古代ハワイアンの遺跡「ヘイアウ」~マナが宿る神聖な場所~

「ヘイアウ」とは、古代ハワイアンの神々が祀られた神聖な場所。
かつて宗教的な儀式が行われた遺跡で、ハワイにはたくさんのヘイアウがあります。

高貴な王族とカフナ(神官)以外は立入禁止とされているヘイアウも多く、気軽にお参りに行く場所というよりは、宗教的な究極の聖域といったところ。

祀る神々によって、その役割や儀式も違い、人が「いけにえ」として捧げられていたというちょっと恐ろしいヘイアウも少なくありません。

今回はそんな古代ハワイの遺跡「ヘイアウ」について掘り下げていきます。

古代ハワイの究極の聖域

まずは、古代ハワイの聖域ヘイアウとは、「何のための、どのようなものか」基本的な情報をまとめてみました。

ヘイアウとは

ヘイアウとは

ヘイアウとは、古代ハワイで宗教的な儀式が行われていた場所。マナ(神秘のパワー)が宿る聖域としてハワイの人々に大切に守られてきました。石を積み上げて作られた祭壇には、ハワイ四大神をはじめ、神話に登場する神々が祀られています。

ポリネシアの島々にも同様の神殿が存在していたことから、はるか昔、ポリネシアからハワイ諸島に渡ってきた先住民により伝えられたと考えられています。

カプと儀式

古代ハワイには「カプ(タブー・禁忌)」と呼ばれる厳しい戒律がありました。ヘイアウに関しても様々なカプがあり「石を踏んではいけない」「女性が入ってはならない」など、カプを破ったものは即死罪という厳しいものでした。

ヘイアウでの儀式は「カフナ」と呼ばれる神官が行います。カフナとは最上位のアリイ(首長)に次ぐ階級にあり、庶民とアリイをつなぐ役割を担っていました。またアリイが政治的な決定を下す際、必ずカフナに相談し、神の助言を求めたといいます。

ヘイアウの構造

ヘイアウの構造

ヘイアウは、時代や目的によって形や規模も様々ですが、基本的な造りは決まっています。石造りの土台の上に、カフナが祈祷を捧げる小屋、神のお告げを受けるための塔、神像、供物を捧げる台があり、木の柵で囲まれているというのが一般的です。

ヘイアウの種類

ヘイアウは、祀る神によって、いくつかの種類に分類されます。中でもハワイ四大神のクーやロノを祀ったヘイアウが有名。代表的なものをいくつかご紹介しましょう。

ルアキニ・ヘイアウ

「ルアキニ・ヘイアウ」とは人身御供が行われていたヘイアウのこと。ルアキニ・ヘイアウを建てることができたのは、島を代表する高位の王族だけでした。

祭壇にはハワイ四大神のひとり、軍神「クー」を祀り、行われる儀式は大変厳しいものだったといいます。戦勝祈願など大きな儀式では人が「いけにえ」として捧げられました。

ヘイアウの建物には、オヒアの木を使い、屋根はロウルという種の椰子の葉とウキの草で作られました。

マペレ・ヘイアウ

「マペレ・ヘイアウ」とは、豊穣の神「ロノ」が祀られているヘイアウのこと。人身御供は行われず、代わりに豚を捧げたといいます。

マペレ・ヘイアウは、位が低い王族でも建てることができたため、ハワイ全土に数多く存在します。建物はラマの木を使い、屋根はティーリーフの葉で作られていました。

プウ・ホヌア

プウ・ホヌア

古代ハワイでは、カプを破った者は死罪。しかし助かる方法がひとつだけありました。もし「プウ・ホヌア」に逃げ込むことができれば、免罪となり、ここで祈祷を受けることで浄化され、社会復帰が許されたのだとか。

プウ・ホヌアはハワイ語で「逃れの地」。特にハワイ島にある「プウ・ホヌア・オ・ホナウナウ」が最も有名で、古代ハワイの駆け込み寺として約300年もの間、多くの命を救ってきました。現在は国立歴史公園となっています。

以上3種類以外にも、フラの修行の場としてのヘイアウ、癒やしのヘイアウなどがあります。また漁民たちが豊漁を祈願するための「コ・ア」や、一般家屋にあるカーネ神を祀る「ポーハク・オ・カー」の巨石などもヘイアウのひとつとされています。

有名なヘイアウを紹介

ハワイで有名なヘイアウをいくつかピックアップし、その役割と伝説についてご紹介します。

ケアイヴァ・ヘイアウ

オアフ島中央部、ケアイヴァ州立公園にあるヘイアウ。古代ハワイでは、ケガや病気を治療する病院のような役割を持ち「癒しのヘイアウ」と呼ばれていました。

治療は薬草などを使い、カフナが行っていました。ハワイ語で「ケアイヴァ=神秘」の意味。現在も病気やケガの治療のため、祈りを捧げに来る人が後を絶ちません。

ウルポ・ヘイアウ

オアフ島東海岸にある「ウルポ・ヘイアウ」は、オアフ島最古のヘイアウ。カワイヌイ湿地を見渡せる高台にあり、ハワイ伝説の小人メネフネが、一夜にして造ったといわれています。

