクレア号」について、お届けします。

ホクレア号

ホクレアとはどんな船?名前の由来など、まずはホクレアの基本情報からご紹介しましょう。

ホクレア号とは

ホクレア号とは

「ホクレア号」とは、古代ポリネシアに伝わる伝統航海船を復元した双胴カヌーのこと。
遠い昔、GPSはもちろんコンパスなど近代計器やエンジンもない時代、天体の動き、波や風など自然の変化をヒントに海を渡ってきたハワイアンの祖先。彼らが持っていた高度な航海技術を実証しようと一大プロジェクトが立ち上がりました。

失われた航海術を復活させるため、1975年、ポリネシア航海協会が古代の伝統的なカヌーを復元したのが「ホクレア号」。なんとこの船、釘を1本も使わず、すべてのパーツをロープで縛って組み立てられているのだとか。

実験航海を重ね、1976年、ホクレア号は、ついに古代ハワイアンのルーツを辿るハワイからタヒチまで約4,000kmの航海を成功させたのです。

この結果、1,000年以上前ハワイアンの先祖は、偶然この地に漂着したのではなく、タヒチからハワイを目指して航海してきたことが実証されました。

ホクレア号の快挙により、ハワイアンルネッサンス(ハワイ文化復興運動)の気運がさらに高まることに。こうしてホクレア号はハワイ伝統文化のシンボルとなったのです。

名前の由来

名前の由来

ホクレアとは星の名前。牛飼い座の1等星アークトゥルス星を指します。ハワイの天頂星で、遥か昔、古代ポリネシア人がハワイを目指し航海した際、目印にしていた星です。ホクレアはハワイ語で「喜びの星」(hōkū=星、leʻa=喜び)を意味します。

古代の航海術では、島々の位置は、それぞれの頭上を通る星を指標にしていました。ハワイがある北緯20度付近では、オレンジ色に輝くホクレア (アークトゥルス星)が頭上を通ります。

ホクレアの見つけ方は意外に簡単!北斗七星のひしゃくの柄の部分を、柄と同じ長さだけ伸ばした位置にあります。機会があれば探してみてくださいね。

星の航海術「スターナビゲーション」とは

海図もコンパスもなかった時代、一体どうやって大海原を航海することができたのでしょうか?

古代の人々は、星や月や太陽の位置や動き、風や海のうねり、渡り鳥や魚など自然からヒントを得ることで、現在地を割り出し、目的地を目指していました。この手法を「スターナビゲーション」と呼んでいます。

スターナビゲーションは、五感を研ぎ澄まし、時には第六感をフルに使って無数の自然のサインを肌で感じ取り、計算し、適切に判断する航法。

また事前に季節の星の動き、経度などの必要な情報を頭に叩き込んでおくことも大切です。船上では指や腕など体を使って(ハンドメジャー)天体の位置を計測しますが、指先わずか0.5度の誤差から、目的地を見失ってしまうこともあるのだとか。

姉妹カヌー「ヒキアナリア」

姉妹カヌー「ヒキアナリア」

ホクレアの姉妹カヌー「ヒキアナリア」。その主な役目は、ホクレア号とそのクルーたちの安全確保です。この船の最大の特徴はエンジンが搭載されていること。

燃料にバイオディーゼル(レストランなどから出た食用油の廃油をリサイクル)を使用するなど環境にも配慮しています。緊急時にはホクレア号を曳航できるようエスコートボートとして伴走します。

船内には安全に用を足せるようトイレが設置され、料理が楽しめるようオーブンを搭載するなど快適に過ごすための設備があるのも特徴。

2018年、ヒキアナリアは単独航海としてアメリカ西海岸へ。この航海は、若手航海師たちの実践トレーニングの場でもありました。

ポリネシアの伝統航海の知恵と、現代テクノロジーを兼ね備えたヒキアナリアですが、緊急時以外はホクレア同様、古代の航海術を使って航海しています。

ヒキアナリアとは、ハワイ語でおとめ座のスピカ星のこと。ハワイではホクレア(アークトゥルス星)と共に水平線から昇ってくることから姉妹星と呼ばれているそうです。

ホクレア号の航海の歴史

クルーやボランディアなど多くの人々に支えられ今も航海を続けているホクレア号。その航海の歴史には、2人のキーマンの存在がありました。

ホクレア号の航海を成功させたのは?

「古代の航海術を復活させる」といっても、当時ハワイには伝統航海術を伝える者がいませんでした。そこで、白羽の矢が立ったのが、ミクロネシア・サタワル島の伝統航海士マウ・ピアイルグ氏。

彼は、門外不出とされたサタワル島に伝わる伝統航海術を、ハワイアンのために惜しみなく伝授し多くの航海師を育てました。マウ氏の存在なくしては、このプロジェクトの成功はなかったでしょう。

もう1人の立役者は、ホクレア号のキャプテンとして知られるナイノア・トンプソン氏。マウ氏から学んだ伝統航海術と、近代天文学を融合させることで、ホクレア号のハワイ・タヒチ間の航海を成功に導いた人物です。

ホクレア号は、2007年マウ氏の故郷のミクロネシアや日本へ。2014年から2017年には世界一周航海「マラマホヌア(地球をいたわる)」を成功させるなど、約50年で延べ約30万km(地球約7周分)もの航海を続けています。

現在は太平洋を一巡する環太平洋航海「モアナヌイアケア(壮大なる海)」の途中。2023年アラスカを出発し、アメリカ大陸からタヒチ、ニュージーランド、日本など36カ国をめぐり2027年にはハワイに帰航予定です。

ホクレア号を歌った曲

※曲名/アーティスト

①Kaulana Ka Inoa ʻO Hōkūleʻa(カラカウア・カ・イノア・オ・ホクレア) / CHAD TAKATSUGI feat. NA HOA & Kuini

ハワイの名高い双胴カヌー「ホクレア号」が太平洋の海原に島々のレイをつなぐと歌った曲

②Hokule'a Hula(ホクレア・フラ) / Eric Lee

③Hokule'a Star of Gladness(ホクレア・スター・オブ・グラッドネス) / Iz

航海する船を導く星の「ホクレア」を讃えた英語の曲

まとめ

ホクレア号は、古代ポリネシアに伝わる伝統航海船を復元した双胴カヌーのこと。
その名前は、ハワイを目指す航海において道しるべとなった星の名前から付けられました。

ハワイから太平洋の島々へ、さらに世界一周など延べ約30万kmの航海を続けるホクレア号。近代計器を使用せず、自然の指標だけを使った航海術の復活は、自然と調和しながら生きてきた先祖の知恵と誇りを取り戻すきっかけとなりました。

ハワイアンのルーツを実証するために始まったプロジェクトは、やがてハワイの文化復興のシンボルとなり、今では世界中に自然や文化を尊重する心を届けています。

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