発酵食品の王様『納豆』の健康効果とその歴史

皆さんは、手軽な健康食品といえば何を思い浮かべるでしょうか?
地域差があるかもしれませんが『納豆』だよ!という方が多いと思います。

納豆

朝ご飯のとき、卵やネギと一緒にご飯にのせて食べると、美味しいですよね。
発酵食品の代表選手として、和食に欠かすことのできない食品です。
今回は、そんな『納豆』の効能や、いつ頃から食べられるようになったのかなど、歴史や豆知識について、紹介したいと思います。

日本最古の『納豆』は…?

納豆の起源ははっきりとは判っておらず、有力な説がいくつか浮上している状態です。
ただ、納豆のもとになる大豆は、なんと縄文時代から栽培されていたということです。
弥生時代になると、竪穴式住居の内部には藁が敷かれるようになり、煮炊き用の炉もあったため、よい感じの室温と湿度になり、保管されていた大豆が偶然、納豆(糸引き納豆)になったのではないかと考えられています。

納豆という言葉が最初に出てくる文献は、平安時代の中期に藤原明衡(ふじわらのあきひら)によって書かれた『新猿楽記(しんさるがくき)』という書物です。
そして、室町時代には、納豆(糸引き納豆)は日常食になっていました。

『納豆』という名前の由来

納豆の名前の由来については、二つの説が最も有力のようです。

〈説.1〉お坊さんの台所説

お坊さんが納所(なっしょ)と呼ばれる、お寺の倉庫で納豆を作っていて『納所豆』と呼んでいたのものが、いつの間にか『納豆』になったというものです。
ちなみに納所は雑務をする場所や、台所代わりに使用される場所だそう。

〈説.2〉納めるが由来の説

二つ目の説は、納豆が桶や壺などの容器に貯蔵されていたことから『壺に納めた豆』、あるいは『神様に納めた豆』、『将軍に納めた豆』などから『納豆』になったのではといわれています。

『納豆』の分類と種類

納豆は、大別すると『糸引き納豆』と『塩辛納豆』の二つに分類可能です。
普段、私たちが食べている納豆は『糸引き納豆』と呼ばれています。
蒸した大豆を温度管理し、稲藁に多く生息している納豆菌を植えつけて繁殖させたものです。

『塩辛納豆』は、蒸した大豆・小麦・こうじ菌を塩水に浸して発酵・熟成させたもので、作るのに数カ月から1年かかり、乾燥していてネバネバがありません。

『納豆』の分類と種類

糸引き納豆

丸大豆納豆(粒納豆)やひきわり納豆は『糸引き納豆』に分類され、日本人には一番馴染み深いのがこちら。ここからさらに三種類に分けられ、丸大豆納豆・ひきわり納豆・五斗納豆(ごとなっとう)です。

丸大豆納豆は、大豆を丸ごと蒸して作っている納豆で、大豆の大きさによって、さらに『大粒・中粒・小粒・極小粒』に分けられています。

ひきわり納豆は、大豆を炒ってひき、皮を取り除いてから納豆菌をつけて発酵させています。
丸大豆納豆が刻まれたものだと勘違いしている人が、多いのではないでしょうか。
より多くの納豆菌が表面につくため旨味が強く、皮がないので消化し易いということです。

五斗納豆は、ひきわり納豆に米こうじと塩を加えて発酵・熟成させたもので、主に山形県の米沢地方で作られています。
五斗(約90リットル)の大樽で仕込まれることから五斗納豆と呼ばれていました。
現在は『雪割納豆』として販売されています。

塩辛納豆

塩辛納豆は、寺納豆や浜納豆とも呼ばれています。
糸引き納豆のような派生型はないのですが、原形となるものは、奈良時代に中国からお坊さんが持ち込んだといわれており、調味料として使われていました。

実は中国が最古の納豆?歴史的人物も登場

ここまで、糸引き納豆と塩辛納豆を紹介しましたが、塩辛納豆の原形となるものは中国から伝来しています。
仏教を学ぶために中国に渡っていたお坊さんが、帰国のときに持ち帰ったと考えるのが自然で『納豆』と呼ばれるようになったのも、お寺が関係しているという説が有力です。

塩辛納豆の起源『久喜(くき)』・『豆鼓(とうち)』

塩辛納豆の起源について、より詳しく見てみると、日本に持ち込んだのは有名な鑑真(がんじん)だという記録が残っています。唐招提寺の鑑真さんですね。
鑑真が持ち込んだものは『久喜』または『豆鼓』と呼ばれ、水に浸した黒大豆を蒸し、こうじ菌と食塩を加えて発酵させ、天日干ししたものです。
漢方の世界では「淡豆豉(たんとうし)」とも呼ばれ、体の熱を冷ますために風邪薬としても使われていたのだとか。

