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この世に無事生まれてきてくれた赤ちゃん。その赤ちゃんが、神様に初めてご挨拶する大切な行事が、このお宮参りです。
「神様、無事この子が生まれました。どうかこの先健やかな日々を送れますように」さまざまに意味や様式を変えながら、赤ちゃんを囲む行事として、この国に長く伝わってきた風習です。
お宮参りが行われるのは、だいたい生後1ヶ月。ようやく赤ちゃんとの生活に慣れてきたころですよね。初めての長い外出という赤ちゃんも多く、ママは緊張してしまいそうです。
ここでは、ちょっと安心できるように、お宮参りとはどのようなものなのかをみていきましょう。事前に準備しておけることや、当日の流れ、マナーについても解説しています。
お宮参りはいったいどのような行事なのでしょうか。その背景と意味を知ることで、少し心持ちが変わってきそうですよ。
お宮参りの始まりは、鎌倉時代まで遡るともいわれ、古くは「産土詣(うぶすなもうで)」と呼ばれました。
医療が進んでいなかった時代、乳幼児の死亡率は高く、母子の命に関わるお産を無事に終えることはもとより、子どもが健やかに成長し、成人を迎えるのも大変だったといいます。
「ありがとうございます」「どうぞよろしくお願いします」。赤ちゃんが無事に生まれてきてくれたこと、そしてこの先の健やかな成長を祈って、このような風習が生まれたのでしょう。
「お宮参り」という呼び方は、室町幕府の三代将軍足利義満の誕生の際、大掛かりなお参り行事が執り行われたことをきっかけに、庶民にも広く取り入れられるようになりました。
さらに、親戚などへの挨拶回りを行う風習は、江戸時代に生まれたといわれています。四代将軍徳川家光のお宮参りで、お参りの帰り道に重臣である井伊直孝の屋敷に立ち寄ったことが、武家へそして庶民に伝わり、慣習として定着しました。
現代では、赤ちゃんの健やかな成長を願う行事として定着しているお宮参り。時代を辿っていくと、また違った意味も込められていたようです。
お宮参りは、産土神(うぶすながみ)様にご挨拶をし、子どもを生涯にわたって守護してもらうことをお願いする。また、氏神(うじがみ)様にご挨拶し、氏子の一員として受け入れてもらう儀式としての意味がありました。
産土神とは、赤ちゃんが生まれる前から人生を終えた後まで、どこにいても守ってくださる、生まれた土地の神様のことをいいます。また、氏神とは、血縁のある氏族が祀る祖神のことをさします。このお宮参りは、その神を信仰し祭祀に参加する氏子の仲間入りをさせていただく「氏子入り」の意味合いも持ち合わせているのです。
さらに、こんな意味もありました。かつてお産は生死に関わり、出血をともなうため「けがれ」とみなされていました。そのため、出産から数えて、子は30日ほど、産婦は75日間、「産の忌(さんのいみ)」という、忌に服す期間があったといいます。
お宮参りは、赤ちゃんのけがれを祓う、忌明けの儀式という側面もありました。地域によっては、古くからの意味合いを大切にしたお宮参りが残る場所もあるでしょう。
かつてお宮参りは、ご祈祷の後、地域の一員として受け入れてもらうため、ご近所・親類に赤ちゃんの顔見世に回り、その後、家族や親族でお祝いの膳を囲みました。
現代のお宮参りは、暮らしの環境も変化し、より家族内でのイベントとして大切にするおうちが増えています。まだ小さな赤ちゃんやママの体調も考えて、以下のような流れが一般的。
次の項目でこのお宮参りの流れについて、詳細を説明していきますね。
それでは、お宮参り当日にやることを少し詳しくみていきましょう。
ご祈祷とは、通常の参拝に比べ、より丁寧なお参りの様式をいいます。社殿に上がって、神職の方に祝詞(のりと)をあげていただき、神様にお願いごとをお伝えする儀式をさします。
祈祷の際は、神様に赤ちゃんが無事に生まれてきてくれたことへの感謝と、これからの健やかな成長を見守っていただくようお願いをします。
このご祈祷は、絶対に受けなければならないということはありません。ご家族の都合、赤ちゃんやママの体調などをみて、いつも通りの参拝で、感謝と祈りを伝えることもできます。
ご祈祷を終えたら、家族が集まって記念の写真を残したいというおうちも多いですね。写真撮影は、どんな写真を記念に残したいのかによっていくつかの方法があります。
