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関東から北海道まで18時間の船旅へ。初めての船旅、色々と不安はありましたが、下船時には「もっと乗っていたい」と思うほど船が好きになっていました。今回は船の上で味わえる非日常体験をご紹介します。
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時刻は午後5時。いよいよ乗船です。乗船はあっという間で、入口こそ狭いものの船に入ってしまえば中は広々としています。メイン通路は車が1台走れそうなほど幅広く、階段は劇場にあっても不思議でないほど洒落た造り。共有ロビーには自由に使えるソファやテーブルが設置されていて、丸く模られた飾り窓からは海も見えます。人々はそこを悠々と闊歩。飛行機の搭乗のように前に進めなくて窮屈な思いをすることはありませんでした。初めての船旅。その豪華さは感動の一言でした。そして出航を知らせるドラの音。残念ながらレストランで食事をしていて、出航の時刻に甲板に出ることはできませんでしたが、みんなに見送られながらの出航です。去る側というシチュエーションは人生でそう何度も味わえるものではありません。ドラの音を聞きながら、陸の人々に別れを告げられたなら、非日常感がより深まる気がします。
共有ロビーの窓から何ともなしに海を見ていた時のことです。どこまでも続く穏やかな海は、見ているだけで心を落ち着かせてくれ〝あぁ船旅をしているんだ私〟という実感を沸かせてくれました。船旅の良さをしみじみ味わっていると、どこからか艦内放送が「…携帯電話の電波は入らなくなります。なお船内にWi-Fiはありません」と。え!?携帯の電波って入らなくなるの⁉全くノーマークでした。携帯電話会社が乱立し、4Gから5Gの領域になんて言っているこの時代に携帯の電波が入らないなんて…。海外に行く船なら納得だけど、日本の海域を本州から北海道までちょっと渡るだけの航海でも電波がダメになるんだ…。焦る私。非情にも放送の言葉通り、程なくして携帯は圏外になり翌日の昼まで戻ることはありませんでした。しかし意外(?)にも何の不便もなく、私は思いがけず得たデジタルデトックスタイムを逆に満喫。たった2日でしたが「スマホが無くても大丈夫なんだ」と変な自信を感じる機会にもなりました。
クルーズ船の夜はとても長く感じます。TVは置いてないし、動画を見ようにも携帯の電波は入らないし、レストランも売店も早々に閉まってしまいます。だから、何もすることがありません。広い個室の人は個室で、そうでない人は共有ロビーでお酒を飲んだり、友人との話に花を咲かせたり、本を読んだり、ボーっと海を眺めたり。限られた空間の中でみんな自分のために時間を使います。そんな夜の時間に絶対に行って欲しいのが展望デッキ。天候に恵まれれば満天の星々が待っていてくれます。当たり前ですが海の上なので、周囲にビルや街灯など人工的な光は一切ありません。星空鑑賞というと高原やキャンプ場を想像しがちですが、船もピッタリな場所なんです。私も、もちろん行きました。展望デッキは明るい船内とは打って変わって真っ暗。吹き付ける風がピューピューと自由に舞っています。一瞬だけ覗いた夜の海はとても暗くて、直視したら吸い込まれそうなほどでした。そして星空。360度すべて遮るものがない場所。見渡せばあちこちに星が輝いていました。赤い星、青い星、白い星。大きな星。小さな星…。残念ながら天の川は見ることが出来ませんでしたが、カラッと晴れた風の穏やかな夜なら、星空に包まれてしまうほどの量の星を見ることができたのではと思っています。
