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「衣食住」という言葉は、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
では衣食住が意味するもの、その由来をご存知でしょうか。 衣食住の順番や、衣食住の最初に衣がある意味が気になりませんか?
このコラムでは衣食住という言葉の意味やその由来、衣の持つ大切な役割もお伝えします。
より心豊かな日々を過ごすための、小さなヒントにしていただければ幸いです。
衣食住とは、私たち人が生きていくために欠かせない、生活の基盤のことです。 その漢字が表す通り、「衣服」「食事」「住まい」を意味しています。
衣食住という言葉が日本で使われ始めたのは、近代化が始まった1880年代と言われています。
では衣食住が大切、という考え方はいつどこで生まれたのでしょうか?
"衣食足りて礼節を知る”とは、紀元前800年ごろの古代中国・斉国の首相、管仲が残した名言です。
偉大な政治家で思想家だった管仲は、「社会が健全に機能するには、まずそれぞれの人の暮らしが安定し衣食が満ち足りていることが大切だ」と説きました。
後の孔子も、論語の中で「国を治めるためには、まず人々の暮らしを豊かにしよう。そして次に人の心を教えよう」と説いたと伝えられています。
安定した社会で心豊かに暮らすため、人はまずは暮らしの基盤を整える必要がある。 これが衣食住という言葉の由来なのです。
衣食住という言葉には、衣、食、住という3つの要素が入っていて、どれも大切です。 なぜ衣食住という順番になったのでしょうか?
これ!という正解はないのですが、その理由には諸説あります。
衣食住の中で、衣はいろはの「い」と同じ発音。 言いやすさや語呂を重視した、という説です。
私たちはお風呂に入るときを除き、一日中なにかしらの服を着ています。 時間にすれば一日のうち23時間以上と、衣服に接する時間が圧倒的に長い!
生命を維持するためにまず優先されるものは、寒さや暑さなどから身体を守るための衣服です。 次に飢えをしのぐための食事、安全を確保するための住居が大切となります。
赤ちゃんが生まれたときのことを考えてみましょう。
体温調節が未熟な赤ちゃんは、まず体を拭かれておくるみに包まれ(衣)、母乳やミルクを飲み(食)、ベッドに置かれます(住)。
衣食住は、人が生まれてから触れるものの順番そのものです。
衣、食、住とは、それぞれを整えるための労力の順番。 食事作りや家を快適に整えることよりも、衣服が最初に来るのはなぜでしょうか?
それは、昔は衣服を手に入れるにはとても手間がかかっていたから。
縄文時代、服は麻で作られていて、半袖半ズボンの上下を作るのに1年以上かかっていたと考えられています。 昭和の時代でも、家族の服は仕入れた布を使い母親が手作りする、ということがまだ当たり前でした。
気軽に服を買える令和の暮らしからは想像しにくいですが、昔は衣を整えることは大変だったのです。
人も動物も、食事をとり、安全な家で眠る点では同じです。 しかし人が動物と明らかに違うのは、衣服を着ること。
最初に衣があるのは、衣食住が“人”の生活に必要なものだと明らかにするため。 納得がいきますね。
社会性と衣には深いつながりがあります。 人は社会性を持つ生き物で、一人では生きていけません。
社会で他人と生きていくため、まず自分とは何かを確立する必要があります。 衣服に限らず、作法や知識を身につけることで、初めてしっかりと社会に向かい合うことができます。
次に集団で社会生活を営み、食事などの共同作業を通じて絆を深めていきます。 そして新たに定住の場所を作ります。
社会で暮らすため、私たちは衣、食、住を順番に確立していくのですね。
日本には八百万の神と言われるほど、たくさんの神様がいます。 衣食住の神様? もちろんいますよ!