自然なスナップで、とお考えなら親族のどなたかにカメラマンをお願いするのもよいかもしれません。また、出張撮影をしてくれるカメラマンにお願いすると、クオリティの高い、自然な表情の家族の様子を撮影してくれるでしょう。
写真館やスタジオで撮影する場合は、本格的な記念写真として、台紙や額をつけてもらうこともできます。
お宮参りを終えた後、両家やお宮参りに参加してもらった方を交えて食事会を行うことも。ご家族が集まる貴重な機会、出産を終えて赤ちゃんとの暮らしに慣れるのに大変なママやパパも、少しリラックスできる大切な時間になるのではないでしょうか。
かつては自宅でお祝い膳を用意したものですが、手間やスケジュールを考えて、最近ではレストランなどを選ぶおうちが多いようです。
ご自宅での食事会をお考えなら、仕出しをお願いしたり、ケータリングサービスを予約したりするのも負担がなく便利かもしれません。
まず、お宮参りはどこで行うのがよいのでしょう。最近では、ご両親にゆかりのある神社や有名な神社などでお宮参りを行うおうちも増えているとのこと。ですが一般的には、赤ちゃんが生まれた土地の神社や、これから育っていく土地にある神社に参拝するのがよいとされています。
赤ちゃんをこれから守っていただくようお願いをし、氏子の一員として受け入れていただくということを考えると、お住まいの一番近くにある氏神様に行くのがおすすめです。
また、おうちによってはお宮参りではなく「初参り」といい、菩提寺(ぼだいじ)で仏さま・ご先祖さまに赤ちゃんのご加護をお願いするということもあるかもしれません。
お宮参りは、お住まいの場所によって、地域に根付いた昔ながらの行事であることも多く、おうちによってさまざまです。困ったら、ご両家や地域の方に相談してみるのもよいでしょう。
お宮参りで緊張してしまいそうなのは、なんといってもご祈祷ですよね。なんだか決まりごとが多くて心配、という方も多いのではないでしょうか。どのような流れなのかをだいたい知っておけば、慌てずにすみます。
神職の方も、赤ちゃんを連れてのご祈祷には慣れているので、あまり気を張らなくても大丈夫。ご祈祷の時に、大きな太鼓の音で大泣きしてしまったなんていうことも、あとから思い出して思わず笑顔になる幸せな風景です。
受付を済ませ、神職の方の案内があるまでは、待合室で待機しています。名前を呼ばれ、神職の方について、並んで社殿に昇ります。
神様をお招きするにあたって、ご祈祷を受ける人々の心身の穢れを祓い清める準備の儀式ことをいいます。神職が、祓詞(はらえことば)を奏上し、榊の枝や白木の棒に紙垂(しで)をつけた、大麻(おおぬさ)や祓串(はらえぐし)を振って、心身を祓い清めます。頭を下げた姿勢でお祓いを受けましょう。
神様に奏上する言葉「祝詞」を、神職の方が読み上げます。この祝詞奏上の間も、頭を下げた姿勢で臨みます。
神職の方の案内で、ご神前に進み願いを込めて玉串を献げます。玉串は榊などの常緑樹の小枝に紙垂をつけたもので、神様と参拝する人との仲立ちをしてくれるお供えものでもあります。玉串を捧げる際の作法を紹介しますね。
神職の方からのご挨拶があり、御神酒をいただきます。お母さんや運転が控えている方は口をつける仕草のみで大丈夫です。
ちなみに、神社によっても異なりますが、初穂料は受付の段階でお渡しすることが多いようです。
まずお宮参りで悩むのが、日取りをいつにするかということでしょう。
古くからのしきたりでは、生まれた日を1日目として数え、男の子は生後31〜32日目、女の子は32〜33日目にお宮参りを行うとされていました。最近はあまりこだわらず、おおよそ赤ちゃんが生まれて1ヶ月頃に計画するおうちが多いようです。
まだデリケートな赤ちゃんとお母さんの体調を第一に考えて、日取りを話し合うのがよいでしょう。
日取りを決めるにあたって、大安や先勝といった六曜を気にする方も多いと思います。ただ、六曜は中国で生まれたその日の吉凶を占う指標で、日本古来の神道とは関係がないため、本来は気にしなくてもよいのです。
とはいえ、暮らしに根付いた六曜は、やはり気になるという方もいらっしゃると思います。気になる方は、縁起のよい、お祝いに向いたお日柄を選ぶとよいでしょう。
