水引に種類があるのはなぜ?知って正しく伝える心

結婚や就職などのお祝い、通夜や告別式などのお悔やみごとのシーンで…生活の節目節目で目にする機会がある水引。とはいえ普段から使うことはあまりないもの。
いざ選ぶとなると、色や形様々な水引に惑わされた経験がある方もいらっしゃると思います。

選び方を間違ってしまうと、せっかくの気持ちを正しく伝えることができないかもしれません。
正しい知識で、日本のすてきな習わしを使いこなしましょう。

この記事では、水引の意味や由来を解説します。
ぜひ、水引の使い方を知り、思いを伝える身近な手段として活用してください。

水引とは?

水引とは?

水引を簡単に説明すると、「贈答品の包み紙や、ご祝儀袋などに用いられている飾り紐」のこと。

ただ、包装紙を留めるために存在しているリボン・ラッピングとはまったく根本が異なるものなのです。
結び目の色や形、本数などで思いの丈を伝える重要な役割を持った奥深い存在。
水引に込められた日本人の粋な心も一緒にお伝えします。

水引の結び方の種類

多岐にわたる結び方にはそれぞれ名前と意味が有り、伝えたい気持ちをその形で表現しています。
添えられた飾り紐にメッセージをさりげなく込める。
日本人らしい奥ゆかしさが、水引という文化の源だと言えるでしょう。代表的な結び方をこちらでご紹介。

結び切り(真結び)

結び切り(真結び)

結び目の先端が上にくるように結んだ水引です。
簡単にほどけないように固く結ばれており、「同じことが起こらないように」という意味が込められています。
結婚や快気祝い、葬儀などの弔事に使われます。

蝶結び(花結び)

蝶結び(花結び)

最もよく使われる水引です。
簡単にほどくことができ、何度も結び直せることから、「何度繰り返しても良い」祝い事に適しています。
出産祝い・合格祝い・入学祝いなどに使われます。

あわじ結び

あわじ結び

結び切りの両端が輪になるように結ばれ、その形が「あわび」に似ているためその名が付いたと言われています。
基本的には結び切りと同じ意味合いですが、両端を引っ張るとさらに強く結ばれることから、「末永く続くように」という思いが込められているのが特徴です。
一度限りのお祝いやお礼、弔事、華やかな見た目から結婚式の御祝儀にも適しています。

・梅結び

梅結び

華やかな見た目でありつつも、ほどけにくい複雑で強固な結び方であることから「固く結ばれた絆」という意味を持つともいわれます。
祝い事であれば用途を問わず、婚礼から出産関係のお祝い事まで幅広く適した結び方です。

固く結ばれた結び目

ご紹介したものの他にも、引けば引くほど固くなる結び方がいくつもあります。
解いてしまうことを前提としたラッピングのリボンとは異なる点ですね。
これには水引ならではの奥ゆかしい理由があります。

ほどくことが難しい結びかたは、「同じことが起こらないように」という願いを表現しているのです。
これは二度と繰り返してほしくない出来事、お見舞いや弔事、結婚などに使われます。

逆に何度も解き結べる結び方は、何度あってもうれしい出来事…出産や進学などに使われます。
贈り物に願いを添えて渡す…なんとも素敵な文化ですね。

水引の持つ三つの意味

また、水引には三つの意味があると言われています。

一つ目は、未開封であることを証明するため。
封書のシーリングや、パッケージのシールと近い役割を担っています。

二つ目は、魔除けのためです。
水引には物事を浄化し清め、邪気を払う力があると言われています。
これは水で洗い流し浄めるという一般的なお浄めの手法から転じて、「水」を「引く」ことで浄める、からきています。

三つ目は、人と人とを結ぶという意味です。
引けば引くほど解けない水引には、固い御縁を結ぶという意味が込められています。

水引のなりたちは?

水引の文化が始まった当初は、縁起物を扱う際に使用されていました。
なりたちには諸説ありますが、有名な説でいくと、飛鳥時代遣隋使の小野妹子が献上品に紅白の麻ひもを結んだのが始まりと言われています。

室町時代に始まったという説もあります。
中国との貿易で、輸入品の区別に赤と白の縄が掛けられていたところ、日本側が贈答の習慣だと勘違いし取り入れた、というすこし面白いはじまり。

その後、贈答の習慣が広がるとともに水引の色や結び方のバリエーションが増えていき、故人を偲ぶ気持ちやお見舞いの気持ちなど、お悔やみの心付けにも使われるように。慶弔問わず日本人独特の奥ゆかしさを象徴する文化となったのです。
感謝や祈り、願いなどを表現する手段として、人々の生活の中で進化していったのですね。

水引の名前の由来は?

