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おにぎりは日本のソウルフードともいえる食べ物ですが、いつごろから食べられているのでしょうか?おにぎりの歴史はとても古く、稲作が日本に伝わった弥生時代に誕生したといわれています。太古の昔に日本で生まれ、現代に至るまで日常の食事やお弁当などで食べられてきたおにぎりは、最近では、国内外を問わず人気が高まっています。このコラムでは、おにぎりの歴史やおにぎりに関する雑学などについて詳しく紹介していきます。
おにぎりは日本発祥といわれている食べ物です。その歴史は、日本に稲作が伝わったころからとされ、その後も現代に至るまで食べ続けられています。
韓国の時代劇を見ると庶民がおにぎりを食べるシーンがあり、韓国でも昔からおにぎりが食べられていたことが伺えますが、どちらが先、というのは無く、お互いの国で自然発生的に誕生したのではないかとされています。ここでは、日本のおにぎりの歴史について詳しく紹介していきます。
おにぎりが誕生したのは、弥生時代とされています。その証拠として、日本各地の弥生時代の遺跡から炭化したおにぎりのようなものが出土しており、とくに石川県の旧・鹿西町(現・能登町)で出土された炭化した米の塊がおにぎりの原型といわれています。当時のおにぎりは現代のものとは違い、蒸したもち米を握り固めた後に焼いたもので、ちまきに近いものとされています。
弥生時代に作られていた米はもち米で、携帯食や保存食として食べられていたとされています。また、ちまきは昔から5月5日の端午の節句で供えられており、出土されたおにぎりの原型がちまき状であったことから、この時代のおにぎりは神様への捧げものでもあったと考えられています。
おにぎりが記録上初めて登場したのは奈良時代に編纂された「常陸国風土記」や「古事記」の中で、当時は「握飯(にぎりいい)」と呼ばれていたようです。当時のおにぎりはもち米を握ったもので、古事記では魔除けにも使われていたことから、神事の供え物やハレの日に食べられる特別な食事だったとされています。
平安時代に入ると、おにぎりは「屯食(とんじき)」と呼ばれるようになります。「屯食」は蒸したもち米を大きな卵型に握ったもので「鳥の子」とも呼ばれていました。「源氏物語」にも登場し、宮中などでイベントや宴会などが行われた際に、宿直(とのい:警備員)や下級役人などに振舞われる祝儀でした。
鎌倉時代に入ると、稲作の主流がもち米からうるち米に移り、おにぎりもうるち米で作られるようになっていきました。米の収穫量が増えていき、おにぎりは特別な食べ物から武士が戦の際に食べる携帯食となっていきます。当時のおにぎりは間引いた菜っ葉を炊きこんだ菜っ葉飯が主流でしたが、1221年に起こった「承久の乱」で鎌倉幕府軍の武士に「梅干し入りおにぎり」が配られたことがきっかけとなり、全国に広まっていきました。
おにぎりは、戦国時代時代まで戦時の携帯食や戦以外の出仕、畑仕事の時のお弁当など、主に武士クラスの人たちが食べるものでしたが、江戸時代に入り安定して米が収穫できるようになると、徐々に庶民にも広まっていきました。江戸時代のおにぎりは、白米を握ったものや玄米にアワやヒエなどの雑穀を混ぜたご飯を握ったもので、農作業中の食事や旅行や行楽のお弁当など日常的に食べられるようになっていきます。江戸時代中期には海苔の養殖が始まり、海苔で巻いたおにぎりが広まっていきました。また、明治時代初期に東京の海苔屋が醤油やみりんで味付けした「味付け海苔」を京都に行幸する天皇への土産として作ります。味付け海苔は京都を中心とした近畿地方で人気となり、関西ではおにぎりに味付けのりを巻いて食べるようになりました。
その後、おにぎりは日本初の駅弁や日本初の学校給食で取り入れられ、少し特別なお昼ご飯として食べられるようにもなっていきました。
昭和に入ると、エビの天ぷらを具にした「天むす」が誕生したり、コンビニの普及によってツナマヨや唐揚げ、いくら、卵焼きなど色々な具材をおにぎりにしたものや握らないおにぎり「おにぎらず」など進化系おにぎりが次々に誕生したりします。そして現在も、日本のおにぎりは進化し続けているのです。
日本人にとっておにぎりとはどのようなものなのでしょうか?