塩辛納豆の起源『久喜(くき)』・『豆鼓(とうち)』

現在でも、この流れを汲む納豆が京都の大徳寺・天龍寺・一休寺、浜松の大福寺などで作られており『大徳寺納豆』と浜松の『浜納豆』が有名で、販売もされています。

作るのに手間がかかる分うまみの濃縮された味で、料理に加えると本格的な中華料理の味にぐんと近づくそう。
ペーストにした豆豉に唐辛子等を加えた豆豉醤(トウチジャン)という中華調味料も販売されていますので、見かけたらゲットしてみてはいかがでしょうか。

糸引き納豆の起源

糸引き納豆の起源は、恐らく、弥生時代の偶然だった可能性が高いと思われます。
ただ、聖徳太子と源義家にまつわる伝説も残っていますので、軽く紹介しておきます。

聖徳太子の伝説

聖徳太子が滋賀県にきたとき、愛馬の餌として食べさせていた煮豆が余りました。
もったいないと、藁で包んで木にぶら下げておいたところ、豆が糸を引き出します。
食べて見ると美味しく、聖徳太子から作り方を教えてもらった人々が糸引き納豆を広めたという説です。

源義家の伝説

平安時代、源義家が岩手県で起きた反乱を討伐するために京都からの移動中、馬に運ばせていた煮豆を詰めた藁の俵を開けたところ、豆が糸を引いていたということです。
食べて見ると美味しく、栄養もありそうなことから、討伐からの帰り道、各地に広めたと伝わっています。
源義家は、源頼朝のご先祖様です。

アジアで食べられている『納豆』

私たちが知っている納豆とは少し異なりますが、アジアやアフリカなどの海外にも納豆に似た大豆の発酵食品が結構あります。
茹でた大豆に何らかの菌をつけて発酵させたものです。
ここでは、アジアの中からインドネシアのテンペ、タイのトゥアナオ、ミャンマーのペーボゥを紹介してみようと思います。

インドネシアのテンペ

テンペは、茹でた大豆をバナナの葉っぱで包んで作ります。
国が変わると、バナナの葉っぱが登場するんですね。

インドネシアのテンペ

テンペ菌というカビの一種で発酵させ、ブロック状にして仕上げています。
日本の納豆のようなネバネバやニオイはなく、白い外観です。
そのまま食べることもありますが、通常は揚げ物や炒め物に使用されます。

タイのトゥアナオ

トゥアナオは、タイを中心にラオスやミャンマーでも食べられている発酵食品です。
ここでも、バナナの葉っぱが使われ、かなりのバリエーションがあります。
トゥアナオも茹でた大豆をバナナの葉っぱで包み、数日間発酵させますが、そのあとは、ペースト状にして、煎餅のような形状で乾燥させることが多いようです。
煎餅状にしたものはトゥアナオ・ペーン(煎餅のように食べる) やトゥアナオ・ケップ(汁物や麺類の具に使用)と呼ばれています。

タイのトゥアナオ

また、粒のままのものをトゥアナオ・サー(炒め物などに使用)、ひきわり状にしたものをトゥアナオ・ム(調味料として使用)、ブロック状にしたものをトゥアナオ・ウ(調味料として使用)と呼び、様々な食べ方があるようです。

ミャンマーのペーボゥ

ペーボゥは、分かりやすくいえば納豆煎餅です。
茹でた大豆を二日ほど発酵させ、潰した大豆にお好みで味付けやトッピングを行います。
煎餅状にしたら二日ほど天日干しして完成です。
完成したペーボゥは、火で焙ったり、揚げたりして、そのままおかずとして食べることもあれば、粉末にして調味料として使用することもあるそうです。

『納豆』の豆知識

ここでは、納豆をより美味しく食べるための、一粒サイズの雑学たちを紹介します。

『納豆』の賞味期限って?