六曜については、こちらの記事でさらに詳しく知ることができますよ。
記事はこちら
他にも、暦の上で縁起のよい吉日とされているのが、一粒万倍日や天赦日です。一粒万倍日は「一粒の籾が一万倍になり豊かな稲穂として実る」という意味を持ち、物事を始めるのによい日とされています。天赦日は「天がこの世のすべての罪を許してくれる日」という意味。暦の上で最上の吉日とされている日です。
あまりに寒さが厳しい時期は少し暖かくなってから、たとえば「百日祝い」と併せて行ってはどうでしょう。また暑い時期には、午前中早く涼しい時を選ぶなど、柔軟に考えてみましょう。
失礼がなく、落ち着いてお宮参りができるよう、マナーや決まりごとについてもみていきましょう。
ここからは、お宮参りに行く際の赤ちゃんやご家族の服装について紹介していきます。
赤ちゃんは、真っ白で艶やかな絹の白羽二重の内着(長襦袢)を着せ、「掛け着」や「産着」、「祝い着」と呼ばれる晴れ着を覆い掛けるのが、伝統的な正装とされています。
● 男の子の掛け着
黒や紺、グレー、緑など。鷹や虎、兜などが描かれた強くたくましく、勇壮な印象の柄。
● 女の子の掛け着
ピンクや赤、クリーム色、白など。花々や蝶、鈴、手毬などが描かれた華やかで美しい印象の柄。
最近は、内着の代わりにベビードレスを着るスタイルがほとんどになりました。また、フォーマルな印象のロンパースを着せるというおうちもあります。
まだ赤ちゃんは体温調節ができず外気に左右されやすいことも考えて、肌着などで調整するようにしましょう。
大人の服装については、はっきりとした決まりごとなどはありませんが、神社という神聖な場所で行われ、ご祈祷を受けることを考慮した服装にしましょう。カジュアルすぎたり、肌の露出が多い服装は避けるようにします。
和装の場合は、訪問着や色無地、付け下げなどの控えめな着物が適しています。洋装なら、落ち着いた色合いのワンピースやスーツがよいでしょう。
授乳したいママは、フォーマルな印象で授乳が可能なセットアップなどを候補に入れるとよいですね。
男性はやはりスーツが主流です。礼服がベストですが、黒や紺、グレーなどのスーツに白系のシャツと、派手すぎないネクタイを選ぶのがよいでしょう。
両家が参加してくれる場合は、あまり服装に差が出ないよう、あらかじめ話し合っておくことも大切です。
かつてのお宮参りは、赤ちゃんとパパ、父方の祖父母、と参加者が決まっていたといいます。産婦は、「産の忌」が75日間とされていたため、ママは参加しなかったのだそう。赤ちゃんを抱くのが父方の祖母というしきたりがあるのは、その風習が残ったためです。
現代では古い風習にはこだわらず、ママも参加したり、抱っこはママがというおうちも多いですね。ほかにもママパパの兄弟や、親しくしている親戚を呼んで、賑やかにお祝いするというおうちも増えています。
ご祈祷を受ける場合「初穂料」を用意する必要があります。5,000〜10,000円ほどが相場ですが、お参りする神社によっては金額が決まっている場合がありますので、事前に確認しておきましょう。お宮参りののし袋は紅白で、水引は蝶結びになっているものを選びます。上段には「御初穂料」、下段には赤ちゃんのフルネームを書きましょう。
のし袋の水引には、それぞれ意味が込められています。何度もあってうれしいことには「蝶結び」、一度きりであって欲しいことの時は「結び切り」や「あわじ結び」ののし袋を使うのです。
当日スムーズにお宮参りが進むよう、事前に準備できることがいくつかあります。また、持ち物についても確認しましょう。
ご祈祷をお願いする場合、当日受け付けてくれる神社もあります。ただ、その日に婚礼が入っていたり、他のご祈祷の予約が入っていたりすると、控え室で長く待たなくてはなりません。それでは赤ちゃんがかわいそうですね。
日取りが決まったら、神社に問い合わせてご祈祷を予約するのがおすすめです。ご祈祷の時間が定まれば、おおよそ1日の流れを計画することができますよ。
予約の際に、「初穂料」についても決まった金額があるか、心配なら相場なども確認しておくと安心です。
ご祈祷の予約ができれば、だいたいの記念撮影時間もわかります。写真撮影も予約しておくと、写真撮影前に赤ちゃんにミルクをあげたりといった配慮もできます。