日本では弥生時代から稲作が始まり、以降ずっと米を主食としてきました。稲作の歴史の中からおにぎりは、蒸した米を握るという簡単かつきれいに形を整えられる調理法として誕生したと考えられます。天気や虫、雑草などの自然と戦いながら大切に育てられた米を感謝の気持ちを込めて神様に捧げるために作られていたおにぎりは、やがて戦で武士たちの命を繋ぐ大切な携帯食となり、平和な世の中になると普段の食事としてだけでなく行楽のお供として少し特別な食事としても広く愛されるようになってきました。おにぎりは、弥生時代から受け継がれてきた日本人の歴史には欠かせない大切なソウルフードなのです。
みなさんはおにぎりをどう呼んでいますか?人によっては「おにぎり」と呼んだり「おむすび」と呼んだりしますよね。ではなぜ、2つの呼び方があるのでしょうか?この2つの違いは語源や形、地域などの違いにあるのです。
「おにぎり」の語源は「握る」という動作です。おにぎりは奈良時代に「握飯(にぎりいい)」と呼ばれており、これが徐々に変わって「おにぎり」と呼ばれるようになったとされています。
また、「鬼斬り(おにぎり)」が語源になったという説もあります。地方の民話に鬼を退治するときにおにぎりを投げつけたというものがあり、おにぎりは鬼を退ける力がある神聖なものと考えられていたと考えられています。
「おむすび」の語源の1つに、日本神話に登場する「神産巣日神(カミムスビノカミ)」という神様に由来するという説があります。「神産巣日神」は日本神話の中の創造神の一柱で、万物を産み出し育むことや人と人との結びつきを産むことを司る神様とされていて、米に宿ると信じられてきました。「産巣(ムス)」は「生ずる、創造する」、「日(ヒ)」は「霊力」を表しており、「神産巣日神」が宿る米を握ることで霊力が宿ると考えられていたとされ、おむすびは特別で神聖な食べ物として扱われていたといわれています。また、「結び」という言葉が語源となっている説もあり、良縁を結ぶ縁起の良い食べ物とされていたようです。
「おにぎり」はとくに形の決まりが無い握り飯の呼び名として使われてきたとされています。一方「おむすび」は、山の神「神産巣日神(カミムスビノカミ)」に由来して付けられた呼び名で、山の形と同じ三角形に握ったもののだけの呼び名として使われてきたとされています。
「おむすび」は神様に由来するため、お供え物として扱われる握り飯の呼び名であったともいわれています。
「おにぎり」と「おむすび」は地域によって呼び方が違うとされており、一般的には「おにぎり」と呼ばれますが、関東から東海道にかけての地域や北陸、中国地方などでは「おむすび」と呼ばれることが多いようです。また、主に東日本では「おむすび」、西日本では「おにぎり」と呼ばれていたという説もあります。
おにぎりには色々な形がありますが、三角形や俵型、丸形や円盤形といったものがよく見られます。それぞれの形には昔から意味があるとされています。
三角形のおにぎりは、山の形を模したものだとされています。古代の日本では、山には神様が宿っていて、太陽や雨などの恵みを授けてくれるものと考えられていました。その山の形をした三角形のおにぎりを食べることで、健康になれると考えられていたといわれています。
江戸時代の入ると庶民の間で旅をすることが流行し、携帯しやすい形として正三角形のおにぎりが好まれ、全国に広まったとされています。
また、地域によって三角形のおにぎりが出されるシーンに違いがあり、東京の一部地域ではお祝い事の際、神奈川県の西部では葬式の際、関西の一部地域では葬式や法事などの弔事の際に三角形のおにぎりが出される風習が現在でも残っています。
俵型のおにぎりは、江戸時代に大阪などの町人文化が栄えた地域で誕生したといわれています。町人文化では歌舞伎などの舞台が流行し、幕間に食べる「幕の内弁当」の弁当箱に納まりがよく、箸でつまみやすい小さめの俵型おにぎりが誕生し、関西を中心に広まっていったとされています。
丸いおにぎりは三角形が広まる以前の一般的な形だったといわれており、農作業の合間に食べられていました。現在も主に中部地方や九州地方、中国地方などで馴染み深い形として残っています。
円盤形のおにぎりは、主に東北地方や北陸地方で多く食べられています。雪の多いこれらの地域では、円盤型のおにぎりを焼いて食べる風習があり、火が通りやすくなるように円盤型のおにぎりが誕生したといわれています。
時代に合わせて形や具などが変わってきたおにぎりですが、しかし近年、おにぎりはコンビニや家庭で作る手軽なお弁当さらなる進化を遂げて、空前のおにぎりブームが到来しています。
