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「新たな1年で生まれ変わる」
年も暮れて2023年ももうすぐで終わります。 すべては過ぎ去るもので寂しさも去来しますが、過ぎ去ると同時に新たな始まりでもあるので、次の一年を気持ちよく迎えていきたいものです。
2023年もいろいろありましたが、個人としても印象的だったのは出羽三山を巡ったことです。10年ほど前から旅行先候補としてあがっていたのですが、なぜか今年こそはという気持ちが強く。 意を決して夏に計画しました。
交通手段や宿の予約も終えてから気づいたこと。 2023年の干支は卯年(うさぎどし)だったのですが、出羽三山も卯年を御縁年としていて、参拝すれば12年分のご利益がいただける年ということでした。 しかも私自身も卯年生まれで年男。強い巡り会わせを感じながら不思議な心持ちで三山を回りました。
出羽三山の参拝は、江戸時代に庶民の間で、現在・過去・未来を巡る「生まれかわりの旅」として広まりました。羽黒山は現在、月山は過去、湯殿山は未来を司り、死と再生をたどって生まれ変わる。三山に入り裸の魂で祈りを捧げることで、身も心もリセットされて、明日への新たな生命力に満たされる、という特別な場所。
山形県の奥地にありますから、江戸時代に訪れるのは大変だったはずです。よほどの信仰の地としての神妙さと知名度があったのだなあ、と考えさせられました。
小さなお宮の数々や岩座などの祈りの場、五重塔などを巡りながら、階段を上って山頂の羽黒山三神合祭殿にたどり着きます。
出羽三山の中で最も村里に近く、人々の現世利益を叶える山であったことから、現在を司るといわれています。さながら荘厳な信仰のアミューズメントパークのようで、たくさんの神様が祀られているので、現世のご利益を司る、という実感もありました。
月読命(つくよみのみこと)が祀られている月山神社を目指します。 伊勢に祀られている太陽の神様である天照大御神に対して、月山に祀られている月の神様。この分かりやすい構図も出羽三山の人気に繋がってきたのだろうな、とか浅はかながら考えます。
八合目まで車で行けるのですが、そこから頂上までの山道は国立公園であると共に、出羽三山神社の境内だそうです。山道は、なんともいえない、この世なのかあの世のなのか、不思議な境界線を感じる、美しく広がりのある景観が続きます。
月は暗闇に浮かぶものですし、「つくよみ」のよみは「黄泉(=死者の国)」ともとれるせいか、どこか「あの世」や「極楽浄土」のような形容がされてきたようですが、実際にこの世とは思えない景観なのです。 頂上にある月山神社本宮内は、広大な境内地の中でも古来より特別な神域となっているとのことです。驚いたのは夏は神職が常駐して、入口で全ての参拝者にお祓いをしてくれることです。本殿にいる神職さんが、「屋根上にある鏡に賽銭を投げて当たればご利益がある」とおっしゃっていたので、投げてみると周囲にいた中で私だけが命中。卯年のご縁年、年男、鏡に命中、もう怖い物はないな、と。
最後には未来を司り、いよいよ生まれ変わる地でもある湯殿山ですが、古来より「語るなかれ」「聞くなかれ」と言われているそうで、写真も禁止となっています。ですので、ここはしきたりにならって語りません。行く価値が絶対ある、とだけ言っておきます。
出羽三山を巡って、生まれ変わったのか? 言葉で表現するのは難しいのですが、わたしの答えはyesです。 三山それぞれ全く違う世界観を持つお山を巡るせいなのか、もちろん神域といわれる霊妙な力のおかげなのか、奇妙な一巡感があって、残りの人生を新たな気持ちで臨む心持ちになれました。次の12年後のご縁年にも必ず訪れたいと思います。
2023年も良いことも悪いことも、さまざまなことに巡り合いましたが、それも人生の美しい1年の1つ、年が1巡したのです。そして年を越すという節目がやってきて、リセットし新たな年を迎えます。節目を大事にしてきた日本の文化には、節目ごとに生まれ変わる、という心豊かな観点もあったのではないかなあ、と出羽三山を巡って思います。
今年も心を新たなに臨みたいと思います。 よろしくお願いいたします。
アミナコレクション創業者 進藤幸彦の次男坊。2010年に社長に就任。 1975年生まれ。自然と歴史と文化、それを巡る旅が好き。