衣食住を司る神様は、豊受大御神(とようけのおおみかみ)という神様。 伊勢神宮の豊受大神宮に祀られています。 豊受大神宮では、食事に始まる生活全般を正しく豊かにすることが大切だとされています。
衣食住の中で、最初にあるのは「衣」。 食は食べ物、住は住居と、生きるために必要不可欠なものとしてわかりやすいですね。
一方で衣と聞くと、服?ファッションが大事?と思う人も多いのでは。
ここからは、私たちが生きていく中で、衣にどんな役割があるのかをお伝えします。
ファッションだけではない衣の大切な役割を知ると、衣食住のなかで衣が最初にあることに、きっと納得できるはずです。
衣服としての衣は、暑さ寒さから私たちの身体を守り、快適な生活を送る手助けをしてくれます。 現在私たちが地球のどこでも暮らすことができるのは、衣服という体温調節技術が進歩したおかげです。
衣には、様々な外的な危険や環境から体を守る防護機能があります。 怪我や紫外線、害虫などから身を守ることで、私たちは快適に社会生活を送ることができます。
衣はその人の所属するコミュニティを表し、帰属意識を高めることができます。 また、個性というアイデンティティを表現する手段でもあります。
例えば……
衣はただの布ではなく、人が社会で生活する中で必要な多くのことを表現しています。
TPOとは、Time/Place/Occasionの頭文字を取ったもの。 マナーを守り、相手に失礼のないよう場面に応じた服装や行動をすることです。
TPOに合わない服装をしてしまい、違和感を覚えてなんとなく落ち着かない。 そんな覚えはありませんか?
TPOに応じた服装には、皆が快適で、秩序ある安定した社会を維持するという大切な役割があります。
人が衣を着る理由の一つは、見られると恥ずかしいものを隠すため。 そう、人には羞恥心があります。
衣には、着ることで羞恥心を和らげ、私たちが社会で安心して暮らせるようにする役割があります。
休日はリラックスした服装でのんびり過ごす人が、仕事に向かう日にはパリッとしたスーツに身を包み、テキパキと仕事をする姿を思い浮かべてください。
服を着替えることで内面の意識も切り替わり、歩き方や喋り方も別人のように変わってしまいます。 これも衣の持つ力!
日本語の衣食住の意味や、衣の持つ役割についてお伝えしてきました。 ちょっと目線を変えて、世界の他の言語での衣食住を見ていきましょう。
次の4つの言語は日本語とは違い、食・衣・住の順番になっています。
衣食住に対する考え方の違いはあるのでしょうか? ここで欧米の英語圏に約10年住んだ筆者が、現地の衣食住について感じたことをお伝えします。
現地の欧米人の大半は、ブランドよりも機能性を優先した服装を好みます。 それぞれが心地よくて好きなものを着ていれば良いでしょ、という意識を感じました。
衣よりも食や住へのこだわりが強く、例えば子どもの誕生日パーティーへケータリングサービスを呼んで友人をもてなすことは当たり前。 また築100年近い家をリフォームして住み続ける人も珍しくなく、家への愛着の強さは印象的でした。
日本語と同じように、衣・食・住の順に並ぶ言語もあります。
韓国は三方を海に囲まれ、日本と同じ東南アジアにあって気候も似ていて、文化的な交流も古くからあります。
また明治時代の日本が、憲法や医学、政治など近代化にあたり手本にしたのはドイツ。 ドイツは敗戦国で、製造業をメインに経済成長してきた国という共通点もあります。
同じ衣食住という順には、歴史や関係性が反映されているのかもしれません。
ちなみに筆者の欧米生活でも、ブランドやおしゃれさにこだわり、衣に気を使っていると感じる人は、たいてい韓国人か日本人でした!
中国語では、衣食住にさらに「行」という項目が加わります。
「行」とは交通やインフラのことを指し、旅行のように「外に行く」という意味も。 確かに、行も社会生活に必要な基盤ですね。
衣食住をしっかり整えることで、初めて人は人間的で、心豊かな社会生活を送ることができます。 そして衣食住の中で衣が最初にあるのは、私たちが社会的な生き物だからに他なりません。
衣は、私たちが社会生活を快適に過ごすために、多くの大切な役割を果たしています。 その人のさまざまな個性や生まれもったルーツを表現できるのも、衣。
衣を大切に考えることは、自分自身を形作るものを大切にすることと同義だと、筆者は思います。
衣食住への理解を深め衣を大事にすることが、より心豊かな日々を過ごすためのヒントとなれば嬉しいです。
「衣食住」という言葉は、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
では衣食住が意味するもの、その由来をご存知でしょうか。
衣食住の順番や、衣食住の最初に衣がある意味が気になりませんか?