コンビニが日本に登場した1970年代当初から、おにぎりは販売されていました。しかし当時の日本人には、おにぎりは家で作るもので、お店で買うという感覚が無く、なかなか売れませんでした。そこで取り組まれたのが、家庭のおにぎりとコンビニおにぎりの決定的な違いを出すことでした。その決定的な違いというのが「パリパリ海苔」です。食べる直前に海苔を巻けるよう、おにぎりと海苔を分けた包装フィルムが開発され、パリパリ海苔のコンビニおにぎりが誕生したのです。家庭で作ったおにぎりの海苔は、ご飯の湿気でふにゃふにゃになるのが当たり前だったので、食べる時に海苔がパリパリなのはまさに新感覚で、コンビニおにぎりの人気は急上昇しました。
1986年に、もっと簡単に海苔を巻けるようにするため、中央のテープを引いた後に左右のフィルムを抜くスタイルの包装フィルムが誕生し、おにぎりは家庭で作るだけでなく、お店で買うものとして進化しました。1980年代後半からコンビニおにぎりの種類が増えていき、コシヒカリや高級海苔などを使ったグルメ志向のおにぎりも誕生しました。2000年代に入ると、ご当地おにぎりや最初から海苔が巻いてあるタイプのものが販売されるようになり、最近ではふっくらと握ったおにぎりも登場するなど、コンビニおにぎりは進化し続けています。
「おにぎらず」とは、海苔とご飯に具をのせて包んだだけのサンドイッチのような料理です。
手間がかからず食べやすいお弁当として話題となり、2015年の流行語大賞にノミネートもされました。おにぎらずが注目されはじめたのは2014年ごろで、クックパットに掲載されたことがきっかけでした。しかし、おにぎらずが誕生したのは話題になる20年以上も前で、生みの親は人気漫画「クッキングパパ」の作者・うえやまとちさんの奥様なのです。
ある日うえやまさんの奥様が炊きたてのご飯でやけどをしないように素早く作るためにおにぎらずを考案し、これを元にした漫画を描き上げ、当時連載中だった「クッキングパパ」で掲載されました。当時はあまり注目されなかったおにぎらずでしたが、トンカツなどの大きな具が挟めることや沢山の具が挟めること、持ち運びしやすいこと、平べったいので食べやすいこと、切った断面がきれいなことなどから、主婦だけでなく若い女性にも大人気となったのです。私も娘によく作っていましたが、娘は目玉焼きを手軽にハンバーグや魚のフライなどと一緒に美味しく食べられるところがお気に入りだったようです。
昭和までのおにぎりといえば、白いご飯を塩で握って海苔で巻いたものというのが当たり前で、具材も梅干しや焼き鮭、こんぶ、焼きタラコなど限られたものしかありませんでした。しかし平成以降、具材のバリエーションが増えたりこれまでおにぎりとして食べられなかった料理がおにぎりになったりといった進化系おにぎりが誕生しました。
コンビニやスーパーなどでおにぎりが売られるようになってから、オムライスやチャーハン、カレーライスなどのこれまでおにぎりとして食べることが無かった料理のおにぎりが販売されるようになり、持ち運びが楽で手軽に食べられるとして人気となり、今ではコンビニなどでポピュラーなおにぎりとなっています。また、家庭で作るおにぎりとしても、天かすやごま油、チーズやポテトチップスなどなんでもご飯に混ぜて握ってしまう進化系おにぎりが注目されてきています。どんな具材でもおにぎりにしてしまえば美味しくなってしまうので、おにぎりって不思議な食べ物ですよね。
おにぎりには、その地域ならではの具材を使ったご当地おにぎりが日本各地にあります。中にはその地域だけで好まれ食べられてきたものもあり、同じ日本人でもまだまだ知らないおにぎりがあるんだなあと驚かされます。ここでは、その中から4つのご当地おにぎりを紹介しましょう。
若生とは、薄くて柔らかい若い昆布のことです。若生おにぎりは、海苔の代わりに若生でおにぎりを包んだもので、昔から津軽地方北部の漁師が沖に出る時や農民が山で仕事をするときなどのお弁当としてよく食べられてきました。若生昆布は味付けされておらず、自然の塩味と昆布の旨みが美味しいシンプルなおにぎりです。形は半月型が一般的で、食べやすいように昆布の繊維にそって嚙み切れるように包むのがポイントです。
とろろ昆布おにぎりとは、海苔の代わりにとろろ昆布でおにぎりを包んだものです。富山県はとろろ昆布の消費量日本一で、ほとんどの家庭でとろろ昆布を常備してあることから運動会や遠足、お祭りなどの定番メニューとなっています。昆布の旨みとほどよい酸味がおにぎりによく合っていて、時間がたっても美味しく食べられるのが人気の理由です。
