藍染の糸が織りなすジャパンブルー無限のバリエーション、松阪木綿「みいと織」の粋

皆さんは、藍染というと、どんなものを思い浮かべるでしょうか?
阿波藍・有松絞りなどが有名ですが、日本に限ったことではなく、外国でも藍染は行われています。
そんな藍染の中に、布や反物を染めるのでなく、先に染色した糸を使って反物を織っている松阪木綿「みいと織」というものがあるのをご存知でしょうか?
三重県松阪市を中心に盛んに作られていた藍染で、天然由来の藍染糸を使って独特の縞柄模様やグラデーションを表現しています。
そのため、糸の選び方を工夫すれば、デザインのバリエーションは、ほぼ無限です。

今回は、そんな松阪木綿「みいと織」の魅力について、ご紹介したいと思います。

江戸時代に大流行、松阪木綿「みいと織」とは?

江戸時代に大流行、松阪木綿「みいと織」とは?

歌舞伎役者が縞柄の着物を着ることを「マツサカを着る」と、今でもいうそうです。
歌舞伎は、江戸時代における庶民文化の象徴でした。

江戸時代の後半では、幕府から倹約令が出されて贅沢が禁じられ、おしゃれな着物が着られなくなった時期があります。歌舞伎役者の七代目市川團十郎が、贅沢の元凶として江戸から追放されたこともありました。

そんなことがあっても、黙っている江戸っ子ではありません。
どうにかして、役人達の鼻を明かし、着飾っておしゃれできないだろうか?
そんな江戸っ子達の目に留まったのが松阪木綿です。
松阪木綿は、遠目からは無地のように見えますが、実は、様々な縞模様が施されていてバリエーションも豊富でした。それが「おしゃれ」で「粋」だと評判になり、大人気になったのです。

江戸の人口は100万人といわれていますが、松阪木綿は、年間に50万反以上を売り上げたときもありました。江戸っ子の反骨精神を満たし、衣食住の「衣」の部分で、江戸庶民だけでなく日本人の生活を大きく支えていたのが松阪木綿です。

大流行は松阪商人の仕掛け!?

松阪木綿「みいと織」が、江戸の街に浸透したのには、もう一つ理由があります。
それは、越後屋の三井家に代表される、松阪商人の存在です。

松阪商人は、地元で「みいと織」と呼ばれていた反物を、江戸では「松阪木綿」と銘打ち、ブランド化して売り出しています。
つまり、みいと織と松阪木綿は同じものなのです。

「店前売り・切り売り・正札販売・現金掛値なし」といった新しい商法で、広く商売をしていた松阪商人の店舗は、江戸の呉服屋のうち、実に七割を占めたそうです。
そのお陰もあり、江戸庶民が気軽に松阪木綿を身に付けることができるようになりました。

松阪木綿はどんな風に作られている?

松阪木綿はどんな風に作られている?

それでは、松阪木綿はどのように作られているのでしょうか?
大別すると、糸を染める工程と、糸を織る工程です。
なんだ、それだけ?と思われるかも知れませんが、この二つの工程が更に細分化されています。
全てを説明することはできませんが、概略をお伝えしましょう。

糸の染め

まずは、木綿糸への染色です。
染色は天然の藍を染料の原液として用い、ほぼ手作業で行われます。
原液は、鰻の秘伝ダレのように、長年に渡って、継ぎ足し・継ぎ足しされていて、熟成した「すくも」と呼ばれています。

染めの工程は、かせづくり・染め・糸干し・糊付け・糸干しの5工程です。
糸は「かせ」と呼ばれる形状にまとめられ、すくもに小麦粉・石灰・苛性ソーダを加えた染料に浸けられます。
染料の色は、16種類の濃さに分けられていて、仕上がりの色に応じて、薄い染料から濃い染料の順で、何回かに分けて染色されます。

染めが終わると糸干しです。
晴れの日は屋外で天日干し、曇りの日は屋内干しになります。

干しが終わった糸には糊付けが行われます。
糊付けは、織りの工程で糸が切れないようにするための作業です。
織りでは、経糸と緯糸で織り込んでいくことになりますが、力が加わって切れやすい経糸に、より多くの糊が使われます。
糊付け後、糸は脱水・天日干しされ、織りの工程に進みます。