水引という名前の由来には、その製法が影響しています。
和紙をこより状にして水のりを引き、乾かして作ることから「水引」という名がついたと言われています。

水引の色にも意味がある

水引は、結び方だけではなく、色にも意味があります。

水引の色にも意味がある

また、今と違って染色には技術が必要とされていた昔は、高度な技術が必要な色や、染料が高価なものほど格式高く扱われていたようです。
高い順に、「金」「銀」「紫」「赤」「藍」「緑」「黄」「黒」と言われています。

水引の本数について

色や形と同じく水引の本数にも意味があり、慶事・弔事で使い分けます。
具体的なシーンを含めそれぞれご紹介します。

■慶事

・5本
慶事の際は基本的に奇数が使用され、中でも5本が一般的に使われる本数です。

・7本
よりていねいにお祝いしたい際には、7本を使う場合があります。
一般的に、金額が5,000円を超える場合は7本と言われていますが、あくまで正解はなく、臨機応変に選ぶのがおすすめです。

・10本
奇数が一般的な本数の慶事ですが、結婚のお祝いだけは例外で10本を使用します。
結婚は二組の家族がご縁を結ぶことから、基本の5本を2倍にした10本になると言われています。

「おめでたいこと」という意味を持つ慶事。
人生における、喜ばしいことや幸せなことを慶事と捉えます。
ライフイベントはもちろん、ビジネスの成功も慶事に含まれます。

・成長
お宮参り、七五三、入学、成人、結婚など

・長寿
還暦、古希、傘寿、米寿など

・ビジネス
開業、栄転、昇進、勤続、叙勲など

■弔事

・4本
弔事の際は基本的に偶数が使用されます。中でも、一般的に使用される本数は4本なので、迷ったら4本を選ぶと安心です。

・2本
一般的には4本が使われますが、より簡易的にしたい場合は2本を使うことがあります。

・6本
より気持ちを込めたい場合には、6本という選択肢があります。
とてもお世話になった方へ、深い感謝の気持ちを伝えたい場合は、6本を使うとよいでしょう。

ただこの本数の解釈はいくつかに別れていて、元来ではこの本数が使用されていましたが、現代では比較的まとまりのよい数でもある5本または7本が主流となっています。
ですから、お祝いごとと同じ1、3、7、10本を基本にしてもよいとされます。
実際に、水引の老舗店舗さんでも、偶数の水引は長年取り扱っていないところもあるようです。

弔事には、「とむらう」という意味があり、お悔やみごと全般を指しています。
亡くなった方への感謝や哀悼の意を表すために執り行われる行事です。

  • 通夜
  • 告別式
  • 初七日法要
  • 四十九日法要

また、弔事には熨斗は付けずに用意しましょう。この理由は後ほど解説します。

このようにシーンによって本数が異なる水引ですが、使われない本数もあります。
それは、9本です。「苦」を連想させることから、縁起が悪く避けられています。

水引の本数を選ぶ際は、一般的な習わしに加え、用途や送り先との関係、地域性を考慮して選ぶことも大切です。

「水引」と「熨斗」

水引とよく一緒に用いられるものがありますね。「熨斗(のし)」です。
こちらも贈る相手の幸福を願った飾りです。

「水引」と「熨斗」

熨斗は、お祝いやお礼の品を包む「掛け紙」に添える飾りのことを指し、おもに慶事の贈りものなどで使用されます。不老長寿の象徴、鮑(あわび)を乾燥させて伸ばした「のしあわび」を、縁起物として添えていたのが始まりと言われています。

そのため生ものや海産物を贈る際、熨斗は不要とされています。
時代とともに簡素化され、最近では熨斗、水引をともにプリントした紙の事を「熨斗紙」と呼ばれるのが一般的になりました。
ただ、華やかな熨斗や水引で彩られた贈り物は、相手方に喜んでいただけるに違いありません。

思いを形にして届ける、大切にしたい文化のひとつですね。

水引で生活に華やぎを

奥ゆかしい気持ちのこもった美しい形の水引。
最近は、和のモチーフとしても注目されています。華やかな色や洗練されたデザインは、アクセサリーや飾り物など、生活に華やぎを添えてくれるアイテムとして人気です。

人気のモチーフ

和のモチーフに用いられた水引は、縁起の良い贈り物としても重宝されています。
バラエティ豊かなラインナップが続々登場し、気軽に手に取れるようになりました。

なかでも、「魔除け」や「運気向上」の意味を持つ淡路結びや、魔除けの効果を持つ梅をモチーフとした「梅結び」はお守りとしてとても人気があります。

縁起がよく、華やかな水引は、贈っても贈られてもうれしいアイテムですね。

まとめ

水引を選ぶには正しい知識が必要!と身構えてしまいがちですが、意味を知ると自然に選ぶことができますね。間違って失礼にあたるかも、といった不安を少しでも解消していただけたら幸いです。

相手のことを思いながら丁寧に選んだ水引は、きっと皆さんの心を運んでくれますよ。

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