クルーズ船には大浴場があるのを知っていましたか?夜中でも早朝でも好きな時間に入れるこのお風呂は、解放感が抜群なんです!サイズは浴槽2つとサウナ室、シャワーが12個ほど。そこだけ聞くと「ちょっと小さめの大浴場でしょ?ムリに入らなくても」と思うかも知れません。ですが、知ってほしいのはその解放感!なんと浴槽の前面は全て巨大なガラス窓になっていて、大海原を見ながらお風呂につかれます。普通、温浴施設はあちら側から覗けないように何らかの目隠し処理がされていますが、ここは海。向こう側からの視線を配慮する必要はありません。つまり向こう側からもこちら側からも全てが丸見え状態なんです!私はラッキーなことに他の利用客ゼロの状況で入浴できたため、ガラスの向こうに広がる海まで独り占め!その贅沢さに何となく申し訳ないような気分になったり、セレブのプライベートビーチってこんな気分?と考えたりしました。また船は常に動いているので、入る時間帯によっては陸地がちょっとずつ遠ざかっていく姿を見られたり、漁船が行き交う様子を見られたり、夜には灯台の灯りを受けたり…。物理的に移り変わる景色を眺めながら入るお風呂は、船旅ならではの特別な思い出の一つになってくれますよ。
10日×3人分の洋服を詰め込んだ巨大なスーツケースに未就学児2人…。下船にもたついていると、スタッフが「お手伝いしますね」と駆けつけてくれました。そう、船はバリアフリーな面も多いんです。北海道⇔関東を船で行き来する私たちに、札幌在住だというそのスタッフはとても親切にしてくれました。ふと「客船で働くスタッフは、独特のスケジュールで働いているんだよ」という言葉を思い出します。「船乗りさんって1回船に乗ると何日も家に帰れないって聞いたんですが、本当ですか?」「本当ですよ!私たちの場合は1回乗ると2週間は船上にいます。私も今日このまま夕方の便で出航です」「着岸したばかりなのに、すぐ海の上に戻るんですか? (ハードすぎない…?)」「戻るというか、私たちは一度乗船したら2週間は船から降りないんです。船に個室があってそこで寝泊まりしているんですよ」なかなかハードな働き方をしているようですが、悲壮感はありません。「2週間働いたらその後1週間お休みなので、そこで陸にあがります。」「大変なお仕事ですね」「でも、まとまってお休みがあると自由もききますし、良い面も多いですよ。私は北海道ですが、大分や名古屋に家がある人も働きに来ています。バラエティーに富んでいて楽しいですよ」1週間お休みがあるから、日本中どこに家があっても良いし帰れる。なんて自由な働き方!正直、私にはかなり羨ましい働き方でした。そして楽しい会話の最後に衝撃の言葉。「実は私…もう3週間働いているんです。あともう数日は働く予定です」3週間も住み込みで働いているとは思えないほど生き生きとしたその姿。〝よく働きよく遊ぶ〟を体現しているような姿に、働くこと、生きること、趣味を諦めないことを色々と考えさせられました。広い世界、自分に合った働き方は意外とあるのかも知れません。
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。 マイナーな国をメインに、世界中を旅する。 旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。 出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。 公式HP:Lucia Travel
関東から北海道まで18時間の船旅へ。初めての船旅、色々と不安はありましたが、下船時には「もっと乗っていたい」と思うほど船が好きになっていました。
今回は船の上で味わえる非日常体験をご紹介します。
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目次
広々として豪華な船の内部
時刻は午後5時。いよいよ乗船です。乗船はあっという間で、入口こそ狭いものの船に入ってしまえば中は広々としています。
メイン通路は車が1台走れそうなほど幅広く、階段は劇場にあっても不思議でないほど洒落た造り。共有ロビーには自由に使えるソファやテーブルが設置されていて、丸く模られた飾り窓からは海も見えます。人々はそこを悠々と闊歩。飛行機の搭乗のように前に進めなくて窮屈な思いをすることはありませんでした。
初めての船旅。その豪華さは感動の一言でした。
そして出航を知らせるドラの音。残念ながらレストランで食事をしていて、出航の時刻に甲板に出ることはできませんでしたが、みんなに見送られながらの出航です。
去る側というシチュエーションは人生でそう何度も味わえるものではありません。ドラの音を聞きながら、陸の人々に別れを告げられたなら、非日常感がより深まる気がします。
「地球って本当に球体なんだ!」と思える形に感動!