織りの工程

織りの工程は、かせ糸巻き・管巻き・整経・織り・検品の5工程です。

糸は、かせと呼ばれる状態で染色されていて、織機で織るためにボビンに巻き取り、管巻き・整経をして織機にかけられます。

整経の作業はとても重要です。
松阪木綿の特徴である縞模様は、整経によって決まります。
使う糸の色と本数を調整して、様々な縞模様が表現されることになるのです。

織りが終わると、汚れや異物のチェックが行われ、糸のはみ出しがあれば修復されます。
このような工程を経て、反物が完成するのです。

おしゃれな藍染、その種類と柄

おしゃれな藍染、その種類と柄

藍染の色は濃さにより、現在は4種類に分類されています。
最も薄い色は「甕覗」と呼ばれ、濃くなるに従い「浅葱」・「納戸」・「紺」と呼ばれます。

― 甕覗 ―

淡い青色で「柔らかい緑みの青」です。
藍染は、白い糸を何度も藍甕に浸けては取り出す作業を繰り返しますが、甕覗は少し浸した程度に染めただけという意味で、このように呼ばれています。

― 浅葱 ―

明るい青緑色です。
平安時代からある伝統色で、薄い葱の葉色に因んでいます。
新撰組の羽織に使われた色として有名ですね。

― 納戸 ―

緑色を帯びた深い青色です。
江戸城で、城内の納戸垂れ幕や風呂敷に使われていたため「御納戸色」とも呼ばれています。

― 紺 ―

藍染の中では最も濃い色で「僅かに赤みを含んだ青色」です。
染める作業を何度も繰り返さないと出ない色のため、手間がかかります。
平安時代からの伝統色で、最も濃い紺は褐色(勝色)として縁起を担ぐ武士に好まれました。

この4種類全てを使用した縞柄が、松阪木綿の代表的縞柄「鰹縞」となります。
現在は45種類の縞柄が生産されていて、重ね格子・子持弁慶・碁盤格子・微塵格子・大名縞などが有名です。

カヤの松阪木綿「みいと織」

日本人が培ってきた伝統の息づかいを感じとり、現代のライフスタイルに活かすご提案をしている倭物やカヤ。今回は、松阪木綿「みいと織」と岡山「井原デニム」がコラボした3商品を紹介します。

デニムみいと織メンズパンツ デニムみいと織メンズパンツ ¥22,000税込

職人手作りのもんぺパンツです。履くほどに馴染みます。メンズパンツに分類していますが、性別を問わず着用可能です。岡山県の井原デニムをベースに、ポケット部分にはワンポイントで三重県の松阪木綿「みいと織」を使用し、4種類の生地で巧みにデザインしています。

デニムみいと織羽織 デニムみいと織羽織 ¥22,000税込

岡山県の井原デニムをベースに三重県の松阪木綿「みいと織」とコラボしました。4種類の生地を巧みに使用している短丈の羽織です。性別を問わず着用可能で、職人の手作りとなります。こたつにも似合いますし、デニムベースなので洋室での防寒にもおしゃれなのではないでしょうか。

デニムみいと織地下足袋 デニムみいと織地下足袋 ¥13,200税込

とても履きやすく動きやすい地下足袋です。昔ながらの熟練の技で、一足ずつ手作業で作られています。岡山県の井原デニムをベースに、三重県の松阪木綿「みいと織」を小鉤周りの裏地に使用し「粋」なデザインになっています。

まとめ

藍染した糸で反物を作るという、独自の技法を用いている松阪木綿。
そのデザインは、伝統と現代性を兼ね備えていて、洗うほどに色が冴え、使い続けるほどに馴染んでくるといわれています。

ジャパンブルーと呼ばれる藍染を粋に表現している松阪木綿は、三重県の指定伝統工芸品とされ、その紡織習俗は、国の無形民俗文化財にも選定されています。
皆さんもこれを機会に、日本の心の一つともいえる松阪木綿「みいと織」に触れてみてはいかがでしょうか。

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