ちりめん山椒とは、ちりめんじゃこと山椒の実を甘辛く煮詰めた佃煮です。ちりめん山椒は昭和の半ばごろに京都の料理人・晴間保雄さんが考案した料理で、京都の名物として全国に広まりました。このちりめん山椒を混ぜ込んだご飯を握ったものがちりめん山椒おにぎりで、ピリッとした辛みと山椒の爽やかな香りが甘辛いちりめんじゃこが花街の舞妓さんや芸姑さんたちにも人気のおにぎりです。
ポーク卵おにぎりとは、沖縄でよく食べられている缶入りのポークランチョンミートを薄く切って焼いたものと卵焼きを挟んだ「おにぎらず」のような沖縄県のご当地おにぎりです。戦後、アメリカ軍によって持ち込まれたポークランチョンミートは、沖縄の人たちの食卓でよく使われる食材となり、今も色々な料理に使われています。ポーク卵おにぎりは、ハワイのスパムおにぎりを移民たちが広めたことが起源とされており、現在では沖縄以外の地域のコンビニやスーパーなどで販売されており、家庭で簡単に作れるおにぎりとして日本全国でもよく食べられるようになりました。
近年、おにぎりは日本のみならず海外でもブームとなっています。アメリカやフランス、韓国などではおにぎり専門店がオープンし、ご当地おにぎりも誕生するほどの人気ぶりです。ではなぜ、海外でおにぎりがブームになっているのでしょうか?
日本のおにぎりは、安くて食べやすい形をしていることや、具のバリエーションが豊富であることなどから、新たな日本食として注目を集めています。おにぎりにスポットが当たるようになったのは、日本を訪れた外国人旅行者による口コミや、SNSや動画などでおにぎりが紹介されたことです。とくにSNSや動画などは視覚的効果も高く、手軽なコンビニおにぎりだけでなく日本のおにぎり専門店の豪華で見栄えのするおにぎりの画像が拡散していくことで外国人のおにぎり人気はどんどん高まっていきました。
また、おにぎりは誰でも簡単に作れることから参加者体験型のフードイベントでも注目されるようになりました。フードイベントでは参加者が好きな具材を入れたおにぎりを作ることができてダイレクトにおにぎりの魅力を伝えられます。このようなフードイベントもおにぎりが注目されるようになった理由の1つです。
近年、海外でもおにぎり専門店が続々とオープンしています。おにぎりは作り方が簡単で様々な具材を組み合わせることが出来ることから、海外でも出店しやすいというメリットがあります。おにぎりはパンや麺に比べてカロリーが低く栄養価も高い米が使われていることや、具材によって栄養バランスの良い食事となることなどから、ダイエットをしている人たちや健康志向の人たちを中心に人気が高まっているそうです。また、海外ならではの食材をおにぎりにすることで、その国でしか食べることのできないご当地おにぎりも専門店ならではの魅力です。日本に行かなくても美味しいおにぎりが食べられることから、海外でのおにぎりブームが到来しているのです。
大昔から神様の力が宿った特別な食べ物として誕生したおにぎりは、江戸時代以降庶民の食べ物として日本人によりなじみ深いものとなっていきました。みなさんも、遠足や運動会などの楽しいイベントの時食べたおにぎりや、試験や残業など大変な時を乗り越えるために食べたおにぎりなど、少なからず思い出に残るおにぎりがあるのではないでしょうか。おにぎりは、日本人にとってお腹だけでなく心をも満たす大切な食事として、共に歩んできた大切な食べ物といえます。
おにぎりは日本のソウルフードともいえる食べ物ですが、いつごろから食べられているのでしょうか?
おにぎりの歴史はとても古く、稲作が日本に伝わった弥生時代に誕生したといわれています。
太古の昔に日本で生まれ、現代に至るまで日常の食事やお弁当などで食べられてきたおにぎりは、最近では、国内外を問わず人気が高まっています。
このコラムでは、おにぎりの歴史やおにぎりに関する雑学などについて詳しく紹介していきます。
目次
おにぎりの歴史とは
おにぎりは日本発祥といわれている食べ物です。
その歴史は、日本に稲作が伝わったころからとされ、その後も現代に至るまで食べ続けられています。
韓国の時代劇を見ると庶民がおにぎりを食べるシーンがあり、韓国でも昔からおにぎりが食べられていたことが伺えますが、どちらが先、というのは無く、お互いの国で自然発生的に誕生したのではないかとされています。
ここでは、日本のおにぎりの歴史について詳しく紹介していきます。
おにぎりが誕生したのはいつ?