納豆の賞味期限は、冷蔵の場合、1週間から10日で設定されています。
発酵食品であって、腐っている訳ではないため、賞味期限が数日過ぎてしまっていたとしてもほとんどの場合は美味しく食べることが可能です。
納豆菌が頑張っているため、ほかの菌は繁殖しにくいようですが、それでも、異常なニオイや、水っぽい時は止めてくださいね。
また、納豆菌は寒さに強いため、納豆は1カ月ぐらいまでなら冷凍保存可能だそう。

『納豆』を 混ぜる回数

健康成分であるナットウキナーゼは、混ぜるほどによく出ます。
ねばねばする程、胃酸から保護され体内に効率的に吸収されるそうです。

納豆を混ぜる理想的な回数は、最低でも25回、頑張って110回から400回は混ぜるという方も。タレやからしは、混ぜたあとに入れた方が、ナットウキナーゼにやさしいようですよ。

なんで容器は発泡スチロール?

納豆の容器は発泡スチロールががほとんど。その理由はひとえに納豆のためを考えてのことです。

なんで容器は発泡スチロール?

納豆を製造する最後の工程が発酵・熟成ですが、発酵させる際の温度・湿度・酸素の管理が非常に重要になります。
発酵に最適な温度が保たれ、空気穴を開けやすく酸素が取り込める形状に加工可能な発泡スチロールは、納豆にとって理想的な素材だということです。

また、納豆の上に貼られているフィルムは、納豆の乾燥を防ぐためのものだそうです。ご存じでしたか?

『納豆』の消費 ランキング

納豆といえば水戸を思い浮かべる方が多いかも知れませんね。
総務省が2月7日に発表した2023年の統計を確認してみましょう。

統計よると、納豆消費額日本一は盛岡市で年間6,810円の支出になっていました。
2位は秋田市(6,539円)・3位は水戸市(6,450円)・4位は前橋市(6,389円)・5位は山形市(6,378円)……。
水戸市が上位に食い込み、関西の都市は上位にランクインしていません。イメージどおりの結果だったでしょうか。
因みに、前年1位だった福島市は9位に転落していて、納豆バトルはかなりの激戦のようです。

スーパーフード『納豆』

誰もが認める健康食品「納豆」。ただ、どんな健康効果があるのかについては、よく知らない方も多いはず。

実は、良質なタンパク質・ミネラル・ビタミンE・Kといった骨や血管の形成に欠かせない栄養素が豊富に含まれている一方で、糖質はほとんど含まれていないスーパーフードなのです。
納豆のように、低カロリーでありながら栄養豊富で抗酸化作用を単体で持つ食品は、そうはありませんよ。

更に!ナットウキナーゼには、血管の内皮細胞を活性化させ、血液にできた血の塊を溶かす『血液サラサラ効果』があるのです。
おまけに血圧の上昇を抑制する成分も含まれているため、高血圧対策にもなります。

全部まとめて納豆におまかせ。これぞスーパーフード。

『納豆』との相性が良い食品、悪い食品!?

以上納豆のスーパーフードっぷりを挙げてまいりましたが、相性の良い食品と食べることで、もっと効果的に体内に吸収することができるようになります。
代表的なものは、ネギ・ニラ・アボガド・チーズ・山芋・キムチなど。

一方、相性が悪いのは、熱々のご飯と生卵になります。
ちょっと待ってくれといいたいですよね。

『納豆』との相性が良い食品、悪い食品!?

ナットウキナーゼは、50度を超える熱に弱いというのです。
また、卵白に含まれているアビジンという成分が、栄養素の吸収を邪魔してしまうため、ご飯を少し冷ましたり、黄身だけを使うという一工夫をするといいかもしれません。

ただ全くマイナスになるということはありませんので、頭の隅にでも置いて、ご飯と卵と納豆を堪能してみてはいかがでしょうか。

大豆が『納豆』になるまで

納豆菌は、増殖するときに大豆のタンパク質を分解しつつ、私たちに有益な各種ビタミンや酵素類を作り出してくれます。
納豆の発酵は醤油や味噌に比べるとはるかに短く、約20時間で終了します。
製造開始から出荷まで3日程度のようです。

納豆の製造は大豆の洗浄に始まり、水に浸され(浸漬)二倍程度に膨れ上がります。
圧力釜で蒸しあげてから、培養した納豆菌を噴霧、容器に充填という道のりを経て40度前後に保たれた発酵室で約20時間発酵・熟成。
私たちの手元に届きます。

まとめ

日本人の健康と食生活に欠かすことのできない納豆。
その歴史は、飛鳥時代の聖徳太子や弥生時代にまで遡れるようです。
納豆という発酵食品に着目し、現在まで食文化を繋いできた日本人の知恵には、驚かされますね。

気軽に食べることができる庶民の味方『納豆』で健康寿命を延ばし、毎日の生活を大いに楽しみましょう。

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