「新たな1年で生まれ変わる」
年も暮れて2023年ももうすぐで終わります。
すべては過ぎ去るもので寂しさも去来しますが、過ぎ去ると同時に新たな始まりでもあるので、次の一年を気持ちよく迎えていきたいものです。
2023年もいろいろありましたが、個人としても印象的だったのは出羽三山を巡ったことです。10年ほど前から旅行先候補としてあがっていたのですが、なぜか今年こそはという気持ちが強く。
意を決して夏に計画しました。
交通手段や宿の予約も終えてから気づいたこと。
2023年の干支は卯年(うさぎどし)だったのですが、出羽三山も卯年を御縁年としていて、参拝すれば12年分のご利益がいただける年ということでした。
しかも私自身も卯年生まれで年男。強い巡り会わせを感じながら不思議な心持ちで三山を回りました。
出羽三山の参拝は、江戸時代に庶民の間で、現在・過去・未来を巡る「生まれかわりの旅」として広まりました。羽黒山は現在、月山は過去、湯殿山は未来を司り、死と再生をたどって生まれ変わる。三山に入り裸の魂で祈りを捧げることで、身も心もリセットされて、明日への新たな生命力に満たされる、という特別な場所。
山形県の奥地にありますから、江戸時代に訪れるのは大変だったはずです。よほどの信仰の地としての神妙さと知名度があったのだなあ、と考えさせられました。
羽黒山
小さなお宮の数々や岩座などの祈りの場、五重塔などを巡りながら、階段を上って山頂の羽黒山三神合祭殿にたどり着きます。
出羽三山の中で最も村里に近く、人々の現世利益を叶える山であったことから、現在を司るといわれています。さながら荘厳な信仰のアミューズメントパークのようで、たくさんの神様が祀られているので、現世のご利益を司る、という実感もありました。
月山
月読命(つくよみのみこと)が祀られている月山神社を目指します。
伊勢に祀られている太陽の神様である天照大御神に対して、月山に祀られている月の神様。この分かりやすい構図も出羽三山の人気に繋がってきたのだろうな、とか浅はかながら考えます。
八合目まで車で行けるのですが、そこから頂上までの山道は国立公園であると共に、出羽三山神社の境内だそうです。山道は、なんともいえない、この世なのかあの世のなのか、不思議な境界線を感じる、美しく広がりのある景観が続きます。
月は暗闇に浮かぶものですし、「つくよみ」のよみは「黄泉(=死者の国)」ともとれるせいか、どこか「あの世」や「極楽浄土」のような形容がされてきたようですが、実際にこの世とは思えない景観なのです。
頂上にある月山神社本宮内は、広大な境内地の中でも古来より特別な神域となっているとのことです。驚いたのは夏は神職が常駐して、入口で全ての参拝者にお祓いをしてくれることです。本殿にいる神職さんが、「屋根上にある鏡に賽銭を投げて当たればご利益がある」とおっしゃっていたので、投げてみると周囲にいた中で私だけが命中。卯年のご縁年、年男、鏡に命中、もう怖い物はないな、と。
湯殿山
最後には未来を司り、いよいよ生まれ変わる地でもある湯殿山ですが、古来より「語るなかれ」「聞くなかれ」と言われているそうで、写真も禁止となっています。ですので、ここはしきたりにならって語りません。行く価値が絶対ある、とだけ言っておきます。
出羽三山を巡って、生まれ変わったのか?
言葉で表現するのは難しいのですが、わたしの答えはyesです。
三山それぞれ全く違う世界観を持つお山を巡るせいなのか、もちろん神域といわれる霊妙な力のおかげなのか、奇妙な一巡感があって、残りの人生を新たな気持ちで臨む心持ちになれました。次の12年後のご縁年にも必ず訪れたいと思います。
2023年も良いことも悪いことも、さまざまなことに巡り合いましたが、それも人生の美しい1年の1つ、年が1巡したのです。そして年を越すという節目がやってきて、リセットし新たな年を迎えます。節目を大事にしてきた日本の文化には、節目ごとに生まれ変わる、という心豊かな観点もあったのではないかなあ、と出羽三山を巡って思います。
今年も心を新たなに臨みたいと思います。
よろしくお願いいたします。
筆者プロフィール:進藤さわと
アミナコレクション創業者 進藤幸彦の次男坊。2010年に社長に就任。
1975年生まれ。自然と歴史と文化、それを巡る旅が好き。