おにぎりが誕生したのは、弥生時代とされています。
その証拠として、日本各地の弥生時代の遺跡から炭化したおにぎりのようなものが出土しており、とくに石川県の旧・鹿西町(現・能登町)で出土された炭化した米の塊がおにぎりの原型といわれています。
当時のおにぎりは現代のものとは違い、蒸したもち米を握り固めた後に焼いたもので、ちまきに近いものとされています。
おにぎりの歴史は時代とともに進化していった
弥生時代に作られていた米はもち米で、携帯食や保存食として食べられていたとされています。
また、ちまきは昔から5月5日の端午の節句で供えられており、出土されたおにぎりの原型がちまき状であったことから、この時代のおにぎりは神様への捧げものでもあったと考えられています。
おにぎりが記録上初めて登場したのは奈良時代に編纂された「常陸国風土記」や「古事記」の中で、当時は「握飯(にぎりいい)」と呼ばれていたようです。
当時のおにぎりはもち米を握ったもので、古事記では魔除けにも使われていたことから、神事の供え物やハレの日に食べられる特別な食事だったとされています。
平安時代に入ると、おにぎりは「屯食(とんじき)」と呼ばれるようになります。
「屯食」は蒸したもち米を大きな卵型に握ったもので「鳥の子」とも呼ばれていました。
「源氏物語」にも登場し、宮中などでイベントや宴会などが行われた際に、宿直(とのい:警備員)や下級役人などに振舞われる祝儀でした。
鎌倉時代に入ると、稲作の主流がもち米からうるち米に移り、おにぎりもうるち米で作られるようになっていきました。
米の収穫量が増えていき、おにぎりは特別な食べ物から武士が戦の際に食べる携帯食となっていきます。
当時のおにぎりは間引いた菜っ葉を炊きこんだ菜っ葉飯が主流でしたが、1221年に起こった「承久の乱」で鎌倉幕府軍の武士に「梅干し入りおにぎり」が配られたことがきっかけとなり、全国に広まっていきました。
おにぎりは、戦国時代時代まで戦時の携帯食や戦以外の出仕、畑仕事の時のお弁当など、主に武士クラスの人たちが食べるものでしたが、江戸時代に入り安定して米が収穫できるようになると、徐々に庶民にも広まっていきました。
江戸時代のおにぎりは、白米を握ったものや玄米にアワやヒエなどの雑穀を混ぜたご飯を握ったもので、農作業中の食事や旅行や行楽のお弁当など日常的に食べられるようになっていきます。
江戸時代中期には海苔の養殖が始まり、海苔で巻いたおにぎりが広まっていきました。
また、明治時代初期に東京の海苔屋が醤油やみりんで味付けした「味付け海苔」を京都に行幸する天皇への土産として作ります。
味付け海苔は京都を中心とした近畿地方で人気となり、関西ではおにぎりに味付けのりを巻いて食べるようになりました。
その後、おにぎりは日本初の駅弁や日本初の学校給食で取り入れられ、少し特別なお昼ご飯として食べられるようにもなっていきました。
昭和に入ると、エビの天ぷらを具にした「天むす」が誕生したり、コンビニの普及によってツナマヨや唐揚げ、いくら、卵焼きなど色々な具材をおにぎりにしたものや握らないおにぎり「おにぎらず」など進化系おにぎりが次々に誕生したりします。
そして現在も、日本のおにぎりは進化し続けているのです。
おにぎりと日本人の関係とは
日本人にとっておにぎりとはどのようなものなのでしょうか?
日本では弥生時代から稲作が始まり、以降ずっと米を主食としてきました。
稲作の歴史の中からおにぎりは、蒸した米を握るという簡単かつきれいに形を整えられる調理法として誕生したと考えられます。
天気や虫、雑草などの自然と戦いながら大切に育てられた米を感謝の気持ちを込めて神様に捧げるために作られていたおにぎりは、やがて戦で武士たちの命を繋ぐ大切な携帯食となり、平和な世の中になると普段の食事としてだけでなく行楽のお供として少し特別な食事としても広く愛されるようになってきました。
おにぎりは、弥生時代から受け継がれてきた日本人の歴史には欠かせない大切なソウルフードなのです。
「おにぎり」と「おむすび」の呼び方の違いとは
みなさんはおにぎりをどう呼んでいますか?