このコラムでは衣食住という言葉の意味やその由来、衣の持つ大切な役割もお伝えします。
より心豊かな日々を過ごすための、小さなヒントにしていただければ幸いです。
目次
衣食住の意味と、その由来
衣食住とは、私たち人が生きていくために欠かせない、生活の基盤のことです。
その漢字が表す通り、「衣服」「食事」「住まい」を意味しています。
衣食住という言葉が日本で使われ始めたのは、近代化が始まった1880年代と言われています。
では衣食住が大切、という考え方はいつどこで生まれたのでしょうか?
"衣食足りて礼節を知る”とは、紀元前800年ごろの古代中国・斉国の首相、管仲が残した名言です。
偉大な政治家で思想家だった管仲は、「社会が健全に機能するには、まずそれぞれの人の暮らしが安定し衣食が満ち足りていることが大切だ」と説きました。
後の孔子も、論語の中で「国を治めるためには、まず人々の暮らしを豊かにしよう。そして次に人の心を教えよう」と説いたと伝えられています。
安定した社会で心豊かに暮らすため、人はまずは暮らしの基盤を整える必要がある。
これが衣食住という言葉の由来なのです。
衣、食、住という順番に理由はあるの?
衣食住という言葉には、衣、食、住という3つの要素が入っていて、どれも大切です。
なぜ衣食住という順番になったのでしょうか?
これ!という正解はないのですが、その理由には諸説あります。
言いやすさ
衣食住の中で、衣はいろはの「い」と同じ発音。
言いやすさや語呂を重視した、という説です。
人が接する時間の長さ
私たちはお風呂に入るときを除き、一日中なにかしらの服を着ています。
時間にすれば一日のうち23時間以上と、衣服に接する時間が圧倒的に長い!
生命を維持するための優先順位
生命を維持するためにまず優先されるものは、寒さや暑さなどから身体を守るための衣服です。
次に飢えをしのぐための食事、安全を確保するための住居が大切となります。
人が生まれてから触れる順番
赤ちゃんが生まれたときのことを考えてみましょう。
体温調節が未熟な赤ちゃんは、まず体を拭かれておくるみに包まれ(衣)、母乳やミルクを飲み(食)、ベッドに置かれます(住)。
衣食住は、人が生まれてから触れるものの順番そのものです。
かかる労力の順
衣、食、住とは、それぞれを整えるための労力の順番。
食事作りや家を快適に整えることよりも、衣服が最初に来るのはなぜでしょうか?
それは、昔は衣服を手に入れるにはとても手間がかかっていたから。
縄文時代、服は麻で作られていて、半袖半ズボンの上下を作るのに1年以上かかっていたと考えられています。
昭和の時代でも、家族の服は仕入れた布を使い母親が手作りする、ということがまだ当たり前でした。
気軽に服を買える令和の暮らしからは想像しにくいですが、昔は衣を整えることは大変だったのです。
人と動物の決定的な違い
人も動物も、食事をとり、安全な家で眠る点では同じです。
しかし人が動物と明らかに違うのは、衣服を着ること。
最初に衣があるのは、衣食住が“人”の生活に必要なものだと明らかにするため。
納得がいきますね。
社会性
社会性と衣には深いつながりがあります。
人は社会性を持つ生き物で、一人では生きていけません。
社会で他人と生きていくため、まず自分とは何かを確立する必要があります。
衣服に限らず、作法や知識を身につけることで、初めてしっかりと社会に向かい合うことができます。
次に集団で社会生活を営み、食事などの共同作業を通じて絆を深めていきます。
そして新たに定住の場所を作ります。
社会で暮らすため、私たちは衣、食、住を順番に確立していくのですね。
雑学:衣食住の神様はいるの?
日本には八百万の神と言われるほど、たくさんの神様がいます。
衣食住の神様?
もちろんいますよ!
衣食住を司る神様は、豊受大御神(とようけのおおみかみ)という神様。
伊勢神宮の豊受大神宮に祀られています。
豊受大神宮では、食事に始まる生活全般を正しく豊かにすることが大切だとされています。
衣食住の最初、衣の大切な役割とは?