ハワイ語で「ウルポ=宵のひらめき」の意味。ハワイ四大神のひとり、豊穣の神「ロノ」を祀っています。縦55m、幅42m、積み上げられた岩壁の高さは10mにもなります。

ヘイアウからはタロイモ畑が見渡せ、周辺にはマンゴーやパパイヤ、ククイ、ノニなどの果実が生い茂り、太古のハワイに迷い込んだような光景が広がっています。

ポリアフ・ヘイアウ

カウアイ島のワイルア湾が一望できる断崖に立つ「ポリアフ・ヘイアウ」。石垣の高さは1.5m、広さは約80m×55mと、カウアイ島最大規模を誇ります。

ハワイ島のマウナケアに住むとされる、美しい雪の女神「ポリアフ」が祀られ、死者の魂が冥界へ旅立つ場所と考えられています。

伝説によると、ポリアフ・ヘイアウもまたメネフネによって造られたとか。月に1度、夜になると神々がこの場所に集まり、まばゆい光と太鼓の音、神々の笑い声が聞こえるそうです。

カ・ウル・オ・ラカ・ヘイアウ(カ・ウル・パオア)

カウアイ島北岸の崖の上に立つ「カ・ウル・オ・ラカ・ヘイアウ」。フラの女神「ラカ」が祀られ、ハワイ諸島最古のハーラウ・フラ(フラ学校)があったとされる場所です。現在は多くのフラ関係者が訪れ、献花や儀式が行われるフラの聖地となっています。

一方崖の下には「カ・ウル・パオア」と呼ばれるヘイアウがあります。「パオア」とは、火の女神ペレの元恋人ロヒアウの親友で、哲学とダンスに精通する人物。

このヘイアウは、古代にフラの訓練が行われた場所。残念ながら現在はジャングルに覆われ見ることができません。

ピイラニ・ハレ・ヘイアウ

「ピイラニ・ハレ・ヘイアウ」はハワイ諸島最大のヘイアウ。マウイ島の東部ハナにある国立熱帯植物園、「カハヌ・ガーデン」の中にあります。ピイラニとは、かつてマウイ島を治めていた王様の名前。ハレとは家という意味です。

溶岩を海から運んで積み上げられた祭壇は、高さ15m、横幅175m。完成までに12万8,000人もの人手を要し、かつてはピイラニ王の宮殿だったのだとか。美しい緑に囲まれた巨大なヘイアウは、現在立ち入り禁止となっています。

ヘイアウ破壊令の影響

古代ハワイで聖域とされたヘイアウも、ハワイの近代化やキリスト教化の波にのまれ、消滅していた時代がありました。

1819年カメハメハ大王の死後、カメハメハ2世と義母カアフマヌ王妃は古代宗教を禁止し、「ヘイアウ破壊令」を出しました。これにより約300年間続いていたカプ制度は廃止。同時にハワイ全土のヘイアウは破壊され、廃虚化したといいます。

しかし1970年代に入り、ハワイアン・ルネッサンス(ハワイ伝統文化復興運動)の流れの中で、ハワイ固有の文化や宗教が見直され、現在はヘイアウの復元が進んでいます。

もう少し知りたい?!ヘイアウの怪現象

ヘイアウの怪現象

オアフ島の真珠湾とカネオヘを結ぶH3フリーウェイ。ここが「呪われたフリーウェイ」と呼ばれていたのをご存じですか?

建設中、2度にわたる死亡事故、開通直前に起こった橋げた崩壊、ダイナマイトの暴発など、現代では考えられないような原因不明の事故が相次いだのです。そのため「神のたたり・呪い」だとの噂が広まりました。

その後ビショップミュージアムの調査で、このフリーウェイは「ケアイヴァ・ヘイアウ」をはじめ68個ものヘイアウを貫いていることが判明。

ルートを変更したり、かつてハワイ王朝の礼拝場だったカワイアハオ・チャーチの元牧師、アブラハム・アカカ氏により御祓いが行われ、謎の事故は収まったそうです。

「ヘイアウの呪い」かどうかは誰にもわかりませんが、もしかしたら、自然や神の聖域に対する配慮が足りなかったのかもしれませんね。

「ヘイアウ」まとめ

古代ハワイで宗教的な儀式が行われた遺跡「ヘイアウ」。マナ(神秘のパワー)の宿る場所として今も現地の人々に大切にされています。

ヘイアウには、かつて厳しいカプ(タブー)が存在し、カプを破ると死罪に処されるなど、古代においては究極の聖域だった場所。

ヘイアウは、誰もが行ける気軽なパワースポットではないため、訪れる機会があれば、現地のルールに従って、十分に敬意を払うことを忘れずに!

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