スタジオは、インターネットなどから簡単に予約することができます。また、出張撮影を受け付けているスタジオもありますので、どんな写真を残したいかによって、検討してみるのもよいですね。
この食事会は、絶対に開かなければならないというものではありません。赤ちゃんやママの体調を考慮して、決めましょう。両家が揃うこと、あらたまって感謝の気持ちを伝える機会があまりないというなら、よい機会にもなります。
また、この1ヶ月あまり、赤ちゃんのお世話を頑張ったママパパへのご褒美の時間にもなるのではないでしょうか。赤ちゃんが泣いてしまっても、おじいちゃんおばあちゃんが喜んで抱っこしてくれるでしょう。
お店を利用する場合、予約は必須です。予約の際に「お宮参りの食事会として」と一言添えると、赤ちゃんと一緒であることを考慮した席を用意してくれるはず。メニューについても、お祝いのお料理の相談にものってくれるでしょう。
●ベビー用品
●その他
おむつのセット・ミルクの道具などは、必要になったらさっと取り出せるように、それぞれ小分けにして準備しておくと便利です。荷物は多くなってしまいそうですが、まだデリケートな赤ちゃんのために、必要なものはしっかりとチェックしましょう。
「お宮参り」という呼び方以外にも「初参り」や「お礼参り」という言葉が使われることがあります。
一般的に、神社に行く場合は「お宮参り」、お寺で行う場合は「初参り」「お礼参り」と呼び分けることが多いようです。
「初参り」「お礼参り」もお宮参りと同じく、赤ちゃんの無事の出産を感謝し、健やかな成長を願う行事です。ご本尊の観音様にご挨拶し、ご加護をお願いします。
日取りの決め方や服装など、お宮参りと違いはほとんどありません。大きなお寺では、初穂料が決められているところもありますので、事前に確認してみましょう。
昔から、お宮参りの際には縁起をかつぐ小物を揃え、産着の結び紐に結んでお参りしていたのだそう。赤ちゃんが健やかに、そして幸せに育っていくようにと願いが込められた小物や、おすすめの商品をご紹介いたします。
江戸時代から伝わる郷土玩具で、まんまるな目をした、かわいい子犬の張り子人形。犬はお産がとても軽いとされ、また、生まれた子もすくすくと育ちます。犬張子はこれにあやかり、安産や子どもの健やかな成長を願うお守りとして伝えられています。
また、狛犬が原型になったといわれており、厄除けや魔除けの意味も込められているのだそう。
漢数字の八のように、ゆったりと広がる形から、「末広」とも呼ばれる扇子。古くから、末広がり・繁栄につながるとても縁起のよい物としてお祝いの場面では欠かせない小物です。子どもがこの先、たくましく、豊かな人生を送るようにという願いが込められています。
昔から、赤ちゃんをあやす玩具として親しまれてきました。雅楽で使われる振鼓(ふりつづみ)に似せたもので、柄のついた小さな太鼓の両側に、糸で鈴や玉が結び付けられています。
振ると「てんてん」とかわいい音が響き、その音は悪霊や災難を払ってくれる力があるとされてきました。
また、丸い太鼓に、玉や角のない柄の形状、また、太鼓の両面を鳴らすことから、「まあるく優しい子に育て」「表裏のなく、素直に育て」という願いが込められています。
お宮参りや七五三など、子どもの成長の節目には神社に訪れる機会は何度かあることだとおもいます。そんな時、思い出の記録として御朱印をいただく方も少なくないはず。
この度、家族の宝になるようにと願いを込めて「成長詣 御朱印帳」をおつくりしました。子どもの成長記録として、御朱印と一緒に手形や思い出のメッセージを残してみるのはいかがでしょうか?
生まれたばかりの赤ちゃんとの暮らしの中で行われるお宮参り。赤ちゃんのお世話をしながらの準備は、少し忙しくて大変かもしれません。
ここまでご紹介してきた伝統的な様式やマナーを知った上で、あまり無理をせず、柔軟に自分たちの暮らしに合ったお宮参りを計画してみてはいかがでしょうか。
伝統の行事は、込められた意味を大切にしながら、その時代時代で少しずつしなやかに形を変えてきたからこそ、長く受け継がれてきました。
これから、赤ちゃんは一度きりの「初めて」をたくさん握りしめて大きくなっていきますね。
お宮参りも一度きりのとても大切な時間。無理をしない自分たちの形で、赤ちゃんをお祝いしましょう。どうかママもパパも、おおらかな気持ちで、笑った顔で!