まさか!船の上では携帯の電波が入らない
共有ロビーの窓から何ともなしに海を見ていた時のことです。どこまでも続く穏やかな海は、見ているだけで心を落ち着かせてくれ〝あぁ船旅をしているんだ私〟という実感を沸かせてくれました。
船旅の良さをしみじみ味わっていると、どこからか艦内放送が「…携帯電話の電波は入らなくなります。なお船内にWi-Fiはありません」と。
え!?携帯の電波って入らなくなるの⁉
全くノーマークでした。携帯電話会社が乱立し、4Gから5Gの領域になんて言っているこの時代に携帯の電波が入らないなんて…。
海外に行く船なら納得だけど、日本の海域を本州から北海道までちょっと渡るだけの航海でも電波がダメになるんだ…。焦る私。非情にも放送の言葉通り、程なくして携帯は圏外になり翌日の昼まで戻ることはありませんでした。
しかし意外(?)にも何の不便もなく、私は思いがけず得たデジタルデトックスタイムを逆に満喫。たった2日でしたが「スマホが無くても大丈夫なんだ」と変な自信を感じる機会にもなりました。
満天の星が輝く展望デッキ
クルーズ船の夜はとても長く感じます。TVは置いてないし、動画を見ようにも携帯の電波は入らないし、レストランも売店も早々に閉まってしまいます。だから、何もすることがありません。
広い個室の人は個室で、そうでない人は共有ロビーでお酒を飲んだり、友人との話に花を咲かせたり、本を読んだり、ボーっと海を眺めたり。限られた空間の中でみんな自分のために時間を使います。
そんな夜の時間に絶対に行って欲しいのが展望デッキ。天候に恵まれれば満天の星々が待っていてくれます。
当たり前ですが海の上なので、周囲にビルや街灯など人工的な光は一切ありません。星空鑑賞というと高原やキャンプ場を想像しがちですが、船もピッタリな場所なんです。
私も、もちろん行きました。展望デッキは明るい船内とは打って変わって真っ暗。吹き付ける風がピューピューと自由に舞っています。
一瞬だけ覗いた夜の海はとても暗くて、直視したら吸い込まれそうなほどでした。そして星空。360度すべて遮るものがない場所。見渡せばあちこちに星が輝いていました。赤い星、青い星、白い星。大きな星。小さな星…。
残念ながら天の川は見ることが出来ませんでしたが、カラッと晴れた風の穏やかな夜なら、星空に包まれてしまうほどの量の星を見ることができたのではと思っています。
大海原を望める船のお風呂は解放感抜群!
クルーズ船には大浴場があるのを知っていましたか?夜中でも早朝でも好きな時間に入れるこのお風呂は、解放感が抜群なんです!
サイズは浴槽2つとサウナ室、シャワーが12個ほど。そこだけ聞くと「ちょっと小さめの大浴場でしょ?ムリに入らなくても」と思うかも知れません。
ですが、知ってほしいのはその解放感!なんと浴槽の前面は全て巨大なガラス窓になっていて、大海原を見ながらお風呂につかれます。
普通、温浴施設はあちら側から覗けないように何らかの目隠し処理がされていますが、ここは海。向こう側からの視線を配慮する必要はありません。つまり向こう側からもこちら側からも全てが丸見え状態なんです!
私はラッキーなことに他の利用客ゼロの状況で入浴できたため、ガラスの向こうに広がる海まで独り占め!その贅沢さに何となく申し訳ないような気分になったり、セレブのプライベートビーチってこんな気分?と考えたりしました。
また船は常に動いているので、入る時間帯によっては陸地がちょっとずつ遠ざかっていく姿を見られたり、漁船が行き交う様子を見られたり、夜には灯台の灯りを受けたり…。
物理的に移り変わる景色を眺めながら入るお風呂は、船旅ならではの特別な思い出の一つになってくれますよ。
船乗りの働き方は自由!3週間働き詰めのスタッフの話
10日×3人分の洋服を詰め込んだ巨大なスーツケースに未就学児2人…。
下船にもたついていると、スタッフが「お手伝いしますね」と駆けつけてくれました。そう、船はバリアフリーな面も多いんです。
北海道⇔関東を船で行き来する私たちに、札幌在住だというそのスタッフはとても親切にしてくれました。ふと「客船で働くスタッフは、独特のスケジュールで働いているんだよ」という言葉を思い出します。
「船乗りさんって1回船に乗ると何日も家に帰れないって聞いたんですが、本当ですか?」
「本当ですよ!私たちの場合は1回乗ると2週間は船上にいます。私も今日このまま夕方の便で出航です」
「着岸したばかりなのに、すぐ海の上に戻るんですか? (ハードすぎない…?)」
「戻るというか、私たちは一度乗船したら2週間は船から降りないんです。船に個室があってそこで寝泊まりしているんですよ」
なかなかハードな働き方をしているようですが、悲壮感はありません。
「2週間働いたらその後1週間お休みなので、そこで陸にあがります。」
「大変なお仕事ですね」
「でも、まとまってお休みがあると自由もききますし、良い面も多いですよ。私は北海道ですが、大分や名古屋に家がある人も働きに来ています。バラエティーに富んでいて楽しいですよ」
1週間お休みがあるから、日本中どこに家があっても良いし帰れる。なんて自由な働き方!
正直、私にはかなり羨ましい働き方でした。そして楽しい会話の最後に衝撃の言葉。
「実は私…もう3週間働いているんです。あともう数日は働く予定です」
3週間も住み込みで働いているとは思えないほど生き生きとしたその姿。
〝よく働きよく遊ぶ〟を体現しているような姿に、働くこと、生きること、趣味を諦めないことを色々と考えさせられました。広い世界、自分に合った働き方は意外とあるのかも知れません。
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筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel