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クリスマスツリーは12月の風物詩として、私たちの頭にしっかりとインプットされています。しかし、キリスト教に関連してクリスマスが西洋から日本にやって来たことと、クリスマスツリーはそのシンボルだということ以外、私たちはクリスマスツリーについて、ほとんど何も知りません。
そこで今回は、クリスマスツリーのルーツや意味について、いろいろと探ってみることにします。
なぜクリスマスにはクリスマスツリーを飾るのでしょうか?それは、イエス・キリストが生まれたことを祝福するためです。ツリーは「平和・愛・希望・喜び」といったクリスマスの精神の象徴として、家庭や公共の広場など、さまざまな場所に飾られます。
クリスマスツリーは、キリスト教だけに起源を持っている訳ではありません。
宣教師がヨーロッパ全土へキリスト教を布教する過程で、大昔の信仰とキリスト教の教えが混じり合い、クリスマスツリーが生まれ、飾られるようになったようです。
大昔の信仰の中で、クリスマスツリーの誕生に最も影響を与えたのは、北ヨーロッパに住んでいた人々の冬至の祭りである「ユール」だといわれています。彼らは、樫の木をユールの祭祀に使いました。樫やモミの木のような常緑樹は、寒さの厳しい冬でも青々と葉を茂らせることから、「生命力の象徴」として彼らの信仰の対象になっていたのです。
この「ユール」の樫の木がモミの木に変化して、クリスマスと合体して祝われるようになったようです。
「オーディンと樫の木」という神話が、ユールの樫の木とクリスマスのモミの木のつながりを良く説明しています。北ヨーロッパに足を踏み入れたキリスト教の宣教師がユールに遭遇し、祭りを止めるためユールの樫の木を切ったところ、切ったすぐそばからモミの木が生えてきた、という物語です。
常緑樹が使われることが多いクリスマスツリーは「永遠の命」を表しています。聖書に登場する「知恵の木」(アダムとイブが蛇にそそのかされて木の実をかじり、楽園を追放されるきっかけとなった)を象徴しているという説もあります。
常緑樹の中でも特にモミの木がクリスマスツリーとして好まれるのは、モミの木が横から見ると三角形であるためです。昔のキリスト教の宣教師は、この形が「三位一体」というキリスト教の重要な教義の象徴であると考えました。
しかし、あまり難しく考えるべきではないのかもしれません。クリスマスツリーは「平和・愛・希望・喜び」といったクリスマスの精神を表しています。ツリーを皆で協力して飾り付けることは、家族の団結を示しています。これはキリスト教徒だけのものではありません。
ところで現在の、私たちが良く知っているクリスマスツリーは、どのように誕生したのでしょうか?それを知るためには、16世紀のドイツを訪ねてみる必要があります。
クリスマスツリーのルーツはドイツです。16世紀の宗教改革の時代、プロテスタント諸派の創始者であるマルティン・ルターが、常緑樹とそのすき間から見える星々の美しさに感動して装飾を施したツリーを教会に設置させ、それがきっかけとなって広まりました。
ルターが関係しているおかげで、クリスマスツリーの習慣は、まずプロテスタントの信徒の家庭に広がりました。しかし、やがてカトリック教徒の教会や家庭でもツリーを飾るようになり、ドイツから世界中へと広まって行きました。
日本で最初にツリーが飾られたのは、1860年頃、当時は横浜にあったプロイセン王国公館(現在のドイツ大使館に相当)で開かれたクリスマスパーティのことでした。当時の公使が、天井まで届くような木を手に入れ、飾りは日本で入手できる菓子や果物で手作りしたのだそうです。
日本人の手による日本初のクリスマスツリーはいつ登場したのでしょうか?あるミッション・スクールのクリスマスパーティで、1874年に披露されたという説もありますが、一般的には「明治屋」の創業者である磯野計が1886年に横浜の店舗で飾ったものがそれだ、と言われています。磯野はイギリスに留学してクリスマスの習慣や文化を知っており、通りかかる外国人船員の目を楽しませる目的でツリーを飾ったそうです。
伝統的なキリスト教徒の多くは、アドベント(クリスマスの4週間前の日曜日から12月24日まで)が始まるとツリーの飾り付けを始めて、クリスマスをはさんで1月6日まで飾っておきます。1月6日は、聖書に描かれている「東方の三博士」がイエス・キリストを訪ねてその誕生を祝福した公現祭です。
日本では、クリスマスが終わると、一年最大のイベントである新年が待っています。そのためクリスマスツリーは、12月25日が終わるとすぐ片付けられます。お正月飾りを飾り付けるためです。
しかし他の多くの国では、クリスマスツリーは新年を過ぎてもしばらくの間、飾られたままになっています。
クリスマスツリーはその土地に合わせた素材を使い、その土地の文化に合わせた飾り付けが行われます。それぞれの家庭で飾られるツリーの特徴を、いくつかの国について紹介します。もしかしたら、もっと楽しいツリーを立てる国もあるかもしれません。
イギリスにはもともとツリーを飾る習慣がありませんでした。しかし、ビクトリア女王の夫君のアルバート公がドイツ出身だったことがきっかけで、19世紀半ばに王室経由でクリスマスツリーの習慣が一般にも広まりました。
イギリスのクリスマスツリーは、自由で華やかです。生の針葉樹の人気は根強いものがありますが、プラスチック製の人工のツリーもそれなりに普及しています。ツリーの飾りは星やピカピカ光るボールなどの良く知られたクリスマスモチーフの他に、ユニオンジャックや二階建てバスなどのさまざまな飾りを、それぞれの家庭の好みに従って思うままに飾り付けます。
オーストリアは「クリスマスツリーの発祥国」であるドイツの隣国ですが、ここにも独自の伝統があります。しかしオーストリアはカトリックの国なので、プロテスタントが発祥のクリスマスツリーの伝統が入ってきたのは、19世紀の初めと比較的近年です。
オーストリアでも、生のモミの木をツリーに使います。しかし飾り付けを始めるのは12月24日、つまりクリスマスの直前です。なぜそんなに遅く飾り付けを始めるのか、というと「本物のモミの木を使うので早くから飾ると葉が落ちて床が汚れてしまうから」という、実利的な理由からだと言われています。
オーストリア人がクリスマスツリーに関してこだわっていることがひとつあります。電球を使わず本物のキャンドルをツリーに立て、火をつけて楽しむというものです。もちろん火事の危険性があることは忘れていないでしょうが、彼らはそれも伝統の一部として受け入れているようです。
冬が厳しく太陽がほとんど登らない北欧諸国のクリスマスは、キリスト教と、それ以前にあった冬至の祭り(前掲の「ユール」)が合体した頃の、なごりを残しています。
例えば北欧諸国では、クリスマスのことを現代でも「ユール」と呼ぶことがあります。
クリスマスツリーの飾りの中に、昔から家の守り神として知られた小さな妖精の人形が登場するのも古い信仰の影響です。この妖精はスウェーデンではトムテ、デンマークやノルウェーではニッセ、フィンランドではトントゥと呼ばれ、現代のクリスマスではサンタクロースの助手として大活躍します。
冬が長いため細工物の伝統が発達している北欧では、ヒンメリと呼ばれるわら細工のモビールをツリーに飾ります。モビールのモチーフは太陽・月・雪の結晶などです。それ以外には、カラフルな木製の動物を飾ったりします。
概して北欧のクリスマスツリーは、他の地域ほど華やかではなくて、自然な温かみを大切にした素朴なものです。
インドのクリスマスも、最近は日本と同じように、キリスト教徒だけでなく国民全体を巻き込んだ、楽しいイベントになりつつあるようです。
しかしインドには、ヒマラヤなどの高地を除き、モミの木を手軽に手に入れる場所がありません、そのため多くの人々はマンゴーやバナナなど地元で手に入る木をクリスマスツリーに仕立てたり、人工のクリスマスツリーを使ったりして、お祝いをします。
南半球のオーストラリアでは、真夏にクリスマスを迎えますが、やはりクリスマスツリーを立ててお祝いします。
オーストラリアのクリスマスツリーの特徴は、飾り付けの色合いにあります。他の多くの地域では、ツリーはクリスマスカラーと呼ばれる赤・緑・金などの暖色系の色で飾り付けるのが一般的ですが、オーストラリアの場合、青や白といった寒色系の色でまとめるのが普通です。真夏なので当たり前かもしれませんが、雪の飾り付けも行いません。
星や靴下や丸いボールといったクリスマスツリーのオーナメントにも、以下に紹介するように、それぞれ特別な意味が込められています。
クリスマスツリーの一番上に飾る大きな星は、イエス・キリストが生まれた夜にベツレヘムの夜空に輝き、その誕生を知らせた特別な星(ベツレヘムの星)を意味しています。その星は、東方の三博士がイエス・キリストを訪ねる際の案内役になりました。
クリスマスツリーに飾られる天使のオーナメントは、天使ガブリエルを表しています。天使ガブリエルは、イエス・キリストを身ごもったマリアのところへやって来て、彼女が「神の子」を妊娠したことを伝えました。「受胎告知」です。
イルミネーションはキリストを象徴する「光」を表しています。
最初のころ、イルミネーションの役を果たしたのはロウソクの灯りでした。ただし当然ロウソクの火が原因の火事も多く、この頃はクリスマスツリーのそばに消火用の水がいつも準備されていた、という笑えない話も伝わっています。
クリスマスツリーに沢山ぶら下げられる、色とりどりの丸いボールです。このボールは蛇にそそのかされたアダムとイブがうっかり口にしてしまった「禁断の果実(知恵の木の実)」を象徴しています。知恵の木の実には「幸福」や「豊かな実り」の願いが込められています。
クリスマスツリーにぶら下げられたステッキ型の硬いキャンディの正式名称です。
このキャンディステッキには、「キャンディの硬さが固い信仰心を表す」「逆さまにするとJとなるのでジーザス(Jesus、イエス・キリストのこと)を意味する」「羊飼いが羊を導く杖を表し、イエス・キリストが人々を導いてくれるという願いが込められている」など、さまざまな意味が与えられています。
ジンジャーブレッドマン、つまり人型のジンジャークッキーも、大切なクリスマスツリーのオーナメントです。ジンジャー(生姜)は体を温め疾病予防にも効果あるとして、生姜を食べることを国民にすすめたイギリスのヘンリー8世をかたどって焼いたお菓子であると言われています
ミニサイズのリースは、ツリーに飾ることもできます。円形のリースは始まりも終わりもないため「永遠」のシンボルとされ、「神の永遠性」とも結びついています。特にヒイラギで作られたリースは、イエス・キリストが磔にされたとき頭へ載せていた「いばらの冠」を象徴しています。
一方、松ぼっくりには豊作や繁栄への願いが込められています。
クリスマスツリーに吊り下げる靴下の飾りは、サンタクロースのモデルとなった聖ニコラウスに関係しています。
娘を売らなければならないほど追い詰められていた貧しい一家を助けるため、聖ニコラウスは真夜中に、その家の窓(一説には煙突)から金貨を投げ入れました。するとその金貨は一家が暖炉に吊るしていた靴下の中に無事に入り、家族は悲惨な運命から逃れられました。
このエピソードがきっかけで、「クリスマスイブの夜に靴下を下げておくと、翌朝にはサンタクロースがプレゼントを入れてくれている」という言い伝えが生まれると共に、靴下の型をしたオーナメントも誕生したのです。
イエス・キリストの誕生を人々に知らせたベルを意味しています。喜びの象徴として、クリスマスのオーナメントに欠かすことはできません。
世界のクリスマスツリーの「本家」は宗教改革期のドイツです。ドイツでクリスマスツリーを立てる習慣が広まり、やがて世界中に広まって行きました。ちなみに日本人による日本最初のクリスマスツリーは、明治屋のディスプレイです。
世界に広がって行ったクリスマスツリーは、それぞれの地域の地理的条件や住んでいる人々の文化によって、独自のアレンジが加えられます。
外国にルーツがある家庭をクリスマスに訪問する機会があったら、日本と海外のクリスマスツリーを比べてみるのも面白いかもしれません。
クリスマスツリーは12月の風物詩として、私たちの頭にしっかりとインプットされています。しかし、キリスト教に関連してクリスマスが西洋から日本にやって来たことと、クリスマスツリーはそのシンボルだということ以外、私たちはクリスマスツリーについて、ほとんど何も知りません。
そこで今回は、クリスマスツリーのルーツや意味について、いろいろと探ってみることにします。
目次
クリスマスツリーを飾る理由
なぜクリスマスにはクリスマスツリーを飾るのでしょうか?それは、イエス・キリストが生まれたことを祝福するためです。ツリーは「平和・愛・希望・喜び」といったクリスマスの精神の象徴として、家庭や公共の広場など、さまざまな場所に飾られます。
クリスマスツリーの由来
クリスマスツリーは、キリスト教だけに起源を持っている訳ではありません。
宣教師がヨーロッパ全土へキリスト教を布教する過程で、大昔の信仰とキリスト教の教えが混じり合い、クリスマスツリーが生まれ、飾られるようになったようです。
大昔の信仰の中で、クリスマスツリーの誕生に最も影響を与えたのは、北ヨーロッパに住んでいた人々の冬至の祭りである「ユール」だといわれています。彼らは、樫の木をユールの祭祀に使いました。樫やモミの木のような常緑樹は、寒さの厳しい冬でも青々と葉を茂らせることから、「生命力の象徴」として彼らの信仰の対象になっていたのです。
この「ユール」の樫の木がモミの木に変化して、クリスマスと合体して祝われるようになったようです。
「オーディンと樫の木」という神話が、ユールの樫の木とクリスマスのモミの木のつながりを良く説明しています。北ヨーロッパに足を踏み入れたキリスト教の宣教師がユールに遭遇し、祭りを止めるためユールの樫の木を切ったところ、切ったすぐそばからモミの木が生えてきた、という物語です。
クリスマスツリーの持つ意味
常緑樹が使われることが多いクリスマスツリーは「永遠の命」を表しています。聖書に登場する「知恵の木」(アダムとイブが蛇にそそのかされて木の実をかじり、楽園を追放されるきっかけとなった)を象徴しているという説もあります。
常緑樹の中でも特にモミの木がクリスマスツリーとして好まれるのは、モミの木が横から見ると三角形であるためです。昔のキリスト教の宣教師は、この形が「三位一体」というキリスト教の重要な教義の象徴であると考えました。
しかし、あまり難しく考えるべきではないのかもしれません。クリスマスツリーは「平和・愛・希望・喜び」といったクリスマスの精神を表しています。ツリーを皆で協力して飾り付けることは、家族の団結を示しています。これはキリスト教徒だけのものではありません。
クリスマスツリーの歴史
ところで現在の、私たちが良く知っているクリスマスツリーは、どのように誕生したのでしょうか?それを知るためには、16世紀のドイツを訪ねてみる必要があります。
クリスマスツリーの誕生
クリスマスツリーのルーツはドイツです。16世紀の宗教改革の時代、プロテスタント諸派の創始者であるマルティン・ルターが、常緑樹とそのすき間から見える星々の美しさに感動して装飾を施したツリーを教会に設置させ、それがきっかけとなって広まりました。
ルターが関係しているおかげで、クリスマスツリーの習慣は、まずプロテスタントの信徒の家庭に広がりました。しかし、やがてカトリック教徒の教会や家庭でもツリーを飾るようになり、ドイツから世界中へと広まって行きました。
日本でのクリスマスツリーの始まり
日本で最初にツリーが飾られたのは、1860年頃、当時は横浜にあったプロイセン王国公館(現在のドイツ大使館に相当)で開かれたクリスマスパーティのことでした。当時の公使が、天井まで届くような木を手に入れ、飾りは日本で入手できる菓子や果物で手作りしたのだそうです。
日本人の手による日本初のクリスマスツリーはいつ登場したのでしょうか?あるミッション・スクールのクリスマスパーティで、1874年に披露されたという説もありますが、一般的には「明治屋」の創業者である磯野計が1886年に横浜の店舗で飾ったものがそれだ、と言われています。磯野はイギリスに留学してクリスマスの習慣や文化を知っており、通りかかる外国人船員の目を楽しませる目的でツリーを飾ったそうです。
クリスマスツリーを飾る時期
伝統的なキリスト教徒の多くは、アドベント(クリスマスの4週間前の日曜日から12月24日まで)が始まるとツリーの飾り付けを始めて、クリスマスをはさんで1月6日まで飾っておきます。1月6日は、聖書に描かれている「東方の三博士」がイエス・キリストを訪ねてその誕生を祝福した公現祭です。
日本では、クリスマスが終わると、一年最大のイベントである新年が待っています。そのためクリスマスツリーは、12月25日が終わるとすぐ片付けられます。お正月飾りを飾り付けるためです。
しかし他の多くの国では、クリスマスツリーは新年を過ぎてもしばらくの間、飾られたままになっています。
世界各地のクリスマスツリー事情
クリスマスツリーはその土地に合わせた素材を使い、その土地の文化に合わせた飾り付けが行われます。それぞれの家庭で飾られるツリーの特徴を、いくつかの国について紹介します。もしかしたら、もっと楽しいツリーを立てる国もあるかもしれません。
イギリス
イギリスにはもともとツリーを飾る習慣がありませんでした。しかし、ビクトリア女王の夫君のアルバート公がドイツ出身だったことがきっかけで、19世紀半ばに王室経由でクリスマスツリーの習慣が一般にも広まりました。
イギリスのクリスマスツリーは、自由で華やかです。生の針葉樹の人気は根強いものがありますが、プラスチック製の人工のツリーもそれなりに普及しています。ツリーの飾りは星やピカピカ光るボールなどの良く知られたクリスマスモチーフの他に、ユニオンジャックや二階建てバスなどのさまざまな飾りを、それぞれの家庭の好みに従って思うままに飾り付けます。
オーストリア
オーストリアは「クリスマスツリーの発祥国」であるドイツの隣国ですが、ここにも独自の伝統があります。しかしオーストリアはカトリックの国なので、プロテスタントが発祥のクリスマスツリーの伝統が入ってきたのは、19世紀の初めと比較的近年です。
オーストリアでも、生のモミの木をツリーに使います。しかし飾り付けを始めるのは12月24日、つまりクリスマスの直前です。なぜそんなに遅く飾り付けを始めるのか、というと「本物のモミの木を使うので早くから飾ると葉が落ちて床が汚れてしまうから」という、実利的な理由からだと言われています。
オーストリア人がクリスマスツリーに関してこだわっていることがひとつあります。電球を使わず本物のキャンドルをツリーに立て、火をつけて楽しむというものです。もちろん火事の危険性があることは忘れていないでしょうが、彼らはそれも伝統の一部として受け入れているようです。
北欧諸国(スウェーデン・ノルウェー・デンマーク・アイスランド・フィンランド)
冬が厳しく太陽がほとんど登らない北欧諸国のクリスマスは、キリスト教と、それ以前にあった冬至の祭り(前掲の「ユール」)が合体した頃の、なごりを残しています。
例えば北欧諸国では、クリスマスのことを現代でも「ユール」と呼ぶことがあります。
クリスマスツリーの飾りの中に、昔から家の守り神として知られた小さな妖精の人形が登場するのも古い信仰の影響です。この妖精はスウェーデンではトムテ、デンマークやノルウェーではニッセ、フィンランドではトントゥと呼ばれ、現代のクリスマスではサンタクロースの助手として大活躍します。
冬が長いため細工物の伝統が発達している北欧では、ヒンメリと呼ばれるわら細工のモビールをツリーに飾ります。モビールのモチーフは太陽・月・雪の結晶などです。それ以外には、カラフルな木製の動物を飾ったりします。
概して北欧のクリスマスツリーは、他の地域ほど華やかではなくて、自然な温かみを大切にした素朴なものです。
インド
インドのクリスマスも、最近は日本と同じように、キリスト教徒だけでなく国民全体を巻き込んだ、楽しいイベントになりつつあるようです。
しかしインドには、ヒマラヤなどの高地を除き、モミの木を手軽に手に入れる場所がありません、そのため多くの人々はマンゴーやバナナなど地元で手に入る木をクリスマスツリーに仕立てたり、人工のクリスマスツリーを使ったりして、お祝いをします。
オーストラリア
南半球のオーストラリアでは、真夏にクリスマスを迎えますが、やはりクリスマスツリーを立ててお祝いします。