人によっては「おにぎり」と呼んだり「おむすび」と呼んだりしますよね。
ではなぜ、2つの呼び方があるのでしょうか?
この2つの違いは語源や形、地域などの違いにあるのです。
語源の違い
「おにぎり」の語源は「握る」という動作です。
おにぎりは奈良時代に「握飯(にぎりいい)」と呼ばれており、これが徐々に変わって「おにぎり」と呼ばれるようになったとされています。
また、「鬼斬り(おにぎり)」が語源になったという説もあります。
地方の民話に鬼を退治するときにおにぎりを投げつけたというものがあり、おにぎりは鬼を退ける力がある神聖なものと考えられていたと考えられています。
「おむすび」の語源の1つに、日本神話に登場する「神産巣日神(カミムスビノカミ)」という神様に由来するという説があります。
「神産巣日神」は日本神話の中の創造神の一柱で、万物を産み出し育むことや人と人との結びつきを産むことを司る神様とされていて、米に宿ると信じられてきました。
「産巣(ムス)」は「生ずる、創造する」、「日(ヒ)」は「霊力」を表しており、「神産巣日神」が宿る米を握ることで霊力が宿ると考えられていたとされ、おむすびは特別で神聖な食べ物として扱われていたといわれています。
また、「結び」という言葉が語源となっている説もあり、良縁を結ぶ縁起の良い食べ物とされていたようです。
形の違い
「おにぎり」はとくに形の決まりが無い握り飯の呼び名として使われてきたとされています。
一方「おむすび」は、山の神「神産巣日神(カミムスビノカミ)」に由来して付けられた呼び名で、山の形と同じ三角形に握ったもののだけの呼び名として使われてきたとされています。
「おむすび」は神様に由来するため、お供え物として扱われる握り飯の呼び名であったともいわれています。
地域の違い
「おにぎり」と「おむすび」は地域によって呼び方が違うとされており、一般的には「おにぎり」と呼ばれますが、関東から東海道にかけての地域や北陸、中国地方などでは「おむすび」と呼ばれることが多いようです。
また、主に東日本では「おむすび」、西日本では「おにぎり」と呼ばれていたという説もあります。
おにぎりの形には意味がある?
おにぎりには色々な形がありますが、三角形や俵型、丸形や円盤形といったものがよく見られます。
それぞれの形には昔から意味があるとされています。
三角形のおにぎりの意味とは
三角形のおにぎりは、山の形を模したものだとされています。
古代の日本では、山には神様が宿っていて、太陽や雨などの恵みを授けてくれるものと考えられていました。
その山の形をした三角形のおにぎりを食べることで、健康になれると考えられていたといわれています。
江戸時代の入ると庶民の間で旅をすることが流行し、携帯しやすい形として正三角形のおにぎりが好まれ、全国に広まったとされています。
また、地域によって三角形のおにぎりが出されるシーンに違いがあり、東京の一部地域ではお祝い事の際、神奈川県の西部では葬式の際、関西の一部地域では葬式や法事などの弔事の際に三角形のおにぎりが出される風習が現在でも残っています。
俵型のおにぎりの意味とは
俵型のおにぎりは、江戸時代に大阪などの町人文化が栄えた地域で誕生したといわれています。
町人文化では歌舞伎などの舞台が流行し、幕間に食べる「幕の内弁当」の弁当箱に納まりがよく、箸でつまみやすい小さめの俵型おにぎりが誕生し、関西を中心に広まっていったとされています。
丸いおにぎりの意味とは
丸いおにぎりは三角形が広まる以前の一般的な形だったといわれており、農作業の合間に食べられていました。
現在も主に中部地方や九州地方、中国地方などで馴染み深い形として残っています。
円盤型のおにぎりの意味とは
円盤形のおにぎりは、主に東北地方や北陸地方で多く食べられています。
雪の多いこれらの地域では、円盤型のおにぎりを焼いて食べる風習があり、火が通りやすくなるように円盤型のおにぎりが誕生したといわれています。