この世に無事生まれてきてくれた赤ちゃん。その赤ちゃんが、神様に初めてご挨拶する大切な行事が、このお宮参りです。
「神様、無事この子が生まれました。どうかこの先健やかな日々を送れますように」
さまざまに意味や様式を変えながら、赤ちゃんを囲む行事として、この国に長く伝わってきた風習です。
お宮参りが行われるのは、だいたい生後1ヶ月。ようやく赤ちゃんとの生活に慣れてきたころですよね。
初めての長い外出という赤ちゃんも多く、ママは緊張してしまいそうです。
ここでは、ちょっと安心できるように、お宮参りとはどのようなものなのかをみていきましょう。事前に準備しておけることや、当日の流れ、マナーについても解説しています。
目次
お宮参りとは
お宮参りはいったいどのような行事なのでしょうか。
その背景と意味を知ることで、少し心持ちが変わってきそうですよ。
お宮参りの始まり
お宮参りの始まりは、鎌倉時代まで遡るともいわれ、古くは「産土詣(うぶすなもうで)」と呼ばれました。
医療が進んでいなかった時代、乳幼児の死亡率は高く、母子の命に関わるお産を無事に終えることはもとより、子どもが健やかに成長し、成人を迎えるのも大変だったといいます。
「ありがとうございます」「どうぞよろしくお願いします」。赤ちゃんが無事に生まれてきてくれたこと、そしてこの先の健やかな成長を祈って、このような風習が生まれたのでしょう。
「お宮参り」という呼び方は、室町幕府の三代将軍足利義満の誕生の際、大掛かりなお参り行事が執り行われたことをきっかけに、庶民にも広く取り入れられるようになりました。
さらに、親戚などへの挨拶回りを行う風習は、江戸時代に生まれたといわれています。
四代将軍徳川家光のお宮参りで、お参りの帰り道に重臣である井伊直孝の屋敷に立ち寄ったことが、武家へそして庶民に伝わり、慣習として定着しました。
お宮参りのもつ意味
現代では、赤ちゃんの健やかな成長を願う行事として定着しているお宮参り。
時代を辿っていくと、また違った意味も込められていたようです。
●神様へのご挨拶として
お宮参りは、産土神(うぶすながみ)様にご挨拶をし、子どもを生涯にわたって守護してもらうことをお願いする。また、氏神(うじがみ)様にご挨拶し、氏子の一員として受け入れてもらう儀式としての意味がありました。
産土神とは、赤ちゃんが生まれる前から人生を終えた後まで、どこにいても守ってくださる、生まれた土地の神様のことをいいます。
※古くは別々の存在であった産土神と氏神ですが、時代が経つにつれ、住んでいる土地の神様を氏神様と呼ぶようになりました。また、氏神とは、血縁のある氏族が祀る祖神のことをさします。
このお宮参りは、その神を信仰し祭祀に参加する氏子の仲間入りをさせていただく「氏子入り」の意味合いも持ち合わせているのです。
そのため、現代では明確に区別することなく、氏神様は産土神としての意味も含めて使われることがほとんどです。
●けがれを祓う忌明けの儀式として
さらに、こんな意味もありました。
かつてお産は生死に関わり、出血をともなうため「けがれ」とみなされていました。そのため、出産から数えて、子は30日ほど、産婦は75日間、「産の忌(さんのいみ)」という、忌に服す期間があったといいます。
お宮参りは、赤ちゃんのけがれを祓う、忌明けの儀式という側面もありました。
地域によっては、古くからの意味合いを大切にしたお宮参りが残る場所もあるでしょう。
現代におけるお宮参りの流れ
かつてお宮参りは、ご祈祷の後、地域の一員として受け入れてもらうため、ご近所・親類に赤ちゃんの顔見世に回り、その後、家族や親族でお祝いの膳を囲みました。
現代のお宮参りは、暮らしの環境も変化し、より家族内でのイベントとして大切にするおうちが増えています。
まだ小さな赤ちゃんやママの体調も考えて、以下のような流れが一般的。
次の項目でこのお宮参りの流れについて、詳細を説明していきますね。
お宮参りでは何をする?
それでは、お宮参り当日にやることを少し詳しくみていきましょう。
ご祈祷
ご祈祷とは、通常の参拝に比べ、より丁寧なお参りの様式をいいます。社殿に上がって、神職の方に祝詞(のりと)をあげていただき、神様にお願いごとをお伝えする儀式をさします。
祈祷の際は、神様に赤ちゃんが無事に生まれてきてくれたことへの感謝と、これからの健やかな成長を見守っていただくようお願いをします。
このご祈祷は、絶対に受けなければならないということはありません。
ご家族の都合、赤ちゃんやママの体調などをみて、いつも通りの参拝で、感謝と祈りを伝えることもできます。
記念撮影
ご祈祷を終えたら、家族が集まって記念の写真を残したいというおうちも多いですね。
写真撮影は、どんな写真を記念に残したいのかによっていくつかの方法があります。
自然なスナップで、とお考えなら親族のどなたかにカメラマンをお願いするのもよいかもしれません。
また、出張撮影をしてくれるカメラマンにお願いすると、クオリティの高い、自然な表情の家族の様子を撮影してくれるでしょう。
写真館やスタジオで撮影する場合は、本格的な記念写真として、台紙や額をつけてもらうこともできます。
食事会
お宮参りを終えた後、両家やお宮参りに参加してもらった方を交えて食事会を行うことも。
ご家族が集まる貴重な機会、出産を終えて赤ちゃんとの暮らしに慣れるのに大変なママやパパも、少しリラックスできる大切な時間になるのではないでしょうか。
かつては自宅でお祝い膳を用意したものですが、手間やスケジュールを考えて、最近ではレストランなどを選ぶおうちが多いようです。
ご自宅での食事会をお考えなら、仕出しをお願いしたり、ケータリングサービスを予約したりするのも負担がなく便利かもしれません。
お宮参りはどこで行うのがよい?
まず、お宮参りはどこで行うのがよいのでしょう。
最近では、ご両親にゆかりのある神社や有名な神社などでお宮参りを行うおうちも増えているとのこと。
ですが一般的には、赤ちゃんが生まれた土地の神社や、これから育っていく土地にある神社に参拝するのがよいとされています。
赤ちゃんをこれから守っていただくようお願いをし、氏子の一員として受け入れていただくということを考えると、お住まいの一番近くにある氏神様に行くのがおすすめです。
また、おうちによってはお宮参りではなく「初参り」といい、菩提寺(ぼだいじ)で仏さま・ご先祖さまに赤ちゃんのご加護をお願いするということもあるかもしれません。
※菩提寺とは…先祖代々のお墓があり、法要などをお願いする家族とご縁の深いお寺のこと。お宮参りは、お住まいの場所によって、地域に根付いた昔ながらの行事であることも多く、おうちによってさまざまです。困ったら、ご両家や地域の方に相談してみるのもよいでしょう。
ご祈祷の流れ
お宮参りで緊張してしまいそうなのは、なんといってもご祈祷ですよね。なんだか決まりごとが多くて心配、という方も多いのではないでしょうか。
どのような流れなのかをだいたい知っておけば、慌てずにすみます。
神職の方も、赤ちゃんを連れてのご祈祷には慣れているので、あまり気を張らなくても大丈夫。
ご祈祷の時に、大きな太鼓の音で大泣きしてしまったなんていうことも、あとから思い出して思わず笑顔になる幸せな風景です。
①昇殿(しょうでん)
受付を済ませ、神職の方の案内があるまでは、待合室で待機しています。
名前を呼ばれ、神職の方について、並んで社殿に昇ります。
②修祓(しゅばつ)
神様をお招きするにあたって、ご祈祷を受ける人々の心身の穢れを祓い清める準備の儀式ことをいいます。
神職が、祓詞(はらえことば)を奏上し、榊の枝や白木の棒に紙垂(しで)をつけた、大麻(おおぬさ)や祓串(はらえぐし)を振って、心身を祓い清めます。
頭を下げた姿勢でお祓いを受けましょう。
③祝詞(のりと)奏上
神様に奏上する言葉「祝詞」を、神職の方が読み上げます。
この祝詞奏上の間も、頭を下げた姿勢で臨みます。
④玉串奉奠(たまぐしほうてん)
神職の方の案内で、ご神前に進み願いを込めて玉串を献げます。
玉串は榊などの常緑樹の小枝に紙垂をつけたもので、神様と参拝する人との仲立ちをしてくれるお供えものでもあります。
玉串を捧げる際の作法を紹介しますね。
⑤神職挨拶・神酒拝戴
神職の方からのご挨拶があり、御神酒をいただきます。お母さんや運転が控えている方は口をつける仕草のみで大丈夫です。
ちなみに、神社によっても異なりますが、初穂料は受付の段階でお渡しすることが多いようです。
お宮参りはいつ行う?
まずお宮参りで悩むのが、日取りをいつにするかということでしょう。
どのタイミングがよい?
古くからのしきたりでは、生まれた日を1日目として数え、男の子は生後31〜32日目、女の子は32〜33日目にお宮参りを行うとされていました。
最近はあまりこだわらず、おおよそ赤ちゃんが生まれて1ヶ月頃に計画するおうちが多いようです。
まだデリケートな赤ちゃんとお母さんの体調を第一に考えて、日取りを話し合うのがよいでしょう。
お宮参りは大安がよい?
日取りを決めるにあたって、大安や先勝といった六曜を気にする方も多いと思います。
ただ、六曜は中国で生まれたその日の吉凶を占う指標で、日本古来の神道とは関係がないため、本来は気にしなくてもよいのです。
とはいえ、暮らしに根付いた六曜は、やはり気になるという方もいらっしゃると思います。
気になる方は、縁起のよい、お祝いに向いたお日柄を選ぶとよいでしょう。
六曜については、こちらの記事でさらに詳しく知ることができますよ。
記事はこちら
他にも、暦の上で縁起のよい吉日とされているのが、一粒万倍日や天赦日です。
一粒万倍日は「一粒の籾が一万倍になり豊かな稲穂として実る」という意味を持ち、物事を始めるのによい日とされています。
天赦日は「天がこの世のすべての罪を許してくれる日」という意味。暦の上で最上の吉日とされている日です。
あまりに寒さが厳しい時期は少し暖かくなってから、たとえば「百日祝い」と併せて行ってはどうでしょう。
また暑い時期には、午前中早く涼しい時を選ぶなど、柔軟に考えてみましょう。
お宮参りのマナー
失礼がなく、落ち着いてお宮参りができるよう、マナーや決まりごとについてもみていきましょう。
お宮参りの服装は?
ここからは、お宮参りに行く際の赤ちゃんやご家族の服装について紹介していきます。
赤ちゃんの服装
赤ちゃんは、真っ白で艶やかな絹の白羽二重の内着(長襦袢)を着せ、「掛け着」や「産着」、「祝い着」と呼ばれる晴れ着を覆い掛けるのが、伝統的な正装とされています。
● 男の子の掛け着
黒や紺、グレー、緑など。鷹や虎、兜などが描かれた強くたくましく、勇壮な印象の柄。
● 女の子の掛け着
ピンクや赤、クリーム色、白など。花々や蝶、鈴、手毬などが描かれた華やかで美しい印象の柄。
最近は、内着の代わりにベビードレスを着るスタイルがほとんどになりました。
また、フォーマルな印象のロンパースを着せるというおうちもあります。
まだ赤ちゃんは体温調節ができず外気に左右されやすいことも考えて、肌着などで調整するようにしましょう。
大人の服装
大人の服装については、はっきりとした決まりごとなどはありませんが、神社という神聖な場所で行われ、ご祈祷を受けることを考慮した服装にしましょう。
カジュアルすぎたり、肌の露出が多い服装は避けるようにします。
ママ・おばあちゃん
和装の場合は、訪問着や色無地、付け下げなどの控えめな着物が適しています。
洋装なら、落ち着いた色合いのワンピースやスーツがよいでしょう。
授乳したいママは、フォーマルな印象で授乳が可能なセットアップなどを候補に入れるとよいですね。
パパ・おじいちゃん
男性はやはりスーツが主流です。礼服がベストですが、黒や紺、グレーなどのスーツに白系のシャツと、派手すぎないネクタイを選ぶのがよいでしょう。
両家が参加してくれる場合は、あまり服装に差が出ないよう、あらかじめ話し合っておくことも大切です。
お宮参りの参加者は?誰が赤ちゃんを抱っこする?
かつてのお宮参りは、赤ちゃんとパパ、父方の祖父母、と参加者が決まっていたといいます。産婦は、「産の忌」が75日間とされていたため、ママは参加しなかったのだそう。
赤ちゃんを抱くのが父方の祖母というしきたりがあるのは、その風習が残ったためです。
現代では古い風習にはこだわらず、ママも参加したり、抱っこはママがというおうちも多いですね。
ほかにもママパパの兄弟や、親しくしている親戚を呼んで、賑やかにお祝いするというおうちも増えています。
初穂料ののし袋は?
ご祈祷を受ける場合「初穂料」を用意する必要があります。
5,000〜10,000円ほどが相場ですが、お参りする神社によっては金額が決まっている場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
お宮参りののし袋は紅白で、水引は蝶結びになっているものを選びます。上段には「御初穂料」、下段には赤ちゃんのフルネームを書きましょう。
のし袋の水引には、それぞれ意味が込められています。
何度もあってうれしいことには「蝶結び」、一度きりであって欲しいことの時は「結び切り」や「あわじ結び」ののし袋を使うのです。
やっておくと慌てない!お宮参りの準備と持ち物リスト
当日スムーズにお宮参りが進むよう、事前に準備できることがいくつかあります。
また、持ち物についても確認しましょう。
ご祈祷は予約した方がよい?初穂料は?
ご祈祷をお願いする場合、当日受け付けてくれる神社もあります。
ただ、その日に婚礼が入っていたり、他のご祈祷の予約が入っていたりすると、控え室で長く待たなくてはなりません。それでは赤ちゃんがかわいそうですね。
日取りが決まったら、神社に問い合わせてご祈祷を予約するのがおすすめです。
ご祈祷の時間が定まれば、おおよそ1日の流れを計画することができますよ。
予約の際に、「初穂料」についても決まった金額があるか、心配なら相場なども確認しておくと安心です。
記念撮影は予約できる?方法は?
ご祈祷の予約ができれば、だいたいの記念撮影時間もわかります。
写真撮影も予約しておくと、写真撮影前に赤ちゃんにミルクをあげたりといった配慮もできます。
スタジオは、インターネットなどから簡単に予約することができます。
また、出張撮影を受け付けているスタジオもありますので、どんな写真を残したいかによって、検討してみるのもよいですね。
食事会はやった方がよい?予約は?