衣食住の中で、最初にあるのは「衣」。
食は食べ物、住は住居と、生きるために必要不可欠なものとしてわかりやすいですね。
一方で衣と聞くと、服?ファッションが大事?と思う人も多いのでは。
ここからは、私たちが生きていく中で、衣にどんな役割があるのかをお伝えします。
ファッションだけではない衣の大切な役割を知ると、衣食住のなかで衣が最初にあることに、きっと納得できるはずです。
体温調節
衣服としての衣は、暑さ寒さから私たちの身体を守り、快適な生活を送る手助けをしてくれます。
現在私たちが地球のどこでも暮らすことができるのは、衣服という体温調節技術が進歩したおかげです。
身体の保護
衣には、様々な外的な危険や環境から体を守る防護機能があります。
怪我や紫外線、害虫などから身を守ることで、私たちは快適に社会生活を送ることができます。
コミュニティやアイデンティティを表現
衣はその人の所属するコミュニティを表し、帰属意識を高めることができます。
また、個性というアイデンティティを表現する手段でもあります。
例えば……
衣はただの布ではなく、人が社会で生活する中で必要な多くのことを表現しています。
TPO
TPOとは、Time/Place/Occasionの頭文字を取ったもの。
マナーを守り、相手に失礼のないよう場面に応じた服装や行動をすることです。
TPOに合わない服装をしてしまい、違和感を覚えてなんとなく落ち着かない。
そんな覚えはありませんか?
TPOに応じた服装には、皆が快適で、秩序ある安定した社会を維持するという大切な役割があります。
羞恥心を隠す
人が衣を着る理由の一つは、見られると恥ずかしいものを隠すため。
そう、人には羞恥心があります。
衣には、着ることで羞恥心を和らげ、私たちが社会で安心して暮らせるようにする役割があります。
変身スイッチ
休日はリラックスした服装でのんびり過ごす人が、仕事に向かう日にはパリッとしたスーツに身を包み、テキパキと仕事をする姿を思い浮かべてください。
服を着替えることで内面の意識も切り替わり、歩き方や喋り方も別人のように変わってしまいます。
これも衣の持つ力!
番外編:世界の「衣食住」って何て言うの?
日本語の衣食住の意味や、衣の持つ役割についてお伝えしてきました。
ちょっと目線を変えて、世界の他の言語での衣食住を見ていきましょう。
食・衣・住の順に並ぶ言語
次の4つの言語は日本語とは違い、食・衣・住の順番になっています。
衣食住に対する考え方の違いはあるのでしょうか?
ここで欧米の英語圏に約10年住んだ筆者が、現地の衣食住について感じたことをお伝えします。
現地の欧米人の大半は、ブランドよりも機能性を優先した服装を好みます。
それぞれが心地よくて好きなものを着ていれば良いでしょ、という意識を感じました。
衣よりも食や住へのこだわりが強く、例えば子どもの誕生日パーティーへケータリングサービスを呼んで友人をもてなすことは当たり前。
また築100年近い家をリフォームして住み続ける人も珍しくなく、家への愛着の強さは印象的でした。
衣・食・住の順に並ぶ言語
日本語と同じように、衣・食・住の順に並ぶ言語もあります。
韓国は三方を海に囲まれ、日本と同じ東南アジアにあって気候も似ていて、文化的な交流も古くからあります。
また明治時代の日本が、憲法や医学、政治など近代化にあたり手本にしたのはドイツ。
ドイツは敗戦国で、製造業をメインに経済成長してきた国という共通点もあります。
同じ衣食住という順には、歴史や関係性が反映されているのかもしれません。
ちなみに筆者の欧米生活でも、ブランドやおしゃれさにこだわり、衣に気を使っていると感じる人は、たいてい韓国人か日本人でした!
衣・食・住+α
中国語では、衣食住にさらに「行」という項目が加わります。
「行」とは交通やインフラのことを指し、旅行のように「外に行く」という意味も。
確かに、行も社会生活に必要な基盤ですね。
まとめ: 心豊かな暮らしの基礎は、整った衣食住にあり!最初にある衣は、人が“社会で快適に暮らすため”に大切なものでした。
衣食住をしっかり整えることで、初めて人は人間的で、心豊かな社会生活を送ることができます。
そして衣食住の中で衣が最初にあるのは、私たちが社会的な生き物だからに他なりません。
衣は、私たちが社会生活を快適に過ごすために、多くの大切な役割を果たしています。
その人のさまざまな個性や生まれもったルーツを表現できるのも、衣。
衣を大切に考えることは、自分自身を形作るものを大切にすることと同義だと、筆者は思います。
衣食住への理解を深め衣を大事にすることが、より心豊かな日々を過ごすためのヒントとなれば嬉しいです。