おにぎりはどんどん進化する
時代に合わせて形や具などが変わってきたおにぎりですが、しかし近年、おにぎりはコンビニや家庭で作る手軽なお弁当さらなる進化を遂げて、空前のおにぎりブームが到来しています。
コンビニおにぎりの進化の歴史
コンビニが日本に登場した1970年代当初から、おにぎりは販売されていました。
しかし当時の日本人には、おにぎりは家で作るもので、お店で買うという感覚が無く、なかなか売れませんでした。
そこで取り組まれたのが、家庭のおにぎりとコンビニおにぎりの決定的な違いを出すことでした。
その決定的な違いというのが「パリパリ海苔」です。
食べる直前に海苔を巻けるよう、おにぎりと海苔を分けた包装フィルムが開発され、パリパリ海苔のコンビニおにぎりが誕生したのです。
家庭で作ったおにぎりの海苔は、ご飯の湿気でふにゃふにゃになるのが当たり前だったので、食べる時に海苔がパリパリなのはまさに新感覚で、コンビニおにぎりの人気は急上昇しました。
1986年に、もっと簡単に海苔を巻けるようにするため、中央のテープを引いた後に左右のフィルムを抜くスタイルの包装フィルムが誕生し、おにぎりは家庭で作るだけでなく、お店で買うものとして進化しました。
1980年代後半からコンビニおにぎりの種類が増えていき、コシヒカリや高級海苔などを使ったグルメ志向のおにぎりも誕生しました。
2000年代に入ると、ご当地おにぎりや最初から海苔が巻いてあるタイプのものが販売されるようになり、最近ではふっくらと握ったおにぎりも登場するなど、コンビニおにぎりは進化し続けています。
「おにぎらず」の誕生
「おにぎらず」とは、海苔とご飯に具をのせて包んだだけのサンドイッチのような料理です。
手間がかからず食べやすいお弁当として話題となり、2015年の流行語大賞にノミネートもされました。
おにぎらずが注目されはじめたのは2014年ごろで、クックパットに掲載されたことがきっかけでした。
しかし、おにぎらずが誕生したのは話題になる20年以上も前で、生みの親は人気漫画「クッキングパパ」の作者・うえやまとちさんの奥様なのです。
ある日うえやまさんの奥様が炊きたてのご飯でやけどをしないように素早く作るためにおにぎらずを考案し、これを元にした漫画を描き上げ、当時連載中だった「クッキングパパ」で掲載されました。
当時はあまり注目されなかったおにぎらずでしたが、トンカツなどの大きな具が挟めることや沢山の具が挟めること、持ち運びしやすいこと、平べったいので食べやすいこと、切った断面がきれいなことなどから、主婦だけでなく若い女性にも大人気となったのです。
私も娘によく作っていましたが、娘は目玉焼きを手軽にハンバーグや魚のフライなどと一緒に美味しく食べられるところがお気に入りだったようです。
なんでもにぎる進化系おにぎり!
昭和までのおにぎりといえば、白いご飯を塩で握って海苔で巻いたものというのが当たり前で、具材も梅干しや焼き鮭、こんぶ、焼きタラコなど限られたものしかありませんでした。
しかし平成以降、具材のバリエーションが増えたりこれまでおにぎりとして食べられなかった料理がおにぎりになったりといった進化系おにぎりが誕生しました。
コンビニやスーパーなどでおにぎりが売られるようになってから、オムライスやチャーハン、カレーライスなどのこれまでおにぎりとして食べることが無かった料理のおにぎりが販売されるようになり、持ち運びが楽で手軽に食べられるとして人気となり、今ではコンビニなどでポピュラーなおにぎりとなっています。
また、家庭で作るおにぎりとしても、天かすやごま油、チーズやポテトチップスなどなんでもご飯に混ぜて握ってしまう進化系おにぎりが注目されてきています。
どんな具材でもおにぎりにしてしまえば美味しくなってしまうので、おにぎりって不思議な食べ物ですよね。
地元ならではのご当地おにぎり4選!