この食事会は、絶対に開かなければならないというものではありません。赤ちゃんやママの体調を考慮して、決めましょう。
両家が揃うこと、あらたまって感謝の気持ちを伝える機会があまりないというなら、よい機会にもなります。
また、この1ヶ月あまり、赤ちゃんのお世話を頑張ったママパパへのご褒美の時間にもなるのではないでしょうか。
赤ちゃんが泣いてしまっても、おじいちゃんおばあちゃんが喜んで抱っこしてくれるでしょう。
お店を利用する場合、予約は必須です。予約の際に「お宮参りの食事会として」と一言添えると、赤ちゃんと一緒であることを考慮した席を用意してくれるはず。
メニューについても、お祝いのお料理の相談にものってくれるでしょう。
お宮参りの持ち物リスト
●ベビー用品
寒さ対策にはケープやブランケット、またニット帽なども
●その他
おむつのセット・ミルクの道具などは、必要になったらさっと取り出せるように、それぞれ小分けにして準備しておくと便利です。
荷物は多くなってしまいそうですが、まだデリケートな赤ちゃんのために、必要なものはしっかりとチェックしましょう。
お宮参りと初参りの違いは?
「お宮参り」という呼び方以外にも「初参り」や「お礼参り」という言葉が使われることがあります。
一般的に、神社に行く場合は「お宮参り」、
お寺で行う場合は「初参り」「お礼参り」
と呼び分けることが多いようです。
「初参り」「お礼参り」もお宮参りと同じく、赤ちゃんの無事の出産を感謝し、健やかな成長を願う行事です。ご本尊の観音様にご挨拶し、ご加護をお願いします。
日取りの決め方や服装など、お宮参りと違いはほとんどありません。大きなお寺では、初穂料が決められているところもありますので、事前に確認してみましょう。
お宮参りにまつわる縁起物・おすすめの商品
昔から、お宮参りの際には縁起をかつぐ小物を揃え、産着の結び紐に結んでお参りしていたのだそう。
赤ちゃんが健やかに、そして幸せに育っていくようにと願いが込められた小物や、おすすめの商品をご紹介いたします。
犬張子
江戸時代から伝わる郷土玩具で、まんまるな目をした、かわいい子犬の張り子人形。
犬はお産がとても軽いとされ、また、生まれた子もすくすくと育ちます。犬張子はこれにあやかり、安産や子どもの健やかな成長を願うお守りとして伝えられています。
また、狛犬が原型になったといわれており、厄除けや魔除けの意味も込められているのだそう。
扇子
漢数字の八のように、ゆったりと広がる形から、「末広」とも呼ばれる扇子。
古くから、末広がり・繁栄につながるとても縁起のよい物としてお祝いの場面では欠かせない小物です。
子どもがこの先、たくましく、豊かな人生を送るようにという願いが込められています。
でんでん太鼓
昔から、赤ちゃんをあやす玩具として親しまれてきました。
雅楽で使われる振鼓(ふりつづみ)に似せたもので、柄のついた小さな太鼓の両側に、糸で鈴や玉が結び付けられています。
振ると「てんてん」とかわいい音が響き、その音は悪霊や災難を払ってくれる力があるとされてきました。
また、丸い太鼓に、玉や角のない柄の形状、また、太鼓の両面を鳴らすことから、「まあるく優しい子に育て」「表裏のなく、素直に育て」という願いが込められています。
成長詣 御朱印帳
お宮参りや七五三など、子どもの成長の節目には神社に訪れる機会は何度かあることだとおもいます。
そんな時、思い出の記録として御朱印をいただく方も少なくないはず。
この度、家族の宝になるようにと願いを込めて「成長詣 御朱印帳」をおつくりしました。
子どもの成長記録として、御朱印と一緒に手形や思い出のメッセージを残してみるのはいかがでしょうか?
家族それぞれのお宮参りのかたち
生まれたばかりの赤ちゃんとの暮らしの中で行われるお宮参り。
赤ちゃんのお世話をしながらの準備は、少し忙しくて大変かもしれません。
ここまでご紹介してきた伝統的な様式やマナーを知った上で、あまり無理をせず、柔軟に自分たちの暮らしに合ったお宮参りを計画してみてはいかがでしょうか。
伝統の行事は、込められた意味を大切にしながら、その時代時代で少しずつしなやかに形を変えてきたからこそ、長く受け継がれてきました。
これから、赤ちゃんは一度きりの「初めて」をたくさん握りしめて大きくなっていきますね。
お宮参りも一度きりのとても大切な時間。
無理をしない自分たちの形で、赤ちゃんをお祝いしましょう。
どうかママもパパも、おおらかな気持ちで、笑った顔で!