オーストラリアのクリスマスツリーの特徴は、飾り付けの色合いにあります。他の多くの地域では、ツリーはクリスマスカラーと呼ばれる赤・緑・金などの暖色系の色で飾り付けるのが一般的ですが、オーストラリアの場合、青や白といった寒色系の色でまとめるのが普通です。真夏なので当たり前かもしれませんが、雪の飾り付けも行いません。
クリスマスオーナメントのそれぞれの意味
星や靴下や丸いボールといったクリスマスツリーのオーナメントにも、以下に紹介するように、それぞれ特別な意味が込められています。
星
クリスマスツリーの一番上に飾る大きな星は、イエス・キリストが生まれた夜にベツレヘムの夜空に輝き、その誕生を知らせた特別な星(ベツレヘムの星)を意味しています。
その星は、東方の三博士がイエス・キリストを訪ねる際の案内役になりました。
天使
クリスマスツリーに飾られる天使のオーナメントは、天使ガブリエルを表しています。天使ガブリエルは、イエス・キリストを身ごもったマリアのところへやって来て、彼女が「神の子」を妊娠したことを伝えました。「受胎告知」です。
イルミネーション
イルミネーションはキリストを象徴する「光」を表しています。
最初のころ、イルミネーションの役を果たしたのはロウソクの灯りでした。ただし当然ロウソクの火が原因の火事も多く、この頃はクリスマスツリーのそばに消火用の水がいつも準備されていた、という笑えない話も伝わっています。
オーナメントボール
クリスマスツリーに沢山ぶら下げられる、色とりどりの丸いボールです。このボールは蛇にそそのかされたアダムとイブがうっかり口にしてしまった「禁断の果実(知恵の木の実)」を象徴しています。知恵の木の実には「幸福」や「豊かな実り」の願いが込められています。
キャンディケイン
クリスマスツリーにぶら下げられたステッキ型の硬いキャンディの正式名称です。
このキャンディステッキには、「キャンディの硬さが固い信仰心を表す」「逆さまにするとJとなるのでジーザス(Jesus、イエス・キリストのこと)を意味する」「羊飼いが羊を導く杖を表し、イエス・キリストが人々を導いてくれるという願いが込められている」など、さまざまな意味が与えられています。
ジンジャーブレッドマン
ジンジャーブレッドマン、つまり人型のジンジャークッキーも、大切なクリスマスツリーのオーナメントです。
ジンジャー(生姜)は体を温め疾病予防にも効果あるとして、生姜を食べることを国民にすすめたイギリスのヘンリー8世をかたどって焼いたお菓子であると言われています
リースや松ぼっくり
ミニサイズのリースは、ツリーに飾ることもできます。円形のリースは始まりも終わりもないため「永遠」のシンボルとされ、「神の永遠性」とも結びついています。特にヒイラギで作られたリースは、イエス・キリストが磔にされたとき頭へ載せていた「いばらの冠」を象徴しています。
一方、松ぼっくりには豊作や繁栄への願いが込められています。
靴下
クリスマスツリーに吊り下げる靴下の飾りは、サンタクロースのモデルとなった聖ニコラウスに関係しています。
娘を売らなければならないほど追い詰められていた貧しい一家を助けるため、聖ニコラウスは真夜中に、その家の窓(一説には煙突)から金貨を投げ入れました。するとその金貨は一家が暖炉に吊るしていた靴下の中に無事に入り、家族は悲惨な運命から逃れられました。
このエピソードがきっかけで、「クリスマスイブの夜に靴下を下げておくと、翌朝にはサンタクロースがプレゼントを入れてくれている」という言い伝えが生まれると共に、靴下の型をしたオーナメントも誕生したのです。
ベル
イエス・キリストの誕生を人々に知らせたベルを意味しています。喜びの象徴として、クリスマスのオーナメントに欠かすことはできません。
クリスマスツリーの秘密を探って
世界のクリスマスツリーの「本家」は宗教改革期のドイツです。ドイツでクリスマスツリーを立てる習慣が広まり、やがて世界中に広まって行きました。ちなみに日本人による日本最初のクリスマスツリーは、明治屋のディスプレイです。
世界に広がって行ったクリスマスツリーは、それぞれの地域の地理的条件や住んでいる人々の文化によって、独自のアレンジが加えられます。
外国にルーツがある家庭をクリスマスに訪問する機会があったら、日本と海外のクリスマスツリーを比べてみるのも面白いかもしれません。