おにぎりには、その地域ならではの具材を使ったご当地おにぎりが日本各地にあります。
中にはその地域だけで好まれ食べられてきたものもあり、同じ日本人でもまだまだ知らないおにぎりがあるんだなあと驚かされます。
ここでは、その中から4つのご当地おにぎりを紹介しましょう。
① 青森県:若生(わかおい)おにぎり
若生とは、薄くて柔らかい若い昆布のことです。
若生おにぎりは、海苔の代わりに若生でおにぎりを包んだもので、昔から津軽地方北部の漁師が沖に出る時や農民が山で仕事をするときなどのお弁当としてよく食べられてきました。
若生昆布は味付けされておらず、自然の塩味と昆布の旨みが美味しいシンプルなおにぎりです。
形は半月型が一般的で、食べやすいように昆布の繊維にそって嚙み切れるように包むのがポイントです。
② 富山県:とろろ昆布おにぎり
とろろ昆布おにぎりとは、海苔の代わりにとろろ昆布でおにぎりを包んだものです。
富山県はとろろ昆布の消費量日本一で、ほとんどの家庭でとろろ昆布を常備してあることから運動会や遠足、お祭りなどの定番メニューとなっています。
昆布の旨みとほどよい酸味がおにぎりによく合っていて、時間がたっても美味しく食べられるのが人気の理由です。
③ 京都府:ちりめん山椒おにぎり
ちりめん山椒とは、ちりめんじゃこと山椒の実を甘辛く煮詰めた佃煮です。
ちりめん山椒は昭和の半ばごろに京都の料理人・晴間保雄さんが考案した料理で、京都の名物として全国に広まりました。
このちりめん山椒を混ぜ込んだご飯を握ったものがちりめん山椒おにぎりで、ピリッとした辛みと山椒の爽やかな香りが甘辛いちりめんじゃこが花街の舞妓さんや芸姑さんたちにも人気のおにぎりです。
④ 沖縄県:ポーク卵おにぎり
ポーク卵おにぎりとは、沖縄でよく食べられている缶入りのポークランチョンミートを薄く切って焼いたものと卵焼きを挟んだ「おにぎらず」のような沖縄県のご当地おにぎりです。
戦後、アメリカ軍によって持ち込まれたポークランチョンミートは、沖縄の人たちの食卓でよく使われる食材となり、今も色々な料理に使われています。
ポーク卵おにぎりは、ハワイのスパムおにぎりを移民たちが広めたことが起源とされており、現在では沖縄以外の地域のコンビニやスーパーなどで販売されており、家庭で簡単に作れるおにぎりとして日本全国でもよく食べられるようになりました。
世界でおにぎりブーム到来⁈
近年、おにぎりは日本のみならず海外でもブームとなっています。
アメリカやフランス、韓国などではおにぎり専門店がオープンし、ご当地おにぎりも誕生するほどの人気ぶりです。
ではなぜ、海外でおにぎりがブームになっているのでしょうか?
外国人におにぎりが注目されるようになった理由
日本のおにぎりは、安くて食べやすい形をしていることや、具のバリエーションが豊富であることなどから、新たな日本食として注目を集めています。
おにぎりにスポットが当たるようになったのは、日本を訪れた外国人旅行者による口コミや、SNSや動画などでおにぎりが紹介されたことです。
とくにSNSや動画などは視覚的効果も高く、手軽なコンビニおにぎりだけでなく日本のおにぎり専門店の豪華で見栄えのするおにぎりの画像が拡散していくことで外国人のおにぎり人気はどんどん高まっていきました。
また、おにぎりは誰でも簡単に作れることから参加者体験型のフードイベントでも注目されるようになりました。
フードイベントでは参加者が好きな具材を入れたおにぎりを作ることができてダイレクトにおにぎりの魅力を伝えられます。
このようなフードイベントもおにぎりが注目されるようになった理由の1つです。
海外でも人気のおにぎり専門店
近年、海外でもおにぎり専門店が続々とオープンしています。
おにぎりは作り方が簡単で様々な具材を組み合わせることが出来ることから、海外でも出店しやすいというメリットがあります。
おにぎりはパンや麺に比べてカロリーが低く栄養価も高い米が使われていることや、具材によって栄養バランスの良い食事となることなどから、ダイエットをしている人たちや健康志向の人たちを中心に人気が高まっているそうです。
また、海外ならではの食材をおにぎりにすることで、その国でしか食べることのできないご当地おにぎりも専門店ならではの魅力です。
日本に行かなくても美味しいおにぎりが食べられることから、海外でのおにぎりブームが到来しているのです。
おにぎりの歴史は日本人の歴史
大昔から神様の力が宿った特別な食べ物として誕生したおにぎりは、江戸時代以降庶民の食べ物として日本人によりなじみ深いものとなっていきました。
みなさんも、遠足や運動会などの楽しいイベントの時食べたおにぎりや、試験や残業など大変な時を乗り越えるために食べたおにぎりなど、少なからず思い出に残るおにぎりがあるのではないでしょうか。
おにぎりは、日本人にとってお腹だけでなく心をも満たす大切な食事として、共に歩んできた大切な食べ物といえます。